その名はRB団!

    作者:相原あきと

     武蔵坂学園10月の学校行事、マラソン大会。
     今年は10月31日に開催されるこの行事は、学園を出発して市街地、井の頭公園、吉祥寺駅、繁華街、そして最後に登り坂を駆け上り学園に戻ってくる全長10キロのコースだ。
     ちなみにマラソン大会をエスケープしたり、不正を行おうとする者は、魔人生徒会の手の者により捕らえられて罰を受ける。
     そしてここにも、魔人生徒会よりエスケープ者を取り締まる仕事を任された生徒達がいた……。

    「見て下さい! バレー部よりアタックマシーンを借りてきました!」
    「おお、これでエスケープを決め込もうという不届き者達を捕殺できそうだな」
     魔人生徒会より委託され、屋上にてマラソン大会をエスケープする不届き者をサーチ&デストロイする役の学生2人が、バレーボールを撃ち出すマシンを設置しつつ歓声をあげていた。
     しかし……。
    「ぐっ」
    「がはっ!?」
     倒れる2人の学生、背後からは金属バットを持った学生の集団が立っていた。彼らは仮面を付けた生徒と素顔のままの生徒が混じっていたが、そのどちらからも何か恐ろしい怨念のようなものが感じられた。
    「このエリアは我らが乗っ取った! 我らがシンボルを!」
     ワー!と歓声をあげる黒い顔の生徒達。屋上に『R』と『B』の文字が校庭に白線を引くアレで描かれる。
    「聞け! 世の中には2種類の人間がいる。それはリア充とリア充を殺したい人間だ!」
    「マラソン大会にうつつを抜かしてイチャイチャする不届き者、怪我を理由に魅惑の保健室へ行こうとする不埒者を、我らは正義の名の下に処罰する!」
    「そう、それこそが使命! それこそが宿願! それこそが至上の命題!」
    「ところでお前、なんで仮面付けてないの?」
    「え、だって身バレしたって構わねーし」
     熱く、暑苦しく、厚かましい集団だった。
     彼らに統率者は無く、全てが同志だった。
     彼らは自然発生し、気がつくと自然へと帰って行く。
     メンバーに誰がいるかは不明、どう連絡を取り合っているかも不明。
     しかし、彼らは確実にリア充が発生するタイミングで……自然発生する。
    「今日のコースは把握しているか?」
    「本命は井の頭公園、対抗で商店街、穴で学園です!」
     井の頭公園はお弁当やお散歩スポット、これは確かにリア充の発生率100%中の100%!
     商店街はエスケープスポット、マラソン大会から逃げだしたリア充どもがいる臭いがプンプンするぜぇ?
     学園はスタートしたと見せかけて隠れていちゃつくには好都合の場所だ。だが、魔人生徒会のお膝元なので可能性は限りなく少ない。
    「リア充どもはマラソン大会をエスケープしていちゃつくはずだ。我らはそんな不届き者達に正義の鉄槌を下すのだ!」
     歓声があがる。
    「ところで、イチャイチャしながら走ってる奴らはどうするんだ?」
     真面目に走ってる奴はエスケープ者とは言えない。そんな生徒に罰を与えれば……。
    「気にするな! ここは戦場だ! 流れ弾ぐらい当たって当然!」
     それもそうか。
     ってか、いつからここは戦場に? まぁ気にしないけど。
     彼らは異様なオーラを放ちつつ天に吠える。
    「作戦は!」
    「目に付いたリア充の撲滅!」
    「合い言葉は!」
    「リア充爆発しろ!」
    「我ら!」
    『RB団!!!』


    ■リプレイ

    ●襲撃スタート

    「世にはびこるリア充を滅ぼす力……人はそれを嫉妬という!」
     校舎裏で白いマスクを被り叫ぶは大浦・政義(d00167)!
    「ジィィク嫉妬ォォ!」
    「リア充に制裁をォォ!」
     モブRB団員達が唱和する!
     そして。

     ちゅどーんっ!

    「我が嫉妬人生に悔いは……」
     飛んできたバレーボールに撃破された。

     屋上、バレーボール発射装置の横には、鼻筋へ左手人差し指を合わせ、右手をピーンと伸ばしたまま右肩をあげたポーズで。
    「圧倒的じゃないか、我が軍は!」
     とセーラー服のコスプレを着た四季咲・青竜(d02940)が立っていた。
     というかもうちょい版権自重してくれ。
     屋上には他に、ブルマ+猫耳猫尻尾の彩瑠・さくらえ(d02131)、胸の大きく空いた黒ボディコンにジュリ扇姿の古河・菖蒲(d02394)、そして愛と正義のセーラー(略)な格好の木村・洋子(d03648)がいた。
     そして死屍累々なモブRB団員達が転がる。「……RBするならワタシと一緒にRな事しません?」とさくらえに釣られ(注さくらえは男です)たり色仕掛けで撃沈した躯だった。
     もっとも、「似合ってるわ」と洋子のミニスカをめくった菖蒲が、逆に色仕掛け中に洋子から胸元を後ろからはだけさせられたり、そして「見て無い!」という訴えは聞きいられずボコボコにされて死んだRB団員も少なく無い。
     さて屋上の端では「金髪枠ですか」とジンザ・オールドマン(d06183)が黄色のセーラー服を手に呟くが、その瞬間悪寒が走って全力ダッシュ!
     振り返れば仲間のはずの菖蒲が追いかけてくる。なぜ彼女はジンザを追うのか?
    「意味なんてない」
     ジンザはRB団に爆殺されて良いんじゃね?
     ちなみに屋上にはこっそり第三の勢力がいた。つまり、リア充とかどうでもいい三種類目の人間。給水塔の上で寝っ転がってイヤホンつけて動画見て……しっかりエスケープしているサリィ・ラッシュ(d04053)だ。というかキミは高所恐怖症なのになぜ屋上にいる? まぁいいか。

     榊・くるみ(d02009)はパンを加えて走っていた。明らかにマラソンに不向きだ。
     そして四つ角を曲がった時!
     ドンっ!
    「いたた……ご、ごめんなさい」
    「大丈夫かい、ひざを擦りむいてるじゃないか」
     大事なターバンでくるみの膝を手当てするのはタージ・マハル(d00848)だ。
    「ああ、大切なターバンが……」
    「くるみの怪我が大事だよ」
    「マハルさん……」
    「くるみ……」
     古典的ボーイミーツガール。
     そして降り注ぐ手榴弾!「神様は仰ったっす! 汝、殺す事なかれ……でもリア充は爆発させてオッケー!」 
     RB団はメアリ・シュタットフェルト(d08383)だった。
    「決して羨ましくなんて無いっす!」
     と再びおもちゃの手榴弾を投げつけるメアリ。
     しかし、手榴弾の1つが脇を走っていた峰・清香(d01705)に流れ弾として命中。
    「喧嘩を売ったな? よし買った!」
     喧嘩目的の清香はメアリに向かって疾走、至近距離喧嘩技で連撃!
     対するメアリも特殊部隊で培った技術で応戦。
     そして4週に渡るシリアスバトルシーンが展開される!……が涙を飲んで割愛だ!
     ちなみにくるみはタージに姫様抱っこで逃走しました。

     ここはマラソンコースを外れた学校近くの喫茶店。
    「10キロなんて走ってられないわ」
    「せやな~」
     そこには2人のエスケープ者、私服の鷲宮・密(d00292)と、エスケープ途中で良さ気な喫茶店に逃げ込んだ逢坂・啓介(d00769)だった。
     そんな喫茶店に入ってくるのは中学生の女の子。密はスっと席を立ち私服を活かして横をすり抜けるが、啓介は少女、百瀬・莉奈(d00286)に手を掴まれる。
    「もしかしてRB団の人? それともサボり……? 莉奈も走りたくないんだぁ、ねぇ、一緒にここの美味しいの食べない?」
     安堵と共に同席する啓介だが、少しして魔人生徒会の者がやってきて首根っこを捕まえられる。
     莉奈は魔人生徒会の協力者だったのだ!
    「ちょっ、たんまたんま!」
     スマートに密離脱、そして啓介罰確定。
     ほんの僅かな心配りが命を左右する……今日はマラソン大会。

