駐屯地のアンデッド~成り代わられた自衛官

    作者:三ノ木咲紀

     教室に集まった灼滅者達を見渡したくるみは、真剣な表情で語り掛けた。
    「皆、集まってくれておおきにな! 今、日本各地の自衛隊基地でアンデッドが自衛官に成り代わっとるんが判明したんや」
     成り代わったアンデッド達は、まるで生きている人間のように振る舞い、自衛隊で生活し続けていたようだ。
     サイキック・リベレイターを使う前から既に成り代わっていたらしく、これまで察知ができなかったのだ。
     今回サイキックアブソーバーの予知が得られたのは、彼らが何らかの作戦を行うために動き出そうとしたからだと想定される。
    「アンデッドの目的は不明やけど、悪事なことは違いないわ。アンデッドが動き出す前に、自衛隊の基地……駐屯地? に潜入してこれを灼滅したってや!」
     自衛隊駐屯地は、当然関係者以外立ち入り禁止となっている。
     灼滅者達の力があれば無理矢理押し入るのは簡単だが、できるだけ穏便な方法で潜入できると尚良いだろう。
     例えば、ESP旅人の外套があれば見張りも監視装置もフリーパスとなる。
     これを利用して数人が先行して潜入、監視装置を切った後に潜入などの方法が考えられる。
     アンデッドは自衛隊員として行動している為、夜は駐屯地内の寮で就寝したふりをしている。
     同室に一般人がいては面倒だと考えたのか、アンデッドがいる寮の一室は全てアンデッドに成り代わられている。
    「アンデッドのいる寮の部屋は用意するさかい、深夜に寮に踏み込んでアンデッドを撃破した後、撤退して欲しいんや」
     寮の部屋にいるのは、五名の若い男性型アンデッド。
     一原と二木はクラッシャーで、三堀と四条と五藤はディフェンダー。
     クラッシャーの二人はガンナイフに似た、ディフェンダーの二人はバトルオーラのようなサイキックを使う。
     アンデッドの戦闘力はさほど高くない。
     だが、人間だった頃から戦闘力が高めだった事や、協力して戦闘する事に慣れているといった特徴があるため、それなりに強敵となっているようだ。
     五体のアンデッドは逃走することはなく、周囲の一般人を人質に取るような行動もしない。
     ノーライフキングから、命令があるまでなるべく目立たないよう行動するように指令されているようだが、深夜に大きな物音があれば騒ぎになるのは必至。
     自衛官とはいえ一般人なので、放置して戦闘を継続することも可能。
     騒ぎを大きくしないためには、何らかの一般人への対策も必要となるだろう。
    「成り代わられたお人らは、自衛隊の中でも下士官や。指揮権とかはあらへんけど、部隊内で破壊工作されたりしたら大打撃や。ノーライフキングの目的はまだ見えへんけど、成り代わられた隊員はん達のためにも、無事に解決したってや!」
     くるみはにかっと笑うと、頭を下げた。


    参加者
    神凪・陽和(天照・d02848)
    蜂・敬厳(エンジェルフレア・d03965)
    戒道・蔵乃祐(逆戟・d06549)
    水瀬・ゆま(蒼空の鎮魂歌・d09774)
    黎明寺・空凛(此花咲耶・d12208)
    深海・水花(鮮血の使徒・d20595)
    合瀬・鏡花(鏡に映る虚構・d31209)
    富士川・見桜(響き渡る声・d31550)

