
●粗暴に狂う力と共に
大阪府の南港の辺り……すっかり空が暗闇に包まれた頃合い。
そこに響き渡るは、怒りの怒号……その怒号の声の主は、目に深い傷を負った羅刹のダークネス。
彼は周りに4人の配下を引き連れ……己へと因縁を付けてきたゴロツキ達を返り討ちにしていた。
……勿論ゴロツキ達は……最初は意気揚々と因縁をつけていたのだが、桁違いの力の前に……すっかり怯え上がって。
『た、たすけてくれよぉ……頼む、頼むからよぉ……』
「はぁ? ったくよぉ……俺に刃向かうだなんて巫山戯たヤツらだなぁ……あぁん?」
命乞いの言葉に対してを完全に吐き捨てる。そして……。
「……さて、んじゃ命をもって償って貰うぜぇ?」
ニヤリと笑う彼。そして彼は血に濡れた刀を振い…死へと導くのであった。
「どうやら……皆さん集まっていただけた様ですね? では、説明を始めます」
五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は、僅かな笑みをその表情に湛えながらも、説明を始める。
「今回皆さんに解決してきて頂きたい事件は、大阪府は南港に現われたダークネス、羅刹を倒してきて頂きたいのです」
「彼は血塗れの刀を持ち、その粗暴な性格の儘、その辺りに居たゴロツキやら、不良共を殺して回っている様なのです。彼をこのまま放置しておく訳にはいきません。そこで皆さんにはこのダークネスの退治をお願いしたいのです」
「無論ダークネスにはバベルの鎖の力による予知はあります。ですが私の指示に従って頂ければ、その予知をかいくぐり仕掛ける事が出来ます。その方法は……宵闇の刻、彼が刀を持って埠頭を歩いている所に奇襲を仕掛けるという事になります」
「とはいえダークネスの能力は油断なりません。皆さん決して慢心せずに、このダークネスを討伐して下さい」
続けて姫子は、ダークネス自身の能力を説明する。
「今回のダークネスの戦闘能力を説明しますね? 彼の攻撃手段は先ほども言った通り大きな刀です。その一閃から繰り出される攻撃力はかなりの高威力を誇ります」
「また彼の周りには、配下であるゴロツキ達がいます。このゴロツキ達の所持する武器は解体ナイフです。攻撃力はそこまで高くはありませんが……羅刹自身を守るのを優先して行う為、この盾を壊さない限り羅刹への攻撃は通りにくい事になります……そこは特にご注意下さいね」
そして最後に。
「私達には未来予測の優位はあるにせよ、ダークネス自身の戦闘能力は決して侮る事は出来ません。皆様なら大丈夫だとは想いますが……宜しくお願いしますね」
と言って、微笑み送り出すのであった。
| 参加者 | |
|---|---|
![]() 一橋・智巳(強き『魂』を求めし者・d01340) |
九曜・亜門(白夜の夢・d02806) |
![]() 月雲・彩歌(月閃・d02980) |
![]() 狗洞・転寝(風雷鬼・d04005) |
![]() 霧凪・玖韻(斬薙・d05318) |
![]() 六花・紫苑(アスターニックス・d05454) |
刀鳴・りりん(透徹ナル誅殺人形・d05507) |
高峰・緋月(天衣無縫の人見知りっ子・d09865) |
●埠頭の悪者
姫子の事件解決依頼を受けて、灼滅者達が向かうは大阪府の埠頭。
夕焼けに染まりつつある頃合い……空は紅く暮れゆく中。
「しかし、力に溺れて暴力の嵐とは、羅刹の名に恥じない行いだよねぇ、全く……」
「うむ、そうじゃな。強さに憑かれし者……その行いの行き着く先は何処なりや……という所じゃろうか」
狗洞・転寝(風雷鬼・d04005)に、九曜・亜門(白夜の夢・d02806)が溜息にも近い息を吐く。
今回、灼滅者達が相手にするダークネスは力を追い求める粗暴な性格を持った羅刹。
強い力をただただ追い求め、そして……延々と、強い者を求める。
そんな彼に刃向かうのは、この辺りで色々と悪行を尽しているゴロツキの者達。