    「ヒャッハー! 木偶狩りだぁ! 一人残らずとっ捕まえろぉ!」
     汚物は消毒だー!と好きな言葉の通りに自転車を走らせるのは神楽・三成(d01741)だ。
     ちなみに彼は魔人生徒会側である。
     他に絡まないでも面白いってネタ的にずるくね? 好きだけどさ!
     そんな三成の後ろ、釘バットを肩に担いで威嚇しながら歩いてくるのは篠雨・麗終(d00320)だ。
     その前に現れるRB団!
    「お前からもリア充の臭いがしないぞ!」
    「なんで俺達を!」
     悪鬼羅刹の形相で麗終が釘バット一閃、バタバタ倒れる団員達。
    「嫉妬乙」
     そんな死体の転がった道をラブラブオーラで走ってくる風巻・涼花(d01935)と普通オーラの東雲・軍(d01182)。
    「いっくん、今、あたし達ってリア充ってやるかな……? ふひひ」
    「何へらへら笑って……おい、怪我すんぞ」
    「い、いっくんが心配してくれてる! 青春ストライク!」
     おっと筆が滑って心の台詞が「」の中に。
    「幸せそうデスネ。脳みそが」
     ま、繋がったからいいか。
     そんなラブ空間(?)を見て嫉妬の炎を燃やすのはもちろんRB団だ! ズザザっと2人の進路を防ごうとし……ヒーローっぽいのに立ち塞がられる。
    「大会の影で無差別テロを起こすなんて! このトツカナーが止めて見せる!」 升目マントをなびかせて現れたのは十津金・旭(d06921)だ。「え、そのマントは?」「もちろん! 倒した人の仮面を貼って回るんだよ!」「くっ、魔人生徒会の協力者か……せ、先生!」 RB団の群れが割れ現れる1人の女性。
    「さぁさぁ先生、名乗りを上げて下さい!」
    「……名乗らないわよ? 凄く恥ずかしいし」
     秋野・紅葉(d07662)はそう言うとトツカナーと相対する。そして次の瞬間……RB団が紅葉によって壊滅していた。
    「え? え?」
    「マラソン大会をサボろうとしたリア充を襲撃……じゃなくて、取り締まっていくわよ?」
     結局この人はどっちの味方なんだろう? トツカナーは思った。

     さて、今回はRB団が主役の予定だったがリア充サイドはまっこと充実である。
     2人仲良く走っているのは花檻・伊織(d01455)、篠原・小鳩(d01768)だ。
     もっとも伊織に言わせると彼女は中の良い友達。
    「たまに顔を赤くしてぺしぺし叩いて来る癖があるけど」
    「それは伊織が意地悪とかするからです!」
     うがーとぺしぺし。
     くっそう、俺もRB団になって襲撃してやろーか!
     そんな気持ちを代弁するかのように現れるのはRB団!
     ドンッと目の前に桜の樹……ぐるみが現れた。
    「え?」
    「りあじゅーやっつけるのきぐるみー! さくらのきー!」
    「え?」
    「さくさくー!って鳴くの!」
    「え?」
    「季節外れなんて関係なんだよー!」
     それは羽柴・陽桜(d01490)だった。
     スルーして走って行く2人を攻撃しようとして、コケッ、じたばた。
     彼女は【文月探偵倶楽部】のメンバーであり、同じく辻村・崇(d04362)がタヌキの着ぐるみで、文月・直哉(d06712)がクロネコの着ぐるみで現れる、が。
    「必殺ごろごろ攻撃ー!」
    「たぬ! たぬぅぅぅぅ!?」
     いきなり桜の樹に轢き潰されるタヌキ。
    「お、おのれカップル、次の年こそ地獄に落してやるぽんぽこ」
     うん、仲間にやられたんだけど……タイミング的に仕方が無いよねタヌキさん。
     そして倒れた桜の樹とタヌキを見て。
    「同志達よ、お前達の犠牲は決して無駄にはしないぞ!」
     クロネコが決意を新たに赤いマフラーをなびかせる!
    「でも確保な」
     腕を掴まれ振り向けば、そこはエスケープすると言っていた兄の文月・咲哉(d05076)だ。
    「裏切りか!? まさか身内に騙されるとは……」
    「悪く思うなよ?」
     ちなみに陽桜と崇は「何となく可哀相だけど……仕事だからごめんなさいね」と緋薙・桐香(d06788)に確保されていた。
     まぁ知り合いじゃなければナイフで切り刻まれてた可能性があるから……優しく確保でヨカッタネ!

    「逃げる奴はRB団だー! 逃げない奴はよく訓練されたRB団だー!」
     テンション明後日でRB団を追いかけているのは病葉・眠兎(d03104)だ。
     どっちにしろRB団ならよっぽど眠兎の方が無差別テロである。
    「ホント、マラソン大会は地獄だぜー! きゃはっ!」
     そろそろ頭がおかしくなってくる頃合いのようですね?
    「調和を乱す者には制裁を! 規律を守らぬ者には懲罰を! 魔人生徒会ここに推参!」
     それにしてもこの役者志望、如月・昴人(d01417)である。じゃなかったノリノリである。ちなみに魔人生徒会の手伝いな、手伝い。
    「ぶっはっはははははははは~」
     高笑いしつつRB団を成敗しているのはネメシス・インフィニー(d04147)だ。
    「ラブイチャは後でいじるのが王道だと言うのに……」
     とRB団をシメていく。まぁ、その気持ちも解ります。後でいじるの面白いしね!
     そんな魔人生徒会の協力者達だが、ギャグ空間だっつーのに超真面目な人もいる。
     真摯にRB団に呼びかけるのは月望・霧之(d09299)だ。
    「他人を貶めることは自分を惨めにするんだよ」
    「すでに惨めなんじゃー!」
     にべもなく返された。RB団ってそういう人の集まりなんです。
    「RB団……いいだろう、目についた者から狩ってやる。ただでさえ面倒なマラソン大会をこれ以上面倒にするならすべて狩る!」
     ガチで戦闘プレまで書いてるのは西院鬼・織久(d08504)だ。
     だーかーらーギャグ空間だって!
     山内・勇(d08777)はさぼってまでイチャつくリア充まで含めてRB団・サボりの奴らの情報を交換しながら取り締まっている。
    「………………だりぃ」
     って言ってるけど、超真面目じゃん!
     ギャグ空間だよ?
     それはもう超真面目な人だからね!?
    「(お前が10キロも走れるはずがないだろう。ならばRB団を捕まえてマラソン大会参加を免れれば良い)」
     内なる声と会話しているのは上坂・紫尾(d09734)だった。
    「逃げてー!」とRB団を襲い。
    「お前の為だ!」とリア充を襲う。
     シュールです。内なる声。
     そして真面目空間はまだ続く!
    「私は舞台監督……即ち、運営・補佐をやるのが性にあっている」
     そうぼやくように話すのは倫道・有無(d03721)だ。
    「他人の幸せを邪魔する輩は一生幸せになれんぞ!」
    「リア充を道連れにできるなら安いもんじゃー!」
    「言葉では解らないようだな……」
     そんな有無の前に出てその男はとつとつと説教を続ける。
    「二度とは来ない貴重な青春の一時にくっきりと刻まれた明暗。そんな物を見せつけられて自棄になる気持ちは解らんでもない。だが、こんな事をしても現実は変わらんぞ!」
     めっさ真面目な説教ッス、宍倉・太一郎(d00022)先輩(中2)!
    「あ、兄貴―!」
     一部の人だけ感化されました。

