ここは、とあるスケートリンク。
防寒具に身を包み、スケートを楽しむ一般人客達に混じって、黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643)達の姿があった。
「ここに、写真を撮る度に服を消し去ってしまう、カメラマン都市伝説が現れるらしいんです……って、怖い顔しないでくださいっ、私のせいじゃないですから!」
どうにも『こういった類』の都市伝説と縁のあるいちごである。濡れ衣とも言い切れないのが、何とももどかしい。
「その都市伝説は、一度シャッターを切れば上着が、二度シャッターを切ればもう一枚、という風に、少しずつ脱げていって、気づけば下着姿になっているという恐ろしい能力を持っています」
実に恐ろしい。
まして場所がスケートリンクだ。脱げれば寒いし、その状態で転ぼうものなら、目も当てられない……!
羞恥心と物理、両面から責めてくるとは。
「私達もスケートして、都市伝説をおびき寄せましょう。厚着をしている人ほど狙われやすくなるみたいですけど、カメラマンの脱がせ魂に火がつくんでしょうか?」
都市伝説のカメラは、ただの厄介なアイテムというだけではなく、実際、武器でもあるようだ。
「でも、『脱げるカメラ』のインパクトが強すぎて、それ以外の能力がよくわからないんですよね……」
いずれにせよ、敵の脱がせ効果は、一般人や普通の衣服に対しては有効でも、灼滅者の装備にまでは影響を与える事はないはず。せいぜい【服破り】の効果を受ける程度だろう。
とりあえず、どのような攻撃にも対処できるよう、バランスの取れた陣形で挑むのが無難かと思われる。
また、被写体を必ず捉えることから考えて、高い命中率を誇るとみてよさそうだ。
「なんだか私が呼び寄せたみたいですけど、この都市伝説を灼滅して、それが濡れ衣だって証明してみせます!」
意気込むいちご。その望みは無事果たされるのだろうか?
参加者 | |
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水月・鏡花(鏡写しの双月・d00750) |
墨沢・由希奈(墨染直路・d01252) |
姫条・セカイ(黎明の響き・d03014) |
御剣・レイラ(高校生ストリートファイター・d04793) |
緋薙・桐香(針入り水晶・d06788) |
黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643) |
東雲・蓮華(ホワイトドロップ・d20909) |
天原・京香(銃声を奏でる少女・d24476) |
●氷上にひそみし闇
皆がやってきたスケートリンクには、平穏無事な時間が流れていた。
けれど、この風景が程なく阿鼻叫喚に包まれる事を、皆は知っている。……残念な事に。
「また、アレな都市伝説なんだね、いちごくん」
じろーり。墨沢・由希奈(墨染直路・d01252)の視線が、傍らの人物をロックオン。もはや諦めを通り越して、むしろこれが通常運転なんて思い始めている。
「……毎回毎回何でこんなのを見つけてくるんですかね……」
「なるほど? これはいちごさんが招いた欲望の塊ですの? 別に、いちごさんのためなら脱ぎますのに……」
「脱がないでください!?」
マフラーを巻いた東雲・蓮華(ホワイトドロップ・d20909)が半眼になる中、頬を染めロングコートに手をかけようとする緋薙・桐香(針入り水晶・d06788)を、黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643)が引き止めた。
そんないちごに、詰め寄るのは天原・京香(銃声を奏でる少女・d24476)。
「ねえ、一体いくつ引き寄せれば気が済むの? そしてなんで毎回私は巻き込まれてるのかしら? なんなの?そんなに女の子脱がしたいの? でも今回の私はそんな変なトラブルに巻き込まれないんだからね!!」
一気にまくしたてる京香や、仲間の反応を見ていた御剣・レイラ(高校生ストリートファイター・d04793)が、いちごから半歩距離を置いた。こそっ、と。
「いちごさんって、いつもこういう都市伝説を探しているんですか……?」
「ご、誤解です! って、鏡花さんまで疑いの眼差しを!」
「私は別に気にしてないわ。……まあこれは全く関係ないけれど、たまにはいちご狩りにも行ってみたいわね?」
「いいですね……って、気にしてますよね!?」
さらっと告げる水月・鏡花(鏡写しの双月・d00750)に、いちごは涙目だった。
「無事に濡れ衣を晴らせると良いですね。わたくしもお力添えいたします」
「セカイさん……!」
味方は、姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)だけなのか。その白コートと毛皮の帽子…アストラハン帽子という奴である……のコーデも相まって、いちごの目には女神のように映る。
まあ、この辺にして、と皆がスケート靴に履き替える。
「頑張って、いちごくんのとらぶるに……じゃない、都市伝説の被害に巻き込まれる人を救わないとね!」
スケートリンクに足を踏み入れる由希奈。
今はまだ、楽しく賑やかな日常空間であるそこに。
●変態さんいらっしゃ……らなくていいですお帰りください
「スケートね。やったことはないけど、まあ何とかなるでしょ……スキーはできるんだし、似たようなものじゃないの?」
すいーっ。京香が、自信たっぷりで滑り始める。出だし『は』、上々のようだ。
鏡花も、優雅に氷上を行く。銀の髪に青の瞳。まさに銀盤の妖精。
よく切れ……じゃなかった、よく滑るようにスケート靴のブレードはしっかりと研いである。……妖精さん怖い。
一般客に混じり、しばし、スケートを楽しむ一同。とらぶるも起きていないし、このまま何事もなく学園に戻れればどれだけ幸せであろうか。
だが、ダークネスは、そんな結末を与えてはくれない。
「素敵だ! このスケートリンクは、いい被写体であふれている!」
声に続いてフラッシュが焚かれた途端、一般女性の悲鳴が木霊した。
上は着込んだままなのに、下半身は麗しい生足が露わになっている。
元凶は、バズーカのようなカメラを構えたオッサン……カメラマン都市伝説だ!
