大神の力、求めしモノ

    作者:カンナミユ

    「スサノオのナミダ姫から武蔵坂学園に対して、協力を願う連絡が来た」
     結城・相馬(超真面目なエクスブレイン・dn0179)は資料を手に、灼滅者達へと話を切り出した。
     だが、協力を願うとはいうものの、可能であれば、という程度らしい。
    「断ったとしてもデメリットはないんだが、ここでナミダ姫に協力して恩を売る事ができれば、ノーライフキングとの戦争時にスサノオ達がノーライフキングの援軍として現れるのを阻止できると思われる」
    「援軍にスサノオが?」
     話す相馬に灼滅者の一人がぽつりと口にした。
     スサノオは多くのダークネス組織と協力関係にある。その為、ノーライフキングとも当然友好関係にある。
     だが逆に、武蔵坂学園とは前回の援軍で貸し借りなしの状態となっている。今の状況でノーライフキングと武蔵坂学園とが争えば、スサノオは友好関係であるノーライフキングに味方するだろう。
    「ノーライフキングへ味方する事を阻止する事ができるのならば、この協力には充分に意味があるだろうと俺は思う」
     そう言い、相馬は資料を開き、灼滅者達へと説明をはじめた。

    「ナミダ姫とスサノオ達は、ガイオウガが灼滅された事で、スサノオ大神の力を喰らえるようになった。その為、日本全国に封じられていたスサノオ大神の力を喰らう旅を続けていたらしい」
     ぺらりと資料をめくり話すのは、ナミダ姫達についてだ。
     攻撃を受けたスサノオ大神の力は、その力を奪われない為に『強いスサノオの力を持つ者の侵入を阻止する結界』を編み出して、自分達の身を守ろうとし始めたという。
    「この結界によってスサノオ達が直接、スサノオ大神の力を攻撃する事ができなくなってしまった。今回、武蔵坂学園の灼滅者に協力を願ってきたのはこの事情があったから、らしい」
     今回ナミダ姫から依頼があった、スサノオ大神の力が封じられているのは埼玉県秩父市の山奥にある、人里離れた誰も知らない場所。
     そこには洞窟のような場所があり、入り口でスサノオの戦士数名が待っている。そこで合流してスサノオ大神の力の所へ向かって欲しいという。
     スサノオを戦士はどんなモノ達なのか灼滅者が問えば、エクスブレインは資料へと視線を落とす。壬生狼組と似たような人狼タイプのスサノオが3体に、人間形態のスサノオが1体だと答えた。
    「ナミダ姫からの情報によればスサノオ大神の力は、巨大な狼のような姿を取っており、見た目や能力は狼型のスサノオに酷似しているようだ」
     青白い炎を纏った7メートルほどのそれは強敵であるという。
     だが、ある程度――体力を半減させれば結界は破壊されるので外で待機しているスサノオ達が戦闘に加われるようになるという事を説明し、
    「結界を破壊しスサノオ達が合流した後は、彼らだけに任せて撤退しても問題ないが、一緒に肩を並べて戦っていいだろう。ただ、お前たち灼滅者が止めを刺して、スサノオ大神の力を灼滅してしまうと、スサノオ達が喰う事ができず、協力としては失敗となるので注意してほしい」
     蒼炎を灼滅者達が倒さないよう注意を促した。
    「今回の依頼はダークネス同士の戦いに介入する事になるが、我々武蔵坂とノーライフキングとの戦争を考えれば止むを得ない所だろう」
     説明を終えた相馬の言葉はそこで止まる。見れば何やら、思案を巡らせているようだ。
    「……ナミダ姫がこの依頼を武蔵坂学園に持ってきたのは、もしかしたら蔵坂学園と戦わなくて済む理由が欲しかったのかもしれないな」
     あくまでも推測だがと相馬は付けたし灼滅者達へと視線を巡らせ言葉をつづけた。
    「今後の情勢によっては、スサノオ達とも戦う事になるかもしれないが、敵対しないで済むならそれに越したことはない。だかこそ、頑張ってほしい。……頼んだぞ」


