暗殺武闘大会決戦~挑むべき戦い

    作者:カンナミユ

    「お前達のおかげで、第三次新宿防衛戦に無事勝利する事が出来た。よく頑張ってくれた、ありがとう」
     戦いが終わり、武蔵坂に戻って来た灼滅者達に結城・相馬(超真面目なエクスブレイン・dn0179)は感謝の言葉を伝えた。
    「戦いも終わった事だし、ゆっくり休んでほしいところだが……」
     そう言葉を続ける相馬だが、何故かその表情は少し厳しい。
     どうした事かと問えば、どうやら六六六人衆に不穏な動きがあるという情報を得たと言う。
    「サイキックアブソーバーの予知が行えない為、詳しい事は分からないが、暗殺武闘大会の予選を通過したダークネス達が、集結を始めているようだ」
     相馬によれば、ダークネスが集結している地域は15ヶ所という事までは判明している。
     ダークネス達がその場で殺し合いを始めるのか、ルールを設けて試合を始めるのか、或いは、全く別の作戦を遂行するのかは、現時点では判明していない。
    「現時点では判明していない。……が、何か良からぬ動きをするのは間違いない」
     資料を広げ、相馬は集結したダークネスの動きを偵察し、状況を確認後適切な対応を行えるように現場に向かって欲しいと灼滅者達へと話す。
    「場所は岐阜県の山頂にあるに城址だ。木々に囲まれた場所ではあるが、山頂は開けていて戦闘の妨げにはならないだろう」
     不気味がって誰も近づかないその場所に集結しているダークネスは5~8体程度。サイキックアブソーバーの予知がない為、正確な人数は分からないようだ。
    「集結しているダークネスは、それぞれが予選を勝ち抜いているつわものばかりだ。暗殺武闘大会が続いているならば、彼らは必ず戦い始める筈。状況を見て戦闘に介入するか、あるいは、勝敗が決定した後に勝ち残ったダークネスを灼滅するといった対応を取ってもらいたい」
     資料をめくる相馬はサイキックアブソーバーの予知が行えない事を再度口にし、
    「予知情報が無い為、現場での判断が重要となる。お前達皆で状況を確認して行動を決めるようにして欲しい。状況が状況だ。場合によっては、戦闘を仕掛けずに撤退する勇気も必要になるかもしれない。覚悟して挑んで欲しい」
     そう言い、灼滅者達へと視線を巡らせる。
    「今回の依頼は予知が行えない、何が起こるか分からないものだ。できれば無理はしないで欲しい」
     シャドウ大戦が終結したばかりで、疲れも癒えきらない灼滅者達へと向ける瞳は真摯そのもので。
     眼鏡に朱を映し、エクスブレインは言葉を続けた。
    「頼りになるのはお前達の目と、決断力になるだろう。頑張ってくれ」
     

