アッシュ・ランチャーの野望～揚陸の軍勢

■リプレイ

●地平線に映る
　５月１日、深夜。
　東シナ海より来襲せし人民解放軍は、ノーライフキング『アッシュ・ランチャー』の意思により、日本侵攻へと舵が切られてしまう。
　そして、ノーライフキング『アッシュ・ランチャー』の命を受けた、一つの軍勢。
　3000人もの、多くの大上陸部隊が……このゴールデンウィークの中日に、沖縄本島の北方、今帰仁の海岸線に着岸し、上陸しようとしているという。
　……そんな『アッシュ・ランチャー』の指示に従う揚陸部隊の一つに対峙するが為、灼滅者達は今帰仁の浜の近くへと辿り着く。
「しかし、ダークネスが一国の軍隊を丸ごと操ることが出来るなんて……！　このままにしていたら、何が起きるか、考えただけでも恐ろしいです。決着をつけなくちゃ……本当の力を取り戻す前に！」
　と、栗橋・綾奈（退魔拳士・d05751）が拳を握りしめ、決意を新たに声を上げると、それに古海・真琴（占術魔少女・d00740）とウィルヘルミーナ・アイヴァンホー（白と黒のはざまに揺蕩うもの・d33129）が。
「そうですね。何にも悪いことしていない一般の方々を、ここまで派手に巻き込む作戦を考えるとは……」
「確かにそうですね……一般人の方達も、アッシュ・ランチャーにどういう指示を受けているのかは分りませんが……彼らを無力化しないといけない訳ですか……」
「ええ。兵隊さん達だって、アッシュ・ランチャーの命令を実行してるだけとも言えるわけですし、軍服を脱いでしまえばただの人……ダークネスをやっつける為のハズのこの力を、こんな方向に使う事になるだなんて……」
　その力の使い方に対し、軽くもやもやとしている真琴。
　勿論、灼滅者としての力は、ダークネスをやっつける為の力である。
　しかし、今回はその力を一般人に使わない限り、多勢に無勢の前に負けてしまうのは間違い無い。
「一般人に被害を出さない為にも、全力を尽くします。この戦いは、撤退するわけにはいきません。一般人を守る為なら命を掛けましょう。少なくとも、一般人の皆さんが逃げ切るまでは、戦いを続けませんと」
「そうだね。一大決戦だね……必ず止めてやる」
　海川・凛音（小さな鍵・d14050）と最上川・耕平（若き昇竜・d00987）に、榎本・彗樹（自然派・d32627）が。
「……沖縄から制圧していって、日本制圧される前に全てを殲滅せねばな……」
　と、それに篠崎・伊織（鬼太鼓・d36261）も。
「そうだねぇ……という訳で、えのもん、宜しく頼むね？」
「ん……ああ、そうだな。ま、こちらこそ宜しな、伊織」
　と……そうしている間にも、仄かに空が、僅かに明るむ夜明け前の刻。
　空は曇り空、よーく地平線の先に良く目を凝らすと……揚陸挺が数隻、こちらの方へと近づきつつある様で。
「……来たようだな……皆、準備を」
　鴻上・巧（氷焔相剋のフェネクス・d02823）の言葉に頷き、そして灼滅者達は、上陸寸前の海岸へと駆けつけていった。

●揚陸艦の影
『ねぇ……あれ？　今、何か光らなかった？』
『ん？　んな訳ねーだろ。あれ、漁船の光に決まってんだろ』
　海岸線を歩くカップルが、そんな言葉を交わす。
　勿論、それはいつもありそうな光景……しかし、その光は、みるみる内に、カップルの元へと接近。
　……そんなカップルに、駆けつけるなりに、上から覆い被さり、そのビーム攻撃を回避する真琴。
『うわぁ……なんなんだよ！？』
　と、突然の事に驚くカップルの男、それに真琴が。
「ごめんなさい。ここは危険です。今すぐ逃げて下さい！」
『逃げろぉ……！？　な……』
　反論しようとする男だが、真摯な真琴の表情と言葉に、お、ぉう……と疑うことも出来ず、頷かざるを得ない。
