●月の出る夜に
謡う、謡う、謡う――。
月の出ている夜、漆黒の髪を月の光に輝かせて、少女から大人になりかけている彼女は謡う。
廃工場の屋根に立ち、月を背負うその姿はまるで、月の使者か月の精か。
緩やかなその旋律に耳を傾けるのは、地面に跪く男たち。中学生から二十代くらいまでの男性十人前後が、身体を揺らしながら少女を見上げている。その瞳は魂でも奪われたかのように、少女だけをぼうっと見つめて。
「歌声が確かこっちから……」
「おい、あれ!」
廃工場しか無い方角から歌声が聞こえるなんておかしい――そう思ったが運の尽き。様子を見たいと怖いもの見たさで訪れた青年がまた二人、少女の歌声に魅入られていく。
「いらっしゃい。私のリサイタルへようこそ」
少女はこうして若い男たちを集めていく。
「あなた達運がいいわ。もう少し年上だったら、私の歌を聞く権利はなかったのよ?」
くすくすくす……。
「魅月様、もっと、もっと歌ってください……!」
「もっと、我々に魅月様の歌を!」
聴衆の男達が声を上げる。魅月と呼ばれた淫魔の少女は嬉しそうに笑って。
「次はどんな獲物が引っかかるかしら。私のだーいすきな男性? それともだーいっきらいな子どもとおじさんと女?」
少女は再び旋律を紡ぎ始める――。
●
「そろそろ夜の外気が冷たくなって参りましたね」
五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は「毛布を出そうか迷っています」と告げて、灼滅者達に微笑んだ。
「ダークネスの行動を察知しました。淫魔が好みの異性を集めてリサイタルを行なっています」
淫魔の名は魅月(みつき)。18~20歳位の少女だ。月の出ている晩に廃工場の屋根の上で謡うのを好み、歌声に魅せられて寄ってきた特定の年齢の異性を虜にするという。
「特定の年齢というのはいくつくらいですか? それに、それ以外の男性や女性だった場合は……」
問うたのは向坂・ユリア(中学生サウンドソルジャー・dn0041)。銀色の髪を揺らして首を傾げる。
「大体中学生から20代くらいまでのようです。それ以外の年齢だったり女性だった場合は、彼女の歌を聞くことも許されずに、殺されてしまいます。彼女はくじ引きを楽しむかのように、自分の好みの年代の男性が来るかを待っているようです」
運が良ければ好みの年代の男性が現れ、違ったら運が悪い、そんな軽いノリのようだ。集められた男性達も、いずれ遊びに飽きたら食い散らかすつもりなのだろう。
「……ひどい」
姫子の言葉にユリアは唇を噛み締めるようにして、泣きそうな顔をした。姫子は「そうですね」と呟いて。
「運良く察知できた事件ですから、灼滅者の皆さんには頑張っていただきたく思います。その為にも、私の未来予測をお知らせしますね。敵は強力ですが、それによって有利になると思いますから」
ダークネスを灼滅するにはKOする必要がある。だが今の灼滅者たちでは、簡単にKOすることはできぬだろう。一対一では絶対に勝てない。
その上、魅月は取り巻きの男性達の一部に力を与えていて、その数も少なくない。
「ですが私の予測したタイミングで廃工場へ向かえば、手下達の一部が魅月さんの側を離れている状態で接触できます」
姫子が言うにはその夜、手下4人は廃工場へ至る横道の入口付近でサクラとなるという。つまり話に興味を持ってくれそうな対象が通りかかったら、「この先ですっげー美人が歌っているんだってさ」「やべー、見に行こうぜ」などといって獲物を誘導するのだ。
「この誘導に引っかかる振りをしてついていき、廃工場へ至る前に手下達をやっつけるのがいいでしょう」
手下達は力を与えられた人間だ。KOすれば元に戻る。そのまま道を行き、廃工場へたどり着けばそこには魅月と手下が二人がいるだろう。
「注意すべきは、彼女が『自分の好みの年齢の男性以外』を優先的に狙ってくることです。十分に気をつけてください」