     月翅・朔耶 (天狼の黒魔女・d00470)と泉・星流 (魔術師に星界の狂気を贈ろう・d03734)は箒から周辺を偵察していた。
     上空からの偵察を行おうとしていたのだが、それでは城址の中心に集まるダークネス達の目にとまってしまう可能性がある。なので木々の間を縫い、偵察を続けていた。
     ダークネス達が集まるこの城址は広い。そして、城があったであろう痕跡は全くない。本当に何もなく開けた場所で、戦うには十分すぎる。
    「争う様子はないみたいだね」
    「確かに。それに……何かを気にしているようだな」
     双眼鏡から見える屈強な男は幾度となく腕時計に目を向け、他のダークネス達も携帯電話を開いたり、腕時計を見たりしている。
     それは、動物に姿を変えた仲間達にも見えた。
    「そろそろだろ?」
    「ああ、間違いない。六六六人衆の原理主義的なハンドレッドナンバーは計画の邪魔になるからな」
     刀や銃、斧などの得物を構え、ダークネス達は言葉を交わす。
     そして――、
    「Good morning everyone」
     ふと聞こえる流暢な英語にダークネス達はハッとし、見れば、8人しかいなかったダークネスが9人いるではないか。
     高く結った金髪に碧眼、道着に袴、ブーツ姿の奇妙な男。しかも手には日本刀。はたから見れば、サムライ気取りの外国人にしか見えない。
     だが、この男はただの男ではない。
    「復活したぞ!」
     斧を持った男は叫ぶが、
    「good night」
     次の瞬間、男の体は恐ろしい速さで真っ二つに裂けた。
    「弱イ! 弱すぎる! you達のようなDarknessは何人タバになろうとも、このNo.62、ヒトキリザムライ・ケンゴーには及ばんでゴザルよ!」
     ざん!
     光を受けた刃が閃くと屈強な男の頭が飛び、
     ずどん!
     懐から素早く取り出す銃から放たれた弾丸は、身軽に動く青年の頭を吹き飛ばした。
     動物となり偵察していた灼滅者達は巻き込まれないように安全な場所へと下がる。
    「強すぎます。あの侍、恐らくハンドレッドナンバーに違いありません。それも中位から上位の」
     緑風・玲那 (忌血に染めし朱翼・d17507)はぽつりと口にする。
    「このまま戦闘を最後まで行わせて、勝ち残った側が消耗しているうちに撃破すればいいんじゃないっすかね」
    「暗殺武闘大会の目的が、ハンドレッドナンバーを暗殺する事であるというのならば、その目的を邪魔するのがいいんじゃないかな?」
     ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)にロードゼンヘンド・クロイツナヘッシュ(華散し・d36355)は言い、
    「あのハンドレッドナンバーは危険すぎます。彼が勝ち残った場合、私達の力で対処は難しいでしょう。であれば、今戦っている彼らに助力して、ハンドレッドナンバーを撃破するのはどうでしょう。その後の事はその後に考えればいいですし」
    「いや、下手に戦闘に介入すれば、敵が一時協力して僕達を先に攻撃してくる可能性がある」
    「確かにそうだね。もし加勢するなら、そうならないような方法を考えないといけないだろうし、加勢せずに消耗を待つか……」
     考え口にする水瀬・ゆま(大学生エクソシスト・d09774)に言うムウ・ヴェステンボルク(闇夜の銀閃・d07627)にヴォルフ・ヴァルト(花守の狼・d01952)は頷き思案を巡らせる。
    「hey! ムジヒな刃のサビとなるがいい!」
     灼滅者達がやり取りをする間にも、無慈悲な刃を振るう序列62位のハンドレッドナンバーは暗殺武闘大会を勝ち抜いたダークネス達の攻撃をいとも簡単に捌き、払い、そして――3体目を倒すのだった。


    参加者
    月翅・朔耶(天狼の黒魔女・d00470)
    ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)
    ヴォルフ・ヴァルト(花守の狼・d01952)
    泉・星流(魔術師に星界の狂気を贈ろう・d03734)
    ムウ・ヴェステンボルク(闇夜の銀閃・d07627)
    水瀬・ゆま(蒼空の鎮魂歌・d09774)
    緑風・玲那(忌血に染めし朱翼・d17507)

