もう一つのお祭り、市街地の攻防!

    作者:波多野志郎

     マラソン大会は10月31日です。
     マラソン大会は、学園を出発して市街地を走り、井の頭公園を駆け抜け、吉祥寺駅前を通って繁華街を抜け、最後に登り坂を駆け上り学園に戻ってくる全長10キロのコースです。
     前日は夜更かしせずに、朝食は軽めに、水分補給はこまめに、体を冷やさないようにとか、常識的な注意事項をNPCから行うのが良いでしょう。
     なお、周囲に大きな迷惑を掛けなければ、多少の無理は問題有りません。
     マラソン大会をエスケープしたり、不正を行おうとする者は、魔人生徒会の手の者により捕らえられて罰を受けます。

    「――というのが、基本的な説明だな」
     マラソン大会のしおりを音読した神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)が、教室に集まった生徒達へと改めて語り始めた。
    「みんなに集まってもらったのは他でもない――お前達には魔人生徒会からの依頼があってな?」
    「エスケープした生徒を捕まえる阻止部隊って奴か?」
     生徒の一人の指摘に、しかし、ヤマトは首を左右に振った。
    「いや、お前等の担当はそれじゃない。ある意味で、それ並に面倒な事を頼みたい」
     ヤマトはそういうと拡大した市街地の地図を黒板へと張り出し、生徒達に告げる。
    「――これがお前達のバトルフィールドだ」
    『バトルフィールド!?』
    「どんな学校にも一つはあるんだがなー、武蔵坂学園のマラソン大会には一つの伝統がある。この序盤の市街地であのテこのテを使ってショートカットしようって輩だ」
     ちなみに魔人生徒会ではそのような生徒を『トリックスター』と呼び、問題視している。だが、このマラソン大会を一つのお祭りだと考えた時、この問題行動を目立つチャンスと考える輩も出て来るのだ。
    「……ぶっちゃけ、本当に手が込んでるんだ、こいつ等。ただ、サイキックの使用が禁止されてるから本人達にとっても危険な行為である事は間違いないし、ショートカットに人様の家の庭を使うのはよろしくない。魔人生徒会に雇われたお前達には何としても彼等の蛮行を防いでもらいたい、以上だ」
     それには「トリックスター達がそんな違反行為をしてくるか?」を考える必要があるだろう。ちなみに魔人生徒会に雇われた生徒達はマラソン大会を堂々とサボれるが、取り締まりに失敗しすぎると、罰としてグラウンドを10キロは知らされるので注意だ。
    「健全な魂は、健全な肉体に宿るっていうしな。灼滅者の闇堕ちを防ぐ為にも、充実したマラソン大会しようぜ?」
     ヤマトはそう満面の笑みで締めくくった――かのように見えた。

    「…………」
     ヤマトは周囲を確認する。夕暮れの空き教室だ。周りに誰もいない事を確認すると、コココン、コココン、と特徴的なノックを繰り返した。
     すると、ガラっと教室のドアが室内から空けられる。ヤマトはそこへ躊躇なく飛び込んだ。
    「くっくっく、日に同じ説明は二度はしない主義だ、だから基本的な説明は省くぜ? トリックスターども」
     暗幕で真っ暗となった教室内に無数の気配を感じながらヤマトは器用に小声で叫んだ。
    「さぁ、もうすぐマラソン大会だ。運動が得意な連中が日の目を見るイベントだが、俺達のような悪ふざけ大好きな連中だって楽しんでいい日のはずだ! 否、俺達お祭り好きこそイベントの主役であるべきだ、そうだろう!?」
     教室の中で小さな万雷の拍手が鳴り響く。当然である。彼等はトリックスター、ルールにたてつき楽しさに身を任せたお祭り好きの集まりなのだから。
    「トリックスターに許されたのは市街地での工作だ。これは俺達の最後の良心であり、ちょっとしたフェア精神だ。魔人生徒会どもの阻止を掻い潜れる者は少ないだろう、罰としてグランドをマラソンと同じ長さ走らされるなんて基本だと思え」
     ヤマトの小声に熱が帯びる。手振り身振りに力が入るのは心の底からだ――何故なら、誰にも見えないのだから。
    「それでも――その一瞬だけは俺達は輝くスターになれる! 健全な魂は、健全な肉体に宿る? 原典は宿ればいいなぁ程度だぜ? それでも、お前達の心を守るのはこういう楽しい思い出だって俺は言い切れる!」
     ヤマトは誰にも見えない指先を天に突きつける。そして、力強く言った。
    「俺はお前達の肩も魔人生徒会の肩も持たないぜ? 同じ武蔵坂学園の仲間だからな。だから、終わったら聞かせてくれるだけでいい――お前達の、楽しい思い出を」

     ――ここに、許されざる熱い戦いが幕を開ける。


    ■リプレイ

    ●祭り開幕
     マラソン大会は穏やかな内に幕を開けた。
     真面目に走る者。既にゆっくりと歩き出す者。そもそもそこにいない者。それはそれぞれだ――もう一つの祭りの最後尾から始まった。
    「最後尾同士、よろしくね?」
    「ああ」
     最後尾の人と仲良くしよう、と紫尾が隣へ笑いかける。それに一つうなずいて、輝瞳が懐へ手を入れ、それを取り出した。
     それは煙玉だ。地面に投げつけられ煙があがったのを付近のビルの屋上から何故かミニスカな婦警姿のフウカがそれを確認、思い切り笛を吹き鳴らす!
    「トリックスターよ!」
     屋上から身を乗り出し、ビシリとその美脚をさらすポーズと共にフラウが叫ぶと、一際歓声が上がる。
     それがもう一つの祭りの開幕を告げた。

