
眠らない町を少女が歩く。
鉄と灰の香りを巻いて、土塊を踏んでゆく。
戦いの先に待つものなど、考えはしない。ただ立ち塞がる全てのものに銃口を押し当て、相手が死にますようにと祈りながら引き金に指をかける。その繰り返しである。
「忙しい時代になったものね。怪人に屍の王に都市伝説の主? その渦中に私たちが立たされているなんてね」
まるで噛み潰した煙草を捨てるような気持ちでため息をつく。
町を歩けば今日もどこかで噂話が聞こえてくる。
都市伝説。
実体化し、人々を襲う都市伝説。
罪なき者を救うため、弾丸のいくさきを決めるため、天原・京香(銃声を奏でる少女・d24476)はたどった噂の現場へと足を止めた。
扉に足をかけ、ドアノブに銃を押し当て。
あとについてきた皆をちらりと振り返る。
「この先に、実体化した都市伝説がいるはずよ。皆、準備はいいわね」
ドアノブを吹き飛ばし、ドアを蹴り開ける。
さあ。
真面目成分はこんなもんでいいよね。
「バブル・エブリナーイ!」
はい回るミラーボール。
飛び散るプリズムにひるがえる羽根扇子。
ボディコン姿のイケイケなゴーゴーガールたちがもう尻見えてるんじゃないのってぐらいのギリッギリな角度のステージで舞い踊るここはBUBBLYなDISCO。
DJのアッパーミュージックに乗せて踊り狂う人々はかつてバブルに青春を忘れてきた女たち。その中央でひときわイケイケさを見せつけているのが今回実体化した都市伝説である。
「説明するわ! バブル時代を忘れられない女たちがいつしか語り始めたという隠れディスコの都市伝説。ここでは皆がワンレンのボディコン姿で踊り狂うエンドレスなエブリナイがランバダリズムのジュリアナなのよ!」
「おちついて! 後半日本語になってない!」
「ボディコンだからって油断したらいけないわ。この空間に居る者はやがてボディコンとなるのよ! バブルとなるのよ! あーもー分かってた! 知ってた! 私がこういう役回りだって知ってたー!」
膝から崩れ落ちる京香。
「ええい、片っ端からぶっころしてやる!」
| 参加者 | |
|---|---|
![]() エミーリア・ソイニンヴァーラ(おひさま笑顔・d02818) |
![]() 羽丘・結衣菜(歌い詠う蝶々の夜想曲・d06908) |
![]() 黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643) |
![]() 清浄・利恵(華開くブローディア・d23692) |
![]() 魅咲・狭霧(中学生神薙使い・d23911) |
![]() 天原・京香(銃声を奏でる少女・d24476) |
![]() エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318) |
![]() 癒月・空煌(医者を志す幼き子供・d33265) |
●ボディコン? よし、酒もってこい! 呑むぞオラアアアッ!
まーったくよお、世の中うまくいかねーことばっかりだよな!
けど楽しいことだってある!
この、なに? 先っぽにフワフワついてるショッキングピンクの扇子をばんばか振って腰をくねっくねしてるだけでちょっと楽しくなるじゃーないの。ついでに酒でもかっくらってアホみたいな歌を叫びながら踊ってみればうん、あと一週間くらいは生きててもいいかなって思えるよ! この前ショックなことあっ――ギャアアアアアアアアアアアアアアッ!?
