●変化したアパート
その日突然、それまで何の変哲もなかったアパートが、突如迷宮化し、内部の住人がアンデッド化してしまった。
一人暮らしの偏屈なおじいさんも、3人の子どもを女手一つで育てているママさんも、大学が近いからという理由でこのアパートを選んだ大学生も、他にも住人たちはみんな、ゾンビと化してしまったのだ!
それぞれ分かれていた部屋も複雑に組み合わさり、生活感のある元の面影を残しつつも迷宮と化している。ゾンビとなった住人たちも自分の部屋の周辺をウロウロとしている有様だ。
一本道ではない迷宮。しかしその道は最奥へつながっており、最奥で待つのはひとりの女性。
「なぜ……力が溢れてくる……。これはもしや、ついに私が選ばれた証!? 私が世界を脅かす悪と戦う戦士に選ばれたってことなの!?」
20代前半と思しきその女性の部屋には、少女たちが選ばれて悪と戦う系統のアニメや、昔放送されたその手の戦うヒロインモノのドラマを収めたビデオやDVDやブルーレイやCDやぬいぐるみやポスターや……とにかくそういうもので満ち溢れている。
「この力があれば、この地域一帯を迷宮化することも可能よね。ど、どんな迷宮にしようかしら……」
女性は迷宮を更に広げようとしているらしい。このまま放置していては……。
●
「寒いだろう、中へ入って」
灼滅者達を招き入れて教室の扉を締めた神童・瀞真(大学生エクスブレイン・dn0069)は、いつものように和綴じのノートを広げた。
「サイキック・リベレイターを使用した事で、ノーライフキングの力が増大し始めているよ。そのため、闇堕ちした後に慎重に自室の迷宮化を進めていたノーライフキングの迷宮が一気に広がり、ノーライフキングの自室を中心に、住人を含めた建物全体を迷宮化してしまったんだ」
現在は建物ひとつが迷宮化しただけだが、このまま放置すれば周囲の建物も含めて地域全体が迷宮化してしまうかもしれない。
「それを防ぐため、迷宮を探索して迷宮の奥にいるノーライフキングを灼滅して欲しい」
告げ、瀞真はノートのページをめくる。
「今回迷宮となったアパートは正面玄関から侵入することができるけど、壁や窓を壊したり、裏口から侵入することはできないようだね。建物の内部は元の建物の部屋などが迷宮化して繋ぎあわされており、元の住人がアンデッド化して守備についているよ」
ノーライフキングの元に向かうには幾つかルートがあるようなので、最も良いと思われるルートを選んで侵入し、ノーライフキングのいる最奥の部屋へと向かってほしい。
「ノーライフキングさえ倒せば建物の迷宮化は解除され迷宮内のアンデッドも同時に滅びるので、全てのアンデッドを灼滅する必要は無いからね」
瀞真は続ける。
「玄関から侵入した後のルートだけど、2つに分かれているよ」
右のルートを行くと男子大学生のゾンビ、母親と3人の子どものゾンビ、中学2年生くらいの男子のゾンビという順番で3回敵と出会うことになる。
左のルートを行くと、学生はみんな孫のように思えてしまうおばあちゃんゾンビ、そして偏屈なおじいさんゾンビという順番で2回、敵と出会うことになる。
「ただし、一部のゾンビを無力化する方法があると言えばあるのだけれど……」
瀞真は顎に手を当てて、少し考え込むように口をつぐんだ。だがしばらくして、意を決したように口を開く。
「その、自分の今の姿は世を忍ぶ仮の姿であって、本当の姿は別にあるという気持ちで、本当の姿としての名乗りを上げて決めポーズを『全員が』決める必要があるんだ……」
つまり「真の姿を見せてあげましょう! 月明かりと星の光の守護を受けしこの身は夜の女王の生まれ変わり。クイーン・オブ・ナイト・○○!」などと名乗りを上げて決めポーズを決めると、一部のゾンビたちは尊いものを見るようにひれ伏すようで。その間に先に進めるということだ。
「ちなみにこの方法が効くのは右のルートのゾンビ全員と、左のルートのおばあさんゾンビだけ。おじいさんゾンビには効かないから、そこは戦闘が必要だけれど」
同じ決め台詞、決めポーズを短時間に複数回やるのが厳しいという精神的な理由もあるだろう。奥に待つノーライフキングに比べればゾンビはそれほど強くないので、一度でギブアップという場合は左のルートを選ぶのもありだ。
