進み行く手の先に

■リプレイ

●手を取る道は
　スサノオ大神の力。
　それを喰らおうとするも、力を妨げるバリアにより、喰らう事が出来なくなった彼ら。
　そして、そんなスサノオ達を助けて欲しい、というのが、ナミダ姫からの依頼。
「うーむ……」
　と、顎に手を当てながら呟く紅羽・流希（挑戦者・d10975）。
　中々に難しい状況に、悩まざるを得ない状況であるのは間違い無い。
　そして、流希に対し海川・凛音（小さな鍵・d14050）と志賀野・友衛（大学生人狼・d03990）が。
「ナミダ姫さんがこちらと戦うつもりが無い様であれば、彼女からの依頼に協力する事はやぶさかではありません。それに、ノーライフキングとの戦闘に余計な敵戦力を出さない事は重要でしょう。ただ……ナミダ姫さんは、いったいこの後、どうしたいと考えて居るのでしょう？」
「そうだな。確かにナミダ姫からすれば、スサノオ達に力を貸すのは当然だろう。そして貸し借りの結果、私達に力を貸してくれるなら、それに越した事は無い。だが……」
　と、そこに割り込む様に、ヴォルフ・ヴァルト（花守の狼・d01952）が。
「協力要請を反故にしているのが約4割……ナミダ姫がこの状況を、協力していると判断するのか、逆に邪魔していると考えるのか……は、微妙な所だね」
　更に月翅・朔耶（天狼の黒魔女・d00470）と泉・星流（魔術師に星界の狂気を贈ろう・d03734）が。
「まぁ、今の事態が続けば、協力を得られるか、と言われればかなり微妙な線だろうな。可能ならば、協力を得たいところだが……」
「そうですね。つい先日も、堂々と裏切り宣言をしたのもある位だし……あれがナミダ姫に伝わったら、不味いかもしれない。口止め、という訳ではないけれど、少しでも盛り返さないと……」
　……勿論、灼滅者達の間には、色々な考え方がある訳で……スサノオ達が信頼できないというのも理解は出来る。
　ただ、幸いな事に、ここに居る仲間達は皆、スサノオへの協力に同意してくれた訳で。
「まぁ……何にせよ、スサノオ大神を勢い余って倒さない様にしないとな」
　と九条・九十九（クジョンツックモーン・d30536）が言うと、その瞬間。
「こら、じゃれつくなワンコ！」
『……；』
　怒られて、悲しげな表情を浮かべる神無月・優（唯一願のラファエル・d36383）のビハインド、海里。
　でも、めげずに優の後ろをふーらふらと漂いながら、隙あらば後ろからぎゅーっと抱きついてくる。
　……そんな優と海里の二人を見て、九十九が。
「……ほんと、優達は仲が良いな」
　と……それに優は。
「勝手に懐かれているだけだ……仲良くなんかない」
『……；；』
　また悲しげな表情をする海里、それを意に介さない風にする優。
　……そんなやりとりにくすり、と微笑む凛音、そして。
「まぁ……無事に戦闘が終わったら、どうしたいかを聞く機会を設けられないか、スサノオの方々に連絡をお願いしてみましょうか」
「そうですねぇ……そうすれば、相手側の方から何らかの連絡が来るかも知れませんしねぇ……」
「ああ、分った。それではスサノオ達の居る所へと急ごう」
　と流希、友衛の言葉に頷き、そして灼滅者達は、埼玉県は秩父市の芦ヶ久保山へと急ぐのであった。

●咆哮を上げて
　そして、山の入口に到着した灼滅者達。
　木の影に隠れるように、スサノオ達が隠れているが……灼滅者達の姿を確認すると、左から、右から……巨大な狼の姿にて、姿を現わす。
「スサノオ。私達は灼滅者だ。私は、友衛。今回は、君達に力を貸そうと思う。宜しく頼む」
　と手を差し出す友衛。
　……唸り声を上げて、一度は警戒を解かないスサノオ。
　更に友衛に加え、九十九やヴォルフも。
「ああ……俺は武蔵坂の九条・九十九だ。宜しく頼む」
「俺はヴォルフだ。既に俺達灼滅者に不信感を持って居るかもしれないが……俺達は君達がスサノオ大神の力を食らえるよう、協力したい」
　そんな灼滅者達の言葉に、一時顔を見合わせるようにしてから。
『……コッチダ』
　と、山の奥へと進むのを促す。
「ありがとう……もし良ければ、君達の名前を聞いても良いかな？」
「そうだな。戦友の名は知っておきたい。次の機会があったとして、『あの時のスサノオ』では味気ないだろう？」
　と友衛、九十九の言葉に、スサノオの一匹が。
『……ヤトだ。宜しく頼ム……』
　と、言葉少ないながらも、はっきりと答える。
「ヤトか……いい名前だな」
　と微笑むのに、スサノオは視線を向けず、ただ前へ。
　……そして、暫し山中を進んで行くと……木々に隠された様な、洞窟の入口を発見する。
『……ココだ』
　と立ち止るスサノオ達。
　……目には見えないながらも、ここにスサノオの立ち入れない結界が張り巡らせているのだろう。
「分った。結界が開いたら、突撃してきてくれ」
「私達はトドメを刺しません。ですが、私達だけでは抑えるので精一杯かもしれませんから……宜しくお願いします」
　と朔耶と凛音の言葉に、こくっと頷くスサノオ達。
　そして灼滅者達は、洞窟の入口より、中へと立ち入って行くのであった。