    ■リプレイ

     自衛隊駐屯地上空に、一本の箒が舞い上がった。
     闇を纏い箒で空を飛ぶ戒道・蔵乃祐(逆戟・d06549)は、当直で任務中の隊員や巡回警備員の動向を警戒しながら先行班に合図を送った。
     蔵乃祐の合図に頷いた神凪・陽和(天照・d02848)は、旅人の外套が放つ特殊な気流を纏いながらドアの鍵を解除した。
     会話をせず、視線と身振りでコミュニケーションを取りながら、先行班は駐屯地内を駆ける。
     監視カメラのコントロールルームへ潜入した蜂・敬厳(エンジェルフレア・d03965)は、眠そうにあくびをかみ殺す当直の自衛隊員の背後へ音もなく忍び寄った。
     監視カメラには、先行班は映し出されない。いつもと変わらない夜に油断した自衛官の首筋に、吸血捕食の牙が立てられる。
     昼間の訓練で疲れていたのだろう。小さく寝息を立てる自衛官を確認した黎明寺・空凛(此花咲耶・d12208)は、監視カメラの制御盤を操作した。
     陽和と手分けして監視カメラを無力化するのを確認する。
     その間に、敬厳は寮までの安全かつ最短ルートを後続班にメールで連絡した。
     その頃。
     黒い上着を羽織り、目立たないように待機していた深海・水花(鮮血の使徒・d20595)は、先行班の連絡にドアを開け、一気に駆け込む。
     迅速に移動しながら、合瀬・鏡花(鏡に映る虚構・d31209)は殺界形成を放とうと手を握り締めた。
     だが、駐屯地の中にいるのは訓練された自衛官。普通の一般人よりも戦うことに慣れ、殺気に立ち向かうことにも慣れているだろう。
     万が一にも、殺気に不審を感じた自衛官を呼び寄せる結果になってはいけない。鏡花は拳を解くと、先行する仲間の背中を追いかけた。
     スマホを取り出した富士川・見桜(響き渡る声・d31550)は、光が漏れないように細心の注意を払ってルートを確認した。
     この角を曲がって、少し行った先が合流場所だ。蔵乃祐の指示した巡回ルートがここを通るのは、もう少し後。
     曲がり角の安全を確認して駆け出した見桜は、突然開いたドアに思わず立ち止った。
     建物の中から現れた自衛官は、ぶつかりそうになった見桜の姿に驚き立ち竦む。
     灰色、黒系なパンクな感じのファッションは、深夜の自衛隊駐屯地にはほぼあり得ない服装だ。
     一瞬の自失から立ち直った自衛官は、見桜達に鋭い声を上げた。
    「お前達、何者だ!?」
     応援を呼ばれそうな気配に、見桜は拳を握り締めた。
     先行班が待つ寮までは、目と鼻の先。あの建物の中に、人知れず潜むアンデッドがいる。
     危険なアンデッドは、この屈強そうな自衛官では太刀打ちできない。できないのだ。
    「……ここは私たちが戦うときなんだよ」
    「何を言って……」
     応援を呼ぼうとした自衛官に、見桜は王者の風を放った。
    「あなたたちは、あなたたちが守るべきものを守って欲しいから。そのために、今は私たちの出番なんだ」
    「何の事だ?」
    「しばらく寮には近づかないで。納得出来ないと思うけど分かって欲しい」
    「う……」
     命を賭けた強い意思で放たれる王者の風と、強い意思で不審者への対応しようとする自衛官。
     混乱する自衛官に、見桜は鋭く強い口調で言った。
    「ここから、早急に立ち去って!」
    「……」
    「静かにしてくださいね」
     合流地点で待っていた敬厳は、一歩下がった自衛官の首筋に牙を立てる。
     吸血捕食でぼんやりとしだした自衛官の脇を抜け、合流した灼滅者達は速やかに寮内へと駆け込んだ。


