一つ一つの種を捲き

    作者:幾夜緋琉

    ●一つ一つの種を捲き
    「皆さん。集まって頂けましたね? では、説明を始めます」
     と、五十嵐・姫子は、集まった灼滅者に目礼すると共に。
    「スサノオのナミダ姫から、武蔵坂学園に対し、協力を願う連絡が来たのです」
     協力、という言葉に首を傾げる灼滅者……だが、姫子は。
    「ええ、協力です。とは言っても、『可能であれば』程度の打診ですので、例え断ったとしてもデメリットはありません」
    「しかし、ここで協力し、恩を売る事が出来れば、ノーライフキングとの戦闘時において、スサノオ達がノーライフキングの援軍として現れるのを阻止出来るかもしれません」
    「現状、スサノオは、多くのダークネス組織と協力関係にある為、ノーライフキングとも当然友好関係にあります。しかし私達、武蔵坂学園とは前回の援軍をする事で貸し借り無しの状態になっているのです」
    「今の状況で、ノーライフキングと武蔵坂学園とが争えば、スサノオはノーライフキングに味方する事になるでしょう……それを阻止出来る可能性があるのならば、この協力には十分、意味があると思います」
     更に。
    「ナミダ姫とスサノオ達は、ガイオウガが灼滅された事で、スサノオ大神の力を喰らえる様になった為、今日本全国に封じられて居たスサノオ大神の力を喰らう旅を続けていた様です」
    「このナミダ姫達の攻撃を受けたスサノオ大神の力は、その力を奪われない為に『強いスサノオの力を持つ者の侵入を阻止する結界』を編み出し、自分達の身を守ろうとし始めた様です」
    「よって、この結界により、スサノオ達は直接、スサノオ大神の力を攻撃する事が出来なくなってしまった為、私達武蔵坂学園に協力を願ってきたという事の様です」
    「今回、依頼があったスサノオ大神の力が封じられて居るのは、山梨県は鳴沢村にある洞窟です。小さな洞窟故、観光スポットにはなっていない洞窟です」
    「その近くでスサノオの戦士数名が待っています。合流し、スサノオ大神の力の所に向かって頂く事になります」
    「ちなみに、スサノオ大神の力は、巨大な狼の様な姿を象っており、見た目や能力も、狼型のスサノオに酷似している様です」
    「このスサノオ大神の力へ、ある程度ダメージを与える事で結界が破壊されます。そうすれば、外で待機しているスサノオ達が戦列へと加われる様になるのです」
    「スサノオ達が合流した後ならば、彼らだけに任せて撤退しても問題ありません。勿論、共に戦う事も可能です。しかし、皆さんがトドメを刺し、スサノオ大神の力を灼滅してしまうと、スサノオ達は食うことが出来ずして、協力としては失敗になりますので、注意して下さい」
     と、そこまで説明すると、姫子は。
    「スサノオ大神の力は、体躯7m程の白い炎で出来た狼の姿を取ります。先ほども言った通り、大きくは無い洞窟の中に棲んでいます。洞窟内は、入口を抜ければ15m程の大きさをしたホール状をしたところが有る様です」
    「スサノオ大神の力は、来る者をその牙で噛みつき、食らい付くことで猛毒を体内へと注入したり、体当たりして炎で燃え上がらせたりしてきます」
    「又、スサノオ大神の力は強力なものの、体力を半減させさえすれば結界が解除され、スサノオ達が合流します。スサノオ達と共に戦えば、それほど難敵、とまでは言えないと思います」
     と、最期に姫子は。
    「ナミダ姫がこの依頼を私達に持ってきたのは、もしかすれば……武蔵坂学園と戦わなくて済む理由を欲していたのかもしれませんね……」
     と呟きつつ。
    「何にせよ、ノーライフキングとの戦いに懸念点を出来れば減らしておきたい所です。皆さん、宜しくお願いします」
     と、頭を下げた。


