鳥取砂虫島根に現る

    作者:魂蛙


    「またラジオウェーブのラジオ放送が確認されたよ。もう知っている人も多いと思うけど、噂話がラジオウェーブの電波に乗ると、都市伝説が生まれて噂通りの事件を起こすんだ」
     須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)は教室に集まった灼滅者達に説明しつつ、早速今回のラジオ放送を書き起こした資料を配る。
    「今回確認された放送は、鳥取砂丘の巨大サンドワームが島根の砂浜に現れて営巣しているっていう内容だよ。付近を通った人を車ごと飲み込む、なんていう危険な話も含まれているから、放置はできないね」
     鳥取砂丘にワームが棲んでいるのは最早前提扱いである。幸い、放送ではそれ以上の言及はないので、鳥取砂丘にワームが現れる事はない。事件の舞台となるのはあくまで島根だ。


    「放送された噂によると、ワームが営巣しているのは出雲市の稲佐の浜。神話の舞台にもなった砂浜だよ」
     巣は砂浜の地中深くにあるようで、これを直接叩きに行くのは不可能だ。
    「ワームは普段は地中にいるんだけど、産卵時には地上に出てくるんだ。今回は確実に遭遇できるそのタイミングで、みんなにワームを倒してもらうよ」
     捕食の為に地上に出てくる事もあるようだが、これについては放送内で時間帯の言及がなく、待ち伏せる事が出来ない。
    「良く晴れた深夜、人が寝静まった頃になるとワームは地上に出て、涙を流しながら砂浜に卵を産み付けるんだって。はっきりとした時間は分からないけど、多分0時以降かな。静かにしていれば、砂浜で待機していても大丈夫だと思う」
     一応確認しておこう。標的は巨大サンドワームである。ウミガメではない。
     冬の海かつ夜間ということもあり、人払いは容易だろう。事前に済ませておいてあとはワームが現れるまで待てばいい。ワームは自発的に縄張りを出る事はなく、戦闘もそのまま海水浴場の辺りでする事になるだろう。
    「ワームを確認したら、産卵する前に仕掛けちゃった方がいいかな。けど、産卵前は気が立っているだろうから十分気を付けてね」
     本体であるワームを倒せば卵も消滅もしくは石ころ同然となるので、卵を潰す事にやっきになる必要はない。
    「ワームは車を丸飲みにするっていう話だから、胴回りは直径で2メートルくらい、全長も20メートルは下らないかな。巨体を武器にした単純な肉弾戦も脅威だけど、地中からの強襲にも気を付けてね。他にも口や体側にある気門から吹き出す砂で遠距離攻撃もしてくるみたいだよ。あと、全身に生えている固くて短い体毛に、体表から分泌する毒を浸透させる事もできるみたいだから気を付けて」
     ワームのポジションはクラッシャー、攻撃はそれぞれバベルブレイカーの衝撃のグランドシェイカー、ロケットハンマーのマルチスイング、ガトリングガンのバレットストーム、殺人注射器の殺人注射に相当すると考えていい。
    「浜辺が戦場になるから、砂に足を取られないようにね。ワームは浅瀬の辺りまでなら問題なく活動できるみたい。本格的な水中戦にはならないと思うけど、タオルや着替えを用意しておいた方がいいかも」
     戦場は基本的には平坦な砂浜だが、豊玉毘古命を祀る社のある丸い小島がある。体格差を埋める為の足掛かりに利用するか、貴重な文化財を守る為に離れた場所で戦うかは灼滅者の判断に委ねられる。
    「サイキック・リベレイターの副作用で、私たちエクスブレインがノーライフキングの関わらない事件が予知できない中、せっかく得られたチャンスだからね。町の人達を守る為に、都市伝説の灼滅をお願いするよ」
     まりんは一礼して、教室を後にする灼滅者達を見送った。


    参加者
    アリシア・ウィンストン(美し過ぎる魔法少女・d00199)
    赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)
    花咲・マヤ(癒し系少年・d02530)
    戒道・蔵乃祐(聖者の呪い・d06549)
    新堂・辰人(影刃の魔法つかい・d07100)
    夏目・凛子(ミミの元気な吸血娘・d20891)
    フリル・インレアン(小学生人狼・d32564)
    シエナ・デヴィアトレ(治療魔で露出狂な大食い娘・d33905)