「奥まで進むと、ノーライフキングの部屋にたどり着けるよ。名前はリミカ。戦うヒロインものが大好きで、自分も特別な力を授かったと思っているね」
ちなみに迷宮を突破してきた灼滅者たちのことは敵対する者だと思うようなので、遠慮も躊躇いもなく力を奮ってくるだろう。
「リミカの攻撃は一撃で貫くような熱い光の光線を出すもの、水晶化した腕での無数のパンチ、すべてを飲み込むような大量の水に襲われる幻覚を見せる攻撃と、底の硬いブーツによる強力な蹴撃とシャウトだよ」
ちなみに彼女はピンク系統の戦う少女っぽいコスチュームを着ている。
「どちらか片方のルートを選べばいいからね。ノーライフキングを倒しさえすれば、倒さなかったゾンビたちは消えるから」
そこまで告げて瀞真はため息を付いて。
「アンデッド化してしまった住人は救う事はできないけど、これ以上の被害者を出さない事はできるから……頑張ってきて欲しい」
そう告げて彼は和綴じのノートを閉じた。
参加者 | |
---|---|
竜胆・藍蘭(青薔薇の眠り姫・d00645) |
影道・惡人(シャドウアクト・d00898) |
鴻上・巧(氷焔相剋のフェネクス・d02823) |
月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030) |
クーガー・ヴォイテク(紅蓮の道化師・d21014) |
迦具土・炎次郎(神の炎と歩む者・d24801) |
ルーナ・カランテ(ペルディテンポ・d26061) |
フリル・インレアン(小学生人狼・d32564) |
●迷宮アパート
アパートの入口から中へと入ると、そこは前情報通り普通のアパートではなかった。いろいろな部屋がくっつき合って迷宮化していて、とても外観からは想像できない有様だ。ただこのアパートは右と左に廊下が枝分かれしていて、どちらを進んでも最奥には到達できるという。
灼滅者達は右のルートを行くことに決めていた。最奥に待つリミカと戦うまでに、できるだけ戦力を温存すべしと考えてのことだ。
「アパートが迷宮に、かー。残念なノーライフキングだなあ……」
アパート内を見て、思わず呟いたのは月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030)。聞いたところによれば、リミカは他のところも少し残念そうだ。
(「ま、何もかも救おうなんてのは私たちには荷が重い話ですから、こういう事態もあるのでしょうね!」)
まるで自らを納得させようとするかのように心中で強く思ったのはルーナ・カランテ(ペルディテンポ・d26061)。リミカを倒してもすでにゾンビとなった住人たちは救えない。自分たちはすべてを救える者ではないのだ、そう思わされて胸が痛む。
(「……分かってても、呑み込めるものではないけれど、せめて、これ以上の被害は止めないと、ね」)
わかってはいるけれど感情が追いつかない。それでもできることがあるのだからやらねば、そう自分に言い聞かせる。
「予め予知で聞いていて、何度も練習はしてきたんですけど、やっぱり恥ずかしいです」
「なぜゾンビ相手にこんな恥ずかしい台詞を言わなくてはならないのでしょうか?」
戦闘を避けて進むには、名乗りを上げて決めポーズを全員で決める必要があるのだ。フリル・インレアン(小学生人狼・d32564)のように恥ずかしく思うのも、竜胆・藍蘭(青薔薇の眠り姫・d00645)のように疑問を覚えるのも当然ではあるが、それがこの迷宮内でのルールなのだから仕方がない。
「ですが、私は武蔵坂学園の灼滅者です。逃げる訳にはいきません」
きゅ、と小さな手を握りしめてフリルが決意を示す。一同は警戒しながら右のルートへと向かった。
●名乗りを上げて
はじめに出会ったのは、少し洒落た格好をした大学生のゾンビだ。何のサークル活動に勤しんでいたのだろうか、旅行のパンフがいくつか散らばっていた。彼が襲い掛かってくる前に素早く動いたのは鴻上・巧(氷焔相剋のフェネクス・d02823)。仲間達の左側を陣取った。
「見よ、聞け。我が真の名と姿を」
スタイリッシュモードを発動させると、純白の外套が真紅へと変わる!