「変態です! 変態が出ました!!」
蓮華が、事実をシンプルかつ的確に伝えた。
「避難して!」
ざわめきの中、由希奈の声が響き渡る。
「私が囮になります。今のうちに皆さんはお客さんの避難を!」
「わかりましたわ」
勇ましく飛び出したいちごに頷き、桐香が避難誘導員を装い、一般客をてきぱきとリンクの外へと促していく。
「さあこっちです、都市伝説!」
「おっと、いい感じの被写体! こっちに目線ちょうだい!」
ぱしゃりぱしゃり! 怪し気な光が閃くたび、いちごのコートやセーターが脱げていく。これぞ変態マジック!
ちなみに、普段から女装しているいちごは、下着も女性用。脱がされるにしてもスリップまでで止めておかないと、色々な意味で危険な予感。
「はいそこでポーズ! うん可愛い!」
「なんてひどいセクハラ都市伝説なんですか……」
あまりにもあまりな被害に、呆れるレイラ。
防寒着やマフラー、手袋をしっかり着込んで、変態の前に立ちはだかり、一般人の壁となる。
「水着があるから、最悪の事態は避けられるはずですが……」
同じく避難の時間を稼ごうと、敵の気を引く蓮華。
だが、変態の目が、ぎらっ、と輝いた。
「僕の心眼には見える! 秘密の花園を守る、か弱い薄布の存在がっ!」
何やら中二的な事を言い出した都市伝説が、シャッターを切った瞬間、蓮華が脱げた。だが、それも想定のうち……否!
「そんな!?」
水着の下に、薄く面積の狭い下着が仕込まれていた。大事な所を隠した際どい白の下着が! 義姉の陰謀だった。
続発するカメラマン被害の中……特異点が1つ。
「わたくしだけ平気? どうして……」
首を傾げるセカイだが、心なしか腰周りの通気性がアップしているような。しかも胸もたゆんたゆんと、動き辛くなった様な……。
「まさか……きゃあ!」
そう。都市伝説の能力とセカイのとらぶる被害担当艦体質とが奇跡の相乗効果を生み、下着から脱げていく事態が起きていたのだ! しかも下は氷。まるで鏡のような……。
「み、見ないでくださいまし……」
皆の視線が、つい下に向き、うずくまるセカイ。
恐るべし、都市伝説……と、色々なアレ!
●冬の脱げ祭り!
「皆さんが脱げていきます……あ、こんなところになぜかカメラが!」
撮影機材を取り出し、桐香が構えた先は……いちご。
「シャッターチャンスいただきますわ!」
「えええ!?」
敵が増えた!
「だ、ダメですって!」
「ちょ、ちょっと、いちごさん?! そんなに急接近されたら回避できな……!」
止めようと迫るいちごの勢いに、桐香はかわす事もできずに……。
どすんと2人で転倒。でも桐香はほんのり嬉しそう。
「あ、いたた……大丈夫ですか?」
「大丈夫と言うか……胸揉むなら、もっと激しく……じゃなかった、人目のない所でお願いします?」
「そ、そんなつもりじゃっ!?」
自分の手が桐香の赤いブラをずらしているのに気付き、いちごが飛びのくけれど、今日は足場が素晴らしく悪い。そこにとらぶる力が加われば。
ちょうど後ろにいたのは、都市伝説を引き付けていたレイラ。今や大半の衣服を失い、下着姿で赤面状態。しかもフラッシュの魔力か、体が痺れて自由が利かない……!
「い、いちごさん!?」
支えを求めてわたわたするいちごにすがりつかれたレイラのショーツが、するり、降ろされた。そのまま尻もちをついた拍子に、ブラまではじけ飛ぶ。
「やっぱり皆さんの言ってた通りです!」
「すいませーん!」
あられもなく開脚ポーズを披露するレイラに、リンクの周りから歓声が。
「ぬおおおおおおおお! スケート最高ぉぉぉぉ!」
野太い声の大合唱。発生源は男性客の皆さん。
……お前らまだいたのか。しかもスケート一切関係ない。
「いけません、お帰りくださいまし」
セカイの殺気に追い払われ、再び無観客試合となった。
「ふう、これで一安心……って、いちごくん!? その手にかけてるのって、私のショーツ!?」
とかやってるうちに、由希奈がピンチになっていた!