敵は強い。先に手下四人を倒してからとなると、戦闘は二回に及ぶ。
「ダークネスの力を侮ることはできません。皆さんで協力して、必ず帰ってきてください」
「……はい」
姫子の言葉に、ユリアも神妙な面持ちで頷いた。
参加者 | |
---|---|
龍海・光理(きんいろこねこ・d00500) |
陽瀬・瑛多(中学生ファイアブラッド・d00760) |
アンネスフィア・クロウフィル(黒狩り姫・d01079) |
更科・五葉(忠狗・d01728) |
白咲・朝乃(キャストリンカー・d01839) |
姫条・セカイ(黎明の響き・d03014) |
時諏佐・華凜(星追いの若草・d04617) |
斎藤・明日菜(歌う野良猫・d06279) |
●誘惑に乗って
それはそれは月の美しい夜だった。殲滅者達が工場へ向かう横道付近に差し掛かると、大学生風の四人の男が何やら騒いでいるようだった。
「おい、この先の廃工場に超美人の歌姫がいるんだってさ!」
「なんだよそれ、幽霊とかいうオチじゃねえだろうなぁ?」
「ちげーよ! 先輩も見たって言ってたし」
「変な勧誘とかでもないみたいだぜ」
エクスブレインからの情報通り、騒いでいる彼らがサクラなのだろう。秋の夜空を見上げながらゆっくりと歩く灼滅者達を見て、仲間内で頷きあって。そんな様子を横目で見ていると、四人はこちらに近づいてきて、魅月のターゲットである更科・五葉(忠狗・d01728)と陽瀬・瑛多(中学生ファイアブラッド・d00760)へ向けて声をかけてきた。
「ねえねえ君達、この先にすっごく綺麗な歌姫がいるらしいんだけど、興味ない?」
「俺達今から行ってみるんだけど、一緒に行ってみない?」
軽い調子で笑顔を向けてくるサクラ達。五葉は演技の類が苦手であるため瑛多が自然に前へ出る。
「そんなに美人なの? ちょっと見てみたいなぁ。あ、連れがいるんだけど一緒でもいい?」
「そんなに、素敵な歌い手さん、なんですか。私もお会い、してみたい……です」
「ああ、興味があるなら一緒に来るといいよ。ほら、こっち」
魅月の興味のある年齢の男性以外は拒否されるかと危惧していたが、そんなことはないらしい。ターゲット外である時諏佐・華凜(星追いの若草・d04617)の言葉に、サクラは特別な反応をすることはなかった。ターゲット以外は殺してしまえばいいだけだという魅月の考えなのだろう。灼滅者達は顔を見合わせて、先導するように横道に入っていく四人を追う。ちらり、最後尾を行く向坂・ユリア(中学生サウンドソルジャー・dn0041)が後方を振り返ると四生といろはが頷いて見せた。皆が全力で戦えるようにと助力を申し出た二人は他の一般人が横道に入らぬように見張りと、殺界形成を使った。
(「正直、女の子の歌とかまだあまりわからないんだよね」)
先頭でサクラ達の後をついていきながら瑛多は本音を心の中で呟いて。女の子の歌より外で体を動かしていた方が楽しいと思えるお年頃。だから、夢中になれるぐらいに綺麗な歌ってどんなものなのか少し興味はあるのが事実。
(「でも殺される人が出るんだったら、絶対止めないとね」)
勿論、その気持ちも忘れていない。同じく先頭を歩く五葉も気持ちは同じだろうが、こちらは顔に出さないのが常らしく、その表情からはどんな事を思っているのかはうかがえない。
髪を縛って帽子で隠すという男装風の格好をした白咲・朝乃(キャストリンカー・d01839)、そしてアンネスフィア・クロウフィル(黒狩り姫・d01079)が続き、その後ろに龍海・光理(きんいろこねこ・d00500)と斎藤・明日菜(歌う野良猫・d06279)が続く形だ。最後方に姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)と華凜、ユリア達がついていく。