    参加者
    緋桜・美影(ポールダンサー系魔法少女・d01825)
    泉・星流(魔術師に星界の狂気を贈ろう・d03734)
    黒絶・望(運命に抗う血華・d25986)
    大神・狼煙(役目を終えた捨て駒・d30469)
    九条・九十九(クジョンツックモーン・d30536)
    貴夏・葉月(紫縁は希望と勝利の月華のイヴ・d34472)
    七夕・紅音(狐華を抱く心壊と追憶の少女・d34540)
     

    ■リプレイ

    ●亀裂産む者
     スサノオのナミダ姫より請われし、協力依頼。
     武蔵坂学園側にデメリットは無いにせよ、協力する事でノーライフキングとの援軍としてスサノオ達が現れるのを阻止出来るかも知れない……という貸し借りの上での話。
    「シャドウ大戦の協力で終わり……と思って居た所に、ナミダ姫からの協力の要請……これは少なくとも……敵対したくはない、と……思って居るのかな?」
     と、泉・星流(魔術師に星界の狂気を贈ろう・d03734)が軽く首を傾げると、それに七夕・紅音(狐華を抱く心壊と追憶の少女・d34540)、貴夏・葉月(紫縁は希望と勝利の月華のイヴ・d34472)の二人も。
    「……ナミダ姫は、本気で私達とやり合いたくないのかもね? まぁ、こちらとしても敵としてこられるよりは遥かにいいのだけど」
    「そうですね。戦いたくないのは此方も同じ事。まぁ、当班の考え方と云うだけで、武蔵坂の総意、という訳でもありませんがね」
     ……そんな仲間達の言葉に対し、大神・狼煙(役目を終えた捨て駒・d30469)と九条・九十九(クジョンツックモーン・d30536)の二人は。
    「……しかしスサノオ達か。モフモフしてんのかなぁ……」
    「……そうだな……」
     ……スサノオの姿は、確かに人狼の姿ををしている訳で……それをモフモフとモフりたい、という気持ちは分らなくも無い。
     でも……下手にモフモフしようとすれば、関係的に不味くなるかもしれない。
    「狼煙様……下手に撫でないで下さいね? やろうとするなら……その眼鏡、割りますよ?」
    「だ、大丈夫大丈夫。大丈夫だから!」
     黒絶・望(運命に抗う血華・d25986)に手を振り慌てる狼煙……まぁ、何にしても、スサノオ達を助ける事は、今此処に居る灼滅者達の総意な訳で。
    「まぁ、何にせよスサノオを援護して、スサノオ大神をスサノオ達に倒させないとな! なんだか言っててこんがらがりそうだけど」
     苦笑する緋桜・美影(ポールダンサー系魔法少女・d01825)に九十九も頷き。
    「ああ……と、あそこの様だ」
     と九十九が指を指した先……そこには、数体のスサノオ達が、洞窟の入口に並ぶ。
    「スサノオよ、助力しに来た。手伝おう」
     と九十九が前に進み出て言うと、スサノオ達は少し不審そうな表情を向ける。
    「……お前達、結界により中に入れないのだろう? ……俺達なら中に入り、結界を崩す事が出来る。結界が崩れたら、入ってきてくれ」
     と言うと共に、その返答を待たずして、中へ。
     そして他の仲間達も、スサノオに視線を配しつつ、結界を超えて、中へと侵入していくのであった。