    ●地下を目指す者
    「くくくく、これぞ忍びの道! 忍法、モグラタンクの術ッ!」
     路地に入ると紫尾は一つの背中を見た。重蔵だ、その手にはバールが握られている。
    「ふ、オレと同じ天才がこれだけいたか」
    「これって本当の『ちかみち』だよね!」
     烏衣と柚理はうんうんと頷き合う。共に下水道を使いショートカットを目指す者達なのだ。
    「マンホールの鍵は外しておきましたよ」
    「ああ、だからでござるか。私は蓋を交換しといたでござる」
    「さすがに魔人生徒会も地下までは警戒していまい。ハーッハッハッハー!」
     逝司の言葉に絢花が納得し、ジュラルが高笑いしたその時だ。
    「そこまでだ」
     目的のマンホールの上、そこに簡単には動かせない程度に重い三角コーンの前で矜人が待ち構えていた。
    「やはり来られましたか……が。通すわけには参りません……よ?」
    「可哀想ですけど、これって戦争なんですよー♪」
     そして、景持とスィンがその姿を現す。それだけではない、応援で呼んだ生徒が道をそれぞれ塞いでいった。
     それは下水道を呼んだ魔人生徒会の面々だった。下水道をショートカットとして利用しようとしたトクッリスターを一網打尽にしようと集まったのだ。
    「魔人生徒会じゃー! 逃げろー!」
     珠音の叫びに三々五々に散る相手を、魔人生徒会側も追いかける。
    「やってくれますね」
    「褒め言葉だと思っとくぜ?」
     身構える悠樹へ矜人が喉を鳴らして近付き、そのまま腕を取って抑え込んだ。
     それを少し離れた場所から見て、威司が溜め息をこぼす。
     状況をある程度判断してから――その慎重さで首の皮一枚繋がった。
    「読まれたか」
     大前提が狂った、とその場を離れようとする威司にピョンと飛びつく者がいた、真宵だ。
    「逃ガサナイデス!」
     そのまま全力で抱きつき、真宵は身をかわそうとした威司を何とか確保した。

    ●交通機関に頼る者
    (「ちょっと、どういう事!?」)
     ディアナは内心で唸った。タンクトップとスパッツにニットワンピという変装をしたディアナは一般人に溶け込んでいる。
    (「アレはなに!?」)
     アレ、とはパンダの着ぐるみを着た歩とハロウィンの衣装を着た梓だ。
    (「逆に目立つでしょう!?」)
     ディアナの予感は的中する。ふと、軽い調子で声をかけられたのだ。
    「お疲れさま、これから、バスで逃げるの?」
     真一だ。その気安さに一瞬だけ三人は反応してしまった――それが命取りだ。
    『そっちの女はウチのクラスメイトだ』
    「トリックスターだと思った、残念、捕まえる側だったんだ。こう言うのは良くないと思うよ」
     こちらを双眼鏡で伺っていた栄華の保証に真一は言った。その瞬間、三人が駆け出す。
    「待ちなさい!」
     バス停を見張っていた月夜もそう鋭く制止。雄吾が無言で捕らえるために駆け出した。
    「わ~い、追いかけっこなのだ~♪」
     歩は上機嫌だ。これも先輩達との遊びだと思えばすごく楽しい。
     だが、彼等はまだマシであろう。
    「バス停一個で終点か」
    「乗ったのがまずかったな」
     バスに乗る事は成功したが次が終点で降りるはめになった焦と銀助。オチがついた、と思ったが本当のオチはこれからだった。
    「はぁはぁ……年貢の納め時です!」
    「げえ!? 団長!! ははは、嫌だなー、俺生徒会側ですよー。ほーら銀助さんつかまえたー」
     顔見知り、ミレイの登場に焦はすぐさま友を売る。しかし、乱れた呼吸を整え、ミレイは黒い笑顔で告げた。
    「逃げようとしたら……後で怖いですよ?」
    「えっと……すいませんした!」
     打てば響くように観念する銀助。彼等の冒険にはそんなオチがついた。
    「ええええ! もしかしてこれで行くの!?」
     そこへやってきた黒塗りのタクシーにりりが思わず声を上げた。見た限り、外見からも高級感漂うタクシーである。だが、それを電話で呼んだ六夜は平然としたものだ。
    「ん、どうかした? ほら、行くよ」
    「わー! リッチマンに拉致られ――」
     りりが言い切るより前にピピー! と笛の音が鳴り響いた。ホイップだ。
    「違反をやめて正々堂々走るように、ですの!」
     ――また、別の道では。
    「うぅ、お腹痛い……摩耶さん、恵那さん、仁帝さん付き添ってくれませんか? 私、重い方で……」
     アルゼがそういうと仲間達へと言った。これはもちろん仮病である。
     タクシーを呼んでショートカット作戦の一環だ。気分の悪くなったアルゼを連れていこう、という名目でタクシーを利用する気なのだ。
    「どうしたの?」
     だが、その作戦に狂いが生まれる。救護班として動いていた御理が心配して声をかけてきたのだ。
    「アルゼさんの具合が悪くて……」
    「それで、タクシーを呼ぼうと」
    「そんなに悪いの?」
     摩耶と仁帝の言葉に御理が表情を曇らせていった。アルゼもうなずくしかない。
    「なら、救急車呼ぼうか?」
     ――まさに、善意からの御理の発言が全部を覆した。結果としてはタクシーで病院に行く、付き添いに摩耶がついていく、というものだった。
     ショートカットではなく危険、色々と確認をされた仁帝も元のコースに戻るしかなくなった。
    (「アルゼちゃん、摩耶さん、仁帝さん、みんなの犠牲は忘れないからっ」)
     恵那はそう秋の空を見上げた。
     ――実際問題、タクシーにも一つ問題がある。
     六夜のように特徴的なものであったならよいが、まず多くのタクシーが呼ばれる、という異常事態に魔人生徒会の人間も気づかないはずがないのだ。
     だからこそ、タクシーを使うトリックスターはことどとく網にかかる事となる
    「乗ってしまえばこっちのもんや」
    「そうは行かないわよね……」
     東の言葉を遮るように沙紀が唸る。そして、鼻眼鏡とシルクハットをつけたヘリウムガスにより声の変わった誠司が駆けつけた。
    「トリックスター止まりなさい」
    「村崎さん、ここは俺達に任せて早くゴールへ!」
     それに対し、宗佑は決意の表情で懐から紙袋を取り出して頭に装着。そのまま身を躍らせた。
     それに東も続く。紙袋怪人対鼻眼鏡シルクハットのシュールな光景に恋時は吹き出しながらも駆け出した。
    「見つけた、逃がさないぞ!」
     それを迦月が全力で追いかけ始める。乃亜も続こうかとしたが、細い路地に視線を向けていて――見つけてしまった、見知った顔を。
    「あははっ、順位とかどうでもいい! ただ、今を楽しめればそれでいいっ!」
     それはそれは楽しそうな顔でキックボードで移動する詠一郎だ。乃亜は思わずインラインスケートでそちらへ加速言い放った。
    「大人しくお縄を頂戴するといい。もし抵抗するというならば……お仕置きだ」
    「げっ、何でここを通ることが分かった!?」
     その二人の追いかけっこを見送り、沙紀は深いため息をこぼした。相手はあのテこのテをやりたい放題なのだ。
    「これは骨が折れるわ……」

