「HDT(はんだち)!」
「NKU(はかてゆたか)!」
「STN(さとのか)!」
「OMS(おおまさり)!」
「TCN(てこな)!」
「「我ら、千葉落花生怪人――ファイヴ!」」
五人の甲冑騎士がそれぞれのポーズをキメ、背後で落花生ボムの爆発が起きた。
剣や槍、野太刀などをたずさえた彼らは、それぞれにこっくりと頷きあう。
「流石は全国の落花生生産の大半をしめる千葉落花生の怪人。即席とはいえこのチームワークとは」
「殻と結束の固さは全国一であるな!」
「然様然様!」
「ヌハハハハハ!」
彼らはお互いに肩をたたき合い、そしてとある墓地の地下への入り口に立った。
ごとごとと開いていく地下への入り口。
「いざゆかん! 迷宮の先へ!」
怪人たちが入っていくと、入り口は最初からなかったかのように消えてしまった。
●スレイヤーヒーローズVS落花生怪人ファイヴ!
「皆、サイキックリベレイターの影響でノーライフキングが活性化しているのは知ってるな! だが同時に日本中のご当地怪人たちが結束しノーライフキングの迷宮に集結しているという情報も入ってきた。まずはその話を聞いてくれ!」
ご当地怪人を多く配下にもつアフリカンパンサー。統合元老院クリスタル・ミラビリスの一員である彼は日本中のご当地怪人に迷宮への招集をかけたようだ。
サイキックリベレイターの効果で怪人の動向を予知することはできないが、迷宮に誘導される直前であれば防ぐことができるだろう。
「元々強大なノーライフキングにご当地怪人勢力が加わったら流石に手に負えなくなってくる。合流を阻止し、怪人たちを倒すんだ!」
今回戦う怪人チームは『千葉落花生怪人ファイヴ』。
落花生の堅さや濃さ、そして品種ごとの繊細な個性の違いをもった選りすぐりの即席怪人チームである。
中国や西洋、日本などの古い甲冑を模した鎧に身を包み、防御力(ディフェンダーポジション)と体力(HP)の高さが特徴だ。
「だが注意してくれ。戦闘ができるのは開始から8分(ターン)だけだ。タイムオーバーになると迷宮が開き、彼らは追えないところまで撤退してしまう」
だがしかし……。
「彼らとて千葉の誇りと落花生への愛から怪人となった者たちだ。いくらアフリカンパンサーの招集とはいえ郷土を捨てて迷宮入りすることに疑問を持っている節もある。彼らのご当地愛をふるわせることができれば、もしかしたら迷宮への撤退をやめて戦いを続けてくれるかもしれないな!」
そこまで説明した上で、神崎・ヤマト(高校生エクスブレイン・dn0002)は資料を手渡した。
「迷宮には招かれたご当地怪人しかはいることは出来ないらしく俺たちは追っていけない。だからこそ、きっちりとその場で決着をつける必要がある。皆の力、信じてるぞ!」
参加者 | |
---|---|
七瀬・遊(烈火戦刃・d00822) |
天方・矜人(疾走する魂・d01499) |
シルフィーゼ・フォルトゥーナ(菫色の悪魔・d03461) |
白金・ジュン(魔法少女少年・d11361) |
シャルロッテ・カキザキ(幻夢界の執行者・d16038) |
白川・雪緒(白雪姫もとい市松人形・d33515) |
立花・環(グリーンティアーズ・d34526) |
神無月・優(唯一願のラファエル・d36383) |
●ピーナッツ・アバン
バスに揺られて笹の葉を開く。
豆ご飯のおにぎりを取り出すと、白川・雪緒(白雪姫もとい市松人形・d33515)ははむはむと食べ始めた。
「炊き込みご飯にもいいですね、落花生。おひとつ?」
「うみゅ。いただきゅのじゃ」
おにぎりを一個貰ってもきゅもきゅしはじめるシルフィーゼ・フォルトゥーナ(菫色の悪魔・d03461)。
窓から外を眺めながら、シャルロッテ・カキザキ(幻夢界の執行者・d16038)は遠いあれこれを思った。