でも一般人に対し、ダークネスの力は桁違いな訳で……次々と返り討ちに遭い、そして死する。
「配下もゴロツキなら、狩っているのもゴロツキ、と……妙なダークネス達だな。まぁ妙でも無いダークネスと言うのもみたことがないが、何か因縁でもあるのだろうか?」
「うーん……どうなんだろうねー?」
霧凪・玖韻(斬薙・d05318)に、六花・紫苑(アスターニックス・d05454)が小首を傾げる。
確かにゴロツキとダークネスの羅刹……性格的にはほとんど一緒なのかも知れないが、求める者は違うだろう。
いや……むしろ。
「ゴロツキ達は、ダークネスの実力に怯えて、手下になった……とは思えませんか?」
「……うん、その可能性は……充分、ありそうですね……」
月雲・彩歌(月閃・d02980)の呟きに、高峰・緋月(天衣無縫の人見知りっ子・d09865)も頷く。そしてそれに玖韻が。
「……まぁ、ゴロツキという単語も余り使わないしな。そもそも定義が判然としていない。どちらにせよ、ダークネスとなったら倒す他に無いだろう」
と目を閉じて告げると。
「そうだねー。ゴロツキたちに大人しくなってもらってー、羅刹をぷちっとつぶすー……倒すよー」
「相手も刀の使い手ならば、尚許せぬ。わっしの主義は悪即断。悪は切り捨てるのみじゃ」
紫苑に刀鳴・りりん(透徹ナル誅殺人形・d05507)が、愛用の日本刀を握りしめて告げると、彩歌と一橋・智巳(強き『魂』を求めし者・d01340)も。
「絶対に勝てる無用な戦いを繰り返し、それで悦に浸る……人として、おおよそ最低の部類でしょう。最早彼は、元に戻れない所まで落ちているようですし、ならば、その罪に見合ったしかるべき報いを受けて貰いましょう……」
「だな。最初に力で訴えたのは手前ェらだからよ、こっちも暴力でいかせてもらうぜ、文句はねぇよなァ!」
と声を上げる。
そして転寝と亜門が一通りの事を纏めるように。
「まぁダークネスの横暴を見逃す訳にはいかないよね?」
「うむ。色々な興味は尽きぬが、ここで仕舞いと致そう」
「そうだね……さぁ、行こうか」
と頷き合った。
そして灼滅者達は、その埠頭の一角……倉庫の影へと隠れる。
空が暗闇に包まれる頃になると……遠くの方から聞こえてくる音。
『ったくよ、もっと強ぇヤツはいねぇのかよ!! こんなんじゃ、欲求不満になっちまうぜ!?』
バキ、ボコという乱闘の音……その後に大声で言い放つ声。
視線を僅かに影から外し、その姿を視認すると……粗暴で頭に角のようなモノが見え隠れする男を発見。
「居たぜ?」
「うん……不意打ちで、行くんですよね?」
「ええ……今のうちに、体制を整えておきましょうか」
緋月に彩歌が頷き……そして。
「蔵王権現真言……オン、バキリュ、ソワカ」
「……この身は威を狩るものである……!」
転寝や亜門のスレイヤーカードの解除に、他の仲間達も合わせて解除。
総ての解除を終えると共に……待機。
「……」
緋月は、自分の髪をくるくる巻いたりして緊張をごまかしたりしつつ……そして羅刹がこちらに気づかずに、倉庫を過ぎていくのを待って。
「さて皆、手筈は良いかの?」
「ああ、いいぜ!」
りりんに智巳が頷いて……そして灼滅者達は不意を突いて、一斉に飛び出して、ダークネスの虚を突くのであった。
●力暴れ
「……おらぁ!!」
声と共に、突如仕掛ける灼滅者達……智巳の奇襲攻撃は、不意ながらも、周囲に配置されていたゴロツキ達がその攻撃を防御。
他の仲間達も、一撃を食らわせるが……それら総ての攻撃は、羅刹が周りに居るゴロツキ達が総てを受け止める。
「ちっ……邪魔なんだよ!!」
『はぁ? 何だてめぇらは!!』
智巳の声に、羅刹は威勢でもって怒号を放つ。
その怒号に対し、彩歌とりりんが。
「申し訳ありませんが、不意を打たせて頂きました。まぁこの不意打ちすら、部下を引き連れ力を誇示して回った貴方の行為ではかすみますがね」