    ●のどかなように見えて熾烈な戦い
    「く、さすがにヘリは駄目じゃったか!」
    「まさか、ライドキャリバーを発見する奴がいるとは……」
     悲鳴とあぎなが肩を落とす。それ以前にあぎなの背中には黒那が乗って髪に擬態していたのだが、分離して逃げ出そうとした時点で捕獲された。
    「無理な深追いはせずにいきましょう、キュールさんも居ますしね」
     彼等を確保した九里がそう気楽な調子で言ってのける。キュールも実に気楽なものだ、蔵乃祐が自転車を防がれ緋月が給水場の水をめんつゆに替えようとして生徒会側の生徒に散々追いかけまされた後にその肩を優しく叩いて言った。
    「逃げられると思ったのかな?」
     トリックスター側は是非とも罰ゲームを頑張っていただきたい。

    「……お疲れ様です」
    「がんばってー」
     アルヴィは手を振る蕨に引きつった笑顔で手を振り返す。
     ゴミ拾い駅伝の振りをしてショートカット作戦には問題があった。
    (「す、隙がありません」)
     どこもかしこも生徒会の目が光っているのである。危うく感じては戻る、を繰り返した結果、アルヴィはいくつものゴミ袋を手にゴミ拾い駅伝をやり遂げてしまう事となる。
     これにはご近所の方々も暖かい応援をくれたという。

     暖かい拍手はここでも起きていた。
    『みんなー、ありがとー!』
     梅華がひらひらの衣装を来てゲリラライブを敢行したのだ。口パクでもいい、熱い魂を込めて梅華はライブを乗り切った。
    (「RISEやひいては学園の宣伝にも繋がるからね!」)
     ゲリラライブは大変盛り上がり――梅華は満足気な笑顔でライブ終了後、生徒会側の生徒に連行されていった。

     その路地は壮絶な光景だった。
    「そういう手のぬき方は関心しないな!」
     パイを投擲するのは執事服姿の雄大だ。それは見事、自転車によるショートカットを試みようとしたトリックスターの顔面に炸裂する。
    「マラソンは、自分の足で走る事に意味があるにゃ」
     猫耳メイドである天音がそう脱落したトリックスター達へと微笑む。実際、ワーヤーのトラップなどでトリックスターは苦しめられ、何より道を外れたものにそれとなくふるわれるセンブリ茶は苦味で犠牲者を出し続けた。
     それがメイドと執事のCharlotteの作戦だった。
    「どうして僕だけ……ちょっとスースーする……」
     男は三人女は一人――だが、メイドは二人執事は二人のこの状況に実は恥かしそうに文句を言った。唯一の救いはスカートが膝下なので走っても下着が見える心配がない事だけだ。
    「着せられちゃったんだ、かわいそうに……」
     そう庵は溜め息をこぼす。哀れむだけで助け舟を出す気は毛頭なかった。
     こうして、Charlotteは新たな獲物を捜し始めた。

    「圧政を強いる生徒会打倒の剣となるのですねー、あっはっはっはー♪」
     私は正義の魔砲少女である璃理が黒き悪魔Gを解き放つ。それに何人かの魔人生徒会の生徒は怯むが、意外な救い手がそこにいた。
    「さあ、お行きなさい猫さん! 落とせ!」
     殴打系少女桜子の放つ猫がGへと迫る。おそらく一部ではこのお祭り最大の好カードとなっただろう事をここに明記しておく。

    「おや、こんなところで何してるんだ?」
     そう声を投げかけられて武流は顔を上げた。何の事はない――川を泳いで渡っただけだ。
    「ズルはいけないな。試合は正々堂々だぜ?」
    「お兄さん、ズルはダメなのよ?」
     目の前に立ちはだかる風樹と蓮花に、武流に川から上がって胸を張って言った。
    「楽するため」じゃない。より全力で楽しむためにだ!」
     武流にとってはショートカットは自分が楽しむためのファクターなのだ。ダッシュで走り、武流は隠しておいた自転車に乗って駆け出した。
    「逃がさないぜ!」
     風樹と蓮花はそれを追いかける。自転車が駄目になり、武流は徒歩による逃走を試みるが投げ縄によって御用となった。
    「任務一つ目完了だね!」
    「逃げ切れると思うのが甘いんだよな。大人しく罰を受けな」
     二人がハイタッチではしゃぐのを見ながら、肩で息をして武流は一つの事実に気付いた。
    「あれ? 俺、トライアスロンやってなかった?」

