放課後――。
すっかり冷えた靴をゲタ箱から取り出し、マフラーに首を埋めて歩き出したあなたは、校門で敬礼して待つ日下部・ノビル(三下エクスブレイン・dn0220)に目を丸くした。
「ノビ……」
「姉御! 姉御はバレンタインデーの準備は滞りなく進んでいるんスか!」
「ちょ、ちょっ……大きい声で言わない!」
むぐっ。
慌ててその口を押えたものの、ノビルの気合に満ちた翠瞳は凛然たる儘、
「自分はむぐ、そんなドキドキもじもじした姉御の為にモゴ、ハートを刻むチョコレートを用意したんスむん!」
「ハートを刻む……?」
小首を傾げる灼滅者に対し、スッとチョコレートの塊を差し出す。
四角く、贈答用にしてはシンプル過ぎる造形に目が留まれば、ノビルはプハッと口を開いて説明し始め、
「これはただのチョコの塊なんスけど、これを削って、自分の好きな形にするんス! ハート型に削って文字を彫るも良し、立体彫刻に挑戦して愛を表現するも良し! 創作と芸術、愛の結晶になるんス!」
自作のプリントを渡せば、視線は自ずとそちらへ……。
「場所は雰囲気を重視して学園の美術室で、チョコの大きさは手のひらサイズから両手に抱えて余りあるくらいまで、自由に選べるんスよ!」
「……私にできるかしら?」
「心配無用ッス!」
ぷくく、とノビルが不敵な笑みを象って指を差せば、その示す先に馴染みの友の顔が見える。
「恋のキューピッドたる兄貴にも手伝って貰うんで!」
「……!」
余計な事を――と思ったのは置いといて。
「恋バナに花を咲かせながら作業を愉しむのも良いと思って。男女を問わず集まって、バレンタインデー当日までのくすぐったい雰囲気を味わうんスよ!」
成程。それも確かに良いかもしれない――。
「じゃあ、皆に勇気を分けて貰うつもりで参加するわ」
「決まりッスね!」
ノビルは首肯を受け取ると、早速その手を取り、
「じゃあ、学園に戻るッス! 早く早く!」
あなたは、再びゲタ箱から内履きを取り出すのだった――。
●
――放課後。
授業を終えた日下部・ノビル(三下エクスブレイン・dn0220)が真っ先に向かうは、外履きが待つ昇降口ではなく、美術室の巨大保管庫。
「バレンタインデー当日まで、兄貴と姉御の想いは自分が守ってみせるッス!」
吐く息が白いのは、そこに蔵置するチョコレートの品質を保つ為に冷房を効かせているからで、鋭意制作中のものから、既に完成を迎えたものまで、大小様々な作品が並んでいる。
忽ち曇る丸眼鏡を額に、その思い思いの形を眺めていた彼は、
「チョコレートって溶かして固めるってイメージだったので、削り出しとか斬新です!」
「ぷくく……陽桜の姉御の驚く顔、見たかったんス!」
傍らで素材を選ぶ羽柴・陽桜(ねがいうた・d01490)に野心家の笑みを注ぎつつ、道具の準備を始めた。
「これなんて、すごく大きな……」
「まるでモノリスっすよね」
丸い藍瞳と翠瞳が巨塊を見上げた、その時。
「頼んでいたものは届きましたか」
「あっ、銀静の兄貴! ちょうど良かったッス!」
冽風を連れて現れたのは、皇・銀静(陰月・d03673)。
彼はノビルが運び出す巨大な黒塊――成人男性が優に入るサイズのチョコレートを受け取ると、片手に鑿、片手に槌を構えて暫し黙し、
「……」
次の瞬間、そこに造形を見出した腕が鬼神を降ろして削り始めた。
「凄まじい気迫ね……まるで彫刻家……」
槇南・マキノ(仏像・dn0245)が削り節ならぬ削りチョコを集めていると、聴き慣れた声――【武蔵坂軽音部】の面々が顔を覗かせ、
