狐の嫁入り道中

    作者:四季乃

    ●Accident
    「ラジオウェーブによるラジオ放送が確認されました」
     放置していればいずれ電波によって発生した都市伝説が、ラジオ放送と同様の事件を起こしてしまう。五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)はそのような前置きを述べたのち、放送の内容を語り始めた。

     狐の嫁入り。
     その地域では人間の女性がお狐様の元へと嫁ぎ、その祝いとして里には五穀豊穣、商売繁盛が与えられており、人と獣の秩序は保たれていたとされている。言わば、仲を取り持つ関係であるのだと。
     お狐様は人間の嫁をたいそう可愛がって後生大事にされていたそうなのだが、ある代に『これは人身御供である』と呪いの言葉を吐いて自害した娘も在るという。娘はお狐様の嫁御になるのだと幼少期より言い聞かされて育ってきたが、その実、里に好いた男が居り己の先を悲観したが故の行いであった。
     もちろん、里の者たちは娘の死を、そしてその身に背負わせた宿命を憂い、恥じた。
     だが、娘の呪いの言葉は狐たちにとってしてみれば侮辱である。それより里と山の獣たちの仲は冷えて歪に曲がり、いつしか贄のような思いで娘たちを差し出すようになってしまったという。そうしなければ、加護を失った里の作物は上手く育たず、生活がままならなかったのだ。
    「獣の嫁になぞ、なりとうない。お前が代わっておくれ」
     輿入れ前の娘御は、己の代わりにお狐様の嫁になってくれる女を探している。自分がこの因果から逃れられるなら、例え傷つけてでも――。

    ●Caution
     小さな稲荷神社を山の裾野に構えたその里では、古くより狐の嫁入り――狐火が目撃されていた。
     ゆえに姫子はこの地にラジオ電波の影響で都市伝説が発生し、女性が襲われるのも時間の問題だと判断したらしい。
    「場所は稲荷神社へ通じる竹林の小路になります」
     出現するタイミングは、陽が沈んだ宵から深更。放送によれば、闇の中から突如現れた狐の嫁入り行列が、自身を取り囲んで抜け出せないまま連れて行かれているとされている。
     女性が一人で歩いていたり、女性たちだけで集まっていたりといった状況であれば誘き出しは難しくないだろう。
    「……薄暗いのであれば女性のふりをするのも手かもしれませんね……?」
     姫子の小さな呟きに、灼滅者たちはそっと目配せする。
     都市伝説の娘は、まだ十代後半の姿をしているようだ。
     若い少女や女性を浚い、自分の代わりになってくれることを強く望んでいる。そのためならば少々荒っぽい手段を使ってでも、と放送内で語られていた通り、行列で惑わせてくるのは勿論、守り刀で襲ってくる可能性も強い。
     ただ行列が娘の配下になるのであれば、娘自体はそう強いものではないだろう。
    「ですが、これらは放送内で得た情報のため予知ではないのです。可能性は低いと思われますが、万が一にも予測を上回る能力を持つ場合があります」
     どうかくれぐれも気を付けて欲しい、と姫子は注意を促した。
     赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)の調査によって、都市伝説を発生させるラジオ放送を突き止めることが出来た。その情報を得る事ができるようになった事は大きい。悲劇の女性をこれ以上増やしてはならない。
    「竹林は神社側の計らいで灯籠に火が入るそうです。少々薄暗いかもしれませんが、油断されぬよう注意してくださいね」
     そうして姫子は小さく首を傾げると、本物の狐火が見れたらどうしましょうね、と頬に手を当てて少し悪戯っぽく微笑んだ。


    参加者
    水瀬・ゆま(蒼空の鎮魂歌・d09774)
    ルティカ・パーキャット(黒い羊・d23647)
    饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)
    富士川・見桜(響き渡る声・d31550)
     