     ふぅ、一端カメラを別シーンへと……。
    「大丈夫だよ、ラシェル! ラシェルは私が絶対に護るんだからね!」
    「シャル、あまり前に出るなよ。お前ひとりくらい俺が護ってやるから」
     微妙な距離感の2人はシャルトリア・アルフィエル(d10307)とラシェリール・ハプスリンゲン(d09458)だ。
     なんかもうデートシナリオに流れ込みそうになるのを強引にストップです。
    「いちゃつくのも程ほどに~。ただし、度が過ぎれば何時でも身柄を拘束させてもらうっすよ?」
     そんな2人の横をさりげなく嫉妬の炎をくすらせながら走り去るのは祀火・大輔(d02337)だ。
    (自分もあの人と楽しく走りたかったっすよ……! ぬがー!)
     RB団はいつでもウェルカム♪
     道端でRB団に萌えられているのはヴァイス・オルブライト(d02253)だ。
    「嫉妬した事は無いんすかー?」
    「それは、私だって恋人がいる者を羨ましいとは思ったけど、それを疎ましく思ったり苛立ったことはない。……それに私なんて可愛げ無いし、がさつだし、女の子らしさなんてないし……」
    「ヴァイスさん最高ッスー!」
     RB団になぜか人気。
     ま、ギャップ萌えを演出した籠絡ですけどね。
    「は、はぅ……まだまだ先は長いのですね」
     呼吸が整うまで少し歩こうと言う川原・世寿(d00953)の手を取ったのは弟である川原・咲夜(d04950)だ。
     無論、カップルだと思ったRB団に囲まれる。
    「あの、私達姉弟なんですけど!?」
    「きょ、きょうだいかぁ……せ、セーフ?」
     以外と見逃してくれそうなので2人はイチャイチャっぽく走って行く。義理の姉の弟って襲撃するべきだった?
     そんな2人を見逃したRB団の前に白髪の少女、水走・ハンナ(d09975)が現れる。
    「追手か!?」
    「さぁ、白黒つけようか!」
     慌てて逃げようとするRB団だが、振り向けばそこには巫女、鷹合・湯里(d03864)がいた。
    「さぁ、白黒つけましょうか」
     逃げ道を失い万事休す。
     そんな白黒な横を駆け抜けていくのは音鳴・昴(d03592)とクノン・マトーショリカ(d04046)だ。
    (見つかりそうになって咄嗟に手を掴んで逃げちまったし)
     さらに路地を曲がりつつ身を隠す。RB団はいつでもどこにでもいる。クノンを抱き寄せるように路地裏に引き込み隠れる昴。
     もちろんクノンは。
    (胸の音、聞こえちゃうかな……どうしよ、背中、あったかい)
     幸せな時間を過ごしていた。
    「見つけたぞリア充がぁ~!」
     ビルの谷間に手を突っ張って降りてくるRB団。
    「初めて、先輩が、ぎゅって抱きしめてくれた、のに……っ!」
     すぐに反応したのはクノンだった。
     リア充爆発しろ!

     スタートしてから数分、集団がばらけて来た所で花澄・聖宵(d02163)は木陰で休憩していた。
    「キミも休憩?」
     話かけてきたのは同じくサボリ中の若吉・雄午(d06822)だ。
    「のんびりいきたいと思いまして」
     しかし、今回の魔人生徒会の人数はハンパ無かった。蟻一匹見逃さない勢いだ。
    「いたー! オサボリ! 許さないぞ~!!」
     小学一年生の女の子、魔人生徒会を手伝うスティーナ・ヘイモネン(d05427)だった。
     慌てて運動が苦手でと説明する聖宵。
    「そっかぁ、大丈夫? こっちならたぶん見つからないよ?」
     見つかったのがスティーナで良かった。
     聖宵達がいなくなった木陰にやって来たのは桜野・愛菜(d03948)と股間を抑えて内股で歩くモブNPC君だ。
    「恋人のふりしてRB団を釣るんだから、もっとしゃんとしてよ」
    「だ、だって、サボってただけであそこを蹴って……従わないともっとって……」
     愛菜の作戦は悪く無かった。
     しかし、結局その男が崩れ落ちてふりだしに戻る。再び喫茶店へ、哀れな犠牲者を探しに行く愛菜。
     やがて木陰の道にふらふらと歩いて来る男が1人、さらに木の根に躓き転んだのは黒沢・焦(d08129)だ。
     それが視界に入ったため助け起こしてくれたのは淳・周(d05550)だった。
    「RB団じゃないのか?」
     さぼろうとしていた事は黙って曖昧な返事をする焦。
    「ちょっと聞いていいか? なんでLB団じゃねぇの? LoveBreakerじゃね?」
    「いや、俺に聞かれても……」
     RB団……その正式名称はRB団それぞれの心の中に。

    『サボりたいけどどうすれば逃げられるか安価で』
     ネットの掲示板でスレ立てしているのは神代・弓弦(d01682)だ。
    『走ればいいじゃん』
    「チッ……」
     嫌な顔をしつつも走りだす弓弦、その様子を影から見ていた神代・真琴(d01108)は、携帯端末をしまうと兄に並走しだす。ちなみに弓弦はすでに力尽きる寸前だ。手を取って走らせる真琴。
     ほのぼのしていると見るか否か……。
     ちなみに全力でエスケープを決め込む者もいる。
     しかもスタートと同時に!
     そんな離れ技をやってのけたのは氷室・翠葉(d02093)と水瀬・瑠音(d00982)だ。
     だが、魔人生徒会の手はどこまでも伸びてくる。取り締まりをやってる生徒と鉢合わせしてしまったのだ!
    「あ、お疲れッスー。ここでサボっている奴を見つけたんで捕まえておいたぜぇ」
    「ああ、うん、僕はたった今ここでサボってる生徒を見つけたんだ。だから僕じゃなくて瑠音を取り締まるべきだよ。うん」
     同時に裏切る2人。そして怪しい2人を捕縛。
     でも、そんな友情のあり方、俺は大好きだ!
     さて、学校には魅惑の場所がある、それは……保健室。
    「よし、怪我をしよう」とばかりに保健室に逃げ込んだのは黒条・灯音(d08722)と、七罪・樒(d08723)だ。
    「お、魅惑の保健室に直行だな」
    「保険医は……いない?」
    「大丈夫、保険医がいないのなら私が優しく手当てしてやろう」
     その時だ。
     ――ガララッ!
    「リア充爆発しろ!」
     めっさRB団まんまな奴が現れた。
     ヒーロー仮面にマントとマフラー、キンッと2人を見るやそのヒーローもといRB団、獅堂・凛月(d00938)が木刀を振り下ろす! が、遺伝子が覚醒しているのは伊達じゃない!
    「私はリア充にラブラブな合体技を見せられただけで死ぬぞおおおお!」
     なぜか保健室+リア充2人、の図を見て吹っ飛ぶ凛月。
     これぞRB団の生き様よ!

     マラソン大会、女性をおんぶしたまま走っているのはレンヤ・バルトロメイ(d01028)だ。
     おぶられているのは静咲・きすい(d00134)。
    「二人仲良く逃避行ー」
    (これじゃRB団に襲撃されかねない……)
     きすいはレンヤを「走れ走れ」とせき立てる。振り向けば仮面のRB団達が次々に集まって来ていた。
    「リア充は消毒だー!」
     ダダダダダッとRB団の足元が銃撃される。
    「い、いてててて!?」
    「当たった? まぁ気にしない!
    「しろよ!」
     ガスガンのマシンガンを撃ったのは駿河・香(d00237)だ。さらに相方の玖珂峰・煉夜(d00555)が投網を放って一網打尽だ。
     だが、油断は即、死を招く!
     そんな2人に投げつけられたのは……お餅だった。
     咄嗟に煙玉を使い逃走を図る2人。ニンニン、とか言ってた気がするが煙いので気にしない。
     そして煙が晴れた時、そこには餅を――正確には神奈川名物の餅を投げた風魔・こなた(d08526)がいた。
    「ふっ、カップルに恨みはないでござるがせっかくの機会ゆえ、ご容赦なされよ! ……まぁ、今のがカップルかわからんでござるが」
     明るい馬鹿であった。
    「やや、あれもカップルでござるな!」
     新たなターゲットを発見、でもカップルって見て解るのか?
    「だってお姫様だっこしてるでござる!」
     それなら確定だ!
     件のお姫様抱っこで走っているのはシャルロット・ノースグリム(d00476)と、シャルロットを抱くハルトヴィヒ・バウムガルテン(d04843)だ。
     だが、この2人はRB団を返り討つまで織り込み済みだった。投げてきた餅を抱っこしたまま蹴り返す。
    「あ、ちょ、まっ、ぎゃふんっ!」
     撃沈。
     そして2人は――。
    「ハルト、この状態で優勝できたら『……』あげるわ」
     なんかシャルロットが『』内を強調しろと言うので伏せて見ました。
     うん、とても強調されたと思う。
     ま、優勝できたかは別シリーズの結果次第なのでよちらを宜しくお願いします。
     さて、一方的なパターンとしてこんな2人もいる。白石・蒼依(d04333)と九条・雪菜(d06256)。
    「こんな所で偶然会うなんて運命だよね! 走ってる姿もカッコイイです好きです結婚して下さい!」
    「えぇい、離れろ……! マラソンぐらいは静かに走れ!」
     あえて言おう! リア充爆発しろ、と!
    「私は別に! イチャついてなど! いない! むしろコイツを引き取れ!」
     いや、ナレーションに言い分けしないでいいから。