     予知のあった寮の部屋へ侵入した水瀬・ゆま(蒼空の鎮魂歌・d09774)がサウンドシャッターを使った時、ベッドのひとつが盛り上がった。
     寝たふりをしていた一原は、灼滅者達の姿に疑問の声を上げた。
    「こんな夜中に、誰だ?」
     次々と起き上る五人の自衛官は、生きている人間のように見える。
     見た目では判別つかない姿に、敬厳は小さくため息をついた。
    「ノーライフキングは人間社会に食い込むのが、他のダークネスより上手いように感じますね」
    「自衛隊に潜り込んでいるアンデッドか。自衛隊の駐屯地といえば以前は有力なソロモンの悪魔がかなりの数、潜んでいたような覚えがあるけれど。さて、もしかしたらアンデッドが潜んでいるのはその関係もあるのかな?」
     首を傾げる鏡花が発した『アンデッド』の単語に、五体は戦闘態勢を取った。
    「お前達、何者だ!?」
    「戦う前に、一つだけ聞いておきたいんですけど」
     軽く手を挙げて一歩前へ出た蔵乃祐に、武器を構えた一原は不審そうな表情を作った。
    「あなた方はクリスタル・ミラビリス元老、アッシュ・ランチャーの眷属なんです?」
     蔵乃祐の問いに、豆鉄砲を食らったような顔をした一原が眉を顰めた。
    「……は?」
    「高位のノーライフキングが直々に創造したアンデッドは、高度な知性や精神性を備えると言われていますからね」
    「貴様が何を言っているのかは知らんが、どうやら俺達の敵らしいな!」
     一原の一声に、手下の四体が速やかにポジションにつく。
     どうやら、彼らは本当に何も知らされてはいないらしい。
     蔵乃祐の戸惑いを意に介さず、一原は指示を下した。
    「ガンナイフ構え……てぇーっ!」
     一原と二木が放つホーミングバレットが、蔵乃祐に向けて一斉に放たれた。
     蔵乃祐を貫く弾丸の前に躍り出た見桜は、痛む肩を押さえて一歩下がった。
     一原と二木が構えたガンナイフが、ふいに凍り付いた。
    「雑魚は凍ってろよ」
     攻撃を一撃受け、返す刀で放った蔵乃祐のフリージングデスが、アンデッド達を氷結させようと迫る。
     一原を庇い氷結した三堀には構わず、四条と五藤は拳にオーラを込めた。
     蔵乃祐を庇ったことで、見桜はディフェンダーだと判断したのだろう。各個撃破の標的となった見桜に、閃光百裂拳が突き刺さる。
     連撃を何とか受け切った見桜は、痛む体を押さえながらしゃがみ込んだ。
    「見桜さん!」
     急いで駆け寄ったゆまは、ジャッジメントレイを放った。
     仲間を癒す裁きの光が、傷を徐々に癒していく。
     だが、連撃を受けた傷を癒しきるには足りない。
     状況を判断した水花は、殲術道具を構えた空凛へ声を掛けた。
    「私は蔵乃祐さんを回復します。空凛さんは見桜さんを!」
    「はい! ……絆!」
     空凛の声に駆け出した霊犬の絆は、息をつく見桜を浄霊眼で癒した。
     同時に展開された祭壇から降り注ぐ癒しの光が、傷を癒していく。
     衝撃ダメージを完全に回復した見桜に、空凛はホッと息を吐いた。
    「大丈夫ですか? 見桜さん」
    「大丈夫」
     気丈に答えた見桜は、戦闘を続ける五体のアンデッドにそっと息を吐いた。
    「……気がついたら周りの人間がゾンビになっているって怖いよね。成り代わってるのか、どこかでゾンビにされてしまったのか」
    「彼らの職業が自衛官、というのも気になります。自衛隊を使って統合元老院は何をしようとしているのでしょう」
     戦うアンデッド達を見ながら、ゆまも唇を噛んだ。
     自衛隊の武器を奪う。自衛隊の組織を使ってテロをしかける。
     ありきたりの想像しか出てこないが、彼らを使って何か仕掛けようとしていることだけは分かる。
     想像を巡らせるゆまを元気づけるように、空凛はゆまの肩を軽く叩いた。
    「統合元老院の目的は分かりません。ですが、彼らの高潔な志を汚したことは許せませんし、気の毒に思います。必ず解決しましょう」
    「その人達は助けられないけど。でも、まだ助けられる命があるからね」
    「はい」
     力強い見桜の声に、ゆまは深く頷いた。
    「裁きの光を此処に……!」
     強い意思の下放たれた水花のジャッジメントレイが、蔵乃祐の傷を癒していく。
     態勢を立て直した味方を確認した敬厳は、濃州閃雷藤千代 覇上征下禽王 "白花の右" 十五級討ちフルールを掲げた。
    「不浄の輩どもめ、この光によって浄化されるがよいわ!」
     敬厳の持つ真珠色のサイキックソードが輝きを増し、アンデッド達を薙ぎ払う。
     強烈な光に、取り繕っていた皮膚が破れる。
     ゾンビらしい姿になった一原に、陽和の巨大な狼の爪が迫った。
    「防衛を担う者として、あなた達は許せません!」
     怒りと共に放たれた強烈な一撃が、一原を袈裟懸けに切り裂く。
     引き裂かれた肩を庇った一原に、ガラスが迫った。
     割れたガラス片を繋ぎ合わせたようなウロボロスブレイドが死角から迫り、防護ごと切り裂く。
     よろめく一原に、鏡花は小さくため息をついた。
    「思惑が不明なのは気味が悪いけれど、今は出来る事をするだけだね」
    「奇遇だな。俺も同じ気持ちだ。気味は悪くないがな!」
     傷を誤魔化すように踵を鳴らした一原に、癒しの光が舞い降りた。