    ■リプレイ

    ●小路
     冷ややかな風が足元をすり抜けていく。
     腰に下げた照明器具が音を立てぬよう手の平で抑えつけながら、前方遠くに見える女性たちの背中を注視していた饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)は、ふとエクスブレインから聞いたラジオ放送の内容を思い出していた。
    (「……うちの里を思い出すような都市伝説だねー……人身御供は里そのものだったけども」)
     それにしてもこの伝説。狐の方は案外、物分かりがよさそうな感じであるのだから、きちんと本人の意思を話し合う事が出来ていたら、悲劇にはならなかったのではないだろうか。樹斉はゆるりと背後を顧みて、ちらちらと灯りのついた里を瞳に映すと僅かに表情を曇らせる。
    (「……でもそれはそれ。人を傷つける伝説になったなら、潰さないとね!」)
     ぎゅ、と両手で拳を作って決意する。
     するとその時、ぽん、と肩に何かが触れて心臓が縮み上がる。うっかり出そうになった悲鳴を慌てて抑え込み、驚いて、いっそ飛び上がりそうになったものの、こちらを覗きこむロードゼンヘンド・クロイツナヘッシュ(赤紅・d36355)と視線が交わり合うと、強張った肩が徐々に解れていく。
    「大丈夫か?」
     彼の問いにこくこく、と頷くと、ロードゼンヘンドは人差し指で前方を指差し「ゆっくり追いかけよう」既に小さくなっている女性たち三人を一瞥する。
     二人は気配を殺し、彼女らの談笑する声が届く距離を一定に保ちながらあとを追いかける。まだ嫁入り行列の姿は見えぬが、出現するのもそう遠くはないだろう。そろそろ己等が隠れる場所を見繕っていた方が良いかもしれない。
     ロードゼンヘンドは灯籠の影に視線を走らせていた。
    (「いやぁ、愛とは全くもって大変なモノだねぇ。どのようなモノであろうと否定するつもりはないが」)
     漆黒の髪から覗く紅い瞳をしならせる。
    (「……大勢に迷惑になるなら少し考えてしまう、ぞ」)

    ●行列
    (「自分の身代わりに誰かを差し出すことはしたくないよね」)
     富士川・見桜(響き渡る声・d31550)は隣を歩くルティカ・パーキャット(黒い羊・d23647)と水瀬・ゆま(蒼空の鎮魂歌・d09774)の姿を横目に、小さな吐息を噛み殺していた。
    (「でももし私がそう言う立場になったとき、私は毅然とした態度をとれるのかな」)
     これからいっそう戦いがきつくなって闇落ちしたり、死んだりするかもしれないって時に。それでも何かを守るために前に進めるのかな――。見桜の胸の内を叩く思いに返事はない。
     けれど。それでも。
    (「笑いながら前に進めるように。それが憧れた背中だから」)
     冷えた指先を握り締める。
     決心の付いた様子で前を見据える見桜の横顔を盗み見て、ゆまは細く連なる小路へと視線を滑らせると、金色の瞳に聊かの影を落とす。
     そんな時だ。
    「狐さんへのお嫁入り……。京都の野々宮を思わせるこの竹林といい、まるで斎王のようですね」
     ぽつりと零されたゆまの言葉に、ルティカと見桜の視線が向く。
     彼女は少し思案したのち「狐の嫁入りには、哀しい伝説があるそうです」と口を開いた。
    「悲しい、とな?」
    「はい。雨乞いをするために、村人が狐を騙して生贄にしたお話で……村の若者と恋におちた狐さんは、全てを知って若者のお嫁さんになって、生贄になったといいます」
    「今回の都市伝説とは反対だね」
     見桜の言葉にゆまが頷く。
    「でも、どちらにしても、何かを犠牲にして繁栄を手にすることの哀しさを感じます」
     ゆまが睫毛を伏せると、ルティカは空を仰ぐように顔を持ち上げる、そのたっぷりとした赤い髪を掻き上げると吐息するように小さく、零した。
    「祝儀はそもそも臨時収入のような物じゃろうに。それをアテにし続ける事がのう……というのは無粋な考え方じゃろか」
    「何がきっかけだったんだろうね」
     微かに困ったような微苦笑を浮かべた見桜に対して肩を竦めて見せた。
    「ところで此処は油揚げでも持って来るべきであったか? ああでも喚ぶのはお狐様の方ではなかったの」
     一人納得した時だ。
     天を突き上げるような竹林の隙間を、一陣の風が吹き抜けて行った。ルティカの白いドレスコートがふわりと舞い上がる。宵を越えた風が足元をくすぐると、それはまだ冷涼でふるりと膚が粟立つほどである。
     普段着の黒ドレスが見えてしまわぬよう、サッとコートを押さえるルティカの指先は白く浮かび上がるようであった。それもそのはず、彼女の足元や指先は全て白く着飾られていたのだ。暗い闇の中でもはっきりと見えるほど浮ついたその姿は、さぞ目立つことだろう。
    「狐への嫁入りでも白無垢を着るものじゃろうか。行列の者はどのような格好なのかのう」
     のんびりした言葉でルティカが問うと「そうだねぇ」見桜が考える素振りで視線を空に向けた、その時だった。
     りぃん。遠くで鈴のような響きの音が鳴ったような気がしたのだ。
     示し合わせた訳ではないにも関わらず、三人の歩みが同時に止まる。息を詰めて前方の暗がりに目を凝らして暫し。濃密な闇を掻き分けるような朱い火が二つ、ゆらりと浮かび上がるのを見た。