　……そして、一般人カップルが海岸線を逃げていくと、更に凛音がパニックテレパスを使用し、周囲から一般人を更に排除していく。
　……程なくして海の方から、次々と揚陸艦にのった男達が上陸。
　3000名の一般人兵士達が、武装に身を包んで次々と上陸していく姿は……何か世紀末を思わせる。
　その一班は、大体40名から50名位の集団で行動している。
　そんな武装に身を包んだ彼らが上陸すると、直ぐに。
「逃走！」
　とウィルヘルミーナが、中国語で逃げろ、をパニックテレパスと共に叫ぶ。
　更にハイパーリンガルを使って、巧と耕平がパニックテレパスで混乱しつつある一般人兵士達に。
「ここから逃げて下さい」
「そう。君達の向かう道はそっちじゃない。わかるよね？」
　と声を掛けて、一般人兵士を上陸してすぐに、其の場から引き離すように指示を与える。
　……勿論、一般人兵士達は灼滅者達の指示に従い、その離れた方向へと向かう事となる。
　そして、そこで。
「……すいません。ここで、眠って下さい」
　と、其の場で魂鎮めの風を使い、沈めていく綾奈、彗樹。
　……五十人以上の単位で、次々と一般人兵士を沈めていく。
　そして、上陸してくる一般人兵士を次々と沈めていくと……程なくして、ＥＳＰが効かない一般人兵士が出現。
　……周りの一般人兵士達に指示を与えている様な動きをしている、その一般人兵士だが……良く見ると、その顔に生気は無い。
「……効かない……いや、これはもしかして……！？」
「そうだな……こいつがアンデッドだろう」
　ウィルヘルミーナに、彗樹が頷き、少し離れた所にいる仲間に注意喚起。
　まだまだ周りには多数の一般人兵士達が居る為に、その対処も並行して行わねばならない。
　そして、アンデッドが。
「……ウウウ……」
　唸り声を上げるアンデッド……それに。
「アンデッドを鍬で殴り、人甲兵の身包みを剥がしてやるか」
　と彗樹がアンデッドへ言い放つと共に、先手をとっての雲櫂剣の一撃を叩き込むと、伊織も鬼の面を装着し。
「さぁ。始めるぞ……覚悟して貰おう」
　と凜々しい言葉で、抗雷撃の一撃を叩き込む。
　更に耕平も。
「今度こそ、安らかに眠ってね」
　と言い放ち、抗雷撃を放つと、そのウィングキャットのピオニーが、ニャーと鳴いて、肉球パンチを叩きつける。
　……と、その四回の攻撃で、アンデッドは崩れ墜ちる。
　そして、更にその後も一般人兵士をＥＳＰで処理しつつ、時折ＥＳＰが効かないアンデッドを、その場にいる仲間達が集中的に処理する事で、アンデッドを速攻で処理していく。
　アンデッドを６匹程倒した後、一般兵士とアンデッドを処理していくと……そんな敵陣の中に、顔一つ以上……ほぼ一般兵士達の倍近い体躯の、強化装甲の様な物に身を包んだ物体が……。
「もしかして……あれが人甲兵か？」
　と。
　明らかに、周りの者達とは全く違うその存在は……周囲の者達に指示を与えている。
　が……当然灼滅者達のＥＳＰによって、周囲の一般人兵士達はパニックテレパスで混乱、更に魂鎮めの風による、沈静化を経て、戦力的に全く使い物にならなくなっていく。
　そして……そんな逃げ惑い、落ちた一般人兵士達を、使い物にならない、とばかりに切り捨て、人甲兵は灼滅者達へと攻撃を仕掛けてくる。
　アンデッドよりも一層、戦闘能力が高い人甲兵。
「さて……僕の相手をしていただきましょうか」
　と前に立った巧が武器を構え、宣戦布告。
　そして、人甲兵の懐に潜り込んでは、デッドブラスターで牽制攻撃を叩き込む。
　更に、同位置の綾奈が抗雷撃を放つと、更にジャマーの真琴がフォースブレイク、そのウイングキャットのペンタクルスが猫魔法にて攻撃。
　そして、耕平が。