「お、もう始まってんのか」
「ちょこのええ香りがしますなぁ」
扉の上枠に手を掛けた万事・錠(ハートロッカー・d01615)が微笑を注ぐと同時、羽二重・まり花(恋待ち夜雀・d33326)が割烹着を広げつつ入ってくる。
「ナノナノさま、作りに、来た」
「ノビルとマキノも暇なら手伝えや」
続く白星・夜奈(星探すヂェーヴァチカ・d25044)は、躯を曲げて入る錠の長身をやや恨めしげに、一・葉(デッドロック・d02409)は長い脚で相棒の背を小突きつつ。
馴染みの面子の毎度の光景に、マキノとノビルは昂揚を隠さぬ儘、
「ナノナノさま……素敵ね! 力を合わせて作りましょう」
「自分も全力でお手伝いするッス!」
と、声を合わせた。
作業用エプロンを装着し、手の消毒を済ませた彼等が材料と道具の選び出しを始めた頃、制作中の板チョコを手に作業卓に向かうは、蜂・敬厳(エンジェルフレア・d03965)。
「魔女の帽子と箒、それから大きさの異なる星の一つは彫れましたが」
素人腕と謙遜する彼は、昨日から時間を掛けて、慎重かつ丁寧な彫り込み。
頭の中に描いたイメージに少しでも近付けるよう懸命に手指を動かす――その姿は何とも微笑ましい。
そんなゴリゴリとかガリガリとかギュギュギュギュイィーンなどという音が響く美術室に、ひょっこりと細身を覗かせたのは、日下部・優奈(フロストレヴェナント・d36320)。
「面白そうだな……見学のつもりだったが私も参加していいだろうか?」
「優奈の姉御!」
「勿論よ。先ずはチョコを選んでね」
グイグイと手を引かれた彼女は、忽ち氷室へと運ばれて眼鏡を曇らせつつ……、柔らかい色合いのミルクチョコレートの前で足を留めた。
●
制作は順調。
広い美術室で各々が思いの丈を削る彫る――その真剣が心地よい。
「絵柄の隙間は唐草模様やエングレービングのような、細かな装飾で埋めていきましょう」
残る二つ星を彫り終えた敬厳の、次なる作業もまた繊細で、白磁の指を添えた彫刻刀は、ハガキ大の板チョコにそっとフォルムを描き出し、その仕草は淡い想いを一つずつ刻み込むよう。
「三角帽子の模様まで……凄く綺麗だわ」
「僕が想いを寄せる女性は、こう一言では表せないくらい素敵な方なんです」
綻ぶ佳顔に、ほろと香る恋心。
(「……贈られる方の喜ぶ顔が浮かぶわ」)
彼の純真に触れたマキノもまた、つられて笑みを零していた。
そんな和やかな空気が漂う一方、凄然が満つ所もあって、
「削る削る削る削る……削る削る削る削る……」
時に銀静は降魔の形相で鑿を閃かせ、一撃一打に渾身の想いを削り出している。
「大作の予感がしますっ」
「壮大な情念を感じるッス……!」
ごくり。
思わず嚥下を重ねるギャラリー二名。
蓋し彼等もまた製作者の一員で、
「チョコ塊を目の前にすると敵って感じしますけどっ」
卓上に佇む黒塊に相対した陽桜は、彫刻刀を握り込めてやや緊張気味。
手慣らしに――先ずは彫りやすそうな平面体を選んだ彼女は、隣で鑿を入れる少年を観察しつつ、
「ノビルさんはどんな風にするのですー?」
「……ふっふっふ」
よくぞ聞いてくれた、と言わんばかり輝いた瞳は、真黒き立体に夢を映して言った。
「自分はもう『最強の兄貴』を彫るって決めてるんス!」
ガッ、ガッとぶっつけで作業に入るエクスブレインに予知が働いているかは不明だが、ライバルの気勢と熱意に触発された少女もまた、立体へと手を伸ばしてキリリッ!