     がさごぞ、と隠していた人形を手にした紅緒はその言葉に振り返った。
    「セコい事したら夢幻の龍の加護が無くなっちまうですよ?」
    「そんな事ないもん!」
     想像通りそこにいた声の主、マクロにゴミ捨て場に用意しておいた自転車を引き起こし紅緒は反論する。
     それを見たオリヴィアの反応は早かった。近付いてきていた蒼埜の目をその手で優しく塞ぎ、その耳元で囁く。
    「ごめんね。少し、目を瞑ってて?」
    「今日はおねーちゃんに何言われたって、ほだされたりしないんだから……!」 
     蒼埜は決意をもってそういうが、その囁きが、掌の感触がその決意を削ぎ落とした。
    「――や、やっぱダメ! おねーちゃん素敵すぎるよ……っ!」
    「蒼、何そんな甘言なんかに惑わされやがってるんです?」
    「ううっ、私はもうダメ……。ひよ、マクロ!あとはお願いっ!」
     蒼埜の降参にひよこが口を開いた。
    「待って! ひよ、オリちゃんと一緒にいたいの。オリちゃんの為にお菓子作ってきたから一緒に食べよう? べにちゃんも一緒に――」
    「お菓子? お喋り? 惑わされないもん、夢幻の龍もべにを導いてくれるよ!」
     紅緒は煙の出る花火で煙幕を作り、自転車に乗ってその場から風のように消え去った。
     それを確認するとオリヴィアが肩をすくめていった。
    「1週間掃除当番肩代わりと手作りデザート提供でどう? 三人にも罰は受けさせたくないからあとは僕は大人しく捕まるよ」
     それがどちらの友達への筋を通すオリヴィアなりの答えだった。


    「どけどけ! ソバがのびちまうだろうが!」
     キックボードで道を進みながら、ソバ屋が怒鳴る。ソバ屋姿は龍人の変装である。
    「あの」
    「武蔵坂学園まで出前だ。急いでんだ、通らせてもらうぜー!」
    「何をやってるんですか? 飛鳥さん」
     そこにいたのは魔人生徒会側の生徒である桐斗、顔見知りであった。
     根本的に知り合いにバレては意味が無い――逃げようとする龍人に桐斗がボーラをすかさず投げつけた。
    「やれやれ……」
    「まさか、お前と戦うことになるとは……。残念だ、こんな結末を迎えたくなかったよ……」
     その声に桐斗は振り返る。そこには自転車に乗った弥咲がいた。やはり顔見知りである。
     弥咲は迷わずウィリーで桐斗を轢こうと襲い掛かる。だが、それは声をかける前にすべきだったろう――真横に避けてあっさりかわした桐斗が鉤縄で弥咲を捕獲した。
    「莫迦なっ、この私がぁ!! 流石だ……もう思い残すことはない……」
    「走ってもらいますよ。加賀峰さんもマンホールで捕まってますから、三人で頑張ってください」
     ごまかしなど通用しない、桐斗の手並みに人混みから軽い拍手が巻き起こった。

    「…………」
    「…………」
     二つのダンボールが息を潜めていた。
     一つは逢紗。もう一つは戌彦である。逢紗は事前に宅配業者に頼み、戌彦はダンボールで移動するという手段を選んだ。
     剏弥は和佳奈と戌彦を見逃さなかった。
    「アッー!」
     こうして動くタンボールは滅びた。
     なお、逢紗もさすがに宅配業者に「人間はちょっと」とお断りされた事だけ記しておく。

    「……私は……風になる……」
     底にローラーを仕込んだスニーカーで颯爽と夏輝はパーカーで顔を隠して進んでいた。
     だが、その動きが不意に止まる。それは目撃してしまったからだ。
    「黒虎さん発見! ……あ、あんな所に水着姿のお胸の大きな女性が!」
    「何!? どこだー!?」
     塀を昇り終えたところでそんな言葉につられ捕まる黒虎を、だ。しかも、捕まえたのはこれまた顔見知りの雪緒である。
     ……助けないと、とは思うのだが。
    「わー、しまったー!」
     黒虎が棒読み気味であっさりと捕まった。どう見ても雪緒に捕まってその感触を楽しんでいるようにしか見えない。
     雪緒も抱きつく事が恥ずかしい事だと気付いたのだろう、赤くなりながらこぼす。
    「うぐ……誰も捕まえられないと罰が待ってるのですよー……」
     そのまま大人しく連行される黒虎を見て、夏輝はそのまま先に進む事を選んだ。
     なお、夏輝はショーウィンドゥに飾ってあったペンギンのぬいぐるみに気を取られている間に捕まったという。

    (「我ながら完璧だな」)
     松庵は胸中でこぼす。ズボンとジャケットを身につけて、かつらを被る程度に変装だが誰一人として彼を怪しまない。
     彼の老け顔は、この状況で恐ろしいほどうまく作用していた。
    (「知り合い以外にこの変装を見破れるものなどいようはずもないだろう」)
    「報告のあった目標は、現在2ブロック先を方位2-8-5に向けて逃走中みたいよー?」
     そこにいたのは明石・瑞穂と鹿島・狭霧だった。
    『あ』
     ――見事にフラグが立った瞬間であった。
     そんなコントのような捕り物を終え、鹿島・狭霧がこぼした。
    「向こうはそろそろ、次の策に移る頃かな」

     その口論は突然始まった。 
    「この人、捕り方ー!?」
    「なっ! フォルケさんだからばらしたのに、皆にいっちゃダメじゃ……ぁ」
     フォルケによってデジカメを投げつけられた衛がおそるおそる周囲を見回す。それはトリックスターからの不審や警戒の眼差しだ――それに追いやられるように衛はその場から逃げるように駆け出した。
     実のところ、この暴露自体が策である。フォルケもまた生徒会側であり、新聞部としてトリックスターの記念写真を撮るため、という口実で潜り込んだのだ。
     後に実際、この写真の多くが不正を暴く証拠となる。フォルケは携帯を取り出し、演技を続けた。
    「もしもし、部長ですか? いい写真がとれそうですよ~」