「悪いけど、お帰り願うよ。この地を戦場にはさせないさ」
　と言い放つと、渾身のクルセイドスラッシュを叩き込むと、凛音もシールドバッシュを撃ち込む。
　……確実に、人甲兵に対しダメージを蓄積。
　流石に、一分の間には倒しきる事は出来ない。
　しかし、継続して攻撃をする事で、少しずつ、少しずつ、体力は消失。
　三分を以て、人甲兵が崩れ墜ちると……周りで、人甲兵が撃破されるのを見た一般人兵士達は。
『不会、吧……！！』
　と……中国語で、ウソだろ、と言う者達がちらほら。
　驚愕の表情を浮かべ、次々と……其の場で崩れ墜ち、更に絶叫を上げて、其の場から逃げようとする者も現れ始める。
　……明らかに、人甲兵が倒れた事により、周りの一般人兵士達には王者の風や、パニックテレパスと似た効果が波及していく。
「どうやら、人甲兵を倒しても、一般人兵士達を無力化させるのには効果的な様ですね」
「ええ……後は……四体いる様ですね」
　ウィルヘルミーナに、凛音が周りを見渡し、人甲兵の数を確認。
　勿論、その他にもアンデッド達は多数存在しているのは間違い無い。
　そして……時間の経過と共に、一般人兵士を次々と無力化。
　十数分の後……アンデッドを20匹、人甲兵を４匹倒す。
　ほぼ、残る一般人兵士も居なくなり……残るは、目の前に対峙する人甲兵。
「後、少しです。皆さん……もうひと頑張りですよ」
　とウィルヘルミーナの言葉に、巧が。
「ええ……」
　と頷くと共に、巧が右手の白水剣でのクルセイドスラッシュの一閃を叩き込むと、それに併せて綾奈の神薙刃。
　更に耕平の渾身のクルセイドスラッシュと真琴のフォースブレイクが次々と人甲兵へ猛攻。
　そして、彗樹が。
「そろそろ、大人しくして貰おうか」
　と言うと共に、斬影刃を放つと、併せて伊織が雲櫂剣で一刀両断。
　その一閃が、人甲兵を叩き潰し……最後の人甲兵が崩れ墜ちることで、残る僅かな一般人兵士達も、其の場で戦う気を失い、無力化していった。

●来襲する影続く
　……そして、人甲兵と、アンデッドを全て灼滅した後。
　残る、無力化した兵士達をロープやらワイヤーで捕縛していく巧、彗樹、伊織。
　……殆どが気絶してしまっている為、縛り上げる事に苦戦することは無い。
　そして、捕縛を仲間達に任せながら、真琴は空飛ぶ箒で、念のため、周りに他の兵士の残党がいないかを確認して廻る。
　ともあれ、周囲には他に兵士達の姿は無い……取りあえずは、一安心といった所だろう。
　そして、兵士達を大方捕縛し終わった所で。
「しかし、ダークネスはこうやって人間同士を争わせてきたんですね……」
　……と、一安心の中にある、僅かな不安を綾奈がぽつりと呟く。
　それに凛音が。
「まあ、何にせよ……このままで終わるなんて事は無いでしょう……変わる事態を、全て対処していくしかありませんね」
　と言うと、耕平、綾奈が。
「そうだね。来るなら来い、アッシュ・ランチャー。返り討ちにしてやるから」
「ええ。ダークネス。今は私達が要る。もうそんな事はさせない！　大丈夫、私達は負けないんだから！」
　と拳を握りしめ、そして……灼滅者達は、捕縛した兵士達を監視しつつ、周りで被害を受けた一般人達をケアして廻っていくのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2017年5月2日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 2／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 1
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