     複数人でスタートから行動しているチームもあった。
     黒咬・昴(d02294)、小鳥遊・愛理(d00075)、小鳥遊・結実(d00647)、藍沢・誉(d00404)の4人だ。
     すでに作戦会議は終わっている。愛理も会議中に姉にぎゅっとされ居眠りしたおかげで英気は万全だ!
     そしてタイミング良く現れるRB団。
     作戦決行! 一歩前へ出る結実。
    「静まれ静まれぃ、このお方をどなたと心得るー♪」
     さらに昴に紙吹雪!
     さすがのRB団も何が始まるのかと待機中だ。
     そして御老公ポジションの昴が朗々と言った。
    「何処までも邪な奴らね! 愛ちゃん、結ちゃん、ほまれん、懲らしめてやりなさい」
     印籠は無いらしい。
    「おうおう、女3人侍られてハーレムかぁ?」
    「リア充の臭いがぷんぷんするぜぇ!」
     気が付けば誉だけが囲まれていた。
    「は? リア充? 俺?……ちがっ、これはそうだ! 偶然だ!」
     他を無視して集中砲火を受ける誉。
     イケメン死すべし。
     御老公達に倒されるも、一矢報いたとばかりに良い笑顔のRB団員達であった。
    「ところで刑一はどこだ?」
     昴が呟いたその男は今……。
     さて、これからコースは井の頭公園へと入る。
     そのちょっと前、広場にてRB団を集めて1人の男が演説をしていた。
    「諸君! マラソンという青春を舞台にいちゃいちゃなどというリア充は許すわけにはいかないのです! 今こそリア充を裁く時!」
     サバト覆面の男だった。きっと見バレしたく無いのだろう。
    「刑一さん、サボってちゃ駄目デスヨ!」
     すぐバレた。
     今日のためにRB団用サバト覆面を作っていた猛者、霈町・刑一(d02621)と、その覆面を知っていたシャルロッテ・モルゲンシュテルン(d05090)。
    「シャルロッテよ、俺はサボるどころか頑張ってるのですよ!」
    (確かにサボってるリア充だけ取り締まってるような……うーん)
     ここはクラブの仲間としてお手伝いするとしマショウ。とシャルロッテ。
     完全に丸めこまれてるが、気のせいデス!
     そして刑一の元、士気を高めたRB団達は主戦場である井の頭公園へとなだれ込んで行くのだった。

    ●井の頭公園の攻防
    「リア充爆発しろ! 爆発しろ! 大事な事なので二度言うぜ!」
     井の頭公園で絶賛RB活動にいそしむのは風水・黒虎(d01977)だ。とはいえ、女好きの変態気質な彼は、公園を巡回している知り合い、神夜・明日等(d01914)に声をかけてしまう。
    「明日等! デートしようぜ!」
    「………………」
     変な物でも見るかのように引かれました。
    「ぐっ心が折れそうになるが、オレはあきらめない! む、あのブルマーはなんだ!?」
     待ちなさいよ! と追ってくる明日等と共に向った先にはブルマ少女2人と縦巻きロールのお嬢様がいた。
     小さめブルマは神座・澪(d05738)、へそ見えブルマはラピスラズリ・ヴリュンヒルド(d01603)、そしてお嬢様はミミエ・カザリ(d09474)だ。
     澪はブルマに釣られて寄って来たRB団をむぎゅすりすりとハグ堪能な改心をってか羨ましい! ラピスラズリは団員の前で前屈みで胸たゆんして指でおでこをツン……こっちも骨抜きだ! もちろんミミエも同様、団員に抱きつき誘惑する。これは恐ろしい作戦だった。3人に魅了されデヘヘとなったRB団が、「リア充死すべし!」と他のRB団がなだれ込んで着て同志討ちを始めたのだ。「てめぇクズ男のくせにずるいぞ!」「うるせぇブ男は引っ込んでろ!」……醜い、なんて醜いんだRB団!
     ちなみに駆け込んで来た黒虎は同志討ちに巻き込まれて星になりました。

     もちろん、公園には大量発生しているRB団を取り締まるべく、魔人生徒会の協力者も多数集まっていた。
     雪村・命(d10016)と向日・葵咲(d09295)の2人もそうだ。
    「葵咲さん、怪我とかしてない?」
    「命さんも、学園に来たばかりで運営側の手伝いで大変だと思うが大丈夫?」
     取り締まりってーかリア充参加じゃね?
     そんな取り締まり役に見つからぬよう、マラソンを抜け出すエスケープ組も各自工夫を凝らしていた。
    「う、急に腹が……」
     古典的な方法えトイレに行ってスレイヤーカードから先生(霊犬)を呼び出そうとしていたアスリィ・ロートン(d00988)が、同じようにカードを手に同じような事をしていた戌亥・一(d03107)とばったり出会って目線で会話。
    「同志」
    「同志ですね」
     通じ合ったその時だ。2人をまとめて捕まえるように振ってくるカウボーイロープ。
     見れば魔人生徒会の手伝いをしている盾神・織緒(d09222)がいた。
     織緒はそのままロープをたぐり、2人を側にいた同じく生徒会の手伝いをしている椎木・なつみ(d00285)のリアカーへと放りこむ。
     ちなみにリアカーはけっこうみっちり簀巻きにされたRB団とエスケープ者が多数乗っていた。
    「そろそろいっぱいですね。私は学園に持ち帰ります」
    「ああ、私はリア充を守る為、奴らを倒しに行く」
     そう言って織緒はカップルを追いかけるRB団の群れへと突っ込んで行った。
     あまりに多勢に無勢! でもRB団は織緒の一撃で吹っ飛んでいきます。
     やられ遺伝子万歳!

    「これは行事が終わるまでどこかで本でも読んで自主休憩させてもらいましょうか……」
     自主休憩、つまりエスケープし木陰で本を読むのは一之瀬・祇鶴(d02609)だ。
     そんな祇鶴に声をかけるのは九条・エリス(d00723)。
    「サボって……る?」
    「私はただ静かに休みたいだけ」
     堂々と答える祇鶴。
    「……走らないなら……罰は受けたくないし……捕まえる……かも?」
    「………………」
     なんというか、相性が悪い。祇鶴はしぶしぶ本を閉じた。
     エスケープ者も十人十色で、中にはRB団と取り締まり、そしてエスケープ組の騒乱の記録映像を撮影しているのは雁屋・蝸牛(d01675)だ。
     神出鬼没に現れる謎の撮影者! どうやって移動し出現しているのか!?
    「全てが謎の転校生だもん!」
     うん、この入学理由は前から不思議だった。
     もちろん、超普通にエスケープ技を披露する者もいる。
     普通にトイレと言って列を抜け、ジャージを脱げば下には私服、隠していた大判袋にジャージを詰めて、あっという間に一般人!
     高梁・和海(d01432)……ある意味、もっともスマートなエスケープ者だった。

     さて、井の頭公園には大きな池がある。それはカップルがボートに乗っていちゃいちゃする為の池だ(断言)!
     そんな池の上のボート(白鳥タイプ)で弁当を食べる2人がいた。
    「口元についてるよ~?」
    「……ん、さんきゅー♪」
     天霧・らんぷ(d06257)と九牙羅・獅央(d03795)だった。
     しかし! そんなラブいちゃ空間をRB団が許しておけるか!? 否! 絶対にNO!
    『リア充爆発ぅぅぅッ!!!』
     ボートの周りに10の水柱が立ち、池の中より飛び出るRB団水中戦使用(つまり海パン一丁)達!
     だが、2人もそれは予想済み!
    「超らぶらぶハリセンあたっく!」
     再び水へ帰り立ち昇る11の水柱!
     ……ん、1つ多くない?
     プカーと浮いて来るのはボートの上で昼寝をかましていたエスケープ組、瀬野尾・勇太(雲臥の若鷹・d01344)だった。
     水の上なら追手も来ないはず……その予想は当たっていた。
     しかし、RB団はどこにでも現れる。気をつけろ!