    「っと。了解」
     トリックスターの関節を決めて捕縛し、香は携帯を切った。
     フォルケ達の情報を明石・瑞穂から受け取り、それを活かして行動する。それが彼女の行動力を支えていた。
    「ありがとう、助かった」
    「いやいや、生徒会側として当然の事をしたまでっすよ」
     トリックスター捕縛をアシストしたこえびはそのまま横道を通ろうとした。しかし、香はその腕を掴むと瞬く間に抑え込んだ。
    「な、何すか!?」
    「悪い。生徒会側の生徒は大体憶えてる」
     その香の言葉に、生徒会側を偽っていたこえびが目を丸くした。

     一と正海が逃亡していた。
    「逃がさないわ!」
     アイレインが叫ぶ。もちろん、待つはずがない。人混みを掻き分けながら一と正海は逃げていく。
    「悪い、子は、いねかー」
     その二人の前に降り立ったのはシスター服の上から短い蓑を纏い、小さな鬼の面を髪にかけたマリアだ。どうやら、ハロウィンにちなんだ格好らしい。
    「ここは俺が食い止める! 大丈夫、後から行く。心配するな!」
     こういうセリフを吐いた者が本当に後から来た例はない気がするが――きっと、気のせいだろう、うむ。
     正海がそう納得すると一も即答した。
    「良し、衣川任せた! 行け、衣川シールド!」
    「逃げたければ私のダッシュを振切ってみなさい。運動勝負なら男子にも負けない自信はあるわ!」
     年上の威厳に賭けて、とリュシールが一を追いかけ細い路地へと駆け込んだ。
     残る敵は三人――正海にも勝率がない訳ではなく、無策で逃げていたのではないのだ。
     そう、あらかじめ自転車を隠しておいたのだ。
    「行くぞ!」
     正海が三人の間を突っ切ろうと走り出す。避けるはずだ――そこまでの予想は正しかった。
    「えい」
     グイ、と澪がロープを引っ張った。その張ったロープに突っ込み形で正海がこけてアスファルトの上に転がった。
    「つかまってくださいです……」
     今にも泣き出しそうな上目遣いでそう言われ、アイレインとマリアに抑え付けられながら何となく正海の方が泣きたくなった。


     ――それは給水場で起きた怪事件であった。
    「――フッ!」
     バコン! と給水場に置いてあったダンボールから手足が生えたのだ。
     まさに奇怪、二重底にして偽装してその中に夕焼が隠れていたのだ。ダンボールからこっそりと抜け出した夕焼だが、魔人生徒会の魔の手は直ぐそこにあった。
    「卑怯な事は駄目です。捕まえてお仕置きです」
     やる気に満ちた眠たい目で薫がそう告げる。その手にはカメラがあり、夕焼は息を飲んだ――その時だ。
     ぼふん、という煙幕が周囲に立ち込めた。
    「赤信号、皆で渡れば怖くない精神です」
    「大丈夫?」
     璃音と榛歌、運び屋の仲間だ。それを見て夕焼は口元をほころばせるが、すぐに真剣な表情に戻った。
     煙幕の向こうから、こちらに近付く無数の足音を聞いたからだ。
    「皆、此処は僕に任せて逃げてッ!」
     榛歌が叫ぶ。自己犠牲なんてまるで、ヒーローっぽくていいじゃないかハッハッハ……別に、逃げることすら面倒になったとかじゃないよ? との事だった。


     その道で紘一は編みぐるみを手にナンパに勤しんでいた。
    「あ、お姉さん!」
     女の人をナンパしてあわよくばヒッチハイク、それでなくても一緒に歩けば誤魔化せるのではないか、と。
     だが、その思考を読む者もまたいた。
    「待てやゴルァ!!」
     朔夜だ。普段の口調をかなぐり捨てて番長モードで駆けて来る。モーゼの十戒のように割れた人混みに、紘一は潔く敗北を認めた。

    「みたらしに餡子、団子はいかがですかー。おいしいですよ。怪しくないですよー」
     用意してあったヒゲメガネとジャージの上にエプロン姿、団子の屋台を引いて通りすがりの団子屋が道を行く。
     これが楽多の策である。このままショートカットを試みれば――しかし、その目論見はもろく崩れ去った。
    「だ、団子屋?!」
     まずクラスメートの飛鳥に見つかってしまったのだ。あまりにも目立つから、と飛鳥は巻き込まれないようにその場をこっそり後にしようと思った。
     そして、この飛鳥の目論見も外れてしまう。
     たまたま見かけた霞に見つかってしまったのだ。
    「こら! 二人ともズルは駄目ですよ?」
    「馬鹿な、この変装が見破られるとは……やりますね委員長」
     悪びれない楽多に霞が文句を言い募ろうとした、その時だ。
    「くっそ、見失った……ん? あんな所に団子屋が。土産に買って帰るかな」
     買い食いはしないが、と生徒会側の生徒である大和が近づいてきたのだ。
    「って川西、こんなところで何やってんだ!」
    「へい、まいどー」
    「あ、団子ありがとな」
     思わずすんなり受け取ってしまったが、大和は霞を見て目を見張った。
    「緋島! お前生徒会側じゃなかったのか!?」
    「え?」
    「相手がお前らでも、オレは関係ないぜ?」
     大和の表情が鋭くなる。ここに来て、霞はようやく重大な行き違いに気付いた。
    「……え? え? えー!? 何で私も追いかけられてるんですか!?」
     そう、霞までトリックスターと勘違いされてしまったのだ。
    「お前ら、変なことせずにちゃんと走れよー。俺がサボ……いや、走れないだろー」
     ことの成り行きを見守っていた貴博がそう口を挟む。明らかにこの状況を楽しんでいる確信犯である。
    「頑張れ! 捕まったら食われるよ!」
    「冤罪ですー」
     飛鳥と楽多に引っ張られるように霞も逃げ出す。それを大和と貴博が追いかけ始めた。
    「緋島さんがまさか……しかし見過ごすわけには」
     それを見つけたティノは追おうとして――追えば、結局マラソンと同じ距離を走るはめになると気付いて、駆け去るクラスメート達の背中を遠い瞳で見送った。
    「……後は本郷さんと宮峰さんに任せましょう」
     そして、トリックスター達をブロックする事にティノは専念した。