    参加者
    外道院・悲鳴(千紅万紫・d00007)
    神虎・闇沙耶(鬼と獣の狭間にいる虎・d01766)
    黒鐘・蓮司(グリムリーパー・d02213)
    刻野・渡里(大学生殺人鬼・d02814)
    鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)
    ラススヴィ・ビェールィ(皓い暁・d25877)
    アリス・ドール(断罪の人形姫・d32721)
    田中・ミーナ(高校生人狼・d36715)

    ■リプレイ


     埼玉県秩父市、誰も知らない山奥に灼滅者達は訪れていた。
     スサノオの姫・ナミダからの頼み――スサノオ大神の力をスサノオ達が喰らう手伝いの為に。
    「スサノオ大神と戦うのは初めてなので、緊張します」
     緊張を隠せない田中・ミーナ(高校生人狼・d36715)は仲間達と森の中を歩く。
     木々に囲まれた、薄暗い森。
    「……ナミダ姫に貸し借りとか……駆け引きには……興味ないけど……」
     長い金糸が風に揺れ、アリス・ドール(断罪の人形姫・d32721)は周囲を見渡しながら誰に言うでもなく口にし、
    「……これから先の戦いで……みんなの苦労が少しでも和らぐなら……がんばるよ……」
    「まぁ妾はどちらでも構わぬが、面倒事になるのは嫌じゃからのう。ナミダとも戦わずに済むのなら、それはそれで良かろうて」
     外道院・悲鳴(千紅万紫・d00007)も言い、歩く。
     相手は様々な勢力と友好関係を持つスサノオ達だ。面倒な事はないに限る。
     どれほど歩いたのだろう。森は開き、その場所へとたどり着く。洞窟らしき入口では、既にヒトならざるモノ達が灼滅者達を待っていた。
    「まぁ、殺るしかねぇ時は殺りますけど。とりあえず、今の所は手伝ってやりましょーかね」
     遠目からでもわかるその姿を視界に留め、黒鐘・蓮司(グリムリーパー・d02213)がじっと見据えれば、エクスブレインが説明した通り、人狼タイプのスサノオが3体にヒトの姿をしたスサノオが立っている。こちらに気付いているようだ。
    「一応名乗っておくのが礼儀ですかね。神虎闇沙耶です」
    「共に戦う者として出来れば全員の名前を聞いておきたい」
     狐面に着物姿の神虎・闇沙耶(鬼と獣の狭間にいる虎・d01766)に続いて名乗り挨拶を済ませた鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)は全員がスサノオ達に協力する旨を伝え、互いに安心して戦えるよう名をたずね。
    「ラススヴィという。名前を伺っても良いだろうか?」
     ラススヴィ・ビェールィ(皓い暁・d25877)と刻野・渡里(大学生殺人鬼・d02814)も軽く挨拶と共に名乗る。
     灼滅者達を前に人狼タイプのスサノオ達の表情はうまく読み取れないが、人間形態のスサノオの表情は読み取れた。銀髪のダークネスは銀の眉を寄せ、なにやら思案を巡らせている。
    「ギンロウだ」
     腕を組んだまま、ヒトの姿をしたダークネスは静かに名乗った。信じていないからか他の3体は名乗らないし、ギンロウも名を告げない。行動で示せば、いずれ信用するだろう。
    「君達はナミダ姫からの手伝いを請けたと聞いているが」
     ギンロウの声は落ち着いており、ヒトならざるモノだと誰が気付けるか。
    「……まぁ、アンタら敵に回すと厄介そうなんで。色々とね。だから一応協力はさせてもらいますよ、今回は」
    「今回は、ね」
     蓮司にギンロウは応え、
    「私達はスサノオさん達に協力してスサノオ大神と戦います」
    「最後まで共に戦い、トドメは譲る。全員で話し合った事だから、心配しないで欲しい」
     続くミーナとラススヴィに頷いた。
     灼滅者達の方針にダークネス達から反対の声は上がらなかった。
    「結界が消えた後も援護は致しますので」
    「期待している」
     闇沙耶に静かに言い、段取りを相談したのち、灼滅者達は暗い洞窟中へと歩き出す。