「あたしも気合で彫りますっ!」
アート勝負の行方は……二時間後のお楽しみ。
「しかし、ううむ、なにを作ろうか……」
見学の筈が急遽、制作に誘われた優奈は、暫し思案を巡らせている様子。
己が頭部程度の立方体を選んだ彼女は、置物サイズならイメージも湧きやすいと思ったのだが、モチーフ探しに苦戦しているようで、
「優奈の姉御、削りながら形を見出すのもアリっすよ!」
「……そう、か」
日下部同盟のアドバイスに従い、心の赴く儘に作業を進めてみる。
気付けば、彼女は『病院』の主任の御姿を映しており、
「それにしても、自分で作ったものながらお美しい姿……はああ主任……えへへ」
「姉御?」
凛々しい青瞳がふんわり蕩ける、可愛らしい表情を見せてしまっていた。
さて、愛の化身――ナノナノ様のチョコレート像に取り掛かる軽音部のメンバーは、製作総指揮を担う葉の前に数多の彫刻鑿を揃えていたのだが、
「――諸君、ここで重大な問題が発生した」
「重大な……問題……?」
俯き加減に眼鏡を押し上げる監督の低音に、作業員マキノが緊張を走らせる。
「この中でナノナノさまに会ったことある人、手ぇあげてー」
「……ないわ」
「ヤナは、ない」
「うちもありまへんなぁ」
「さすがナノナノさま伝説なだけはあるな」
一向に挙手を見ぬ中、自ずと視線を集めた錠もまた細顎に指を添えつつ、
「俺も実際に観たことねェから、設計自体はノープランだけど……」
伝説の存在・ナノナノさまを降臨させるに道は厳しいか――という時、硝子を隔てた灰の瞳が、「自分もッス」と重ねようとした少年の発声を遮った。
「よし、お前の全能計算域とイマジネーションの限界に挑む時だノビル」
「えっ」
「ナノナノさまの予想図描いて」
「ま、丸投げッスか!?」
このエクスブレインは、グラビアを見る時の想像力だけは確かだが、アブソーバーを介さねば只の三下。
然し絵を描く才はあるようで、
「こ……こう、ッスか?」
「あ、瞳はもっと優しめ」
若干の、些かの、多少の指導を受けて立方体にアタリをつければ、いざ、作業開始!
「とりあえず、チェーンソーでザックリ、いってみる?」
真顔で呟いた夜奈の佳声は、きゅいーんと高速回転した鋸刃の音と混じって本気か冗談か分からない(たぶん半々)。
唯、一切の妥協や手抜きの許されぬ空気は確実にあって、
「ヘンな形にしたら、ヨウがうるさそう」
「手ぇ抜いたら葉はんに怒られてまいそうやさかい、丁寧に作らんとなぁ」
「あいつ、ヤケに熱くなってっからな」
まり花といい錠といい、絶妙なバランスと黄金比に成り立つ愛しさと可愛らしさを表現するに、労を惜しまぬ気概。
「ナノナノさまの慈悲の心を表すには、目周りが大事だな」
持ち前の職人気質を呼び起こしたか、作業に取り掛かった錠は力強さと細やかさを併せ持つ腕で面を削り、カービング用ナイフを駆使して羽の一本一本まで丁寧に彫り上げる……ガチの集中力。
「せやけど、ちょこを削るのって思うたより難しいなぁ……」
初めての作業なのは勿論、意外な硬さに苦労するまり花は吐息をひとつ、
「少しずつ削らんとなぁ……りんず、爪でここ、深く削ってくれへん?」
「にゃにゃン」
魂を分つ愛猫と協力しての削り出し。
「ジェードゥシカ、そのまま力入れたら、われちゃうから」
そっとね、と声を添える夜奈は、ややぎこちない手つきの祖父に手加減を要求しつつ、削り出たチョコレートをつまんで、お裾分け。
「ん、これおいしいよ」
「夜奈はん、それ、うちにくれはるん?」
「口、あけて」
「おおきになぁ、ほな……」
あーん。
「マキノも」
「えぇ、頂くわ」
食べやすそうな欠片をそっと、あーん。
「……本当、美味しい」
咥内に広がる程好い甘さと、鼻腔を潜る馨香は言い様もない。