「うむ、お主、人の命を無碍にしおって。そのような事は許せぬ。覚悟じゃ!!」
りりんはそのエメラルドグリーンの瞳がキラキラと煌めく。
そして、そんな言葉に対し、羅刹は。
『ほぅ、まぁ別にいいわ。てめぇらは少しは強そうだしなぁ。ま、俺の前でさっさとぶち殺してやるぜ!』
「へっ、言うだけ男になって、俺達を失望させんなよ?」
ニヤリと笑う智巳。
そしてすぐ、転寝と彩歌がライトを灯し、紫苑は。
「えーと、おれは回復中心に叩くから、みんな頑張ってねー」
と、後衛に位置して回復する体制を取る。
そして戦場に視界を戻すと、続けて竜骨斬りで斬りかかる。
それにりりん、緋月、更に亜門の霊犬、ハクが。
「まとめて切り咲くのじゃ!」
「……負けないわ……喰らって」
『ガルゥゥ!!』
月光衝、紅蓮斬、斬魔刀による連続攻撃。
取り巻くゴロツキ達は、主である羅刹に攻撃が行かない様、攻撃を総て受け止める。
また、彩歌と、転寝の霊犬、クロはディフェンダーポジションについて。
「いきますよ……最初に言っておきますが、私は貴方の命乞いを受け入れる気はありませんので、ご留意を」
「クロ、頼むね」
『ウゥ』
彩歌がシールドバッシュで怒りを引き付けつつ、クロが斬魔刀で攻撃。
前衛陣の攻撃に続けて、更に中衛、ジャマーの転寝と玖韻が動く。
「全く……力で脅かされたのか、力に酔いしれているのかは分からないけれど、不相応な力を持ったり望んだりしていると、人は不幸になるんだって。ね、羅刹くん?」
「……そうだな。そんな持たざる力を手にしたお前等に、恐怖を見せてやろう」
呼応するように、転寝がまずヴォルテックスでバッドステータス、服破りを付加しつつ、更に玖韻が影喰らいでのトラウマを、羅刹に向けて付与。
そして付与されたトラウマに……羅刹は苦しみの表情を浮かべる。
「……どうやら視えている様だな。『恐れ』の海に底は無い。恐怖の波に飲み込まれ、それでも存在し続ける事が出来るのか試してみると良い」
「……まぁそんな貴方の元の人格は破壊されて、もう無いんだろうけれど……でも、貴方の今の振る舞いは、宿主であった人の人生と、尊厳を咎める行為だよ。だから灼滅を以て貴方を解き放つ……せめて、それを取り戻す手助けをさせて貰うよ」
転寝、玖韻の言葉が羅刹へと掛けられる……羅刹自身は、その言葉に対して聞く耳を持っては居ない様ではあるけれど。
そして、亜門は。
「少し、眠っていて貰いたいものじゃが…………!」
と導眠符を放つ……が、羅刹はその符を回避。
……そして灼滅者達に対するダークネス達の攻撃。
解体ナイフを振りかざし、4人のゴロツキ達は前で立ち塞がる智巳、りりん、緋月、彩歌にそれぞれが攻撃。
更に羅刹自身も。
『殺してやるぁ!』
と威勢と共に、智巳に対して攻撃を加える。
それら攻撃を受けても。
「どうした、こんなモンかァ? 所詮手前ェらは群れてなきゃ何も出来ねぇザコにすぎねぇんだよ!!」
智巳は更に挑発する事を忘れない。
その挑発に……羅刹も、ゴロツキらも……頭に血の上りやすい彼らは睨みを利かせる。
次のターン……智巳に紫苑が即座に回復のヒーリングライトを使い、その体力を回復。
そして智巳は。
「オラオラァ、悔しかったらたった一人で向かってきやがれ!!」
挑発……だが、半分は本心が混じった怒声で挑発。
攻撃のターゲットを出来る限り集中させ、その攻撃を彩歌、クロがディフェンダーの庇うでダメージを軽減。
「んー、大丈夫ー? まぁおれに任せてくれよー」
また、紫苑のヒーリングライトに加え、亜門も防護符で適宜体力を回復し、重傷ダメージを負う前に対処していく。
……そうして、熾烈な攻防が続く事十ターン。
ゴロツキが一人、また一人、更に一人……と倒れ、最後に残る一体を。
「酔生夢死……強きに酔いて、白昼夢に死するのもまた、一興也……」
亜門の斬影刃がすっ、と最後のゴロツキを切り刻み……その身体を横たえさせる。