「灰より蘇る不死鳥の騎士。ロードフェネクス」
右手の槍の石鎚で床を撃ち、左手を横に大きく広げる立派な決めポーズだ! それに倣うようにして、仲間たちも次々と名乗りを上げていく。
「クハハハハッ!!! ばれちまっては仕方ないぜッ!!! 俺こそが教団の特攻兵器!!! ブレイジングブレイカーだぜ!!!」
四肢に装備した武器に炎を纏わせたそれは、まるで彼自身が炎を纏っているよう。クーガー・ヴォイテク(紅蓮の道化師・d21014)はもちろん自分で心の底からカッコいいヒーローだと思って宣言しているので、無問題だ。
「知らざあ言って聞かせましょう! 俺は火之迦具土神の加護を受けし、紅蓮の神霊剣士……炎血神将カグツチ! 頭が高い者はその首を神に捧げるぞ!」
そう告げて、炎を纏わせた刀を肩に担いで見栄を切ったのは迦具土・炎次郎(神の炎と歩む者・d24801)。
「スレイヤーカードさん、お願いします」
最後にフリルが封印を解除して着替えたのは、白いふわりとした服装で。
「暗い迷宮に白炎の光を灯す白の人狼少女、フルフリフリル参上です」
ジャーン! と効果音の入りそうな8人の決めポーズに、大学生は呻き声を漏らしながら正座をして頭を下げる。
「もう通れるんじゃね?」
影道・惡人(シャドウアクト・d00898)の言葉に大学生の様子をうかがいながらそーっとそのそばを抜けていく一同。
「あー……」
「きゃぁっ!」
大学生がフリルのスカートを掴んで携帯電話のようなものを手にしていたが(実際に使えるかは別として)。
「ほい、撮影はお断りですよって」
炎次郎がその手を振り払って事なきを得たのであった。
「見るがいい」
母親と3人の子どもゾンビの前で、巧がスタイリッシュモードで白い衣を赤く染める。
「夢と欲望。我が手中にあり。舞い上がれ天に」
右手に槍を、左手を空に向けて。
「不死鳥の騎士。ロードフェネクス!」
決まった!
続いて次々と仲間たちがポーズを決めていき。
「現れましたね、ゾンビ達。僕は見た目は普通の小学生……でも、真の姿は夜の月光に照らされて、金持ちから金品を盗み、貧しい人々に分け与える義賊、薔薇の大泥棒、怪盗ローズ!」
ビシィッ!! ちょっと赤面して恥ずかしそうな藍蘭のポーズが決まる。続けてルーナが口を開いた。
「普段の私はお淑やかで清楚可憐なだけのごく普通の美メイド……しかして! その実態は……!」
ゴージャスモードを発動させたその格好は、光り輝いて。
「炊事洗濯掃除から歌に踊りに戦闘や護衛まで何でも完璧! 超絶万能美メイド灼滅者(スレイヤー)ルーナなのですよ!!」
霊犬のモップにゴスッと柄をつけて、高々と掲げてポーズ!
「あーあー」
「うーうー」
子どもたちが歓声にならない声を上げて精一杯拍手をしている。母親はお礼をするように頭を下げていた。その前を通過していく一同。
さて3回目。そろそろ精神的にもキツくなってきた者が現れる頃だろうか。それでも3種類の決め台詞を考えてきた巧が先陣を切る。
「その目で見よ」
中学生を指差し、スタイリッシュ(略)で赤い衣へ。
「罪を蝕する、不死鳥の騎士」
槍を相手に向けて。
「ロードフェネクス。推参!」
それに倣って次々と決め台詞を口にする灼滅者たち。中には3回目ということで慣れてきた者もいるのではないか。
「燃える炎、燃える思い! 近くに寄ってとくと聞け!」
玲が密かに付けた傷にクリエイトファイアを使うと、拳に炎が宿る。
「私はアキラ! 月夜のアキラ! 世界を見守り守護する者!」
炎を纏った拳を突き上げて決めポーズ!