何より友より受け取った事が嬉しかろう、頬に手を宛てて美味を味わった法悦の隣には、土台を削っていた錠が屈託無い笑みを湛えており、
「……あげない、こともない、けど」
流れで彼の口に甘味を運びそうになった夜奈は、プイッと指先を引っ込めるも、たま~にお裾分けしてあげるあたり、彼女らしい。そんな彼女に錠は尚の事ほっこりするのだが……チェーンソーがある間は言わないで正解。
小さな癒しを和紙に集めたまり花は、脚立に昇る葉らにも声を掛け、
「あんさんらも、降りてきて休憩せぇへんか? ちょこ、おいしいで」
ブレイクタイムを誘う気配り屋さんは、三下も労う優しいお姉さん。
「ノビルはんも。お口、お開け」
「あーんッス!」
親鳥から命の糧を得る雛鳥の如く甘味に与った少年は、もう少し頑張れそうだと、漸う姿を現し始めるナノナノさまを仰いだ。
●
部活動を終えた生徒達が移動を慌しくする頃――美術室に注ぐ斜陽は、チョコレート像の影を長くして完成を伝えていた。
「……終わりました」
「うおおっ」
銀静が削り出した像は、凄まじいにも程がある。
「なんてオーラかしら……!」
拳を握りしめ、悪鬼羅刹の如き相形を見せる『憤怒』の像を中央に、左は悲哀に満ちた表情で涙を流し崩れ落つ『絶望』、右は溺れているかのような苦渋に顔を歪めつつ、天に手を伸ばしつつ救済を乞う……その涕涙は『渇望』。
三人の男は全て板チョコの台に繫がっており、一連の大作である事が理解る。
「涙は全て赤色のチョコレートを使用しています」
「こわいッス!」
精巧すぎる像にノビルが慄く傍ら、マキノは彼が作った別の作品を見遣り、
「あら、でもこちらは……」
そっと抱きしめたくなるような、可愛らしくも何処か安らぎを与えるような、小さな小さな儚さを持った仔猫に、胸が締められる。
「想いを削るならそれは……」
銀静の呟きは、不意に窓へと投げられた視線に隠された。
クオリティの高さを見せたのは優奈も同じか、
「着色すれば、主任のお姿は更にお美しい……」
手癖恐るべし。
色彩を得た像はリアリティに溢れ、忠実に再現された主任像に思わず溜息が出る。
「姉御、デレてるッス」(こっそり)
「……ゴホン、恥ずかしい所をお見せした。私としたことが冷静を欠いてしまったようだ」
優奈は咳払いして普段の凛々しさを取り戻すと、鞄から包みを取り出し、
「そうだ、これは私から。色々と世話になったからな、ささやかながらそのお礼だ」
「チョ、チョコ……いいんすか!」
「日下部同盟に遠慮は要らない」
同じ姓、眼鏡たる者としての絆を固くしたのだった。
さて、気になるアート対決は――。
「……これが『最強の兄貴』……?」
「ぐおおお、二宮金次郎みたいになっちゃったッス……」
エクスブレインが早くも敗北を感じ取っていた。
但し彼は足を引っ張るのも巧みで、
「あっ、でも陽桜の姉御こそ、北海道のお土産みたいになってるじゃないッスか!」
「これはっ、刀を咥えるあまおと……」
「ノー! 鮭を獲る熊ッス!」
やいのやいの言う二人を宥めたマキノが、遂に勝敗を下す。
「勝者は――陽桜ちゃん。やっぱり目が活きてないと」
「やりましたっ!」
「くっ……あまおと先輩の愛くるしさには……金次郎じゃ……!」
がくりと膝折った少年は、床で嫉妬の炎を燃やしたのだが、また挑むつもりなのか……。
但し、勝利を逸した彼にも得るものがある。
大切な贈り物のラッピングを終えた敬厳は、敗北に沈む少年を助け起こし、
「そういえばノビルさんと僕は、同い年なんですね」
「あ……そうそう、同年(タメ)ッス」
すっくと立ち上がった丸眼鏡の、視線の近さにも親しみを得る。
実は身長だけでなく、夏に歳を重ねるという点も二人を近しくしているのだが、敬厳はにっこりと頬笑み、
「これはもう、お友達になるしかないのでは!」
「なるッス! なるッス!」
団結――!