    ●道中
    「獣の嫁になぞ、なりとうない」
     その言葉には染み出るような怨嗟の色に溢れていた。
     事前に同様の言葉を聞いてはいたが、エクスブレインの語りで聞くのと実際に娘の声で聞くのとでは大違いだ。まるでこちらが娘を贄に捧げているのではないかとすら、錯覚してしまう。
    「おなごが三人も居るではないか」
     闇の中から突如として現れたその行列。
     提灯を持った先頭の二人が左右に退くと、奥から一人の娘が現れた。立派な白無垢に角隠しを施したその表情は俯いているため窺い知れなかったが、やおら持ち上げられた長い睫毛の下に秘められた瞳は、得物を見定める捕食者のそれである。
    「お前たち全てを嫁にしてしまえば良い。獣もさぞ、喜ぶだろう」
     言うなり、女の細い指先がゆまたち三人に向けられると、まるで操られた傀儡の如く、娘の背後から無数の白装束の者たちが一斉に飛び掛かってくるではないか。それほどまでに距離を詰められていた事に気が付き、咄嗟にゆまを庇うように前へと出たルティカと見桜。武器を握り締めて立ち向かむ。
     だが、彼女らの細い背中を追い越すように闇夜の中をを真っ直ぐに伸びる帯が、眼前に迫りくる白装束の胸を貫いた。振り返ると、獣人姿の樹斉がダイダロスベルトを射出したようで、黄金色の毛並がつやりと光る。
     その奥ではサウンドシャッターを展開したらしいロードゼンヘンドが、クルセイドソードを掴んでその切っ先を振り上げているところであった。
    (「哀れとは思えども、それから逃れる為に誰かを傷つけるのは許されない事。……灼滅を、致します」)
     ルティカと見桜の隙間から娘を真っ直ぐに見据えたゆまは、交通標識を両手で握り締めるとまず前衛たちにイエローサインを解き放つ。その補佐を受けた見桜が、ロードゼンヘンドの繰り出した破邪の白光を放つ強烈な斬撃を浴びて悲鳴を上げる娘へとさらにクルセイドスラッシュを叩き込む。
     行列の白装束たちは「おおお」と嘆きの声を揃えて、娘の周囲を不安そうにうろうろしていたが、彼女の指先に指されると再度、くるりと身を反転させて襲い掛かってくる。その長い裾から繰り出されたのは怪火であった。火の玉とも呼べる、手の平大の球体。
    (「……なーんかすっごい目で都市伝説に睨まれてるような気がするんだけど!? こういう伝説も昔話、今の世には人身御供なんて必要ないのにねー……」)
     それは生き物のようにビュンッと風を切って飛来すると、最前に居た樹斉に向かって突っ込んでいく。しかし、突っ込んだかと思えば眼前で分裂し無数の火の粉となると彼の躯体を呑み込もうとしたのだ。
    「させぬよ!」
     その火の海に咄嗟に飛び込んで行ったルティカは、全身で炎を受け止め、攻撃を庇いきった。身を焦がす焔の熱に目を眇める。ちらちらと燃える向こう側で娘の唇がにぃと持ちあがるのを見た気がした。
    「獣も野を駆けまわれる、強いおなごの方が良かろうて」
     どうにも褒められているのか貶されているのか分からぬ台詞に、ルティカは炎を払落しながら小さく呼気を洩らす。
    (「我の此の黒装束は喪服代わりのようなものじゃが――しかしかような事情を考えると、此度のこの白装束の一行も葬列に見えてくるの」)
     自身を集気法で回復しつつ、ちらり、と前方の白い集団に目を向ける。
    (「日本の死に装束は白と聞いておるで。あながち間違いでも無いように思えるのう」)
     行列は全て人間のようであった。恐らく娘の親類、あるいは村人たち、と云った設定だろうか。それらを指先一つで使役する娘との力のバランスに、苦いものが込み上げる。
    (「狐火とは違うけどもこういうのはどう?」)
     そのようなルティカの思いをよそに。
     先ほどの仕返し、とばかりに赤く揺らめく炎をともした蝋燭を掲げて炎の花を飛ばす樹斉の緋牡丹灯籠が、娘の白無垢を包み込む。惑う娘は、しかし懐から守り刀を引き抜くと、逆手に握り締めて肩口を斬り付けた。