    「ふふん、コレさえあればマラソン中にショートカットし放題……うゅ? 張り紙?」
     事前に下調べしていたショートカットを通っていたましろがふと気付いて壁に貼られた紙を手に取った。
    『ふっふっふ、やはりこの道を通るつもりなんだね……』
    「まさかこのルートが読まれていたなんて、恐るべし魔人生徒会」
     ふるふる、と震えるましろに、別の張り紙を見つけたアリスエンドがペンを手に取る。
    『無駄だよ、君の行動は読んでいる。伊達に魔人とは名乗ってないよ』
     ちなみにアリスエンドは魔人を廃人と書き換えた。
     そして、先へ進むと再び張り紙が。
    『チェックメイトだ』
    「ふっふっふ……。計画通り」
     それを呼んだ相手が驚いているだろう姿を想像してタージが笑みをこぼした。悦に浸ったその頭に、なんとタライが降って来た。
    「はぅっ!」
    「ヤハハ、オチつきマシタカネ」
     仲間であるはずのモーリスのタライのツッコミでタージは正気に戻る。
    「いかん。俺もあぁなっているかもしれん。気をつけねば……?」
     龍夜がふと気付いた。壁の小さな穴にひっかかった白いもふもふを。それがお尻と気付いてしみじみと呟いた。
    「これを捕まえるとセクハラとやらになるのか?」
    「大丈夫かい、ましろ。とりあえず、ひっぱるよ」
     タージが爽やかな笑顔で壁から映えたきぐるみのお尻に手を伸ばす――だが、それこそ罠だった。
     すぽん、と抜けた時。タージの手の中にあったのは単なるぱんだのきぐるみだったのだ!
    「ふふん、何時からそれがわたしのお尻だと錯覚していたのかな?」
     穴の向こうでドヤ顔のましろとアリスエンドが駆け出す。それをモーリスは許さない。素早く必殺のタライトラップを発動――しかし、ガランガラン……と虚しい音を立ててタライは地面を転がるだけだった。
    「タライにハジをかかされる……デス」
     落ち込むモーリスに、かける言葉も見当たらない。
    「そこのお方、……ぐぅっ、げほげほっ……!」
    「おー、がんばれー!」
     雅の病弱演技もなんのその、アリスエンドはそのまま逃走した。
    「みんな……まって……ズルはだめだよ……」
     くるみの真摯な言葉は届かない。仲間においつく足もないのだ――くるみは自分の無力に目を潤ませた。
    「みんな……まって……ぐすん……」
     そんなくるみにすっと優しくハンカチが差し出される。
    「お嬢さん、道に迷ってしまったのかな? 宜しければ私と供に行きましょう」
     ビジネススーツ・銀縁メガネ・付け髭という三点紳士セットを装備した陽炎その人だ。しかし、誰もそれに気付かない。
    「あ……ありがとう……あれ? どこかで会ったような…」
    「まさか、あなたのような愛らしいお嬢さんとは初めて――」
     陽炎の紳士ロールを、しかしくるみの言葉が遮った。
    「……陽炎さん?」
    「僕の前で、くるみをナンパなんて、させないよ」
     即応だった。タージが陽炎を捕まえ、付け髭を引き剥がす。
    「むっ! 陽炎だったとは。気づかなかったぞ」
    「今度こそタライデスネ」
     よってたかって抑えられる陽炎に、きょとんとくるみが呟いた。
    「あれ……? ボク役に立った……のかな?」

    ●市街地の混戦
     ――壮絶な『戦い』が繰り広げられたのは物理的なショートカット、路上の混戦である。
    「お邪魔しまーす、なのよーう!」
    「すいません……、お邪魔します」
     元気に挨拶するチロルの後をペコリと礼儀正しく頭を下げて迷子が続く。
     井の頭中1-Gが選んだのは住宅の庭を突っ切るルートだった。
    「おじゃまします! トリックオアトリート♪」
     民家のお爺さんに飴玉をもらってクラレット――そこへ怒声が降り注いだ。
    「そこまです!」
     ご近所さんの通報を受けたゆかりだ。そして、数人の魔人生徒会の生徒の姿に、アリスティアが微笑む。
    「生徒会の皆様……、辛いモノのは御好きかしら……♪」
    「おっと、そうはさせないよ」
     粉末唐辛子入りの煙球を投げつけようとしたアスリティアにすかさずファリスが水鉄砲で狙撃、濡れた煙球を使用不可能した。
    「こうなったら、逃げるが勝ちなのだ」
     楼沙が用意していた自転車に乗り込み、他の仲間達がインラインスケートで駆け出す。そこへゆかりがカラーボールを投げつけた。カラーボールを受けて染まった新が叫んだ。
    「一般の人の家を汚す気? それはないんじゃないかなあ!」
    「ズルする人たちに遠慮はいらない……」
     お互い様、と言いたげにくいながくいなちゃん特製タバスコ玉を叩き込んだ。
     ――この民家の一つで起きた騒動はまさに氷山の一角だ。これと同じ事が市街地の至るところで起きているのだ。