「……それにしても、落花生がアフリカになびくとは情けない」
手を伸ばし、『次下ります』のボタンを押し込んだ。
開く扉。階段を下り、小石のある道へと立つ白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)。
「作戦はどんな具合だったかな……迷宮の入り口で勝負を仕掛けて、灼滅するんだったけれど」
「ご当地愛をたき付ければいいんですよね? 呼びかけが重なりすぎて交通事故みたくなりませんかね」
肩掛け鞄をよいしょとやって、立花・環(グリーンティアーズ・d34526)は周りを見回した。
「そこはうまく合わせる感じで」
「どのみち、迷宮に戦力を集中させるわけにはいかねえしな」
カードを翳し、『変身』する天方・矜人(疾走する魂・d01499)。
その横で神無月・優(唯一願のラファエル・d36383)が眼鏡を外して解除コードを唱えた。
「ご当地怪人がご当地を離れたらおしまいだろうに」
真っ赤なジャケットの裾をばしっとひく七瀬・遊(烈火戦刃・d00822)。
「待ってろよご当地怪人。アフリカンパンサーよりも必要としている人たちが居ることを思い出させてやるぜ!」
●ピーナッツ・Aパート
「殻と結束の固さは全国一であるな!」
「然様然様!」
「ヌハハハハハ!」
迷宮の入り口へと立ち、扉が開くのを待つご当地怪人たち。
みんなご存じ千葉落花生怪人ファイブである。
時が経てば扉が開き、彼らは迷宮の守護者となるのだが……。
「そこまでじゃ!」
二本指でカードをつまんだシルフィーゼが、横一文字に振るやいなやパープルカラーの半透明な刀を出現させた。
「おぬしを迷宮へ入れりゅわけにはいかにゅ!」
「むっ、灼滅者か!?」
振り返り、一斉に身構える落花生怪人たち。
シルフィーゼはにやりと笑ってヴァンパイアミストを展開。
霧に混じってジュンと雪緒が飛び出した。
「マジピュア・ウェイクアップ!」
霧を抜け変身を終えたジュンは、新体操リボンのようなものを巻き上げて放った。
「先手必勝です、マジピュア・リボンスラッシュ!」
「なんの、HDTシールド!」
落花生型の盾を翳して巨大化。ジュンのリボンをうち弾く落花生怪人。
次の瞬間、シルフィーゼとジュンの肩を踏んだ二段跳躍によって彼らの頭上をとっていた雪緒が出刃包丁を勢いよく振り下ろした。
「落花生……煮てくえっぺか」
途端周囲から無数の包丁が出現。落花生怪人たちへ降り注いでいく。
「連係攻撃か!」
「落花生の堅さを舐めるな! TCNダブルファン!」
巨大な扇子を振り回し、包丁の迎撃をはかる落花生怪人。
「側面ががら空きよ」
どこからともなく斧を取り出し、斬りかかるシャルロッテ。
「OMSホーク!」
巨大な斧をぶつけることで防御する落花生怪人。
シャルロッテは打ち払われた反動を流すように回転し、さらなる連撃を繰り出していく。
刃と柄でもって防御を続ける落花生怪人。
その上を飛び越え、矜人が巨大な黄金剣を出現させる。
「組み上がれ、ゴルドクルセイダー!」
「立ち上がれ、NKUザンバー!」
矜人のフリーフォールアタック。落花生怪人はそれを巨大な刀を翳して受け止めた。
「この練度にこの強さ、武蔵坂の灼滅者だな!? だが我らの邪魔はさせんぞ、STNチェイン!」
鎖状に連なった落花生を繰り出してくる。
接触と共におこる連鎖爆発に、環はギターを一発かき鳴らすことで対抗した。
爆風が吹き晴らされていく。
無数の光を纏った優が海里を伴って独特な射撃姿勢をとった。
「やれ、ワンコ」
マジックミサイルと霊障波が乱射され。
その間を抜けるように遊が飛び込んでいった。
無骨なコンバットナイフを繰り出し、落花生怪人の鎧に突き立てる。
装甲を抜きはしないが、吹き出した毒の風が怪人たちを薙ぎ払っていく。
「さすがは現代の灼滅者。強い……!」