●闇の中に
　そして、スサノオ達を残し、洞窟の中を進んで行く灼滅者達。
　……程なくして、目の前に広がる、大きな広場……そして、その広場のど真ん中に、巨大な巨大な体躯をした、スサノオ大神の力。
『……ウウウゥ……』
　と、唸り声を上げているスサノオ大神の力は……程なくして灼滅者達の姿を視認すると、怒りを孕みながら、牙により食らい付き始める。
　……その一撃を、咄嗟に身を呈しカバーリングする流希。
「全く……中々に獰猛な奴だな」
　などと言いながら、流希は日本刀を押し込み、一端距離を取り合う。
　そして先陣切って、優が怪奇煙にて妨アップを付与……と、それに対し、ガリ、ガリッ、と足を地面に押しつけながら威嚇する敵。
　九十九と凛音が先ずはイエローサインを放ち、BS耐性を前線に付与。
　そして朔耶が制約の弾丸を撃ち抜くと、更に星流がマジックミサイルを放出し、海里が霊撃を放つ。
　中衛、後衛の創り出した隙に、更に朔耶の霊犬のリキと、友衛、流希のディフェンダー陣が続く。
　友衛が幻狼銀爪撃を穿つと、リキが六文銭射撃、流希が黒死斬で突いていくと、最後にヴォルフが零距離格闘をその脳天へと叩きつける。
　……そんな灼滅者達の一刻の攻撃は、確実にスサノオ大神の力を削る。
　だが、まだまだ倒れるような程ではないスサノオ大神の力は、次の刻も、咆哮を上げて暴れ廻る。
　その一撃、一撃を流希と友衛が交互にカバーリングを繰り返す事で、ダメージを分散。
　そして喰らったダメージは、凛音と優の二人が重点的に防護符とラビリンスアーマーを飛ばし続け、体力と戦線を維持しつつ、友衛自身も回復手に周る事で、防衛陣を突破されない様に動き回る。
　更に朔耶の制約の弾丸に、九十九の殲術執刀法、更に星流の黙示録砲に、海里の霊障波が脇を固め、確実にバッドステータスを重ねる。
　そして、流希の雲櫂剣に、リキの斬魔刀、そしてヴォルフのレイザースラストが削る。
　……猛烈な攻撃をどうにか切り抜けながら、スサノオ大神の力を削り行く。
　経過する事、十数分……次第にスサノオ大神の力は失われ、その白い体がブレ始める。
　……と、その瞬間。
『……グゥオオオオ……！！』
　と、遠くの方から響く、咆哮。
　そして次の瞬間、入口の方から幾つもの足音が響いてくる。
「……どうやら、結界が破壊された様だな」
　とヴォルフが言う通りに、結界破壊後に勢いよく、突撃してきたスサノオ達。
　身を逸らし、スサノオ達が前線に進み出るように誘導すると、星流が。
「スサノオに協力するよ、皆」
　と言うと、それに頷く仲間達。
　ヴォルフはクラッシャーからディフェンダーポジションにシフト。
　最前線に立つスサノオ達をクラッシャーへと押し上げると友に、九十九がイエローサインをスサノオ達に掛ける。
　更に凛音もヴァンパイアミストをスサノオに掛けて壊アップを付与し、友衛が祭霊光で回復。
　勿論、最前線に立つスサノオ達に、スサノオ大神の力は噛みつき、暴れ、殺そうとするのだが……それ以上にスサノオ達の獰猛なる牙が、スサノオ大神の力をみるみる内に削り取る。
　いつの間にか、スサノオ大神の力の勢いを上回る勢いで、喰らい尽くすスサノオ達。
『グゥゥオオオオオ……！！』
　と、まるで地下から響き渡るかの様な咆哮を上げるスサノオ大神の力。
「もう少し……か」
　とヴォルフの言葉に星流が。
「了解……弾幕張ります……一気に倒して下さい……」
　とスサノオ達に声を掛けつつ、オールレンジパニッシャーを天井に向けて放つ。
　当然、撃ち抜かれた所は崩れ……天上から瓦礫がドンドンと落下し、地面を抉る。
　そして、その攻撃に、巨体のスサノオ大神の力は動き辛くなり……更にスサノオ達が、左から、右からと噛みつく。
『グギャォオオオ……！！』
　一匹のスサノオが、その喉元にガブリと喰らい付くと……スサノオ大神の力は、ホールに響く絶叫の断末魔を上げる。
　その断末魔は、まるで煙の如く、スサノオ大神の力は、スサノオに吸い込まれていく。
「……」
　そのスサノオ大神の力の、貪るように食いかかるのに。
「……」
　僅かな恐怖を抱きつつも、それを見定める九十九であった。