    ●亀裂を裂いて
     そして、灼滅者達は鳴沢村の洞窟内に立ち入る。
     ……結界を超えた洞窟の中は……15m程の広い広いホール状の所。
     そしてそのど真ん中には……巨大な体躯7m程の、スサノオ大神の姿……。
     大きさと、その威圧感に一歩、二歩後ずさりしてしまうが……。
    「これがスサノオ大神の力……トドメは刺さない様に、細心の注意を払って戦いましょう」
     と望に皆も頷き、それぞれの武器を構える。
     スサノオ大神は、そんな灼滅者達の敵対体勢を受けて。グゥゥ、と唸り声を上げる。
     巨躯の圧迫感を活かし、ホールの中を縦横無尽に駆け回り……灼滅者に喰らい掛かる。
     が、そんなスサノオ大神の攻撃を、葉月が。
    「菫、貴様は我が盾だ」
     と己のビハインドに指示を与え、己をカバーリングさせる。
     かなり強烈な一撃を食らうが、どうにか耐える菫……それにすぐさま美影のナノナノと、紅音の霊剣、蒼生がふわふわハートと浄霊眼で菫を回復。
    「……まだ、足りない様あな」
     と、サーヴァント二体の回復状況を見据え、更に九十九も防護符で、菫を大幅に回復……戦線を維持する。
     そして、菫が再び構えるのを見ながら、美影、紅音が。
    「すごい……一撃を食らっただけでもかなり危険だね」
    「そうね。蒼生。申し訳無いけど、回復に集中して」
    『ワウウ!』
     主人の紅音の言葉に吼えて頷く蒼生。そして美影も指示をナノナノに出しつつ。
    「さぁ、それじゃあ行くよ! 胸は無くても希望は一杯! プア☆バスト参上~!! さぁ、喰らえー!」
     と、一歩後ろの位置から、斬影刃の一閃を放つ。
     しかし直撃はせず、ギリギリの所を掠める一撃……っ、と唇を噛みしめる美影に、更に星流と葉月のスナイパー陣が続く。
    「中々素早いみたいだね……だけど、スナイパーとして、外す訳には……いかない」
    「ええ……」
     頷き合い、星流がマジックミサイルで追撃効果、葉月がレイザースラストの狙アップを自己付与しながらの攻撃。
     そして、望、狼煙、紅音のクラッシャー達も。
    「暴れ回られる様には本当、面倒な事になります……ここで、足止めです」
     と望が制約の弾丸を、その大神の口元に向けて放つ一方、狼煙はレイザースラスト、紅音が戦艦斬りで更に斬り込んでいく。
     そして、灼滅者の行動も一巡し、次の刻。
     動きの速いスサノオ大神は、やはり先手を取って動き、容赦無く立ちはだかる灼滅者に食らい付いていく。
     腕に噛みつき、大ダメージを及ぼすも、ナノナノ、蒼生、九十九の三人が集中的に回復し、戦線を維持し続ける。
     そして、美影、星流、葉月の中・後衛陣は、スサノオ大神に対しフリージングデスやイカロスウイング、鬼神変などで、様々なバッドステータスを付与し、敵をバッドステータス漬けにしていく。
     そして、命中し易くなった所に、更に望、狼煙、紅音のクラッシャー達がマジックミサイル、神薙刃、スターゲイザー。
     大ダメージを与える事で、スサノオ大神の体力を確実に、確実に削り去って行く。
     ……防衛線をどうにか維持し……経過する事十数分。
    『グガォォ……!!』
     と、スサノオ大神の咆哮が鳴り響くと……次の瞬間、入口の方からグオオオオ、という唸り声を上げて、待ち構えていたスサノオ達が侵入してくる。
    「来た来た~。援護はするからね!」
     と美影の言葉、それに望、葉月も。
    「ええ。弱ってきましたかね……ここからはサポートに専念します!」
    「分りました。倒さないように注意しましょう。私達で万一にもとどめを刺さないように、特に注意して下さい」
    「おっと、そうだったね。俺たちが倒しちゃいけないんだったよね。それじゃー手加減攻撃中心でいくよ!」
     と声を掛け合う。
     ……そんな灼滅者達の会話を聞いてか聞かずかは分らないが、スサノオ達は獰猛な獣の如く、スサノオ大神の力に対し、食らい付く。
     小さい獣が、大きな獣へ四方八方から食らい付く光景は、弱肉強食の下克上が如く。
     それに獰猛なスサノオ達が食らい付く姿は……本能的に、恐怖心という物を抱かせる。
    「……中々、獰猛なものだな……」
    「うん……スサノオの気というのが、これほどまでに獰猛にさせているのか……それとも、目の当たりにしたスサノオの力に、正気を失う程になっている……とかかな?」
    「……かもしれないな」
    「まぁ、何にせよ、彼らが倒れない様に、俺達は後ろから手を差し伸べるまでだ……」
     星流、狼煙、九十九らが頷き合い、攻撃は手加減攻撃を中心に、状況に応じてマジックミサイルなどを敢て外す様に放つ事で、敵を威嚇。
     更にスサノオ達の体力に注目し、減る前に。
    「落ち着け。少しだけ待て。すぐに治す」
     等と声を掛けながら、イエローサイン、防護符、闇の契約などで、着実に体力を維持する。
     ……そんな灼滅者達の行動に、言葉にはしないまでも、時折振り返る。
     そして、スサノオ達は、数刻の内に大神を隅から隅まで、跡形も無く喰らい尽くし……スサノオ大神の力は、その場に消失していくのであった。