    ■リプレイ


    「伝説のサンドワーム……ゲームで鍛えた僕の腕前がついに生かされる時が来たか!」
     いつにも増してやる気な戒道・蔵乃祐(聖者の呪い・d06549)の殺界形成で人払いされた夜の海には、凪いだ静寂が水平の彼方まで続いている。
     そんな波間に、ぽつんと浮かぶ人影があった。
     これはもう冬の海に対する反逆と言っても過言ではない黄色の水着を着たシエナ・デヴィアトレ(治療魔で露出狂な大食い娘・d33905)である。
    「何時の間に鳥取砂丘はワームの巣になったんでしょうか?」
     ESPのフローターで海面に立つシエナが首を傾げる。戦闘時の射程を考えると、あまり沖まで行く事はできなかったが、軽く潜れる程度の水深はある場所だ。
     ラジオ放送の通りなら、鳥取にワームが現れる事はない。とは言え、例え鳥取砂丘の地中深くにワームの群れが蠢いていようとも、確かめる術はないのだ。
     シエナが身を震わせたのは、おぞましい想像のせいだけではない。
    「……なんだか肌寒い気がしますの」
     震えながらそう言うシエナは何故か楽しげであった。
    「シエナちゃん、大丈夫かな……あ、くしゃみした」
     砂浜から背伸びしながら目を凝らす夏目・凛子(ミミの元気な吸血娘・d20891)の隣で、アリシア・ウィンストン(美し過ぎる魔法少女・d00199)は砂を注意深く踏み締めた。
    「砂地か……足を捕られやすいのぅ」
     アリシアは取り出した箒に跨り、そのまま浮かび上がる。
    「妾は上から見張るのじゃ」
     螺旋を描いて上昇していくアリシアを、花咲・マヤ(癒し系少年・d02530)は小さく手を振りつつ見送る。
    「それは何を聞いてるんだい?」
     新堂・辰人(影刃の魔法つかい・d07100)の問いに、赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)はイヤホンを片方耳から抜き、携帯電話を持ち上げて見せる。
    「ラジオウェーブの放送。ラジオ野郎の手掛かりでも掴めりゃいいんだが……」
     布都乃が肩を竦める。今の所は空振りらしい。
     それから暫く、シエナが3回目のくしゃみをした丁度その時だった。
    「ふぇっ?」
     突き上げるような地響きに驚いたフリル・インレアン(小学生人狼・d32564)は、拍子に飛び出す狼の耳が押し上げた帽子を両手で抑えつつ周囲を見回す。断続的に続く地震とは明らかに異なる揺れにフリルは小さく息を飲んで自分を勇気づけ、そっと靴を脱いで裸足になる。
     地上の異変を、アリシアも認識していた。すり鉢飛行で広域を見渡すアリシアは徐々に大きくなる地鳴りの震源たる砂浜の蠢きを見つけ、地上の仲間達に指差しで伝える。
     砂山が大きく盛り上がったのは、その直後の事であった。
     砂山を突き破り、サンドワームがその姿を現す。
    「鳥取砂丘に棲まう幻の主、サンドワーム……!」
    「完全にファンタジーの世界だね。これもラジオウェーブの影響か……」
     ゲーム中盤辺りのボスとでも表現すべきステレオタイプな姿に蔵乃祐は感嘆を、辰人は苦笑を漏らす。
     ワームは地中から身を引き抜きながら円を描くように地を這い、その中心を頭部で掘り返し始めた。
    「っていうか、卵の産卵って、これが成虫なのか……。ワームって羽虫の幼虫とかいう場合もあるんだけど……」
    「どちらかというと、ミミズに近い生態なんですかね?」
     首を傾げる辰人に、蔵乃祐はワームを観察しつつ呟いてから、単身で接近を試みる。
     身を屈めつつある程度ワームに接近した蔵乃祐が砂浜に俯せて息を殺す。その間に他の灼滅者達も、ワームを挟んで社のある小島の反対側に展開する。
    「もう少し近付こう」
     蔵乃祐は匍匐前進で限界まで近付いていく。
     不意に地面を掘る頭を止めたワームは、そのまま首をもたげて周囲を見回し始めた。
     蔵乃祐は体を起こし、手に持ったライトのスイッチに指を掛ける。そしてワームが振り向くその瞬間、スイッチを入れたライトを投擲した!