     三堀と四条の集気法に傷を癒した一原は、ガンナイフを構えると声を上げた。
    「行くぞ!」
    「させません!」
     床を蹴り、傷を癒したばかりの見桜に向かって突撃した一原の攻撃を、空凛が割って入り受け止めた。
     強烈な格闘術を受け止め、睨み合うことしばし。
    「空凛姉さまを離しなさい!」
     声と共に放たれた陽和のレイザースラストが、狙い違わず一原を引き裂く。
     ジャンプして距離を取った一原の着地を狙うように、弾丸が迫った。
     狙い違わず捉えた銃弾に、一原は水花の方へ頭を向けるとにやりと笑った。
    「いい腕をしているな、小娘」
    「銃の腕前なら、負けるつもりはありません……!」
     ガンナイフを構える水花に、一原はこれ見よがしにガンナイフを構え返す。
     一原の脇を抜け、二木が突進を仕掛けた。
     攻撃を受け止めた見桜は、襲う衝撃を耐え抜くと、虚ろな目の二木をキッと睨んだ。
    「……出来ることを命懸けでやる。その瞬間を全力でね!」
     リトル・ブルー・スターの柄を握り締めた見桜は半身で勢いを逸らし、すれ違いざまに横薙ぎに剣を振るう。
     半ば両断された首をさすった二木は、何事もなかったかのようにガンナイフを握り締めた。
     隊列を戻したアンデッド達を狙い澄ましたかのように、敬厳は濃州閃雷藤千代 覇上征下禽王 "白花の左" 二里射ちベアトリスを七つに分割した。
    「七つの光よ、わしの敵を切り裂け!」
     意思を持つように放たれた光の輪が、敵を大きく切り裂き戻る。
     同時に駆け出した不浄を清めるような鏡花の炎の蹴りが、一原へ向けて放たれた。
     燃え盛る炎を帯びたエアシューズが一原の肩甲骨へ突き刺さる直前、五藤が一原を庇った。
     炎を受けた五藤は、知性そのものが欠落したかのように何も言わない。
     そんな五藤に、鏡花は語り掛けた。
    「自衛隊にアンデッドか、さぞ無念だったろうね。でも放置はできないから、灼滅させるしかないさ」
    「無念だと?」
     五藤には構わずに口を開いた一原に、仲間を癒したゆまが向かい合った。
     天星弓を下ろしたゆまは、虚空を見据える五藤にそっと語り掛けた。
    「そう。貴方達も無念でしょう。国を、人を守る立場の存在だったのに、こんなことに。せめて、誰も傷つけぬうちに……」
     真剣な声で語り掛けるゆまの声に、一原は高らかな笑い声を上げた。
    「無念なものか! 命令に従い、命令を遂行することを至上命題とする。これ以上の幸福があるか?」
     陶酔したように笑う一原に、蔵乃祐は口元を緩めた。
    「……懐かしいな」
     蒼の王コルベインの眷属だった鍵島・洸一郎はかつて『眷属は主の為にだけ存在する。故に存在意義を悩む必要が無い』と語った。
     生の苦しみを持たぬ灼滅者達は『幸せな愚者』だと。
     あれから4年。
     我武者羅に駆け抜けた日々だった。
     今なら理解出来る。確かに灼滅者として生きることは苦しみだった。
     道に悩み、存在理由を疑い。闇堕ちした事もある。だが。
    「俺は、俺の生き方を後悔するつもりはない。何時も自分の頭で考えて選んだから、これだけは確実に言える」
     竜砕斧を構えた蔵乃祐は、鋭く巨大な刃先に力を込めた。
    「僕達は自由だ。だから、これからも戦える」
     蔵乃祐が振り抜いた竜砕斧が一原を真っ二つに裂き、そのまま消えていった。