案の定、足を滑らせたいちごの命綱は、由希奈の黒レースの大人下着。
……ずるり。
「!?」
ぼふっ。由希奈の顔が沸騰した。幸い、いちごの体が壁になり、他の人や都市伝説には何も見えてない。そう、『いちご以外の』人には。
「恥ずかしさで体が熱くて氷が冷たくないけど、嬉しくないっ!?」
なおも、カメラととらぶるが猛威を振るう。
気づけば後者の源は、セカイに顔を押し潰されている。
「すみません! ……ッ!? か、顔……動かさないで……!」
コートに隠され、どんな事態になっているのか全くわからないがなんか凄そうだ!
繰り広げられる恐るべき宴。鏡花は空飛ぶ箒に乗って、転倒被害をかわし続けていた。
「備えあればなんとやら、ね」
……かと思いきや、箒のお尻を、いちごがつかんでいた。つられて鏡花もバランスを崩して、すってんころりん。
そこに巻き込まれたのは、京香である。はたと気づけば、黒の派手な大人下着がいちごの目の前に。
「ちょっとまたー!? どういう事!?」
「ま、毎回毎回すみませんー?!」
「ちょ、顔を離してから喋りなさーい!」
悶える京香に吹き飛ばされた先には、蓮華の胸。
エアバッグよろしく受け止めたはいいけれど、ブラの下にいちごの顔が。ちょっと動くだけでも、敏感な蓮華にとっては、刺激が強すぎる。
いちごの密着具合に、焦ってひきはがした瞬間。
「んっ!?」
ぷつん、と千切れたブラが、宙を舞った。
「いいね!」
カメラマンが、ぐっ、と親指立てていた。
●俺達の戦いはこれからだ!(ただの事実)
「こほん、さ、都市伝説倒しますわよ!」
桐香の声で、皆が我に返った。
とらぶるの磁力か、みんなはすっかり一か所に集まって、何やらくんずほぐれつ。一番無事なのが都市伝説だなんて、こんなの絶対おかしいよ。
皆が次々とスレイヤーカードを解放すると、まとった防具が露出度をダウンさせた。都市伝説のテンションはダウンした。
「いや、こう考えるんだ、また脱がせる楽しみが出来たと」
「こっちに来ないで変態!」
セルフテンションアップした都市伝説に、京香がガトリングガンをぶっぱなした。
響く悲鳴。女子勢の可愛い悲鳴ではなく、都市伝説の汚い悲鳴である。
しかし、蓮華のサウンドシャッターのお陰で、外には聞こえない。しかも、殲術道具には、都市伝説お得意の脱がし技も効かないぞ。
「な、なんだって……」
「もう、ぐーでいいよね? 全力でいいよね?」
真顔の由希奈に、都市伝説の笑顔が凍り付いた。
鉄拳制裁!
「ぐはあっ!」
「えっちぃ都市伝説は撲滅です」
「ぶぎゃあっ!」
蓮華の鬼パンチが、だらしないボディをえぐる。鉄拳制裁に次ぐ鉄拳制裁。
セカイの二刀が、桐香の殺人技が、都市伝説の服と雑念を断ち切る。需要のないサービスカットが乱舞する。
みんなやアリカが攻撃している間、いちごは粛々と回復に努めていた。罪滅ぼし気味に。
「さあ、この変態都市伝説! 観念しなさい!」
レイラのアッパーが、変態に鼻血を噴き出させ、虚空に虹を描く。
「汚いものを見せないでくれるかしら。撃ち抜け、蒼雷っ! ――Blitz Urteils!」
鏡花のほとばしらせた雷がレンズを射抜き、カメラを粉砕。
「あ、相棒ーっ! カメラがなければ僕は何もできやしないのさ……」
フラフラと手を伸ばし近づいてくる都市伝説に、京香の背筋を怖気が走る。
「だからこっちくんなって……言ってるでしょうが!」
ざしゅっ。
京香が氷の足場を蹴って離れた直後、都市伝説は爆散した。見事に。
かくして、平穏は人々の手に戻った。だが、脱げた服は戻ってこない。このままでは防具を解除できない。
「いちごが悪さを出来ないようにするのが一番平和的解決な気がするのだけれど? それか粗相をしないようしつけてしっかりと手綱を握っていて欲しいものだわ」
さめざめと涙を流す蓮華を見て、言う鏡花。
羽織るものをセカイ達みんなに配る由希奈。いちごの時だけ小声になって、
「責任……取ってね?」
「そんなあ」
「はわぁ……ひどい目に遭いました……はくしゅんっ!」
ふるふる震えるレイラ。
「うぅ、体冷えちゃったし、帰りに銭湯にでもいきませんか?」
「いいわね……いえ、待って」
賛成しかけた鏡花の視線は、いちごへと注がれる。
「またとらぶるの予感がするわ」
「男女別なら大丈夫! ……なはずです! ……多分」
多分。
作者:七尾マサムネ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年1月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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