程なく道は緩やかに曲がり、こちらから表通りを見ることができなくなった事を確認した朝乃は、くしゅんとくしゃみをしてみせた。同時にサウンドシャッターを使用する。くしゃみはあらかじめ決めていた戦闘開始の合図である。
「freizugeben」
アンネスフィアがカードにキスをして封印を解く。他の灼滅者達もそれぞれの解除コードを口にして封印を解き、戦闘体勢を整えた。一方、突然何が起こったのかわからないのがサクラ達。
「……ようこそ、私たちの舞台へ」
「な、何――」
朝乃の凛とした言葉。問おうと振り返りながら口を開いた男に、五葉が躊躇いなく槍を突き出す。捻りを加えられたそれは、男の脇腹に深く突き刺さって。呻き声を上げる男の隣へと今度は瑛多が炎を宿した『鋼装龍』を振るう。
叫び声を上げる暇も与えまいと、光理が盾で男を殴り、明日菜が放った風の刃が止めとなって男を倒れさせる。その様子をしっかり見ていたアンネスフィアは対象を五葉の狙った敵へと移し、死角から鎌での一撃を加える。セカイの神秘的な歌声は男を催眠状態へ陥れる前に、その意識を奪った。
「お前ら何者だ!」
「魅月様を狙っているんだな!?」
残った男達は何だか少し勘違いしているようだ。狙っているという表現はある意味正しいのではあるが恐らく彼らが考えているのとは違うだろう。が、憎しみをこめて歌声を発し、五葉とアンネスフィアへぶつけて来る。力を与えられたとはいえ一般人である。それほど強力な攻撃ではないが、傷は防げない。
「正気を取り戻して……ください」
華凛が放つのは星の様に降り注ぐ無数の矢。ユリアが合わせるように矢を降らしている間に朝乃は美しい歌声を響かせる。ナノナノのぷいぷいはふわふわとシャボン玉を飛ばして朝乃と同じ敵を狙った。五葉が自分を狙った相手にお返しとばかりに超硬度の拳を叩き込む。追うようにして瑛多が振るった武器が炎を帯びて男の意識を刈り取った。
残った男へ光理が一撃を加え、明日菜とセカイは歌う。天使を思わせる歌声が続き、五葉とアンネスフィアの傷を癒した。
「ありがとうございます」
礼を述べ、アンネスフィアは断罪の刃を振り下ろす。男が横たわるのに時間はかからなかった。
●謡う月
サクラ達は一般人ということもあって強さはそれほどではなかったが、この後魅月との対峙が控えているとあって万全で挑みたいというのが一同の総意。
「ユリアちゃん、お願い」
「はいっ」
朝乃がアンネスフィアに、ユリアが五葉に心霊手術を施す。その間に助力に訪れた余市と文、勝魅が気絶している一般人達を連れて行く。意識が戻った時に廃工場へ近づかないようにという配慮も込めて移動してくれるはずだ。
治療も済み、万全の体制で廃工場を目指す。道に沿って少し歩くと、歌声らしきものが聞こえ始めた。
確かにそれは美しい歌声だ。表面だけ見るならば、誰もが褒め称えるのだろう。けれどもそこに込められているものを見るならば、決して美しい歌声とはいえない代物だった。
(「歌声で人を惹きつける楽しみは共感できるかな。聴いてもらうと嬉しいから。でも……それ以外は許さない」)
朝乃はきゅっと弓を握りなおし、強い意志で耳に入ってくる歌声を否定する。
(「聴き手が楽しめないものを、音楽とは認めない!」)
そう、聞こえてくる音は魅月を信奉している男達には魅力的に映るかもしれない。しかしそれが聴き手をふるいにかけるのを楽しみにしている歌い手の紡ぐ音である以上、聴き手が楽しめるものではない。
(「歌は皆と分かり合える物」)
だから、アンネスフィアは己のポリシーに反する魅月を許すことはできないと、強く思って。
「魅月……さん、は、歌をどう思われて、いるんでしょう。唯の手段、なのでしょうか……こんなにも、人を惹きつける、歌なのに」
たとえ込められている気持ちが悪い物でも人を惹きつける歌声。これが気持ちを入れ替えて紡がれたものだとしたら、どんなに魅力を増すだろう、華凛は考えながらぽつり、呟いた。話を聞いた限り魅月は歌をただの手段としてしか見ていない様子だ。だからこそ、真意を知りたい。