     しかし赤い血を飛び散らせて傷を負ったのは、咄嗟に前へと出た見桜である。彼女は右肩に走る痛みに僅かに目を細めたものの、怪我を感じさせない声音でディーヴァズメロディを奏でている。
    「他人を不幸にしても自分がもっと不幸になるだけなのに、な!」
     ロードゼンヘンドは、クルセイドソードからダイダロスベルトへと持ち替えると、迫りくる白装束たちには目もくれず娘に向かって真っすぐに帯を射出。その軌道は迷う事なく、娘の胸部を貫いた。
     あぐっ、と苦しげに胸を押さえて蹲る娘に比例して、それまで勢いを付けて駆けていた白装束たちの足が静止する。錆びた人形のようなぎこちなさで娘を振り返り、白い顔をさらに青褪めさせている。
     その隙にルティカが見桜へと祭霊光の癒しを与えると、回復の手が必要ないことを確認したゆまがすぐさま斬影刃で娘に追い打ちをかけた。
    「課された運命に抗う事を悪いとは言いません。でも、その為に他人を犠牲にすることも良いとは思えない。それは、抗うのではなく、逃げる事だと、思います」
     繰り出された影の刃が娘の足首を斬り付けると、樹斉が敵の急所を探り出し殲術執刀法の斬撃を叩き込む。
     だが、娘を庇うように白装束たちが一斉に壁となって立ちはだかり、影から娘による怪火が放たれる。
    「どこ見てる?」
     ぞっとするほど至近から聞こえた言葉に、娘が短い悲鳴を上げるより早く。その躯体からパッと血の花が散った。舞い上がる花の向こう、闇にまぎれてこちらを射抜く瞳で見据えるロードゼンヘンドと目が合い、女の表情が小さく引き攣る。
    「なぜ……なぜわたしの邪魔をする……! なぜわたしでなければならない!」
     駄々のように女が叫ぶと、身を守るように固まっていた白装束たちが一斉に飛び掛かってきた。それは前衛たちに向かって、鎌鼬の如く烈火の斬撃、打撃の嵐を振り下ろし、もはや熱でしかない痛みが肢体を襲う。
     慌ててルティカとゆまがセイクリッドウインドとイエローサインで回復をはかろうとしていたので、見桜が進んで前に出てその視線を一心に受け止める。
    「私があなただったら、どうしたんだろう。もしかしたらやる事は変わらないのかもね」
     クルセイドソード『リトル・ブルー・スター』の柄を握り締め、その五指から伝わる感触に、見桜は一度、視線を落とした。まるで自分に言い聞かせるような言葉に、娘の興奮で赤らんだ頬の色が僅かに引くのが分かる。
    「私だって、私たちのためにあなたにいなくなってって、言ってるんだからね」
     首を傾げ、痛ましげに眦を下げて笑う。その表情に、一瞬、娘の身体から力が抜けるのが分かった。いや、それはおそらく、毒気を抜かれたといった方が近いかもしれない。思わぬところからの言葉に、虚を突かれたのか、威勢が半減する。
    「お前は悪だ」
     その隙を逃すはずもなく。
     ロードゼンヘンドは側面からジャッジメントレイを解き放つ。その鋭い裁きの光条は、真っ直ぐ、庇いたてる白装束たちをも巻き込んで娘の上体を駆け抜ける。撃ち抜かれた娘は、天を仰ぎ、悲鳴すらも出せぬまま後方へと身を傾ける。
     ほとり。衝撃で角隠しが頭から零れ落ち、それまで隠れていた黒髪は乱れ、血で汚れた頬に張り付き、娘の表情を露わにする。
     そこには、憎しみに打ち震える唇を必死に噛み締め、怨嗟と、悲壮と、哀切と、戸惑いを一緒くたにしたようなか弱い少女の瞳があった。
    「――時にお主には誰か他に想う相手でも居るのかえ?」
     ルティカが小さく問うと、娘の肩が僅かに跳ねる。眉根を寄せたその迷い子のような表情に全てを悟ったルティカは、「うむ」小さく頷くと見桜の方を振り返った。
    「この世界には居らぬじゃろうてそちらに送らせて貰うかの」
     その言葉に、小さく頷く。
    「これで終わりにしよう」
     言うなり、見桜は駆けた。駆けて、駆けて――双眸を見開く都市伝説の胸に青白い燐光を纏ったリトル・ブルー・スターを深々と突き立てる。
    「さよなら」
     彼女にしか聞こえない別れの言葉は、この戦いの終幕を意味していた。