     公園と言えば弁当、弁当と言えば公園!
     バスケットの中からサンドイッチを取り出してる2人は小藤・律(d01664)と飯山・千里(d05329)だった。
     明らかにカップル! 明らかにリア充!
    「違いますよー、私達は『カップルさんを見守る』という目的を持った同志です」
    「そうそう、カップル観察が楽しくってワクワクが止まらないんだ!」
     ふーん。フーン。FU-NN。
    「そのサンドイッチ貰ったー! あーんなんてさせないぜ!」
     二人の間に飛び込んで来てサンドイッチを口でキャッチするのは仮面のRB団員。
    「あら」
    「おっ」
     その瞬間、顔を青赤紫と点滅させて転げまわる。
     それは2人が仕組んだハバネロ入りコロッケサンド。
     だがRB団はこれぐらいでは負けない! 唇をたらこにして立ち上がると――ドパンッ!
     仮面の顔面にボールが直撃、割れて赤い汁が顔面にビシャっと!
    「!!!!!」
     声にならない悲鳴が響き渡り、再び転げまわると……撃沈。
     ボールを投げたのは若生・めぐみ(d01426)、ボールの中はなんとハバネロ。
    「どんな理由でも行事をさぼるのはいけない事です」
     カップルの側で潜伏していたかいがありました。
     さて、井の頭公園と言えばカップル群生地としても名高い場所。
     リア充達が集まって来ても不思議ではない。
     高町・勘志郎(d00499)と加藤・蝶胡蘭(d00151)はRB団を誘う為の演技として恋人のふり。
    「ちょ、チョコラ、ここらで休憩しましょうか?」
    「ん、勘志郎、おでこに汗がついてるぞ」
     そっと拭われる勘志郎の汗。
     ちょっと手を繋いでみたりして……思わず蝶胡蘭はドキドキだ。
    「やだぁ、ネイルが剥がれちゃってるじゃない」
     勘志郎はオネェだけどね。
     RB団もガンバレーと小さな旗を振り振り退場しました。
     判定……リア充、微妙。
     一方、公園のベンチでいちゃいちゃするのは両角・式夜(d00319)とエウロペア・プロシヨン(d04163)だ。
    「RB団をおびき出す為抱きつけとか、それが狙いか! ま、まぁよい……おいコラ、何じゃその顔は」
     見事に赤くなるエウロペアは、まさにリア充!
     そして式夜はと言うとRB団を誘い出す作戦通り――。
    (細かい事は気にしたらいかん! だって女の子といちゃいちゃしたかったんや!)
     RB団にはその心の声が聞こえていた。
     もしかしてこいつは同志?
     でも女の子の反応はまさにリア充!
     うーん……。
     迷うRB団の後ろで、エウロペアの尻を触っただのとガツンと式夜が天誅をくらっていた。
     続いてのリア充は黒山・明雄(d02111)と雲母・凪(d04320)だ。
     病弱な凪のため、2人は公園のベンチで一休み中。
    (私を気遣って……。明雄さんまで怒られたらどうしよう……皆、許してくれないかな……でも、嬉しい気持ちの方が勝っちゃうよね)
     そして凪がBLTサンドを取り出した瞬間、周囲にいくつもの殺気が!
    「……休憩中なんだ、邪魔をするなよ」
     首をコキリと鳴らしながら立ち上がる明雄。
    「おのれー! マジになりやがってー!」
    「RB団なめんなー! ギャー!?」
     ちょっと公園のRB団率が少ないってか、RB団劣勢ですよ!?

     RB団が劣勢? そんなことは無い! 味噌煮込みうどんのように熱い男がここにいるぜ!
    「リア充滅べやこんちくしょー!」
     叫ぶは山南・元気(d08374)だ。彼はRB団として素晴らしい素質を持っていた!
    「俺はこの前フラれたんじゃああああああ!」
     素晴らしい素質です。
     キュピーン! リア充発見!
     手を繋いだまま逃げだすのは王子・三ヅ星(d02644)と紫藤・海梨(d02230)だ。
     そして誘導されたまま落とし穴に落ちる元気。
     底にはイガグリがたくさん。
    「ぐおおおおっ!」
    「嫉妬しても恋人はできないって知ってた?」
    「悔しかったら自分を磨くことね!」
     フラれ男にその言葉は辛いぜ!
     さて、太陽の下、ニコニコ笑顔で走るのは日之瀬・海(d01131)と幼馴染の泉谷・まりい(d05246)。
     もう幼馴染で走ってるってだけでRB団襲撃で良くね?
    「お姉ちゃんと一緒って久しぶりで昔に戻ったみたいで嬉しいな!」
    「私も、こうして海くんと一緒に参加できるのはうれしいな♪」
     もう襲撃で良くね?
     とりあえず小学生だし手加減して人間魚雷発射!
    『え、えええ!?』
    「ぐえっ!?」
     手をつないだままラリアットで意識を飛ばすRB団、いや弾!
     小学生侮りがたし。
     さて、ここに1人の男がいた。
     日当たりの良い場所、抱き枕とクッション、レジャーシートに適度な防寒具、菓子類に清涼飲料水も完備。
     倉田・茶羅(d01631)は完璧な狙撃体勢だった。
     心地よい風が吹く、太陽は気持ち良い。
     彼は一人も倒さぬまま夢へと落ちていった。
    「ふっふっふ、覚悟しなさい!」
     仲間を読んだ後、草陰でRB団達を監視するのは香祭・悠花(d01386)だった。
     RB団なら恋人を別れさせるジンクスがある弁財天にお参りするはずとの読みが当たったのだ!
    「離、離、離、離、離……」
    「アーーーッ!」
    「充、爆、発!」
     変な呪詛を一心に唱えるRB団、やがて生徒会側の包囲が完成。
     最初に動いたのは礼羽・柊(d04620)だった。
    「よぉ、調子どうよー?」
    「む、お前も一人身か」
     いや、確かに柊は一人身だが。完全に同志と思われる流れじゃね?
     それを立ち切ったのは清浄院・謳歌(d07892)だ。
    「この腕章が目に入らぬかっ!」
     いきなり現れ時代劇のように自作の魔人生徒会腕章を掲げる謳歌。
    「しまった! こいつら取り締まりの奴らだ!?」
     気が付いた時にはもう遅い、一網打尽とはまさにこのこと。
    「はっはっはー! 平伏せ愚民どもー!」

     皆早いなー、お兄さん達どこ行っちゃったのかな?
     そう思いつつ走るのは九条・紗雪(d00031)だ。
     そんな沙雪を30mの距離を開けてこっそり追いかけるのは高野・あずさ(d04319)だった。
    (……一緒に並んで走るの、恥ずかしいけど。……あれ、もしかしてこれが初めての……初めての共同作業?)
     すれ違い様にあずさの肩をポンと叩いて行くのはRB団の皆様方だった。皆サムズアップだった。
     ところで話は変わるが、キミは女装をどう思う?
     鴻上・巧(d02823)と一緒にいるのは女子体操服を着、女性メイクをしたゲイル・ライトウィンド(d05576)だった。そしてゲイルが女装です。
    「はい、あ~ん、美味しい?」
    「恥ずいだろ、ったく、ありがとな」
     カップルの装いRB団を釣る作戦の真っ最中。
     そこにやってくるは女子用ジャージを着て暇そうに歩いて来る伝皇・雪華(d01036)。こちらも女装中だった。
    (え、あなたも?)
    (あ、ああ、効果あったら泣くかもしれんけど)
     見知らぬ同士だが、何か生暖かい空気が漂う。そしてちょっと気まずい。
     だが!
    「仮面ブルマー、エーーーークス!」
     その空気を破る救世主が現れた! 紺ブルマーに赤く長いマフラーをなびかせた少女。
     見バレを防ぐためにフルフェイスのヘルメットを着用した長瀬・霧緒(d04905)だった!
     ごめん! リプレイ形式上、どうしても身バレするけど勘弁な!
     霧緒はうおおおと気合を入れ構えを取る。
    「こんなに早くリア充達が現れるなんてね……Xmasまでのウォーミングアップには丁度良い!」
     いろいろ混沌としてきたが、やられ遺伝子は素晴らしい。
     ロープでぐるぐる巻きにされた霧緒が倒れ、それを単独で魔人生徒会を手伝っていた武月・叶流(d04454)が連れて行く。
    「人の恋路を邪魔する人は馬に蹴られて死ぬって話、知ってる?」
     そして去って行く叶流と霧緒。
    「恋路っつーか、女装だけどな」
     巧の声が、残された女装2人の間に冷たく吹き抜ける。
     さて、一時の平穏と取り戻した公園では、再びカップルがお弁当と食べ合わせたりいちゃいちゃらぶらぶ。
    「リア充爆発! リア充爆発!」
     現れるはRB団! 恐怖するカップル!
    『待てぇい!』
     2人の声が重なり響く!
     振り向けば腕組ポーズで高い所に立つ2人組みがいた!
    『中睦まじい2人を引き裂くもの、人それをお邪魔虫と言う』
     唱和するのは鈴鹿・巴(d08276)と斉藤・歩(d08996)のコンビだ!
    「な、なんだお前達は!」
     一歩引き気味に聞くRB団。名前ぐらい教えろ!
    「貴様らに名乗る名はない!」
     2人による殲滅戦が始まる。
     終わったらお弁当タイム?
     ご馳走様でした!