……以上、ディスコで踊り狂っていたおっさんの独り言である。
「なにかしら、世の中こんな人ばかりなの?」
おっさんの後頭部をちょーちょのギターでガッてやってから、羽丘・結衣菜(歌い詠う蝶々の夜想曲・d06908)はフロアの端へとおっさんを引きずっていった。
「げにおそろしきは淫魔ウィルス。私しってるよ、エリノアさんももう毒牙にかかってるって。半裸みたいなボディコンで踊り狂ってるって」
「登場する前から恐いフラグスイッチを踏むのはめて」
エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)が明後日の方向から来る読者の期待を具現化したみたいな電波を槍でべしっとたたき落とした。
ばっと振り返る。
「こっちは18禁展開は事務所NGなのよ、天原京香!」
「私がエロOKみたいにいうのやめてっ!」
天原・京香(銃声を奏でる少女・d24476)は両手をぶんぶん振って非武装を主張した。非武装っていうか、非エロを主張した。
ついでに体中をぱたぱた叩いてコスチュームや下着の有無を確認する京香。
「よしっ、ボディコンじゃないわね。あんなエロい格好を最初からしてるってオチはもうさせないんだから」
「今の格好もどうかしてるわよ。TOP画像のやつなによこれ、ハイレグアーマー? お腹にタトゥー入れるとかとんだビッチね!」
「いれてない! いれてないってば! 見てよほら!」
なんだか独特の言い争いをする二人を、黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643)はおろおろしながら見守っていた。
見守っていたが、ついに耐えきれなくなって間に割り込んだ。
「やめてくださいっ! 京香さんも横の所から見せなくていいですから!」
「パンツイーター、後は任せたわ」
「えっそれ私のこと!? 私のことですか!?」
暫く三人がいい意味でわちゃわちゃする様子をご覧ください。
あと後ろのテーブルに腰掛けて両足をぶらぶらさせるアリカさんをご覧ください。なんならボディコン衣装のままジュリ扇(先端がふわふわする扇子)をどう扱っていいのかわからず適当にふってみるさまとかあっいかん文字数が――!
絵日記。清浄・利恵(華開くブローディア・d23692)。
京香がボディコンのディスコがどうたらっていう都市伝説を見つけてきた。
なるようになるだろう。
……と思っていたら、ボディコンの戦士となった京香に組み伏せられ、抵抗もむなしく穴あきの超ミニなブルーボディコンとケバいメイクに着替えさせられてしまった。
身体からわき上がる感情にあらがいきれず、僕はビッチのごとく踊り狂うことになったのだった。
「そのさまは今すぐにでも挿絵にできるくらいイラストに……」
「まてい!」
日記帳を掴み上げて引き裂く京香。
「架空の日記をつけるのをやめなさい!」
「あっ、黄色いボディコンの淫魔が」
「架空のコスチュームを指定するのもやめなさい! どうするのよっ、公開即日で挿絵がついたら! 謀ったと思われるでしょ!」
かえしてー僕の夢日記かえしてーと言いながら腕をばたつかせる利恵。
そんな様子をぼーっと眺めながら、踊り狂うパンピーの後頭部をガッてする作業に勤しむエミーリア・ソイニンヴァーラ(おひさま笑顔・d02818)。
また急に踊り出さないように縛って転がす癒月・空煌(医者を志す幼き子供・d33265)。
「わふっ、この辺に転がしておけばいいでしょうか?」
「はい……あっ、エリーミアさんはご一緒するの初めてですね。よろしくお願いしますね」
「こちらこそですっ。わふー♪」
グーで手招きするみたいなポーズで首を傾げるエミーリア。
この子、事務所的にはこういうとこ混じって大丈夫なのかしら。大丈夫そうなそぶりだけど……ええいやってしまえ!
「じゃあ、わたしはみんなのまねっこさんになってみるのです。わふーぅ!」
素早くボディコン姿に着替えると、扇子をダブルで振り回すちょっと新しいダンスに興じはじめた。
「『挿絵申請お待ちしております』……っと」
会場の端っこというか上のほうにあるキャットウォークをこっそり歩きながら呟く魅咲・狭霧(中学生神薙使い・d23911)。
ステージで踊り狂うボディコンの都市伝説を見下ろした。
開始二千文字近いというのにいまやっと描写されましたよ。
「思ったんだけれど、実は天原京香じたいが都市伝説の発生源なのでは?」
とか言いながらステージ上からワイヤーでつつーっと逆さに下りていく。
でもって都市伝説の頭をガッと掴むと、そのままワイヤーを戻して天井へと浚っていった。
登場して二百文字足らずでログアウトする都市伝説さんである。
●これは人々を闇から脅かす実体化都市伝説とそれに立ち向かう勇敢なスレイヤーたちの物語である!