    ■リプレイ


    「hey! ムジヒな刃のツユとなるがいい!」
     高く結った金髪に碧眼、道着に袴、ブーツ姿の奇妙な男の声が響き、無慈悲な一撃で男はあっけなく倒されてしまった。
     日本刀を手にする男はサムライ気取りの外国人にしか見えないが、この男、ただの男ではない。
     序列62位――ヒトキリザムライ・ケンゴー。
    「強すぎる!」
    「これがハンドレッドナンバー……」
     言葉を交わすダークネス達をギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)は見つめ、仲間達の元へと戻る。
     集まっていた灼滅者達は巻き込まれぬ場所で合流し、その戦いへの介入をどうするかを話し合い、結論を出した。
     心配する緑風・玲那(忌血に染めし朱翼・d17507)の瞳に気付いたのだろう。水瀬・ゆま(蒼空の鎮魂歌・d09774)は優しい笑みを向け、仲間達と共に駆ける。
    「誰だ!」
     突然現れた乱入者にダークネスは声を上げるが、現れた若者達が何者かを悟ったようだ。
    「去れ」
    「お前達と戦う暇はない」
     槍や斧を構えるダークネス達は身構えたまま目もくれず言う。だが、去る訳にはいかない。
    「あの侍は危険すぎる」
     ここで倒さなければ。ムウ・ヴェステンボルク(闇夜の銀閃・d07627)は言い、
    「利害が一致している時は手を組むべきと思わないかい?」
     ロードゼンヘンド・クロイツナヘッシュ(愛夢・d36355)の言葉が続く。
    「手を組む、だと?」
     ナイフを構える男が眉を寄せ怪訝そうに灼滅者達へと視線を向けると泉・星流(魔術師に星界の狂気を贈ろう・d03734)は歩み出る。
    「……アンタ等だけでアイツを倒すのは無理と僕は思う……それに……」
     言葉を止め、ちらりと視線を向ければ、突然の乱入者に何事かと首を傾げるサムライが刀を構えていた。
    「向こうも組んで僕等を倒そうとは思わないだろうし」
     相手はハンドレッドナンバーだ。星流が言うように手を組む気もないだろう。
    「あの侍男が六六六人衆上位とあれば、此方も黙って下がれない」
    「ケンゴー掃討後は、この場にいる残りの生存してるダークネスを見逃す。それでどうだ?」
     ヴォルフ・ヴァルト(花守の狼・d01952)と月翅・朔耶(天狼の黒魔女・d00470)からの提案に5人のダークネス達は瞳を交わす。
    「手を組むか、組まないか、か」
    「どうする?」
    「…………」
     灼滅者とダークネスの間に静寂が訪れ、ひゅっと一陣の風が吹き、そして――。
    「hey guy」
     どずり。
    「bodyがお留守でゴザルよ?」
     ナイフを握る男の腹から刃が生えた。
     

    「が……っ……!」
     ざ、んっ!
     腹を貫く刃は横に薙ぎ、さらに一閃が走る。
    「yeah!」
    「侍になら草履をはけ草履を」
     いとも簡単にダークネスを切り伏せる姿を前に、ロードゼンヘンドはぽつりと口にし英語とカタカナが混ざる言葉に苦言しそうになるも、そんな暇はない。
    「残りハ……one、two……」
    「ばんはっす、Monsieur 62(ソワサント・ドゥ)」
     指さし残りを数えるケンゴーへとギィは言う。
    「あんたは生かしておくとやばいっすからね。そちらのお兄さん方と手を組んで、始末させてもらうっす」
     解除コードを口にし無敵斬艦刀『剥守割砕』を構える様子にケンゴーは不思議に思ったようだ。
    「you達ハ何者でゴザル?」
    「私達は灼滅者」
    「敵が序列二桁であろうと関係ありません。災いをもたらす者を、許さない。それだけ」
     ウイングキャット・イージアを伴う玲那に並び、緩やかな風に髪を揺らすゆまも言う。
     そう、序列など関係ない。人々の害となり災いとなる存在を許す訳にはいかないのだ。
    「スレイヤー……? oh アノ出来損ないノ!」
     灼滅者という言葉にようやくその存在を思い出したようだ。ぽんと手を打ち、オーバーリアクションのケンゴーだが、乱入してきた若者達へ向けられる碧眼は細まり眉が寄る。
    「出来損ないノ、スレイヤーが何の用ダ?」
     明るさが一瞬で消え、低く鋭い声が灼滅者達へと向けられた。
    「お前を倒す」
     霊犬・リキを連れた朔耶の言葉を耳に頷きヴォルフは得物を構えると、星流もまた身構える。
    「手を組んだ方が得策だと思うよ……」
     4人目を倒され、ダークネス達から星流への応えはない。勝手にしろとでも言うように。
     ハンドレッドナンバーと対峙するのは4人のダークネスと8人の灼滅者達。
    「Let’s rock!」
    「出来損ないドモは、ここで全員処分するでゴザルよ!」
     スレイヤーカードを突きつけられたヒトキリザムライはムウを、そして対峙する者達をにらみ声を上げると、隙一つ見せぬ構えを取った。
    「いざ、尋常に勝負ナリ!」
     