     RB団はこんな扱いばかりで良いのか!?
     いや、今までのRB団が弱すぎたのだ! 今こそ本気を見せる時!
    「待つのじゃ! 妾はちょーほー、ではなく、RB団のシルビ、でもなく、謎の美少女なのじゃ!」
     イチャらぶカップルの前に現れたのはコンビニ袋を被った少女(服装的に)。
    「いや、あの……袋被ってたら美少女かどうか解らないんじゃ……」
     カップル彼氏の鋭い指摘にショックを隠しきれないシルビア・ブギ(d00201)。
    「覚悟するがよい!」
     とりあえず水風船を投げ始め、逃げだすカップル。
     だが、カップルの前には大根を持って立ち塞がる鮎宮・夜鈴(d04235)。
    「なんだ!?」
    「恋人達に恨みはあらねど、斬り捨て御免!ですのよ。人斬り夜鈴、参りま――みゃあ!?」
     台詞の途中でシルビアの流れ球が的中。バタリ。
     カップルは慌てて別の方角へ。
     そこには栗の木があった。
     いや、栗の木に擬態しイガ栗を持った素破・隼(d04291)がいた。
    (人前にも関わらずイチャイチャと……2人だけの世界を展開……羨ましい)
    「成敗でござる!」
     隼がイガ栗をカップルへ投げ、イタタ……と頭を押さえてカップルは池の方へ。
     そして池の水際で息をつくカップル。
     だが、休む暇なくカップルの足は池から突きだした2本の腕に掴まれ、哀れカップルは池の中へと引きずり込まれる。
     ぬるりと池から現れるは穂照・海(d03981)だ。
    「水の底より愛を込めて、この言葉を贈ろう……リア充爆発しろ!」
     4人で集まり自画自賛するRB団所属の【ちょーほー部】の面々。
    「む、これなんじゃ? 祝・RB団?」
     札に書かれた文字を読み紐を引っ張るシルビア。
     そして大量に落下してくるイガ栗。
     超展開!
    「栗だけに、さっクリやられたぁ!?」
     RB団、それはやられる為の存在。

     さて、よこしまな考えを持つ者はいつの時代も存在する。
     草陰から女の子にお触りしようとしているのは桜海老・亘(d08848)だ。
    「不届き者発見!……と、亘ではないか」
     亘が振り向けばそこには新聞部の部長、四方屋・非(d02574)だった。
    「人違いですよ?」
    「顔丸出しで何が人違いだ」
     部長に絞め落されました。
     新聞部部長と行動を共にしていたのは一之瀬・梓(d02222)だ。亘の首が折れる前にストップかけつつ、RB団はいないかと目を光らせる。
     そして梓はその男を見つけた。
    「残念だ、友をこの手にかける結果になるとは……ほろり(目薬涙)」
    「友よ、お前とは出逢いたくなかったが……これも運命か!」
     その男――日向・和志(d01496)はさらに続ける。
    「RB団の真の目的、それ――ガフッ!? 早いッ!?」
     とりあえず梓のライアット一発。
     そして、倒れた和志を引きずり魔人生徒会へ連れて行くのは九条・有栖(d03134)。
    「馬鹿につける薬なし、ね……」
    「わ、忘れるな。第二、第三のRB団が……ガハッ!」
     和志、お前の心意気は忘れないぜ!

     今回、一番多くの面子で組織参加していたのは【フラサテ】関係者達だ。
    「偉大なるRB団諸君~そこの、ぐーすけはボク達の標的の一人だ、幸せ者を成敗するのだ」
     高い所から拡声器で指示を出しているのは裏方・クロエ(d02109)だ。
     ぐーすけこと神楽・雄介(d04467)は魔人生徒会の手伝いとして参加していた。
     クロエの宣言を聞いても動じない。
     そして動じなかった結果、RB団に囲まれました。
    「せ、生徒会の加護は!?」
     魔人生徒会になったからって勝利遺伝子は覚醒しません。
     だが、そんなRB団達の群れに赤い疾風が吹き荒れる。そして次々に亀甲縛りで倒れ伏すRB団。
    「私の愛で抱きしめRB団の呪縛からクロちゃんを救いだしてあげる」
     姫宮・杠葉(d02707)だ。
     ついでに雄介も邪魔との理由で亀甲縛りだった。
     そこにクロエとは別方向の高い位置から拡声器の声が響き渡る。
    「そこに倒れしは同志雄介、見よ、あれこそRB団の挑戦である。愚かな蛮行には武を持って応じるべし、魔人生徒会に栄光あれ」
     クロエのライバルたる綾木・祇翠(d05886)だ。
     ちなみに雄介をやったのは杠葉です。
     もっとも、生徒会側の取り締まり役達は、そんなの関係ねーとばかりに盛り上がる。
     戦いは熾烈を極めた、次々に捕縛していく生徒会側、除雪車が雪を吹き飛ばすごとく飛んでいくRB団。
     そんな混戦を気にせず(まさに敵味方気にせず)爆竹を投げまくっているのは有栖川・へる(d02923)だ。
     そんな楽しそうなへるだが、すっと誰かに近寄られ、ぎゅっと抱きしめられた。
    「もう、クロエさんやアリスさんまで……おイタはやめて、これでおしまいにしましょう?」
    「香りの強い紅茶をどうぞ?」
     カトレア・クロムウェル(d04064)がへるを抱きしめ、さらにさっきまでクロエを見て「クロエ様はお元気の限り」とか言ってたヴォルフガング・シュナイザー(d02890)が紅茶を手に優雅に戦場を抜けやってくる。
    「あ、えーっと」
     歯切れ悪いのはへるだ。どうかしましたか?とカトレア。
    「追い詰められたように……てへ☆」
     へるの身体に巻かれた爆竹が周囲の仲間者とも爆発を起こした。
     爆竹魔アリスの爆誕である。
     そうして誰もいなくなった兵どもが夢のあとに、ずぼっと復活する1人の男。
    「俺を誰だと思ってやがる!」
     復活したのはRB団の風真・和弥(d03497)だった。
    「『風の団』団長でもあるこの俺、風真和弥をそう簡単に……ごふぅ!」
     派手に吹っ飛ぶ和弥。
    「今日の私もオープンフィンガーグローブが赤く染まった……」
     遅れてきた【フラサテ】メンバー、叢雲・秋沙(d03580)だった。
     ここに、井の頭公園の戦いは終わった。

    ●商店街戦線
    「RB団近衛騎士団団長ナイト・リッター! リア充共を制裁する!」
     キメッ! とポーズはナイト・リッター(d00899)だ。
     終結しつつあるRB団、同じく魔人生徒会に雇われた取り締まり役達。
    「同志達よ、ここは俺に任せて先に行け!」
    『わかった!』
     超ハモって良い返事のRB団はすでにいなかった。
     ナイトを犠牲に逃げだしたRB団だが、1人の少女に先回りされていた。
    「大人しく捕まるんだ……」
     神山・楼炎(d03456)、豊満ボディの中学3年生だ。
     そしてRB団の先頭1名が抱きつきのまま捕縛される。
     仲間達から攻撃をくらう1人、その光景を見た楼炎が一言。
    「1位になったら、私を好きにできる権利をやろう」
     矢のごとく野へ進め!
     1位を決める為に走りだすRB団達。
     ま、ここじゃ1位は決まらないしね。
     そんなわけで商店街での攻防である。
     リア充発生場所としてはここで最後だろうと言うわけで、ここにもかなりの量のRB団とリア充が集まって来ていた。
    「リア充……滅ぶべし……」
     カップルの間に滑り込み無表情で説教を始めるのは葉月・十三(d03857)だ。
     その怖さにカップルがダッシュで逃げ、その後ろ姿に十三が叫ぶ!
    「畏れよリア充! 滅びよリア充! さぁ救いを求めよ! あるいは自ら払い除けるがいい! 降りかかる厄災を!」
    「嫉妬はみっともないですよ」
     スパーン!
     ハリセン一閃、十三をはたき飛ばしたのは石弓・矧(d00299)だ。
    「同じ学び舎の仲間を取り締まらねばならないなんて悲しいですね……おっと」
     慌てて飛び退けばそこに水の射撃が!
    「魔法少女マジカル☆サターン♪ 呼ばれてないけど参上です!」
     土御門・璃理(d01097)だった。
     さらに水道からホースの口を押さえて水の射撃が開始される。
    「土星人の力をなめるなよー!」
     商店街もけっこう混沌としていた……。