歌、音楽への思いが深い者も多い。歌声が近づき歌詞が鮮明に聞き取れるようになった頃、視界が開けた。それぞれがそれぞれの思いで月を背負う少女の姿を視界に納めたその時、少女――魅月がこちらに顔を向けた。
逆光となったが月の光は太陽の光より柔らかく、うっすらとではあるが魅月の表情もうかがえる。彼女はニタリ、笑ったように見えた。
「いらっしゃい。私のリサイタルへようこそ。でも聞く資格のない人が沢山いるみたい」
ひょい、彼女は屋根から飛び降りて物色するように灼滅者達を見回した。
「ステージとしては月明かりの廃工場も悪くないかもしれませんが、歌い手がアレではね」
「なっ……」
悪びれずに言う光瑠の言葉に一瞬絶句した魅月。畳み掛けるようにアンネスフィアが口を開いた。
「歌は……男を惑わす為でもなければ、殺す為の物でもないんですよ。お前のような黒を狩るのが我が使命。灼滅させてもらいます」
ダークネスは灼滅者の宿敵。それ以上にアンネスフィアは魅月が許せないのだ。
「月の光の舞台……いいですね。譲ってくれる?」
「ばっかじゃないの! 譲るわけないじゃない!」
縛った髪をさらりと解いた朝乃の言葉に魅月が怒鳴るように叫ぶと、二人の男が彼女を守るように前に出る。それを見て、五葉はいつでも攻撃に移れるように構えた。
「奪わせません、これ以上……命を。歌で、奪うなんてやり方……やめて下さい」
「やめるはず、ないでしょ」
訴えてやめさせられるほど簡単だとは思っていないけれど、それでも言わずにはいられなくて。 華凛は予想内の答えが返ってきて、小さく溜息をついた。そして弓引く決心をする。
「今日は特別。私の歌を聞かせてあげるから、黙りなさいっ!」
魅月が大きく息を吸い込み、旋律を紡ぐ――。
●歌と歌と歌と
魅月の歌姫たる歌声は明日菜を狙う。
「う……」
さすがに彼女の攻撃は重く、催眠状態へ落ちそうになる。すばやく飛び出した五葉が狙うのは魅月を守る男の一人。さっさと片付けて魅月を抑えようとしている仲間たちの助力に回りたい。その気持ちが槍に乗せられたのか、繰り出された一撃は激しく重く、男の腹を貫通した。
「うん、確かに上手いと思う。でも、俺の心には響かないや」
「!?」
魅月の歌声に耳を傾けた瑛多はさらりと言ってのける。本当の事なのだから仕方があるまい。彼女の顔色が変わった事に気がついてはいるが、彼女を注視せず、『鋼装龍』に美しい炎を纏わせて五葉と同じ敵に繰り出す。
「寝てる場合じゃないわよ~」
何とか催眠状態で動かずに済んだ明日菜は自ら清浄な風を纏い、自分に言い聞かせるようにして催眠を解く。こうした、小さく見える一つ一つの動きが、戦況を左右することも珍しくはない。
「龍海さん!」
セカイが投げたのは防護の符。その札は光理を守護してくれるだろう。
「ありがとうございます!」
礼を述べた光理は魅月の元へと駆け寄って、盾を振り上げる。
「あなた程度の歌など聞き飽きました」
ガツンと殴りつければキャッと悲鳴が上がる。それを意に介さずにアンネスフィアは魅月の死角を狙った。
「きゃっ!?」
と、男達が続けて踊りながら攻撃を仕掛けてきたのは後衛。セカイ、明日菜、朝乃、ユリアが狙われる。光理がセカイを庇い、ユリアは彼女を助けるために同道していたアルカンシェルと一樹に庇われた。
「あ……ありがとうございます」
「気にすることはないよ」
「戦闘に集中するのじゃ!」
二人の言葉を受け、ユリアは頷いて敵を見据える。朝乃は味方の傷の具合を見てまだ大丈夫だと判断し、力強いメロディを紡ぐ。その美しくも力強い歌声は傷の深い男を倒れさせるのに十分だった。魅月の歌声には興味を示さずぷいっとしたぷいぷいは残った男にシャボン玉を飛ばす。
華凛が男に向けて放ったのは詠唱圧縮された魔法の矢。狙い過たずその矢は男の胸元に突き刺さる。ユリアの癒しの歌声が傷を癒す。
「私の歌『程度』ですって?」