    「くっ……!」
     放たれるどす黒い殺気からのダメージに目を細めるギィだが、剥守割砕をぎりっと握ると地を蹴った。
    「いくっすよ!」
     黒いサイキックと共に放たれる一撃。地に手をつきケンゴーはそれをかわすとヴォルフのサイキックをひょいと避け、朔耶が放つレイザースラストをもがつんと蹴り払う。
    「支援を」
     短い指示にリキが頷き動くのを確認する中、ゆまのクルセイドソードが閃いた。
     ぎいん!
    「Wow!」
     刃が打ち合い火花が散り、玲那は意識を集中させる。
    「ここが私の――」
     癒しの矢が放たれイージアも動き、星流のマジックミサイルが弾かれるのを横目に癒しの矢を受けたロードゼンヘンドが制約の弾丸を放つと、ムウも動く。
     ぎりっと握り、ずぶん音を立て振り上げるムウの無敵斬艦刀。だが、その上をケンゴーは軽々と飛び越えた。
    「なに?!」
    「あの侍は殺す!」
    「ワレはサイキョーのヒトキリザムライなり!」
     4人のダークネスはとびかかるが、それをケンゴーはいとも簡単に捌き、払い、
    「いくでゴザル! ヒトキリ流、一閃!!」
    「リキ!」
     ムウを切り裂く筈の刃を霊犬が割り入り受け止めたが、やはり、その一撃は重かった。
    「まだまだいくっすよ」
     素早い動きを追いつつ放つ、ギィの黒いレーヴァンテインは道着を焦がすと得物を手にヴォルフは駆け、続く朔耶の弾丸が腕を捉えた。
    「手強い相手です」
     クルセイドスラッシュが弾かれゆまは口にする。
     攻撃は捌かれ、命中したとしても大したダメージを与えていないようだった。
     仲間を支援すべく玲那はラビリンスアーマーを展開し、星流はケンゴーの背後へと回り死角をつこうとするが――、
    「背後ネライは難易度hardでゴザルよ?」
    「なら、これはどうかな」
     にっと笑い黙示録砲を防ぎきるケンゴーの頬にロードゼンヘンドの刃が紅線を引き、煌めくムウの蹴りががつん正面を捉え打つ。
    「さすがハンドレッドナンバーだな」
     正面からの直撃だというのに手ごたえを全く感じられない。にい、と不敵に笑うサムライはばっと跳ね、
    「痛くも痒くもないネ!」
     ダークネス達の攻撃をものともしない。
    「Hey, look!」
     余裕のハンドレッドナンバーは懐からぬうっと銃を取り出すと勢いよく前衛へと放たれた。
     直撃だけはかろうじて免れたものの、それでも無視できるものではない。
     隙を見て回復を図ろうとギィは考えるが、どれだけ傷を癒せるか。
    「ともかくハンドレッドナンバーは、倒せるときに倒すっすよ」
    「そうだね」
     ヴォルフは頷くと、相棒と共にケンゴーへと攻撃を向けた。
     