     高輝度の閃光がワームの顔面を叩く。光の奇襲に怯んだワームに蔵乃祐の黙示録砲が直撃した。
     頭を振るって体勢を立て直したワームが、蔵乃祐を睨みつける。唾液に濡れてぬらりと光る牙が並ぶ大口が、錆びた鋼線を擦り合わせるような咆哮を放ち砂粒を騒めかせた。
    「さあ、ついて来い」
     立ち上がった蔵乃祐は2、3歩下がり、そこからワームに背を向けた全力ダッシュをスタートさせた。
     吼え猛るワームが追走を開始する。身をくねらせて砂を蹴散らす猛進で蔵乃祐に追い付き、食らいつこうと首を振り上げたその瞬間、
    「させぬのじゃ!」
     空から飛来する光弾がワームの頭を叩き落とした。間を置かず急降下したアリシアがワームの鼻先を飛び回って攪乱する。
     その隙に空飛ぶ箒で駆け付けた辰人が蔵乃祐を回収、仲間と合流する。次いでアリシアが引き連れる形で誘き寄せるワームを、マヤのデッドブラスター、凛子のオーラキャノン、フリルの制約の弾丸が形成する弾幕が迎え撃った。
     殺到する光弾がワームの突進を押止めると、布都乃は携帯からイヤホンのジャックを引き抜いてラジオをスピーカー出力に切り替えつつ飛び出した。
     体を伸ばして槍の様に突っ込んでくるワームを、布都乃は左に跳んで躱す。両足と左手で砂を捉えて制動から再跳躍、追尾するワームの頭上を取った。
     追いすがるワームの眼前で、ウイングキャットのサヤの猫魔法が炸裂する。連鎖爆発する魔力光に怯んだワームの頭に、飛来する布都乃が取りついた。
    「いいぞ、サヤ!」
     身を翻したサヤは、主人のフォローは自分の務めだとばかりに猫魔法を放ち、その連鎖爆発でワームの動きを抑制する。
    「ちったぁ大人しくしやがれ!」
     布都乃は高く振り上げた右腕の縛霊手を渾身の力で叩き下ろす。インパクトと同時に縛霊手から噴出した霊力光は放射状に伸び、ワームを鷲掴むように捕縛した。
     ワームは締め上げる光の網に身を捻じられながら地面に倒れる。直後、激しくのたうち回り始めたワームは自身の体を地面に打ち付け、跳ね上げ、布都乃を振り払い、遂には自力で拘束を解いてのけた。
     吹っ飛ばされた布都乃が砂地で受け身を取りつつ体勢を立て直す。追撃しようとしたワームに、シエナが放ったダイダロスベルトのヴィオロンテが横槍を入れた。
    「脇ががら空きですの」
     絡み合いながら伸びる薔薇の蔦は棘を牙に見立てた凶暴な顎を形成、飛び回りながら2度3度とワームに喰らいついて追い払うと、そのまま布都乃に巻き付いて傷を癒した。
     一度態勢を立て直したワームは加速をつけ再度の突進を仕掛ける。
     凛子が飛ばしたギルティクロスをもろに食らいよろけたワームの体側に、辰人が射出したサイキックソードの刃が突き刺さる。併せて飛び出したマヤが、ガンナイフの花開く軌跡を構えてワームを間合いに捉える。
    「なかなかの巨体、僕の攻撃が通用するでしょうか? でもやってみます!」
     マヤは間近で見る巨体にも怯まず、花開く軌跡の刃でワームの体側を斬り上げる。身を捩るワームの噛み付きを跳躍で躱し、伸身のバックフリップから弾丸の雨を降らせる。
    「離れるのじゃ!」
     マヤガ着地から即座にバックステップするのと同時に、上空のアリシアがマジカルロッドforceを振り下ろす。ワームの眼前に発生した青白い光球が一気に収縮、爆裂して絶対零度の冷気を撒き散らした。
     身震いで体表の氷結を弾き飛ばしたワームは、頭上のアリシア追い立てながら伸び上がり、地上の灼滅者達目掛けて倒れ込む。散開する灼滅者達は直撃は免れたものの、砂を巻き上げる風圧に煽られて吹っ飛ばされた。
     更にワームは叩き付けた体で地上を薙ぎ払う追撃に繋げる。そこに飛び込んだのは凛子だ。凛子は体当たりでワームの薙ぎ払いを止めるも、自身も反動で弾き飛ばされる。
     凛子は頭を振って衝撃に揺れる視界をリセット、叩き付けられるワームの尻尾を間一髪で飛び退いて躱した。
     凛子は受け身からごろごろと転がり、立ち上がる勢いそのままにジャンプ、ワームの脳天に飛び蹴りをかます!
     よろめくワームにフリルが制約の弾丸を撃ち込む。弾丸に穿たれる度にワームは痙攣し、堪らず地面に突っ込みそのまま潜り込んでいった。
     ワームの姿が地中に消え、砂浜に静寂が訪れる。
     無論、それは更なる波乱と砂嵐の前兆に過ぎなかった。