この春に卒業を迎える中学生生活に、素晴らしき友を得たのだった――。
「陽射しを浴びて神々しい姿のレジェンド・オブ・ナノナノ……」
慈愛を零す口元が秀逸、と鑿を置いた葉の言う通り、頬笑むナノナノさま像は傑作だ。
総監督は錠からナイフを取り上げると、台座に己が名前を刻んで仲間に手渡し、製作者一同が名を揃えた所で作業の終了を告げる。
「おら完成だヤッタ―!」
「うおおおっ! 激カワっす!」
豪快なサイズ感ながら、細部にも繊麗を忘れぬ刃に、作り手の愛が感じられる作品。
「おつかれ、さま」
「何だか感動するわね」
無機質な立体から浮かび上がった奇跡のフォルムと頬笑みは、香り立つ芳香も相俟って疲れを吹き飛ばしてくれる。
「ほぉ……壮観やなぁ……」
まり花が感慨深く像を見上げる中、葉と錠は固い声で言を交わし、
「去年、ナノナノさまが降臨しなかったのは偏に愛が足りなかったからだ」
「ナノナノさま居ないとか、マジで詰んだと思ったぜ」
両者の彫像に掛けた情熱は、去年ぽっかりと胸に穴開けたナノナノさま愛を埋める為だったのかもしれない――。
だからこそ彼等は像を見詰め、
「しばらく部室に飾って、みんなでナノナノさま拝もうぜー」
「降臨祈願だな」
「折角のばれんたいんや、ご利益にあやかりたいなぁ」
愛の息吹が寒さを和らげ、幸運が芽吹くよう祈った。ぱんぱん。
「お疲れ様でしたッス! コーヒー持ってきたっすよ!」
チョコレートの馥郁たる香りに渋味のある薫香を運んだノビルが、卓にそれらを置こうとした時、夜奈の雪の様に白い手が小さな星を口に押し込む。
「えい」
「むぐっ」
それが余った欠片で器用に作られたチョコレートと気付いたのは、咥内でほろと溶ける甘さを味わった後。
「ハッピーバレンタイン。お返しは三倍で、ね」
冗談めいた微笑に心奪わたのも一瞬の事、続く科白に少年は瞳を見開き、
「ヤナたんの少し余っただけなんだから……か、勘違いしないでよねチョコおいしいね」
「む、ぐぐ」
飲み込んじゃった――!
葉の言に吹き出す所か嚥下し、『三倍返し』を受諾したノビルは次第に青褪める。
これには錠(※先にご褒美チョコで倍返し確定中)がくつくつと笑って助け舟を出し、
「三倍返しか……しゃーねェ、今度選びに行こうぜ。ノビル」
「錠の兄貴~! 地の果てまでついていくッス~!」
にっこり頬笑むナノナノさまの前で、震える小指が差し出されていたという――。
●
斯くして思い思いにチョコレートを削り、その心を刻んだ灼滅者達。
削り出た大量のチョコレートはどうなったかと思う者も少なくないが、その疑問は、今ノビルが倉庫に隠すチョコレート・フィギュア――各々の灼滅者の姿を映した『最強の兄貴像』と『最高の姉御像』が解消してくれよう。
「バレンタインデー当日まで、自分は絶ッ対ッこの冷蔵庫を守ってみせるッス!」
ぱたん、と観音開きの扉を閉じたノビルはノブを強く握り込めると、重厚な厚みの向こうで『時』を待つココロの結晶に瞳を細め。
「兄貴と姉御が、最高の笑顔を見せられますよーに!!」
それは勿論、彼等が愛する人の前で――、だ。
ノビルは願掛けをするように鍵を回すと、下校を促すチャイムに急かされるように昇降口へと走ったのだった。
バレンタインデーまで、あと少し――。
作者:夕狩こあら |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年2月13日
難度:簡単
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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