     戦いは続く。
    「ミスター宍戸について何か知らないか」
     封縛糸を放ちながら朔耶は問う。
     もちろん回答など期待していないし、妨害の為にかけた声だ。
    「Mr.?」
     その声に首を傾げるケンゴー。
     ひゅるんと動く鋼糸に捕らわれるもケンゴーは気にしなかった。余裕のハンドレッドナンバーを前に朔耶はちらりと視線を落とすが、共に戦った霊犬はもういない。
     リキもイージアも仲間達を庇う為に行動し、力尽きた。
     4人残っていたダークネスも2人に減っている。
    「弱いDarknessに、弱いスレイヤー。サテ、どちらを先に処分するでゴザルかね」
     ヒトキリザムライは灼滅者へと攻撃し、ダークネスへと攻撃し。
    「大丈夫ですか、水瀬先輩?」
    「ありがとうございます」
     仲間を庇い戦うゆまを玲那が癒す。
     更に戦いは激しさを増す。
     ダークネスをいとも簡単に葬り去るハンドレッドナンバーだが、なかなか倒れない相手に飽きてきたようだ。
    「出来損ないとしてハ、しぶといネ」
    「……褒め言葉かとして受け取っておくよ」
     本当に何もなく開けた、戦うには十分すぎるこの場所の、逃げるには遠すぎる木々をちらりと見やり、星流は言う。
    「Oh!」
     ふと、ケンゴーに生じる一瞬の隙を灼滅者達は見逃さなかった。
    「朔耶」
     距離を縮め斬りかかるヴォルフに朔耶は無言で頷き、放つ制約の弾丸はケンゴーの腕を貫いた。
    「Goddam!」
     痛みに吐き捨てるケンゴーの目前に迫るゆまの拳は胴を打ち、玲那が回復に徹し、星流が動く。
    「生意気ナ……出来損ないノ分際デ!!」
     星流のサイキックによろめくケンゴーは死角に回るロードゼンヘンドの刃を、ムウの拳をも立て続けに受けた。
    「今がチャンスだ!」
     生き残るダークネスは好機を逃すまいと攻撃を仕掛けるが、刃がそれを許さない。
    「殺ス! 出来損ないメ!!」
    「駄目ですっ!」
     朔耶とムウに向く攻撃にゆまは動くが、全てを庇いきれなかった。
    「ヒトキリ流、トクと味わエ!!」
     ざ、ばん!
    「……ぐ、っ!」
    「ムウさん!」
     無慈悲な刃はゆまをすり抜け、追い打ちをかけるようにムウへと吸い込まれていった。ざぐりと斬るその一撃で限界を迎えたムウの体はどざりと崩れ落ちる。
    「まずハ、ひとり」
    「容赦ないっすね」
     紅蓮斬を繰り出し、多少は回復できたギィ。だがこの先、どれほど攻撃の手を加える事が出来るのだろうか?
    「奴を倒さないと……」
    「後がない」
     朔耶とヴォルフは言葉を交わし攻撃に動くが、長くは続かなかった。
     戦況を見ながら行動しサイキックを放つ朔耶は無慈悲な刃によって崩れ落ち、容赦なくダメージを与えようとする、一瞬を狙われヴォルフも戦闘不能に陥った。
     玲那の回復だけでは間に合わなくなってくるし、できるだけ攻撃を引き受けようとしていたゆまにも限界が近かった。
     足掻かねば。
     最悪の選択をする前に、最後まで、足掻かねば。
    「水瀬先輩!」
    「……大丈夫です」
     前衛を潰そうとする無慈悲な攻撃を庇い続け、攻撃の手も回復に切り替わる。
    「仲間を守リ戦う、美しい姿でゴザルな」
     庇い続ける姿にケンゴーは何かを感じたのだろう。だが。
    「だが、その美しさ、邪魔でゴザル!!」
     ゆまは最後まで足掻いた。
    「先輩!!」
    「ごめん……なさ、い……」
     最後まで守り切れない事への謝罪を口に、ゆまの意識は遠のいていく。
     足掻き続けた先輩が戦闘に巻き込まれぬ様、玲那は星流がゴッドブレイカーを構え、ロードゼンヘンドが斬りかかる姿を視界に入れ戦闘不能に陥った仲間の元へ運び、そして再び仲間達の傷を癒した。
     ハンドレッドナンバーの一撃は重く、既に4人の仲間達が倒れている。
     これ以上は。
     これ以上、誰一人として膝を折る訳には。
    「お前も死ネ!」
     銃でダークネスの攻撃を弾くヒトキリザムライはずるりと刃を構え、地を蹴った。
     目前に、迫る。
    「そう簡単にはやられないっすよ!」
     が、ぎん!
    「ギィ!」
     打ち合う刃の音が響き、ロードゼンヘンドは得物を構えたまま声を上げた。
     つと血が流れ、服を濡らし。
    「……ここまで、っす……か……」
     地に剥守割砕が落ち、そしてギィの体もまた、落ちた。
     ちらりと見れば、ケンゴーへと攻撃を向けるダークネスの命にも限界が近いと灼滅者達は感じ、それでも攻撃をつづけ――。
     