魅月が怒りに身を任せようとしているのがわかる。だが彼女がそうすればするほど、灼滅者達が冷静になるのを彼女はわかっていないようだった。
魅月の歌声と光輪が灼滅者達を何度も襲う。だが好みの年齢の男性以外を優先的に狙うという傾向、そして押さえに回った光理とアンネスフィアが彼女を挑発しようと試みたことで、対策を立てるのは意外と簡単であった。
「余所見のしすぎだ」
早々に残っていた男を気絶させ、五葉は魅月へと重い一撃をうずめる。感情を表に出さぬ分、その槍には熱い心が宿されている。
「人の心を惑わすものは俺が壊す!」
瑛多の武器に宿った炎が魅月をなめるようにして喰う。後ろで支えるから、の思いを込めた明日菜の歌が光理を癒す。男性である五葉と瑛多以外、傷を負っていない者はいなかった。
「それくらいでわたしが倒れるとでも?」
明日菜の回復を受けてもまだ傷を残す光理は不敵に笑って魅月を挑発し続ける。盾での一撃が魅月の頬を張る。
朝乃の軽やかな旋律が、ぷいぷいのふわふわハートが癒しとして戦場を飛び、華凛の魔法の矢が味方の間を縫って魅月へと突き刺さる。ユリアに助力を申し出た和志も、彼女の傷を癒して。
「貴女のした事は許されません。けれど……」
セカイはユリアに目配せし、二人で魅月に真っ向から歌声をぶつける。魅月の歌と響きあうように紡がれるそれは時には寄り添い、導くように。時には張り合うように、全力で魂を込めて。
(「謡い合える事の魅力を知ってもらえたら」)
そう思わずにはいられない。
「う……そんな……」
魅月が大きく体勢を崩した。彼女も沢山の傷を負っていた。そろそろ限界なのかもしれない。その好機をアンネスフィアは見逃さなかった。日本刀の鞘を握り、一瞬にして抜刀!
「くじ引きのように弄べるほど、人の命は軽くない。外道に例外はありません。地獄へと落ちろダークネス」
斬り捨てられた魅月が倒れ付すのとアンネスフィアが言い終えるのが、ほぼ同時であった。
●謡い尽くして
「わたくし達と、他の人間と歌い合い、響き合う事は貴女にとって苦痛でしかありませんでしたか?」
消えようとしている魅月に、セカイが問いかける。魅月は黙ったままだ。故に彼女の心中は推し量れない。それでもセカイは言葉を続ける。
「だとしたらわたくしの力量不足です。でももし……もし憎しみ以外の感情を感じていただけたのならば……それが歌の魅力です。生まれ変わったら今度こそ笑顔で一緒に歌い合いましょう。人を傷つける為でなく、平和の為に」
倒すしかないのであれば、せめて来世へ向けて救いを。セカイのその心は届いたであろうか。魅月の姿は月の光の下で消えていった。
「意外となんとかなるものでした。皆さんの回復のおかげでしょうか」
「ああ」
朝乃とぷいぷいに傷の治療を受けている光理に五葉は同意を返して。今回は2戦したが、回復が厚かったのがどちらも勝利を収められた一因であろう。勿論、攻撃あってこその回復、回復あってこその攻撃であるからして。
「みんな無事でよかったよ」
「……はい、そうですね」
一般人も含めて全員無事である。瑛多と華凛は顔を見合わせてほっと息をついた。その視界の端に犠牲者に祈りを捧げるアンネスフィアが映り、皆で祈りを捧げて。
「あたしも会場で人集めて歌ってみたいわねー、今度募集してみようかしら」
もちろん安全なライブを約束するわよと付け加えられてほっとする一同。
明日菜の言葉に日常を感じ、 灼滅者達は夜道を帰路へとつくのだった。
作者:篁みゆ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年11月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 11/キャラが大事にされていた 4
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