「歴史の陰で暗躍してきた影道一族、その現総帥……」
惡人が意味深に言葉を切り、そして。
「闇に生まれ、闇に忍び、闇を切り裂く……遥かな古から受け継いだこの力……漆黒の騎士、惡狼(あろう)! それが俺の名だ!」
ガッと構えると聞こえてきたのは、機械音と獣の咆哮が混ざったような唸り。影業で背後に作った惡狼という文字が浮かび上がる。
「おぉ……おぉぉぉぉ……あああああ!」
中学生は言葉で表せぬ感動を唸り声で現しているのか、若干興奮気味なのがわかる。握手でもしたいのか手を差し出してきたが、一同はそれをうまくスルーして最奥へと向かうのだった。
●最奥の戦士
ここに来るまでの決め台詞の繰り返しで、精神的に若干ぐったりとした者もいるが、戦闘を無事に避けることができたので、戦闘準備的に見れば万端だ。
「行くよ?」
玲がドアノブを手にして、一同に伺いを立てる。皆が頷き返したのを見て、礼は勢い良く扉を開けた。
「うわぁ……」
話を聞いていたから予想はしていたものの、その部屋には女の子が戦う系統のポスターやDVDやグッズなどがたくさんあって。
「来たわね、悪の手先! 戦士として選ばれたこの、マジカル・リミカがあなた達の悪行を許さないわ!!」
ビシッ! ピンク系統の衣装に着替えて待っていたのだろうか、リミカはポーズを決める。それに対して炎次郎も口を開いた。
「この炎血神将カグツチがお前を討つ! さあ、いざ尋常に勝負や!」
「1体8だなんて、卑怯も……」
「問答無用です」
しかし続くリミカの言葉は、スタイリッシュモードを発動させた巧の、変化させた腕による一撃で途切れさせられてしまった。
「さすが悪の――」
「ぁ? 勝ちゃなんでもいいんだよ。おぅヤローども、殺っちまえ」
惡人の帯がリミカに伸びる。
「漸く辿り着きましたよ……さぁ、この迷宮を元通りにして貰いましょうか?」
それに合わせるようにして藍蘭の帯もリミカを目指す。
「ふええ……」
すでに恥ずかしくて死にそうなフリルが白き炎で前衛をパワーアップさせる。実はスレイヤーカードの解除セリフを決め台詞に組み込んでいたことで、リミカの部屋の前でもう一度、そう、4度目の決め台詞を言う羽目になってフリルは恥ずかしさでいっぱいなのだ。大誤算であるが、炎はしっかりと前衛へと届く。
「悪に与するあなた達にはお仕置きが必要ね。喚び応えよ、懲罰の水!!」
リミカが手を挙げると、大量の水が後衛を飲み込んだように見えた。
「うあぁぁぁっ!」
ルーナが裂帛の気合をいれて叫んだ。催眠の効果を打ち消すためである。モップはクーガーへと癒やしを与える。玲が炎纏わせた刃を持ってリミカへと迫るのを追うようにして、ライドキャリバーのメカサシミも攻撃を仕掛ける。
「ぶっとべやッ!!」
炎を宿した蹴撃でリミカの体の中心を狙うクーガー。彼を援護するかのようにライドキャリバーの一が攻撃に動いた。炎次郎は前衛に盾を広げ、守りを固くする。霊犬のミナカタは惡人を癒やし清めた。
「あなた達、やるわね。でも選ばれた戦士である私は……」
「魂、蝕する罪の槍」
再びリミカの口上を遮って、巧が影を宿した『蝕罪の妖槍』を突き出す。
「つっ……ちょっと、口上は最後まで聞くのがお約束でしょう!?」
「なもん知るかよ」
彼女の抗議をバッサリ切り捨てた惡人は、ガトリングガンの連射でリミカを蜂の巣にする。藍蘭が『青薔薇の宝剣』を振るってリミカに対峙している間に、フリルは白い炎で後衛を包んだ。
「どこまでも卑怯な奴らね! この光の正槍をくらいなさい!」
リミカが発したのは鋭い一条の光。藍蘭を狙ったそれを、炎次郎がギリギリのところで代わりに受けた。盾役として当然のことをしたまでだが、彼女の攻撃は思ったより重いことがわかった。姿形はふざけているように見えなくもないが、腐ってもノーライフキングといったところか。