「わっふー!」
エミーリアは高級化粧品のようなライフルを構えると、金色のトリガーを引き絞った。
ふわふわとポンデのリングみたいな輪っかが飛び出し都市伝説たちに襲いかかる!
一方で狭霧は都市伝説の足を縛って逆さに吊るす!
でもって空煌が下から蝋燭でちりちりとあぶる!
「これで、この依頼が都市伝説と戦闘する依頼だってことを証言できますよねっ!」
「完璧ね」
ビッと親指を立て合う三人。
そのまた一方では別の戦いが勃発していた。
「いちごちゃん……」
結衣菜は両手を腰の後ろで組むと、いちごへとふんわり振り返る。
「どうして、シてくれないの……?」
「だめですよっ! そんなの、犯罪みたいじゃないですか!」
首を振るいちご。
そんな彼女(かのじょ!)に詰め寄ると、肩越しにどんと壁に手を突いた。慎重さはビールケースで誤魔化した。
「ひどい! そんなに私に魅力がないの!?」
「そ、そういう意味じゃ……」
「触ってよ! 私の胸、大きくなってきたんだよ!?」
「やめてくださいさわらせようとしないでっ! ピンになる! ピンにされる!」
掴まれた腕を引っ張り、精一杯の抵抗を見せるいちごちゃんである。
これで触ったらもう不可抗力じゃ済まされないからね。
このシナリオはお子様でも安心してご覧頂ける全年齢対象シナリオだからね。
エロいアクシデントなんて一切おきな――そおい!
「ひゃあ!」
なんでか足下にあったバナナの皮で滑って転んだいちごちゃんは結衣菜と伴って床を転がった。
その際この、なんていうの、物理的な、あの、アレで、そうてこの原理! てこの原理でスカートのめくれ上がったいちごちゃんと上下逆さの状態で覆い被さった結衣菜という状態になったのである!
てこの原理って便利だな。理屈がついた気分になる。
「ひ、ひやあああああああああああ!」
「うわあああああああああああ!」
いちごちゃんがいちごくんだと気づいた叫びと、セクハラをされた悲鳴が重なった。
思うんだけど、小学生にセクハラするのが犯罪だとしてされるのは犯罪なの? 訴えたら大人側が負けるとは思うけど。
「脱ぐのはNG。めくるレベルでもダメよ。あと接触だけど、服の上からまでならギリギリ許すけど、直接的接触はナシで。……いいわね、それならOKよ」
サングラスかけたエリノアが契約書みてーなやつにサインをしていた。
でもって横にいるサングラスかけた黒服に渡していた。
「もし脱がされそうなシーンになったらうちの淫魔が代行するから。あと接触系もパンツマスターが担当するわ。そういうことでヨロシク」
ビッと二本指を立ててヨロシクなジェスチャーをすると、ブランドバッグを手に席を立った。
「じゃあ、次の仕事あるからこれで」
「まてぇい!」
ヘッドスライディングした京香が足首を掴んだ。
当然エリノアは顔から倒れる。
砕けたサングラスで振り返るエリノア。
「なにすんのよ!」
「こっちの台詞よ! なに出演交渉を終えた大物女優みたいなフリして帰ろうとしてんのよ! あと誰さっきの黒服!」
「ボディコン着て踊ってた一般人よ! 見ればわかるでしょ!」
「わかってたまるか! うりゃーあ!」
エリノアをバックドロップでステージに沈めると、京香はぜえぜえ肩で息をしながら立ち上がった。
立ち上がって、目薬を両目にさして、頬に滴を伝わせながら綺麗な顔で言った。
「一人でいこうなんて、水くさいこと言わないでよ。いくなら……一緒にいきましょ」
「いい話みたいにしてんじゃないわよインママスター!」
エリノアジャーマンスープレックスが炸裂した。
京香とエリノアがどちらが盾になるかでモメている間にも、事態は着々と進行していた。
具体的には空煌がスモーク炊きながらミラーボールのスイッチをオンにしていた。
「準備いいですよー」