     戦いは続いた。
     司令塔だった一原が灼滅され、指揮系統が失われるかと思われたアンデッド達だったが、それまでのやり方を踏襲し続けるために混乱は生まれなかった。
     集中攻撃を受けた見桜が倒れると、次のディフェンダーを倒そうと襲ってくる。
     一糸乱れぬ攻撃パターンはたやすく灼滅者達に読まれ、二木もまた灼滅される。
     アンデッド達は次第に追いつめられていった。

     無言で攻撃を繰り出そうとする四条を中心に、十字の光が舞い降りた。
    「神の名の下に、断罪します……!」
     祈りと共に放たれるセイクリッドクロスが、浄化の光で四条を焼き尽くす。
     ダメージの深い三堀に、ガラスの破片が迫った。
    「これで、とどめだね!」
     鏡花のウロボロスブレイドが、深手を負った三堀を捉えてバラバラに切り裂いていく。
     消える三堀には見向きもしないで、四条は空凛に向けて閃光百裂拳を放った。
     咄嗟に避けた空凛に、五藤がオーラキャノンを解き放つ。
     無言で繰り出される呼応撃が空凛に突き刺さる直前、ゆまが天星弓をつがえた。
    「空凛さん!」
     五藤の攻撃よりも早く放たれた癒しの矢が、空凛の傷を癒していく。
     何とか受け切った空凛は、義妹に目配せをすると駆け出した。
    「参りますよ、陽和!」
    「はい! 空凛姉さま!」
     同時に駆け出した陽和が、五藤の鳩尾に銀狼の拳を叩き込み、体を宙に浮かせる。
     宙に浮き、無防備になった五藤に八重桜が迫った。
    「せめて、安らかな眠りを!」
     大きくジャンプし、バイオレンスギターを振り上げた空凛の一撃が、五藤を縦に切り裂く。
     祈りを込めた攻撃に、五藤は声もなく四散して消えた。

     静かになった室内で、ゆまは大きく息を吐いた。
     アンデッドの軍隊は恐ろしい。
     死者の軍隊……上官の命令を至上とし、普通の攻撃では倒れない兵たち。
     簡単に国を覆せるかもしれない。
     襲い来る無数のアンデッド軍を想像し身震いしたゆまは、軽く頭を振った。
    「悪夢の想像はやめましょう。何が起きても、阻止をすればいいだけなのだから」
    「どうか、安らかに……」
     利用されたアンデッド達の為に冥福を祈った水花は、目を開けるとデスクへと近寄った。
     敵が最近行っていた、もしくは今後行う予定だった訓練や任務等が記された手帳を探し出す。
     該当すると思われるページを携帯で写真を撮り、後の調査のために持ち帰る。
     個人だけでなく基地全体の分も調査を終えた水花は、スマホを握り締めた。
    「これも統合元老院クリスタル・ミラビリスの仕業なのでしょうか……? この情報で、何か分かれば良いのですが」
    「……守ることは本当に難しい。でも、そうするって決めたんだ。私である限り、あきらめないよ」
     水花の不安に答えた見桜に、全員が頷く。
     仲間が外に出たのを確認した陽和達は、旅人の外套を纏いオフにした監視カメラをオンに戻す。
     五人の自衛官が消えた駐屯地は、何事もなかったかのように眠りについていた。

    作者:三ノ木咲紀 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年4月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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