    「狙いは僕か!」
     迫る地響きと盛り上がる砂に踵を返した蔵乃祐がすぐに駆け出すも、地中のワームはそれを見えているかのように精確に追尾する。蔵乃祐は走りながらギリギリまでワームを引き付け、ワームが地表に飛び出す瞬間に踏み切る。跳び上がる蔵乃祐の背後で、巨大な砂柱が天を衝いていた。
     受け身をかなぐり捨てた全力ダイブの甲斐あって、蔵乃祐の離脱はなんとか成功した。が、ワームは攻撃の手を緩めない。飛行するアリシアさえも見下ろす高度から、ワームは砂混じりのブレスで灼滅者達を吹き飛ばした。
     ワームが更にブレスに力を込めようとしたその時、咆哮の音響が砂嵐を劈いた。
     砂塵を消し飛ばすリバイブメロディを奏でるはシエナのリュジスモンヴィエルだ。
     シエナに向き直ったワームが改めてブレスを放つ。その予備動作を見た時点でシエナはフローターを解除、水中に潜ってブレスをやり過ごした。
     体勢を立て直したシエナが水面から顔を出すと、ワームは今度こそ確実に仕留めようと海の方に近付いていく。
    「行かせないよっ!」
     波打ち際に立ちはだかったのは緋色のオーラを手刀に這わせた凛子だ。
     凛子は果敢に攻め込むが、圧倒的な体格差は覆し難い。身をくねらせながらのワームの体当たりを1発、2発までは躱し捌いて返す手刀で斬りつけるも、堪えたワームの頭突きもらって海に吹っ飛ばされた。
     泳ぎ駆け付けたシエナの治療を受けつつ、凛子は濡れた服を脱ぐ。その下は、準備よく着込んでいた花柄の水着姿だ。
    「えへへ、やっぱり冷たいねっ!」
    「そうですか? 慣れると結構気持ちいいですの」
     ぶるぶる震えながらも何故か楽しげな2人だが、危機はまだ去っていない。未だ水辺に陣取るワームの周囲をアリシアが飛び回り、ライドキャリバーのヴァグノの機銃の援護を受けつつ牽制していた。
    「鳥取ではなく島根でこうなるとはのぅ」
     ワームの攻撃を掻い潜ったアリシアは箒から跳び、ワームの懐に飛び込む。
    「いい加減鳥取に……帰すわけにもいかんのぅ。ここで果てい!」
     アリシアはダイブの勢いのままforceをワームの腹に叩きつける。甲高い音と共に高まる魔力光が炸裂、その爆圧がワームを砂浜まで押し戻した!
     砂浜の灼滅者達と対峙したワームは、そのど真ん中を突っ切らんと猛進する。
    「分断されるな!」
     突出した布都乃は両手でワームの牙を、左足で下顎を抑えて右足が砂に埋まらんばかりに踏ん張った。
    「脳天を――」
     到底止めきれるものではないが、確かにワームの勢いが衰える。
    「――ブチ抜く!!」
     瞬間、布都乃はその一瞬を逃さず砂の中から燃え盛るエアシューズを引き抜き、ワームの上顎を蹴り上げた!
     正面からの攻撃を阻まれたワームは攻め方を変え、再び地面に潜る。
    「私が誘き出すよ!」
     陸に戻った凛子が握り拳大のオーラ球を地面目掛けて投げつける。
     オーラ球は地面に着弾して派手な音と砂を撒き散らす。その振動を察知したワームが、誰もいないそのオーラ球の着弾点を突き上げた。
    「釣れた!」
    「このパターン、ゲームで見た動きだな……」
     既視感に突き動かされる蔵乃祐はストームコーザー・ウロボロスを構え、盛大に空振りしたワームに襲い掛かる。
     蔵乃祐はワームの体側に刺突から斬り上げ、直後にワームの気門から噴き出す砂のカウンターを横に転がり避け、更にもう1つ飛び込み前転で間合いを詰める。
    「今日はいつもより疲れるな!」
     動きに無駄は多くとも確実に反撃を躱した蔵乃祐は深く息を吸い込んで袈裟斬り、逆袈裟と繋いで更に斬撃のラッシュを加速、勢いに乗せた旋転からの水平斬りを一閃した。
     怒りの視線を蔵乃祐に向けるワームの死角から、既にフリルが飛び出していた。フリルは裸足に砂を捉える俊敏な動きで一気に間合いを詰め、獣化させた右腕の銀爪を突き出し全身を使った跳躍でワームを引き裂く。後方から飛んでくるワームの尻尾も側宙で捌き踏み台代わりに再跳躍、体を丸め前宙の遠心力を上乗せした爪を振り下ろした!
     両手足で4点着地したフリルの影業が砂中から飛び出し、ワームを地面に縫い付けるように縛っていく。
    「つ、捕まえました……!」
     フリルなりに頑張って張り上げた声に、マヤが答えて飛び出す。
    「畳み掛けます!」
     強引に首だけマヤに向けたワームがブレスを放射する。マヤはダッシュからスライディングで派手に砂を掘り返しつつその暴風圏の直下を滑走、ワームの顎下を滑り抜けつつ花開く軌跡を連射する。
     マヤは反転再突入から花開く軌跡の刃で斬り抜け、
     振り向き様の射撃で撃ち抜き、
     リロードと同時に踏み込み逆水平に刃を振り抜き、
     上体を切り返して花開く軌跡を突き刺し、
     零距離射撃で残弾全てを叩き込む!
     一気呵成の猛攻に大きくよろめくワームに辰人が肉迫、解体ナイフを逆手に握り直す。
    「お前を、切り裂いてやる」
     ナイフが地に落とした影から飛び出す影業の刃が振り抜くナイフに追従、2重の斬撃で深くワームを切り裂く。
     辰人は後退るワームを空飛ぶ箒で追撃、上空から飛び降り様にナイフをワームの脳天に突き立てる。辰人がナイフを握り込むと、その傷口から溢れ出す影が刃を延長、ワームを完全に貫いた。
     辰人は渾身に力でナイフを斬り上げつつ駆け抜け、ワームを縦に――、
    「これで終わりだ!」
     ――両断した!