●優しき心は
　そして……スサノオ達が、スサノオ大神の力を完全に取り入れた後。
「……さて……終わりましたか……？」
　と朔耶の言葉に、スサノオ達はこくり、と頷く。
　そして、流希が。
「スサノオさん。一つ、質問させていただいてもいいでしょうか？」
　と、水筒に入れた、暖かいお茶を差し出しながら、問いかける。
　それにスサノオは、ナンダ、と。
「少し、気になったのですが……この『同族を取り込んで強くなる』と言うのは、全ダークネスの特性なのでしょうか……？　と言うのも、今迄の経験の中で、アンブレイカブルや、ご当地怪人も同じような事をしていましたし、タタリガミも、都市伝説では有りますが、同じ事が言えるのです……」
　……それにスサノオは答え無い。更に流希が。
「どの種族も基本は『倒した同族を取り込んで強くなる』という事を繰り返している様な気がして……先の戦いで倒したガイオウガも元を正せば、複数のイフリートが一つになった物でしたし……恐らく、シャドウ達も同じ事が言えると思うのです……彼らがやっている事も、私には、それらと全く同じ事をしている様にしか思えなくて……どうなのでしょうかねぇ……？」
　……と、その問いに、スサノオは。
『……シラヌ。ワレラハ、チカラヲ手ニ入レルガタメ……』
「そうですか……分りました」
　頷きく流希……と、そこに更に。
「スサノオ達。以前の協力出来なかった人達についてはすまない……学園でもスサノオに対して脅威を感じている人はいるんだ……ボクも、やはり脅威には思っている……そして、そちらをかなり刺激するような事を言った人達がいるのも聞いているけど……できるだけ、寛大な対応をして貰えればありがち……」
　と言いながら、深く頭を下げる星流。
　だが、スサノオ達は、それに無言を貫く。そして、更に優と友衛が。
「もう耳に入っているかもしれないが、協力する灼滅者ばかりではない。武蔵坂はそういう……多様性を尊重する所だ」
「そうだな……学園の中には違う考えの者も居る。それでも、共闘する姿勢や対話を通じて、共存を願う者も居ると知って貰えれば何よりだ。人狼とスサノオがいずれ滅ぼし合う以外の道を見つける為にも。だから……機会があれば、また声を掛けて貰いたい」
「そうだな。少なくとも俺達は君達と争いたくない。出来ればずっとね。そう思っている、そう言う灼滅者も居る事、ナミダ姫に伝えて欲しい」
　そんな灼滅者達の言葉に、スサノオは……無言を通す。
「大丈夫です。ここで、全てを答えて貰いたいという事は在りません。ナミダ姫の判断を仰がなくてはならない所もあるでしょう。今はまだ、貸し借りの関係は無いと考えて居ますが……ナミダ姫の陣営が、今後どうすると考えて居るか、を学園まで連絡を頂けると嬉しいです」
　と凛音の言葉に。
『ゼンショハスル……』
　と……そしてヴォルフは。
「分った。もし、可能ならば、この手紙も渡しておいて欲しい」
　……スサノオと、ナミダ姫への個人的な気持ちを記した手紙。
　勿論、スサノオ達が、それをナミダ姫に渡すのは、約束されたという訳ではないが……スサノオ達は。
『……ワカッタ』
　と頷き、その手紙を咥えると共に、其の場から離脱していく。
　その駆け抜ける姿を眺めながら、灼滅者達も、帰路へとつくのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2017年4月24日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 3／キャラが大事にされていた 2
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