「気をつけや。ああ見えて、あいつそこそこ強いで」
元々油断しているつもりもなかったし相手を弱く見ているつもりもなかった。だが設置されていたギミックのせいもあってか、少し変な空気になっていたところをきゅっと締められた心地だった。
●女戦士、そして
リミカが自身を強化すれば誰かがそれを解除する手を選ぶ。リミカが催眠をかければ、やはり誰かがそれを解除する。彼女自身の攻撃は重く、そしてその攻撃の持つ効果も厄介ではあったが、事前に対策を考えてきたことが功を奏したのだろう、以外にうまく回っているように見えた。ただ、主な回復手がサーヴァントしかいなかったことが、少しずつスレイヤーの攻撃機会を奪い、回復に回る者を増やすことになってしまった。
けれどもリミカの衣装がズタズタになっても誰一人倒れていないのは、壁役の働きと、運良くダメージが誰かひとりに偏っていなかったからだろう。
「くっ……こうなったら、パワーアップの変身……」
ハンガーにかかった衣服を取ろうとしたリミカに、フリルが迫って日本刀でその腕を斬りつけた。悲鳴を上げて彼女は衣装を取り落とす。
「ちなみに私には更なる変身なんてありませんよ。帽子を取って狼耳を出すことで人狼パワーがアップはしません。そんなことをしたら恥ずかしさが3倍、精神ダメージが10倍になるだけです」
「そんなっ!! ピンチでパワーアップはお約束でしょう!?」
リミカの放った聖槍という名の光線は、メカサシミが代わりに受けて、そしてメカサシミは消えた。
「お約束も大事ですけれど、それ以上に大切なものもありますから」
ルーナが槍を手にし、リミカへと迫る。モップは傷ついた仲間を癒すように動いていて。
「回復に回るよ。畳み掛けてよね」
玲が仲間に声をかけ、指先に集めた霊力で仲間を癒す。
「言われるまでもねぇ! ブレイジングブレイカーは突き進むしかねえんだッ!!!!」
クーガーの流星の如き蹴撃に、ーの攻撃が重なる。
「ノウマク・サンマンダバザラダン・センダ・マカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カンマン」
炎次郎は真言の詠唱の後、『金錫』を突き出して。ミナカタは仲間の治療に当たる。藍蘭が剣を振り回すのを見てリミカが泣きそうな声で呟いた。
「卑怯者ぉ……」
「あ? 最初に言っただろ、勝ちゃなんでもいいんだよ」
敵である時点でただ倒すだけの『物』としか見ていない惡人がの帯が、下着の見え隠れするリミカを貫く。
「ダレを相手にしていると思っているのですか? パワーアップの暇など与えるはずがないでしょう」
異形化させた腕をもって、巧がリミカに接敵する。
「終焔の刻です、焼滅しなさい」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 私は選ばれ、た、の、……に……」
悲鳴を上げて、最後は弱々しく、女戦士は砕けるようにして消えた。
●迷宮解除
迷宮化が解かれたそこは、ただのアパートだった。ゾンビとなった住人たちは、消えたのだろう。
「リベレイターの影響がこうなるとはねー……。ごめんね」
後には出る被害だったとしても、玲の胸は痛む。
「此処に住んでた人たちの冥福を祈ろう」
小さく黙祷して、アパートを出るのだった。
作者:篁みゆ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年2月24日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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