     薄暗い洞窟は、進めば目も慣れてくる。
     ごつごつとした岩場を避け、歩き、広い場所へと出る。
    「あれがスサノオ大神の力」
    「大きいですね」
     言う渡里に闇沙耶は頷いた。
     青白い炎を纏う、スサノオ大神の力。体は大きく、エクスブレインは強力だと話していた。
     ――だが。
    「だが、体格だけで勝てるとは限らないのだ」
    「そうじゃな、結界さえ消えてしまえばこちらのものじゃ」
     槍を手に悲鳴と闇沙耶は仲間達と共に巨大な姿を見上げた。
     7メートルほどのダークネスが張り巡らせた結界は、ギンロウ達スサノオを阻んでいる。だが、体力を削ればそれも消えるのだ。
     ……オオ、ォ……。
     膝を折り眠っていたダークネスは侵入者に気付いた様だ。閉じていた瞼は開かれ、ぎらりと異様な光を放ちながら立ち上がる。
    「さぁて。めんどくせーけど、殺さねー程度に削ぎますか」
    「頑張りましょう」
     蓮司とミーナは得物を構え、
    「手筈通り行こうか」
     脇差とラススヴィも戦闘態勢を整えた。
     青白い炎は燃え盛り、霊犬を伴い渡里が見れば、スサノオ大神の力が見下ろしてくる。
     その眼光、発する気。楽に勝てる相手ではないが、結界が失われるまでの辛抱だ。
    「……アリスたちは……あなたを……食べる手伝いにきたの……。生きたいなら……あなたは全力で抵抗して……当然のことだから……」
     オオ……オオオォォォオオオ!!!
     洞窟内を揺るがすほどの雄叫びを上げ、青白い炎はゆらめき、動く。