    「コラー待てー……きゃっきゃうふふー」
    「台詞とやってる事が合ってないだろ!?」
     細い路地を満面の笑顔の八と渋い表情の時松が追いかけっこしていた。ちなみに時松の服はカラーボールで染まっている。
    「へーきだよ。キミの服は汚れるかもしれないけど、キミはきれいだ。塗料の色、スキだよ」
    「ムカつくな!?」
    「よし、服が惜しいならコースにもどれー」
     時松ははたとそれを見つける。細い路地、宗汰が立ちはだかっていた。
    「オレはアクション映画に出て来る、ダーティーな刑事が大好きなんでねェ! 手段は選ばねぇ!」
    「選べ!」
     時松は覚悟を決める。
    「死なば諸共なのだよ道連れだァッ!」
     そのまま、真正面から突っ込んだ――結果、追う側追われる側、揃ってカラーボールの塗料に塗れる事となった。

    「ライドキャリバーほどではありませんが!」
     路地裏を暦はマウンテンバイクで疾走していく。その機動性を活かした疾走だ。その横を遊作も自転車で全力で走らせる――それを剣が追っていった。
     加速しきれない状況では自転車も不利だ。剣もそれを把握して追い詰めていく。暦もマウンテンバイクの利点を利用し、細かく逃げようとするがいかんせん厳しい。
    「チャンスだ!」
     遊作が気付き、言った。狭いながら加速できるだけの長い道へ出たのだ。剣は引き離され――笑った。
    「さて、それじゃあ手はずどおり頼んだぜ、葬」
    「任せてください」
     そこには投網を持った葬がいた。その投擲をかわす余裕は暦にも遊作にもない――まさに自転車殺しの作戦だった。
     ただ、一緒に剣を巻き込む事になってしまったが。葬は精一杯の笑顔で言った。
    「え、あ、そ、の、えっと…ちょっと間違えましたゴメンナサイユルシテクダサイ」
    「後でたっぷりお仕置きだからだめだな」
    「にゃああああ!?」


    「究極の忍術……それはこれにゃー!」
     そう叫びながら萌絵はダンボールの中へと潜り込んだ。完璧である――完璧に動けない。
     しかし、そのダンボールがガタリと動く。いきなりの宙に浮く感覚に萌絵が慌てた。
    「も、萌絵はどこに行くのにゃ~!? 圭介くん! 助けてにゃあぁ~!」
     奇跡である、圭介は助けていた――というか、持ったのが圭介なのだ。
    「ルール違反だろうけど、ハードルは高い方が燃えるんでね。絶対に突破させてもらう!」
     圭介が駆るのは犬が引く四輪の小型荷車だった。その燃える意気込みに、一緒に運んだダンボールもガタガタと揺れて声無き声援を送った。
     射撃による散発的な妨害を圭介はフライパンで防ぐ。だが、フィリスが怒鳴った。
    「ライドキャリバーよりひどいですね!?」
    「生徒会の犬め、これでも……あ、違った」
     想司が咄嗟に投げつけたのは犬の骨だ。それにつられた犬が大きくコースアウト――壁にぶつかって沈黙した。
     それに呆気に取られた生徒会側の生徒達に圭介はニヒルに笑った。
    「無念。だがこんなに集まっていいのかよ?」
     それを背に、リトが笑みと共に告げた。
    「頑張って足掻いてくださいな? その間に私はにげさせていただきますよ」
     彼等が捕まるその隙にリトはその場からの遁走に成功した。

     人様の家の塀へと彰二が飛び乗った。真っ直ぐ進めば速い、そういう理屈だ。
    「おー! しょーじくん、あたまいいねっ!」
     そんなわいわいと塀を越えようとする彰二とそれを見守る景の後に続こうとした椿がふと振り返る。
    「何で俺の行く先行く先で朱梨ちゃんが現れるんだ!?」
    「だって朱梨、ずうっと椿さんを見てたんだもの!」
     人、それをストーカーという――ちょこんと傍にいた朱梨は素晴らしい笑顔だ。
     彼女がいるなら、と彰二が視線を巡らせれば物陰に彩希がいた。
    「彩希センパイ! 何か美味しそうなモン持ってる!?」
    「ねえ彰二くん。一緒にお菓子食べようか、だからショートカット諦めよう?」
     育ち盛りの少年には甘い誘惑である。その一瞬の隙に彩希は彰二へタックル、愛でるために抱きしめた。
    「ふぐっ!? いってぇ、景センパイ!? オレの頭踏み越えてくなんてひでぇや!」
    「ナイスあたま!」
     そう、彰二を踏み台にして景が塀を飛び越える。しかし、そこには既に柳の姿があった。
    「予想通りというとこか。お疲れさん。もうちょっとだったな。残念ながら罰ゲーム」
    「朱梨さん、橘さん、大丈夫ですか?」
     逃げ出した椿を朱梨が必死に追いかける姿に都璃が心配げに呟く。
     結果だけ言えば、倒れて動かなくなるまで追った朱梨に、椿が根負けして捕まった――お幸せに。

    「――フッ!」
     ジョーが大通り沿いの屋根を駆けて行く。飛距離が足りない分は塀を足場に、距離を稼ぐ。
     その動きに何事か? と道行く人がざわめいた。ジョーのそれはパルクール、あるいはフリーランニングと呼ばれるスポーツの動きだ。
     不意に、その横に並ぶ人影があった。
    「あ、やっほー」
    「ああ、いたのか」
     同じバルクール同好会のロコだ。その後ろには星空の姿もある。
    「パルクール愛好会を有名にするために頑張りますか」
     ロコが大きく壁を蹴った。それに続き壁へ着地したジョーはそのまま壁を駆けるようにロコを追う。ロコは体を左右に振ってクイックターン、星空はその後を逆の動きで突いていく。
     そして、タイミングをうまくずらし塀に順々に着地し、加速していく。そのアクロバティックな動きに思わず観衆からも拍手が上がった。
     だが、星空が気付く。それは自分達と同じ道を追いかけてくる少女の存在だ。
    「気合と根性よ!」
     朝倉・巴が不器用ながらパルクールの三人を追いかけていった。