    ●帰路
     崩れ落ちるように小路に倒れ込んだ娘は、既に言葉も出せぬようであった。
     ひゅるひゅると掠れた吐息を繰り返し、ただ昏々と連なる夜空を眺めている。灼滅者たちに見守られながら小さく唇を動かしたあと、目蓋を下す。そうして白装束たち共々、白い花弁のような欠片となって消えて行ったのだった。まるでそれは、祝いの花にも、献花にも見えた。
    「これは誰の思いだったんだろうね」
     見桜はなんとはなしに周囲を見渡して、ぽつりとそのような事を呟いた。思案するように、どこか言葉を口にするのを躊躇うような灼滅者たちであったが、頬に掛かる黒髪を掻き上げて吐息を零したロードゼンヘンドに至っては、小さく肩を竦めるだけだ。
    「もっと話し合いをしてたら考え方は変わっていただろうに……あ、もしかして灼滅者とダークネスもこんな関係?」
     そう言われてしまえば、返す言葉がない。
    「そういえば此の先に稲荷神社があるのかえ。お参りに行っても差し支え無いかのう?」
     静まり返った場の空気を払拭するようにルティカが問うと、姿が戻った樹斉がしゅびびっと挙手をした。
    「豊穣を祈るのはいつの時代も、だしね!」
    「そうですね……私も娘さんの成仏を祈るのと同時にお狐さんにお詫びをしたいです」
     出来ればもう一度、人間と仲良くなってもらえるように、祈りを。その言葉を聞いて、彼らは「決まり」と手を打つと夜半の小路を再び歩き出した。戦闘の為に持ち出したランタンが闇を掻き分けていく。
     灯りの温かさが、なんだか膚に沁みるような、そんな夜のことであった。

    作者:四季乃 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年4月6日
    難度:普通
    参加:5人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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