    「マラソン10キロとか……ないなー」
     住宅街までやって来ても、まだ見ぬゴールに諦める者もいる。つまりエスケープ
     風見・遥(d02698)と夜月・深玖(d00901)もそれだった。
     そんな2人の前に現れたのは楪・奎悟(d09165)、魔人生徒会の協力者だ。
    「RB団もリア充もそうでないヤツも、俺には関係ねぇ! サボってんなら即刻お縄だ!」
    「深玖、重要任務だ。万が一の時は囮役をお前に任せる」
    「任せろ。俺がそっくりそのまま、それをお前に返す」
     ドンっと背中を押される遥。
     そして振り向き後ろに逃げ――。
    「おっと、サボり連中、せめて仕事は楽しくしてぇからな、俺とちょっと遊ぼうぜ?」
     別の人がいました。
     それは奎悟とペアを組んで動いていた刀祢・隼鷹(d05931)だった。
     咄嗟に目配せするエスケープ組の2人。
     1、2、散で人ごみが多い方向へダッシュ! だが追手2人も追撃を緩めない。
     結局、ゴールまで頑張る事になる……かもしれない。
    「トイレ行くね」
     そうペアの近江・祥互(d03480)に言ってお店に入って行ったのは黒鉄・伝斗(d02716)だった。
     ――5分後。
     祥互の携帯が伝斗からのメールの受信を伝えてくる。
    『あばよ、とっつぁん』
    「逃げやがったなあの野郎ッ!」
     だが、慌てず取り締まり役と書かれた腕章を装着する祥互、勝負という名のゲームが始まる。
     そして手には鍵付き手錠!
     おお、これぞとっつぁん!
     一方、商店街の喫茶店で休んでいるのはニコ・ベルクシュタイン(d03078)と緒野・柚弦(d01752)だ。
    「まぁ、俺達は大丈夫だろう。奴らはリア充スレイヤーであってサボリスレイヤーではない。俺達はメインターゲットではない」
    「リア充スレイヤーはサボリスレイヤーでもあるんだけどね……ニコさん、それってなんていうか知ってる?」
    「ん?」
     柚弦が言おうとした瞬間、「御用改めである!」と取り締まり役が入って来た。
    「――フラグって言うんだ」
     ニコと柚弦は店の最奥にいた。
     逃げ場はなかった。
     連れて行かれる2人を雑誌で顔を隠しつつチラ見していたのは向井・アロア(d00565)だ。
     入念な準備に、途中で私服に着替える機転によって、取り締まりを華麗に逃れていた。
     ラテのホットを飲みつつアロアは言う。
    「あー。休日みたいで楽しい!」
     なんというか、勝者の余裕とはコレじゃないのか?
     さて、エスケープするにも人それぞれである。
     黒木・摩那(d04566)はアルバイターに変装するセットをコース途中に隠しておき、商店街で着替え、まさにアンケートにアルバイターになっていた。
    「最近のカップルについてどう思いますか?」
     完璧だった。
     これでエスケープ者として捕まったら不思議である。ただ――。
    「爆発しろ、っと、次は人気のデートコース? 墓場巡りっと、次が……」
     アンケート回答者にRB団を捕まえ、ついついそこに時間取られたりしていたが……。
     そう言えば、完全エスケープではなく半エスケープという微妙にルールの穴をついた行動にでる者もいた。
    「ふぅ、そろそろかな」
     読んでいた文庫本を閉じると時計をチェックするのは御堂・いのり(d06648)だ。
     彼女は途中まで真面目に走り、事前に調べておいた人気が無い路地で隠れていた。
     かなりの時間休憩しただろう、再び彼女は立ち上がるとマラソンの最後尾へと紛れこんだのだった。
     完全犯罪だった。
     最後に、エスケープとは言えないエスケープ者についても、あえてカメラを向けよう。
    「あえて言おう……ここは一体どこなの~!?」
     九十九・緒々子(d06988)
    「迷って無い、迷ってなんかない! そう、これは私が計算して導きだしたコースなんだ!」
     半べそで迷走し続ける緒々子。
     誰か可哀相な彼女を拾ってあげて!

     商店街を走る2人、それは高峰・紫姫(d09272)と高峰・緋月(d09865)だった。
     本当は姉妹だがRB団を誘い出す為に今回は姉が男装してカップルに見せかけている。
     だが、RB団は釣れなかった。
     なんというか、具体的にどういちゃいちゃしてたか解らなかったから。
    「おかしいなぁ、なんで私の完璧な計画が失敗したんだろう……」
     そんな妹を元気づけようと紫姫がふと視界の端に映ったアレをすすめる。
     そこには給水コーナーがあった。
     一口飲んでみると超絶美味しい豚汁だった。
     2人の他に、人が集まってくる。
     そしてそれを影から見守る男、南風野・陸人(d09848)。
    「ふっふっふ、これで彼氏や彼女より豚汁に夢中になって破綻させるゆう寸法や!」
     陸人の作戦通り、次々と寄ってくるカップルども。
    「本当、凄い美味しい♪」
    「俺、実は豚汁とか好きなんだ……その、今度良かったら作ってくれない、かな」
     そして作戦とは180度逆の方向へ進むカップル達。
    「なんでリア充がー! 殺せ! いっそ殺せー!」
     叫ぶ陸人。
    「異物の混入はないようですね」
     一人で来て豚汁をチェックしたのは佐藤・角(d10165)だ。
     給水所などで危険物をRB団がすり替えるかと思っていたが、思った以上に美味しい豚汁だった。
     寒くなって来た最近では、こういうのもありかもしれない。
     魔人生徒会の協力者たる角に頷かれる陸人。
     その陸人を影から見ていた女がいた。
    「発想は悪くない……ですが、やり方が間違っていましたね」
     女、待宵・露香(d04960)はブタまんを道端に置くと、隣に丸太を立てそこに巨大なカゴを立てかける。
     そして自身は丸太に結んだワイヤーを持って路地裏へと隠れる。
     これでカップルとカゴに閉じ込め……ふひひ。
     しかし、そんな怪しい罠に引っ掛かる者は誰もいなかった。
    「そんな……」
     露香はやり方が間違っていた。そして発想はもっと間違っていたのだ。
     そんな横、カゴ罠をスルーして走って行くカップルがいた。
     来須・桐人(d04616)と冴泉・花夜子(d03950)だ。
    「大丈夫かい? 疲れて無い?」
    「ううん、だいじょーぶ!」
    「ほら手を……一緒にゴールしようね」
    「うん」
    「なぁーにが『一緒にゴールしようね』だぁあああ?」
     湧いて出るRB団達。
    「危ない!」 
     咄嗟に花夜子を庇う桐人、花夜子はどきどきしながらそのカッコよさに惚れ直す。
     ちっ、これは巧妙な罠だ! 引けっRB団!
     だが、まさに2人の中を盛り上げるだけの役として、彼らは散って逝ったのだった……。