    「くるぞ!」
     上体が跳ね上がる姿に脇差は声を上げる。
     グオオオオオオオ!!
     ずど、ん!
     地を揺るがす轟音と衝撃波。
    「くっ、!」
    「……ありがとう……ミーナ……」
     礼を言うアリスにミーナは応え、前を見据えた。
    「さすがスサノオ大神の力ですね」
     相手は一筋縄ではいかない相手だ。ディフェンダーであってもダメージは無視できない。
    「こちらも攻撃を開始しよう」
     衝撃波を斬艦刀で防ぎ、面の奥で闇沙耶は言い、影を放つ。死角に回り込み斬り込む脇差の上を超え、岩場をアリスは飛んだ。
    「……斬り裂く……」
     グルアァ!
     得物を狙う狼の如く閃く刃。脇差に続き足を斬り裂けば、ばっと血が飛び散った。
    「俺もその力を、削がせてもらいましょーかね」
     得物を構え、蓮司も死角へと回り斬り裂くと、さすがにスサノオ大神の力も攻撃を甘受はしない。ラススヴィが繰り出す妖冷弾をいとも簡単に避けてしまう。
    「サフィア、オレ達もいこう」
     渡里の鋼糸はかする程度にとどまり、伴う純白の霊犬・サフィアの攻撃も避けられてしまった。ミーナのレイザースラストも。
    「さすがスサノオ大神の力というだけあるのう」
     命中はしても大きなダメージは与えられていない。
     悲鳴が展開させる癒しがふわりと舞い、仲間達の傷は癒えていく。
    「ありがとうございます、悲鳴さん」
     守りで受けた痛みが薄れ、ミーナは礼を言いながら前を見れば、スサノオ大神の力は纏う炎を揺らめかせ。
    「闇沙耶!」
     がぎ、ん!
     それに気付いた脇差の声に応え、巨大な爪を斬艦刀が打ち。払うと共にレーヴァテインを叩きつければ、アリスの幻狼銀爪撃が斬り裂いた。
    「手強い相手だが、負ける訳にはいかない」
     渡里は口にし、サフィアと共にスサノオ大神の力へと向かった。
     相手は強力なダークネス。
     灼滅者達は青白い炎と共に繰り出される攻撃をかいくぐり、戦いを続けていた。
     グオオオオォォォオオオオ!!!
     響く咆哮、そして青白い炎が命の如く燃え盛り。
     仲間達が受けた傷を悲鳴が癒し、ミーナと闇沙耶が盾となる。
    「タイミングが分かればこっちのものだ!」
    「……斬り裂く……」
     スサノオ大神の力の攻撃タイミングを読み、避けた脇差が振るう黒い影の刀は胴を斬り裂くと、足場を動き回るアリスの絶刀が追い打ちをかけると青白い炎に包まれた巨体がぐらりりと揺れる。持ち直し、立て直すがあと少し。
    「もう少し削がせてもらいますよ」
     蓮司に続くラススヴィは状態異常を重ね、天星弓を構える渡里は彗星撃ちを放ち。
    「さあ、妾の舞を見るが良い!」
     ミーナの攻撃に続いて悲鳴は舞う。それは代々伝わる外道院流裏舞踊。
     華麗な舞いは死角へと回り込み、ダークネスへの一撃となる。
     ふと、ぴんと張り巡らせた何かが消えたような気がした。
    「結界が……消えた?」
     渡里と共に戦う霊犬もそれを察する事が出来たようだ。
     結界が消えたというのならば。
     ――おおおおぉぉぉおおおお!!
     それは、ケモノの咆哮にも、ヒトの雄叫びにも聞こえた。
    「来たのか。ならば協同戦と参ろうか」
     響く声は消え、闇沙耶はやって来たスサノオ達の姿を目に留めた。
     羽織りをばさりと落とすギンロウの腕はヒトのそれではなかった。胴着の袖から出る腕は、ラススヴィがそうであるように人狼のもの。
    「あいつは攻撃前に炎が揺れ動く」
     攻撃の前兆をよく見ていた脇差からの声にギンロウは微かに頷いた。
    「ソホ、トクサは右、シコンは私と左に回れ」
     断罪輪を手に天魔光臨陣を展開させるラススヴィは知らぬ名を聞き、それが3体のスサノオの名だと悟る。
     二手に分かれたスサノオ達は咆哮と共に鋭利な爪で斬り裂いた。さすがダークネスといったところか、その一撃は灼滅者達のそれよりも、重く、大きい。
    「なかなかの腕だな。いつか手合わせ願いたいものだ」
     ヒトならざる腕がダークネスの胴を裂く。ギンロウの重い攻撃に闇沙耶は口にし攻撃に出る。
     このまま4体だけでも倒せそうな勢いだが……。
    「……ッ!」
    「ぐ、っ……」
     ふとした隙をつかれ、右に回ったスサノオ2体が攻撃を受けてしまう。
    「サフィア」
     渡里の声に呼応するかのように動き、傷を受けたスサノオの傷はすっと癒えた。
    「一緒に戦うのですから、当然です」
     何故、ダークネスの傷を癒すのか。そんな瞳がちらりと向けられミーナは答え地を蹴り、スサノオ大神の力へと飛び掛かる。
     結界も消え、スサノオ達ダークネスが4体も加勢に加わり――灼滅者達はスサノオ達のサポートに回ったのだが、ダメージを受ける事はそう多くなく、あっという間に形勢は逆転した。
     スサノオ大神の力を灼滅者達が倒さぬ様、事前に打ち合わせたとおりに仲間達は動く。回復を受けた事に加え、その行動にギンロウ達も表立って警戒して戦う事もない。
     ヒトの姿をした、ヒトならざるモノの戦いをアリスは注意深く観察し、スサノオ大神の力を倒さぬ様に手加減で攻撃する。
     体力を半分は削り、そこにダークネスが4体も増えれば、戦いは長くは続かない。
    「っと、とどめ刺すところだった」
     そろそろ限界も近い事に気付き蓮司は手にする得物を内に収め。
    「後は任せたぜ」
    「トドメを」
     脇差とラススヴィが言えば、スサノオ達の咆哮が重なり、容赦のない攻撃が畳みかける。
     オオオ! ……オォ……オ……。
     飛び散る血しぶきと共に体を纏う青白い炎は徐々に消えてゆき――、
     ずうぅ、んん。
     音を響かせ巨体は崩れ落ちる。
    「さてと、依頼はこれで完了だ」
     闇沙耶は言いながら、戦いで崩れた着物を直す。
     戦いも終わり一息ついたミーナは片づけをしようとするが、目前の光景に息を飲み、仲間達も立ち尽くす。
     ――大神の力を求めたモノ達を灼滅者達は、見た。