    「静かじゃのぅ」
     ワームが消滅した後の砂浜の様子を、地上に降りたアリシアが一言で表現する。
     盛大に寒中水泳する事となったシエナと凛子も、ようやく落ち着いて体を拭いてた。
     ヴァグノのトランクから着替えを取り出したシエナは右を見て、左を見て、それから自分の水着を見下ろす。
    「……面倒だしここで着替えちゃうですの」
     一切の躊躇なく水着に手を掛けて、
    「わわっ?! ダメだよ、シエナちゃん!」
     当然凛子に止められた。
    「あっちで着替えよ? ね?」
     堤防の向こうまで、凛子にずるずると腕を引かれていくシエナであった。
     一方、少々不安げに辺りを見回していたフリルに、マヤが声を掛ける。
    「どうかしましたか?」
    「あ、あの……何か、見落としがないかな……って」
    「そうですね。少し見回りしておきましょうか。それと……」
     自信なさげなフリルにマヤは微笑を浮かべつつ頷き、無事戦闘の被害を免れた小島の方を見やった。
    「貴重な文化財には興味がありますね、社を拝んておきたいです」
    「俺も付き合うぜ。ラジオ野郎の手掛かりも探したいしな」
     ラジオをつけ直した布都乃も加わり、3人はまずはワームが現れた辺りを目指して歩き出すのだった。

    作者:魂蛙 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年3月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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