「こっちもOK」
証明上のキャットウォークで親指を立てる狭霧。
発光するスイッチを押すと、やたらバブリーなリズムでまーったく聞いたことの無い音楽が流れ始めた。
ジャングルみてーなイントロにあわせてジュリ扇を掲げるエミーリア。
きらめく粒子に包まれて一瞬でボディコンとスケスケのレースコートを纏うと――。
「それでは聞いてください。『ようこそバブルディスコへ!』」
「ウェルカムようこそバブリディスコ!」
「今夜ドッタンバッタン大騒ぎ」
「「UOO~WOW!!」」
次々とおりたスポットライトにバブリーなフレンズたちが照らされた。
ブルーカラーとイエローカラーの控えめにいって痴女みたいなボディコン衣装を纏った利恵と京香がラメラメの扇子を振り回す。
「高いとこで踊り踊ればフレンズ!」
「「フレンズ!」」
「(盾になるかどうかで)喧嘩してバックドロップしても仲良し!」
「「仲良し!」」
下からもスポットライトが当てられると、何かを諦めたいちごちゃんとエリノアが映し出された。
色々な意味でギリギリなボディコンにふわふわの毛皮マフラーや手首に巻くファーカフスをしたいちごちゃんが腰に手を当ててていた。
ゴールドカラーのボディコンに黒いサイハイソックスと肩までのびた手袋、でもって黒いピンヒールをしたエリノアが頭の後ろで手を組んでいた。
「ケダモノはいてものけ者はいない!」
「本当の夜がここにある?」
「ほら君も腰をふって」
「「大冒険!!」」
翼を背負った空煌がワイヤーに吊られて飛び上がった。上のとこでワイヤーを一生懸命操作する狭霧。ワンツースリーのテンポで逆さに釣り上げられる都市伝説さんたち。
「ウェルカムようこそバブリディスコ!」
「今夜札束巻いて大騒ぎ!」
「扇子も服も十人十色!」
「だから光り輝くの!」
ステージの中央からせり上がってくる結衣菜。
蝶をイメージした扇子とボディコン。バタフライマスクをバッと投げ捨てると、マイクを手に取った。
「ミラーボールに扇子派手に開いたら」
「おどりましょう」
「「おどりましょう!」」
「バブルをもっと知りたいの!」
ラメラメの紙吹雪が吹き上がってまき散らされる。
『LALALA』のコーラスと共に踊り狂う人々の中で、エミーリアたちはマイクに顔を寄せ合った。
「ウェルカムトゥーザ・バブリディスコ!」
「集まれ痴女たち!」
「ウェルカムトゥーザ・バブリディスコ!」
「素敵なお立ち台!」
「「ようこそバブリディスコ!」」
扇子を放り投げると、なんか知らんけど都市伝説の皆さんがしめやかに爆発四散した。
●夜は終わらない
場酔いと変な幻覚作用で踊り狂ったバブル灼滅者だったが、『私なにやってたのかしら』とか言いながら帰って行った。
場にヤられていた一般人の皆さんも同じように帰って行った。プレミアムフライデーとかいいながら明日も仕事だよとか言いながら帰って行った。
そんな地下ディスコで、ぱかんと音をたててスポットライトが下りる。
スタンドマイクが一本。
そして利恵。
「出番追加という名のエンディングテーマだよっ。それでは聞いてください、『事故のスキマ』」
画面上を流れていくスタッフロール。
そして最後に表示される、『監督 天原京香』。
――という動画だったとさ。
「誰よこんな動画を作ったのはー!」
手の中でスマホを握りつぶした。
| 作者:空白革命 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
![]() 公開:2017年3月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 5
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