     ばぎり、ぐぢゃ。
     ダークネス達は倒したスサノオ大神の力を喰らっていた。
     血濡れた手で肉を裂き、引きずり出した臓腑を、そのまま喰らう。ぼりぼりと骨を噛み砕き、喰らい尽くす光景は直視できるものではないだろう。
     血肉を喰らい、内に収めゆく力。ダークネス達の力は次第に強くなっていく。
     血の匂いが充満し、咀嚼する音が響く中で灼滅者達はその光景をただ見守っていた。
     役割は済んだ。立ち去っても問題はない。だが、去る訳にはいかなかった。
    「聞きたい事がある」
     文字通り『跡形もなく』喰らいつくしたスサノオ達、その中のギンロウへ悲鳴は話しかけた。
    「聞きたい事?」
    「ナミダ姫が武蔵坂学園との戦いを望んでいないように見受けられるのは何故じゃ。その事について配下達はどう思っておる」
    「ノーライフキングに恩があるのか?」
    「ノーライフキングだけではない、ナミダ姫陣営が恩を受けた種族・勢力についても教えてくれぬかのう」
     悲鳴の問いに渡里は純粋に気になった疑問を口にし、
    「何故スサノオ大神の力を喰らう。その力を喰らって強くなった結果が、その人型の姿なのか?」
    「力を集めた後はどうする心算なのか?」
     スサノオ大神の力を喰らい、集めるスサノオへの疑問を渡里と脇差が向けた。
     重なり続ける問いを聞きながら口元の血を拭うギンロウだが、答えるのに時間はかからなかった。
    「君達に答える義理はない」
    「義理はない? 一般人に危害を加えるつもりなら容赦はせぬぞ!」
     あっさり言い放たれ、悲鳴は眉根を寄せる。もちろんギンロウもその一言で納得するとは思わなかったようだ。
    「では聞こう。親しくもない、名も知らない相手から『あなたはどうして私とも仲良くなりたいの? それについてあなたの仲間はどう思っているの? あなたは誰と仲がいいの?』と聞かれて答えるかい?」
    「……………」
     無言が流れ、ヒトの姿をした、ヒトならざるモノは灼滅者達へとぐるりと視線を巡らせ更に言う。
    「我々が様々な勢力と友好的ならば、武蔵坂とも友好的な関係を持とうとする事は不思議ではないだろう。それにだ、仮に我々が武蔵坂と友好的になったとしても、武蔵坂よりも多く恩を受けている勢力の情報をペラペラ話すと思うかね? 情報を漏らしたとこちらが不興を買うだけだ」
     全くもって正論である。
    「渡里、君は『何故スサノオ大神の力を喰らうのか』と聞いたね。それはスサノオであるからだ。それ以上の理由はない」
     アイスブルーの瞳は見据え、それ以上の事を話す意志を見せなかった。
     再びの静寂。
    「今回の件はナミダ姫に伝えておこう。武蔵坂の者達は違わぬ事無く約束を守ったと」
    「ナミダ姫に伝えてくれないか? 学園との関係を考えてるなら話し合いたい、と」
     これで終いというかのように、乾いた血がこびりつく手が投げた羽織りを拾い上げ、羽織るギンロウへ闇沙耶は言い、
    「無論、学園に来てと言うのは無理だろう。気が向いたらで良い」
    「縁の導きがあれば、それもあるだろうな」
     縁の導き。
    「ナミダ姫に、どうぞよろしく、と」
     その言葉にラススヴィは長い付き合いになる事を願う。
    「願わくば、次に会う時には共に戦える場であることを願う」
     静かな笑みと共にギンロウは仲間達と共に歩き出す。
    「私の名前は田中ミーナといいます。よろしかったら、みなさんのお名前を教えてもらえませんか?」
    「……名前……いってなかったね……アリスだよ……別に覚えなくてもいい……またね……」
     名を問うミーナにギンロウ達は再び名前を告げ、アリスの名乗りにダークネス達は目礼し去っていく。その姿を蓮司は見守った。
     どこかで遠吠えが聞こえたような気がしたが、それはケモノのようにも、ヒトの雄叫びのようにも聞こえた。

     こうして灼滅者達とダークネス達は別れ、それぞれの帰路につく。
     この先、どのような縁が灼滅者達を導くのは、まだ誰も知らない。

    作者:カンナミユ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年4月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