    「さぁ、どこからでも襲ってこいなのです!」
     すでにマラソンを忘れ襲撃者を返り討ちにする事しか頭に無いのはラプラス・レスコール(d08728)だ。
     彼女と恋人として一緒に走っているのは流鏑馬・黒瑛(d08729)だ。
    「なぁーにが『どこからでも襲って良い』だぁあああ?」
     湧いてでるRB団達。襲って良いなど言って無いけど、その方がモチベーション上がるらしい。
    「黒瑛様と私の間に入るなんて100万年はやいんですってばー!」
     怒りマックスでRB団を空に吹っ飛ばして行くラプラス。
     そんな彼女を見て黒瑛は。
    「ラプラスは元気だねぇ、私の出番はなさそうだね」
     お茶でも飲んでいるような雰囲気だった。
     商店街ルートでのラブイチャシーンは続く。
     でもこれはRB団シナリオだからね? デートシナリオじゃないからね!?
    「小さい頃はいっつもおんぶしてもらってたよね」
     無意識に桐生・総一郎(d01909)をぎゅっと抱きしめるのは、おんぶしてもらっている始劔・鏡花(d00001)だ。
    「なぁ鏡花、今度から登下校、全部おんぶじゃ駄目か?」
    「ま、毎日はちょっと……恥ずかしいなぁ……」
     完全にデートシナ! 完璧にデートシナリオだよね!?
    「ラブラブだな!」
     そう2人に声をかけたのは鵺鳥・昼子(d00336)だ。
     おんぶで走ってる2人を追い越すが、その後ろペアで走っていた天咲・初季(d03543)に引っ張られる。
    「なんだよ?」
    「ひーちゃん、おぶってー」
    「いや、俺がおぶったら大会の意味無いだろう」
     しばし押し問答……結局、初季をおんぶする昼子。
    「えへへ、ひーちゃん大好き!」
    「俺も愛してるぜ、うーちゃん」
    「そっちこそお熱いぜ、目に毒だな」
     総一郎ペアが追いついて来る。
     だが、このシナリオは何度も言うがデートシナリオではない、幸せな2組に向かってかき氷とこんにゃくと下仁田ネギが飛んでくる。
     慌てて回避する2組。
    「極寒の力を喰らうが良い。氷零の息吹(ブレスザード)!」
     叫ぶは八月朔日・耀司(d09131)。
     ちなみにブレスザードとはさっき投げたかき氷である。
     そしてこんにゃくとネギを投げたのは関沼・槙夫(d10270)だった。
    「どうせお前ら、この戦いが終わったら結婚するんだ! とかやってるんだろう! そうなんだろ!?」
    「いや、今晩の夕飯は豪勢に頼むと話していただけだぜ?」
     総一郎の言葉にガックリとうなだれる2人のRB団。
     負けた感がハンパなかった。
     これがリア充と非リア充のRB団との圧倒的な戦力差だと言うのか!
    「ま、待て、私達にはあの人がいる」
    「せ、先生ー! 出番だぜー?」
     そして2組のカップルの前、RB団の2人をかき分け現れたのは甘粕・景持(d01659)だった。
    「取り締まりばかり多くては面白くないでしょう? 用心棒として、RB団に助太刀いたします♪」
     だが、さすがの先生も4体1では叶わない(1人はかき氷、1人はこんにゃくを投げていたので戦力外)。
    「……行って下さい2人とも……貴女達の……心の望むままに……行け! RB団!!」
     リア充2組との大きな戦闘力の差を見せつけられていた2人は逃走済みでした。
     そして喧噪が去り、リア充カップルもRB団も去った後……。
    「ふぅ、紫桜はちゃーんと逃げられたかなぁ~?」
     商店街の洋服売り場に隠れていたデイジー・クルゥブニーカ(d01229)が現れる。
     一方、デイジーが心配するのは黒崎・紫桜(d08262)だ。
     紫桜は騒ぎから逃げだし、そろそろかなと再び戻って来ていた。
    「デイジー、無事だと信じてるぜ。お前なら大丈夫だと」
     結局、2人は無事に再開してエスケープに成功する。
     RB団を囮にエスケープ、王道だと思ったが以外とやる人がいなかったみたい。

    「私は断然エスケープよ。肌寒い中、サボった空の下で食べる肉まんは格別だよね」
     商店街は巨大カゴ罠の下に置かれた豚まんを見ながら言うのは広井・ヒロト(d09350)だった。
     姿はすでにコインロッカーに隠しておいた仮装道具で変装してある。あと鼻眼鏡も装着。
    「でも、あの豚まんは駄目ですよ?」
     冷静にツッコミを入れるのは逢見・莉子(d10150)だ。
     仕方なく豚まんをあきらめ、再び別の肉まんを買おうと新たな決意をし足を踏み出す。
     しかし、その前に風のように現れ立ち塞がった者がいた。
    「これ以上、エスケープ者も出すわけにはいきませんので」
     魔人生徒会に協力する六徒部・桐斗(d05670)だった。
     ここは、と莉子だけでも逃がそうとするヒロトだが、後ろで莉子の悲鳴が聞こえ、振り向けば莉子は……転んでいた。
    「マラソン中に何をしているのかね?」
     そこにいたのは同じく生徒会に協力する平・等(d00650)がいた。
     莉子は等の巻いたビー玉に滑ったようだった。
     さすがにエスケープは難しいようだ。
     そんな緊迫した空気の横を全力で走って行く1人……と、少し遅れて2人。
    「10キロなんて走ってられるか! 俺はサボらせてもらう!」
     逃げながら叫ぶのは慈山・史鷹(d06572)だ。
     それを追うは天鳥・ティナーシャ(d01553)と結音・由生(d01606)だった。
     だが、小学2年生のティナーシャは、思わず足がもつれて転んでしまう!
    「うっ」
    「って、天鳥! 大丈夫か? 怪我とかしてないか?」
     慌てて駆け寄る史鷹に、紅潮した頬、涙ぐんだ目で見上げるティナーシャ。
    「ありがとうなのです」
    「ふぅ……」
     そして2人の側に立つ由生。
    「……あ、もしかして俺……捕まった?」
    「ちゃんとマラソンコースに戻りましょうね?」
    「あと少しなのです。一緒に走るのですよ?」
     まぁ、少しぐらいほのぼのがあっても良いかもねー。

    「えっと……お兄ちゃん? アリスと一緒にマラソンして下さい……♪」
     空色エプロンドレスの金髪の少女、アリス・クインハート(d03765)が恥ずかしがりながら言う。
    「あら♪ 素適な御主人様っ……わたくし、一人身の寂しい白兎ですの……♪」
     露出度の高いメイド服を着たピンク髪の少女、ミルフィ・ラヴィット(d03802)が言う。
     ちなみに小学1年生と小学6年生である。
    「ア、ア、ア、アリスちゃん……はーはー」
     ロリ好きなRB団が引っかかった! ミルフィがボコボコにしようとした時だった。
     ドゴーンッ!
     横合いからRB団が吹っ飛ばされ壁にめり込む。
     そして吹っ飛ばしたのは……同じくRB団のようだった。
    「幼女に手を出したら犯罪者!!!」
     つまり、RB団内部でも規律っぽいのはあるらしい。
     まぁ、無視される事も多いけど……。
     とりあえず、壁にめり込んだRB団を捕まえ、罰は免れる2人であった。
     商店街を巡回してエスケープ者を説得して回っているのは茶季院・景織子(d01861)だ。
     もっとも、彼女の一番の狙いはRB団。
    「Rはリア充、Bは爆発、ですわね。結局RB団の方々もお祭り集団に代わりありませんわ!」
     そして見つけるのは電柱の上に立つ獅子舞頭に唐草マントのヒーロー。
     とりあえず危ないので注意する。
    「正義の味方と思った? 残念、RB団じゃい!」
     それはずっと出番を待っていた葛葉・大爆発(d03064)だった。
    「RB団を倒しにヒーローが現れると思って、さらにそいつより高い所から登場しようとしたんじゃ」
     しかしそんなヒーローを見逃した大爆発は、ずっと出番を待っていました。
     うーん、合掌。
     だが、一番寂しかったのはゴール付近だっただろう……。
    「隠れるなら木を模した着ぐるみを着て行こっかな、この格好でゴール地点にいればバレないよね♪ 怪しい人を見つけたら取り締まっていくよ♪」
     そう着ぐるみを着て呟くのは舞鬼神・天雄(d03623)だ。
     そして――。
    「RB団……誰も来なかった……甘いお菓子とか、欲しかったなぁ」

    ●罰の10キロ
    「ちきしょー」
    「全部リア充が悪いんだー」
    「もうちょっとで逃げれたのにー」
     恨みつらつらで罰の10キログランドを走らされているのは、そのほとんどがRB団だった。
     だが、そんな中、鈴屋・勇(d02090)は違った。
     RB団に勘違いされ、リア充に勘違いされ、最後は取り締まり役に勘違いされ……そして今に至る。
     取り締まりに立候補するも、壊滅的な運動神経で捕獲ゼロの成績で罰を受けている者もいた。
     その者、西院・玉緒(d04753)はいろいろたゆんたゆん揺らしつつ、息も絶え絶えだ。
    「うう……もう……堪忍して……くださいぃ……」
     もっとも、懲りない輩はどこにでもいる。
    「リア充爆発しろ! リア充爆発しろ! あはははは! リア充は爆発すればいいんだよ!」
     走りながら叫んでいるのは夏炉崎・六玖(d05666)だ。
     少しずつだが走る時の掛け声が「リア充爆発しろ」に代わってきている。
    「リア充! 爆発しろ! リア充! 爆発しろ!」
     唱和する声に混じって行く絲紙・絲絵(d01399)。
     彼もRB団として敗北した1人だ。
     やがて過半数以上を越えるRB団だった者達がグランドを走りながら「リア充爆発しろ」の掛け声を合わせだす。
     その様子を見ていた花宝院・アリス(d01077)は、おもむろに巨大バズーカを取り出すと。
    「最後の最後まで……もう一度、私が正義の鉄槌を加えて差し上げますわ!」
     躊躇なく引き金を引いた。

     ちゅどーんっ!

    「RB団は……不滅……なり……」

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年10月31日
    難度:簡単
    参加:189人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 5/素敵だった 19/キャラが大事にされていた 58
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