「だが迷宮が開くまでの辛抱だ。迷宮内に逃げてしまえばこちらのもの! 耐えるぞ!」
「「おう!」」
それぞれ防御姿勢をとる落花生怪人たち。
に、雪緒がふと思いついたように声をかけた。
「ところで、炊き込みご飯の話なんですけど」
「「ん?」」
今? みたいな顔で振り向く怪人たち。
「どの品種が一番合うんですか?」
「それは半立一択で――」
「まてまて器量豊かなNKUこそご飯のお供だろうに」
「こんな時に言い争いはやめんか。迷宮の中ですればよかろう!」
「おやおや、千葉を捨ててどこへ行くんですか」
ヒュン、と剣を振って顎を上げる環。
「そんな風では九州で盛んだったいぐさ栽培みたいに中国からの輸入品に取って代わられるかもしれませんよ?」
「いぐさと一緒にするんじゃあない! 千葉落花生はそもそも品種からしてだな……!」「貴方達がご当地に残り、落花生を盛り立てないでどうしますか? 喪ってしまって、その重大さに気付いてからでは遅いのですよ!」
「うぐ……!」
真っ赤な中華鎧と巨大な盾で武装していたHDTが胸を押さえて半歩下がった。
追い打ちのように半歩踏み出すシルフィーゼ。
「ご当地を捨て迷宮にはいりゅなぞと本当にそれでよいのかえ? おぬしらはまだ必要にされてりゅとはおもわにゅのか。見捨てられたご当地がどうなってもかまわにゅというのか!」
「ぐぬう……!」
今度はバイキング風の巨大な風体をしていたOMSが斧を握ったままよろめいた。
将軍風の武者鎧に巨大な刀というNKUが軍配を振りかざす。
「ええいなにをうろたえている! 今こそ力を合わせて迷宮にはせ参じようという時ではないか!」
「しかしNKU……」
後ろでは迷宮の扉が開きかけている。逃げるなら今というタイミングだ。
ふるふると首を振る優。
「品種事に個性の良さが在るだろうに、かなぐり捨ててごちゃまぜにするのかい? 馬の尻尾として振られてるよりは、犬の頭として吠えてた方がお似合いだと思うけどな、残念だ」
「なんだと!?」
「馬よりは犬の方が可愛いよと、このワンコも言っている」
ぐぬぬと言って歯ぎしりをするNKU。
「情けないぜ、落花生怪人!」
拳を握って叫ぶ遊。
「温暖な気候と豊かな自然に恵まれた全国的にも誇れる農林水産県である我が千葉県の名産品と言えば――古くから房総の大地に根付き、その強固な殻で千葉を守り、県民に愛され続けてきた落花生だろ!」
「ううっ……だ、だまれ!」
巨大な扇子を二枚装備したTCNが威嚇するが、遊は一歩も引かなかった。
「それなのにお前達は愛する千葉を捨て、アフリカンパンサーの乳、尻、太腿にホイホイ従う軟派野郎になっちまったのか? 義理人情に厚い、硬派な落花生魂を思い出せ!」
「耳を貸すなTCN!」
「し、しかし我が品種は義理と人情で生まれた品種……奴の言うことも一理ある……」
「ええい、こうなれば俺だけでも迷宮に行くぞ、いくからな!」
騎士甲冑に鎖分銅というスタイルのSTNがみなに背を向ける。
びしりと指を突きつけるジュン。
「迷宮に入ってしまって、今年の夏の収穫はどうするのですか?」
「……なに?」
「とれたての落花生を茹でピーナッツにするのはあきらめて、去年の冷凍保存品で今後我慢するつもりですか! ご当地パワーの補給はアフリカン動物怪人たちのように現地の千葉で落花生を貪るつもりですか。そんな有様を良しとするなら今後は迷宮もやし怪人とでも改名するのがお似合いですよ!」
「き、きさま落花生を愚弄するか……!」
ぐるりと向き直ったSTN。
トドメをさすように、矜人がゆっくりと歩み出た。
「コクと風味が豊かな最高級品、はんだち。あっさりとした甘みを持つ、なかてゆたか。ゆで落花生といえば、さとのか。超大粒新人、おおまさり。真間のてこな姫でおなじみ、てこな……」