そして……羅刹の周りに居るゴロツキ達は全員倒れ、最後に残るは羅刹のみ。
『ちっ……ったく、足手まといらが。てめぇらなんてもういらねぇよ!!』
履き捨て、配下のゴロツキ達を足蹴にして、前に出る羅刹。
怒り、憤怒……それらの感情、一切合切をその表情に湛え、殺気も充ち満ちている。
しかしそんな羅刹に対し。
「月が綺麗ですねって、I Love youって訳すらしいがよぉ、俺の場合は I kill youって訳すんだぜぇ!! つーわけでやってやるぜェ!」
人を喰ったかの様な言葉で挑発する智巳。
そして彼が渾身の閃光百烈拳をその腹に叩き込む。
……しかしその一撃は、さほど彼には効いていない様である。
りりん、緋月も。
「喰らうのじゃ!!」
「……!!」
ティアーズリッパーと、ギルティクロスによる連携攻撃。
……とは言えやはり、それでもまだ余り効いている様には見えない。
「……予想以上に頑丈、か……まぁそれほど予想外という事も無いがな」
玖韻がそう履き捨てつつ、それに紫苑が。
「おれもいくぞー」
と咎人の大鎌をぶんっ、と振り回す……が。
「あいてっ、うー……初依頼なのにー」
振り回した遠心力の方が大きすぎて、転んでしまう紫苑……とは言えすぐにその気持ちを切り替えて、次のターンに再度狙う。
大きすぎるその一撃は、振り回したダメージで羅刹の体力を削る。
『ちっ……本当しゃらくせぇ!!』
怒号と共に、その攻撃を……前線の中で滅殺出来そうなハクに。
「……させません」
その攻撃を、静かに動き、ガードする彩歌。
受けたダメージを亜門が魂鎮めの風で回復。
そして……。
「……これで終わりにしてやる」
「わっしを狙ったのを、後悔させてやるのじゃ……滅びよ!!」
玖韻がリングスラッシャー射出で、りりんが日本刀で弧を描く様に居合い斬りを放ち、その身体に一閃を喰らわせる。
その一撃に、その身体が後方に向けてバタン、と倒れる戸。
「……行く、よ」
「ああ……!」
緋月の言葉に智巳が頷いて、雲櫂剣と鋼鉄拳を叩き込み……羅刹は凄まじい断末魔の叫び声を奏で……その身体は消え失せていくのであった。
●力遺した跡に
「……なんとか、なりましたね……きゃっ」
緋月はほっとして……今まで緊張していた糸がふっ、と切れるが如く、そのままぺたんとへたりこんでしまう。
「……大丈夫?」
「え、ええ……でも、ちょっと……腰、抜けちゃいました……」
「ふふ……仕方ないわね……」
緋月に微かに笑いながら、彼女の手を取って上げる。
そして……。
「しかし……彼は目に深い傷があったよね。それがもしかすると、闇落ちの理由に関係しているのかな? 許せない何かが、闇落ちするほどの怒りや、絶望をもたらした何かがあったのかもね?」
「ああ。怒りや絶望は、容易に闇へ落ちる切欠となるものだからな」
転寝に玖韻が肩を竦めると、更に転寝は。
「今となってはもう知る術は無いけれど、どうか安らぎの時を、清浄なる風がきっと魂を救ってくれるハズだから……」
と良いながら、空を仰ぎながら……風に祈りを向ける。
その祈りに合わせて亜門も。
「戦略、戦術もまた強さの証明であり、卑怯とは言うまい……しかしそなたも他の道を見つけておれば、ここで散る事もなかったろうに……来世では、違う形で出会いたいものじゃな」
と、静かに呟く。
……そして、すっかり辺りが静けさに包まれた所で。
「さて、悪は滅びた。退散するとするかの?」
「ああ、そんじゃ帰ろうぜ!」
りりんに智巳が頷いて、灼滅者達は帰路へと付くのであった。
| 作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
![]() 公開:2012年10月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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