    「出来損ないドモめ……、よく、ここまデ……」
     遂に最後のダークネスを倒し、ケンゴーはぶんと血を払う。
     鮮やかな金髪が鮮血に染まり、頬を伝って流れ落ちた。荒い息を吐くケンゴーは、ぐいと血を拭う。
     その姿に星流はごくりと息を飲みこんだ。
     ダークネス4人と灼滅者8人との闘いでハンドレッドナンバーはそれなりのダメージを受けているようだ。回復を図るが、それでも血の流れは止まらない。
     血を流し、それでも構えをケンゴーは解かない。まだ戦う意思があるようだ。
     半数以上の仲間が倒れた今、この3名で勝てる見込みなどあるはずもない。
    「殿は私が務めます」
     決断は早かった。ポジションを変える玲那の声にロードゼンヘンドは仲間を抱え上げる。
    「逃げるカ!」
    「追わせないよ……」
     星流が撤退支援に動くが、ハンドレッドナンバーはものともしない。
    「出来損ないハ、ここデ処分する!!」
     低く地を駆けるダークネスは仲間を抱えるロードゼンヘンドへと迫る。
    「死ネ、スレイヤー!」
    「させません!」
     飛び出し一撃は防いだが、勢いづく二撃を防ぐのは不可能だ。
     まずい、まともに受けては。
     瞬間、様々な人の顔が脳裏に浮かび消え――、
    「皆、ごめん」
     ポケットからそれを解放すると、戦いで汚れた法衣が形を変える。
    「Darn it!」
     その姿にケンゴーは低く唸った。
     攻撃を防がれ、返される一撃は想像以上だったのだろう。ばっと血が散り、はずみで刀が手からするりと落ちる。
     それはハンドレッドナンバーから零れ落ちた、灼滅者達にとっての微かな光。
    「が、ッ……! おのレ、スレイヤー!!」
     微かなそれを星流は見逃さなかった。
     足を狙い、放つサイキックにケンゴーは声を上げると抱える仲間をそっとおろし、ロードゼンヘンドも続く。
     逃してはならない、微かな光を。
    「出来損ないノくせに……!!」
     肩口を裂かれ、だらりと腕を下げケンゴーは声を上げる。
    「その出来損ないに倒されるなんてね……」
     形勢は覆る。
     狙い定める星流の攻撃はハンドレッドナンバーの動きを鈍らせ、ロードゼンヘンドはその一瞬を逃さなかった。
    「くそっ、死ね!!」
     ざ、ん!!
    「ア……ぐ、っ……!」
     白き剣は狙いを定め、閃くと、防ごうとする銃を、腕を、そして半身を切り裂いた。
    「……、…………」
     血にまみれ、がくりと膝をつくケンゴーも、ここまでのようだ。
     
     どざりと前のめりに倒れ、序列62位を持つハンドレッドナンバーは、消えた。
     そして――、
     8人の灼滅者のうち、一人もまた、消えた。

    作者:カンナミユ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:緑風・玲那(アルトヴァーミリオンフェザー・d17507) 
    種類:
    公開:2017年2月13日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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