    ●進みし者には
     そして……スサノオ大神の力が消える。
     ホール内は完全なる静けさに包まれ……声も響く。
    「……終わった様ね。どうかしら? ……満足かしら?」
     と紅音の言葉に、スサノオ達は振り返り、小さく唸り、頷く。
     ……そんなスサノオに対し、星流は一歩、二歩と進み出て。
    「……武蔵坂学園でも、スサノオに対して脅威を感じている人はいる……協力に応じない人が居ると思うけど、逆に良い関係を持ちたいと思って居る人も居る事を忘れないで欲しい」
     手を広げ、スサノオに敵意無く、語りかけるように……更に。
    「今……時代は『変革の時』を迎えていると思っている……ヴァンパイアのルイス・フロイス……朱雀門・瑠架も……素直に受け入れ難いとはいえ、共存を望意見を述べている。ナミダ姫にも、スサノオにとって都合が良くてもいい……この先の時代、未来を生きる為の考え、意見を聞かせて欲しい……ルイスや瑠架と同じく、未来について考える同志が欲しい……」
     ……そんな星流の言葉に、スサノオは答え無い。
     ただ……仲間同士顔を寄せ合い、相談している様な……そんな仕草を何度か。
     ……そして、美影が。
    「まぁ、こんな風に皆で協力して、楽しく歩いて行ければ良いのになぁ~って、思うんだよね~。まぁ、ナミダ姫に宜しく言っといてね~?」
     とひらひらと手を振ってスサノオを残して其の場を後にする美影、そして灼滅者達。
     ……洞窟を出て、市街地へと向かう道すがら。
    「……しかし……ナミダ姫は、スサノオ大神の力を食って、どうするつもりなんだろう……? ガイオウガみたいに、一体のスサノオになるのかしら……?」
     と、紅音が軽く首を傾げると、狼煙、九十九が。
    「んー……どーなんだろう。まぁ、大っきなスサノオになったら、きっともふもふで手触り最高なんだろうなぁ……今回のスサノオ達も、結構もふもふだったろうし……」
    「……そうだな……」
     ……ものすごく、撫でたかった九十九。もふもふしたかった狼煙。
     そんな二人に、葉月は。
    「まったく……眼鏡も、くじょんもそんな事を考えていたのですか……揺るぎませんね」
     と苦笑する。
    「だって、あんなに毛並みの良いもふもふを味わえる機会なんてそうそうないだろうし!」
     ……と食い下がる狼煙をはいはい、と適当にあしらいながら。
    「まぁ、これで敵対勢力が減れば良いのですが……」
    「そうね……」
     望に頷く紅音。
     そして灼滅者達は……スサノオが出るよりも早く、早々にその場を跡にするのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年3月31日
    難度:普通
    参加:7人
    結果:成功!
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