合体剣のパーツを分解し、鎧として纏い始める。するするとどこからか長い棍棒を生み出す矜人。
「千葉落花生怪人ファイヴ、その穴倉は故郷を捨ててまで行くべき場所なのか? オレには、今のアンタ達が落花生の名を借りただけの安っぽいゆるキャラにしか見えねえよ。引き返すってんなら、オレ達を倒していきな。当然だろ、故郷を一度は捨てたんだ。無事に帰れるとは思っちゃいねえよな?」
「…………」
落花生怪人たちは迷宮の入り口を背にしたまま暫く黙り、互いに顔を見合わせていた。
「同志……」
「う、うむ」
「どうやら、我々は戦わねばならんようだ」
「話はついたみたいね」
斧を一旦収納して、シャルロッテは肩にかかった髪を払った。
「さ、続きをしましょうか」
●ピーナッツ・ヒーロータイム
「ゆきゅぞ!」
小太刀と短剣をそれぞれ握り、宙返りをかけて飛びかかるシルフィーゼ。
TCNは扇子を畳んで棍棒として構えるとシルフィーゼの二段斬撃をガード。
相手の肩上を転がるように背後へ回ると、背をつけあったまますり足でタイミングを計り合う。
耐えきれずに振り込んできたTCNの打撃を短剣で受け止め、シルフィーゼは腰に強烈な蹴りを叩き込んだ。
蹴り飛ばされたTCNを、迎え撃つように蹴り上げるシャルロッテ。
空中に浮いたところへ更に飛びかかると浴びせ蹴りを連発していく。
トドメとばかりに斧を叩き込んでやると、TCNはガード姿勢のまま地面をバウンドした。
「はい、ワンコ。じゃれついてないで戦う!」
それを、すれ違うように繰り出した優と海里のキックが直撃。TCN落花生怪人は鎧を粉砕され、爆発した。
「TCN! おのれ……! STNチェイン!」
「絡みが足りませんよ」
環は繰り出したダイダロスベルトを鎖に巻き付けて固定。引っ張って相手との力比べに持ち込んだ。
「八女産の貴重な抹茶をその身に纏うに相応しいと思うなら、掛かっていらっしゃい!」
「くっ……!」
力負けしてよろめいたSTN。その隙をついて雪緒は鮮やかな帯を空中に放った。
帯が蛇のごとくうねり、STNの鎧を貫通していく。
「隙あり!」
OMSが巨大な斧を大上段に振り上げて襲いかかる。
が、その柄に遊の革ベルトが巻き付いた。
「これは――しまった!」
「千葉の力、もう一度味わえ!」
拳に影を巻き付け、顔面に叩き込む遊。
「ふ、不覚。土地を捨てた報いか……!」
同時に爆発するSTNとOMS。
NKUはそんな二人をよそにして、刀を矜人めがけて振り込んでいた。
それを地面に突き立てたロッドで受け止める矜人。
片手できゅっとスカルヘルメットをなで上げると、両目のアイシールドを光らせた。
「さあ、ヒーロータイムだ!」
相手の刀を跳ね上げ大きな隙を作ると、ロッドをぐるぐると回転させる。
「スカル・ブランディング!」
光を伴ったロッドが突き出され、NKUの腹を貫き爆発四散。
両手を翳してエネルギーを漲らせるジュン。
「これで最後です! マジピュア・ハートフラッシュ!」
「は、HDTシールド!」
ジュンの放ったビームをシールドで防ごうとするHDT。だが、その身体を膨大な光が包み込んでいく。
「これが……正義の光……」
その言葉を最後に、HDTは爆発の中に消えていった。
迷宮は閉じ、あたりには静寂が戻る。
灼滅者たちはたがいに頷き合い、その場から背を向けた。
この場所にはなにもない。
戦いの跡も、無念の魂も、全ては千葉に置いてきた。
作者:空白革命 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年3月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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