    「うん、大通りの方のサポートをよろしく」
     雪紗はスナイパーライフルを構えたまま無線機にそう告げた。あのアクションを続けるのなら、数で押せば倒せるだろう――雪紗はそう冷静に判断を下す。
    「――――」
     その背後に声もなく立ったのは伏姫だ。トリックスター側として、生徒会側を率先して狩る異端のトリックスターである。
     その伏姫が気配を消し、雪紗へと襲い掛かろう――そうした瞬間、一発のゴム弾を察知して伏姫は身を引いた。
    『間一髪だな』
    「ええ、ありがとう。でも、それしきの事、ボクが予想してなかったとでも思うかい?」
     無線の向こう、同じように別のビルの屋上に身を潜めていた緋桐の狙撃だ。雪紗は振り返りそういうが、既に伏姫の姿はそこになかった。単独でない、そう悟ったからの判断だ。
     まさにお互いプロの仕事である。彼等は敵にばれた場所をすぐさま移動した。

    「やーれやれ、本っ当に運悪ぃぜ…――俺に近付いたアンタらがなぁッ!!」
     狭い路地に追い込まれ、銃儀が吠える。事前に用意していたガスマスク、それを装着すると胡椒を大量に含んだ煙球を大量に投下する!
    「カーッカッカッカッ! アバヨォ――」
     不意を打たれた生徒会側の生徒を尻目に銃儀はその場を去ろうとしたその時だ。
    「見つけたぞ銃儀ィ! 大人しくお縄につけぇぇぇッ!!!」
     聞いた事のある声だった、勇騎だ。
    「隼人! 回り込め! 俺は真っ正面だ!」
    「く……ッ!」
     胡椒の効果は短い。 銃儀がもう一発と懐へとその手を伸ばした瞬間、隼人が画用紙で作ったハリセンの方が一瞬速い。
    「ここまでだ、現行犯だぜ」
     パン! という快音。銃儀へと隼人が静かに告げた。

    「美術とか図画工作は苦手だけど、こういうのだけは得意なんだよね」
     深景の言葉に詩織が笑う。
    (「あんまり打ち合わせは無いけど、何となく昔の事思い出すと深景がどう相手を追いこんでるかは解るんだよ、ね」)
     幼馴染みにして恋人、二人が追い込むのはトラップだらけの路地だ。
     だが、誘い込まれた方もただ者ではない。
    「ほら、遊んでくれるんじゃないの?」
     七が爆竹で誘導する。それに詩織も負けじと頑張って追いかける。
     七が駆け抜ける。それを追う詩織をバサリ! とシートが覆い被さった。
    「いちにのさんでバサッ!」
     その小さな声はシートの音に掻き消される。七を囮に芳春と愛莉がブルーシートで包んで動きを封じたのだ。
     計算された見事な連携だ――だから、その差を分けたのは地の理と、意思疎通だろう。
     三人が逃げようとしたそこには、ロープのトラップがあったのだ。それに動きが鈍ったところを深景が一網打尽にねじ伏せた。
     もじもぞとブルーシートから這い出た詩織はその結果に驚かない。何となくだが、こうしてくれると信じていたからだ。
     深景と詩織が同じタイミングで手を掲げ、ハイタッチした。


    「あぁ、空は気持ちよかったな……」
     バラグライダーでショートカットを試みようとしたマリスが大の字に倒れたまま満面の笑顔で言った。それをスマキにしたのは魔人生徒会側でありながら木の上で昼寝していた和也である。
    「くっそ、妙なもんに突っ込まれた上にうるさくて寝れないだろ……」
     和也の視線の先では、屋根の上を舞台に壮絶な戦いが繰り広げられていた。
    「く……!」
     屋根の上を駆けながら文月が舌打ちをする。笛の音を響かせ、奏が告げた。
    「……その程度の策、予想済みです」
    「何か、とりもちまでありやがる!?」
    「ははは! 待てー!」
     そうとりもちの元凶、舞夢な大きい虫網を手に屋根を駆け回る。
    「……確かに虫のように多いな」
     それをスコープ越しに見て、列からこぼれたトリックスターをシャルロットがライフルで射撃した。もちろん、ゴム弾である――命に別状はない。
    「本当にね……あ」
     シャルロットの傍、屋根の上にいた修李が息を飲む。それに合わせてシャルロットもそちらに視線を向けた。
     ドンドンドンドン! と秋の空に鈍い音が響き渡る。
     そこには「悪童参上」の四文字の打ち上げ花火が青い空を彩ったのだ。
    「そろそろ頃合いだな。さあ、ここからは我らの時間だ!」
     その花火の下を火煉が高笑いをする明の後に続く。
    「はははははははははははははっ!」
     悪童ここにあり――二人の悪童が混戦の中へと突っ込んでいく。
     だが、ここにいた誰もが悟っている――この祭りは、まだ半ばにも来ていない、と。

    ●死闘、激闘、大乱戦
    「おぅてめーら行けや……散ッ」
     惡人の号令に連携して動くのはPKの面々だ。
    「こちら凜。目標を捕捉した」
    『了解』
     篁・凜の連絡を受けて、惡人がすぐさま仲間達へと指示を飛ばしていく。連絡網を完璧に構築したこのチームはこの日、もっとも多くのトリックスターを発見、追い込んだ組織の一つである。
    「ヒャッハー!! 全員とっ捕まえて悪魔の宴の開幕だぁー!!」
     携帯での連絡を受けてローラーブレードで三成が指示のあった路地へと突入する。しかし、その前に立ちはだかる者がいた――匡だ。
    「ここはおにーさん達にまっかせなさーい!」
    「違反者は消毒だぁ!」
     匡の小麦粉煙幕と三成の投げ縄が同時に投擲。白くなる視界の中、篁・凜は迷わず突っ込んだ。
    「逃がすものか!」
    「よっしゃ、いけ!」
     梗也と匡が三人を壁の上へと押しやった直後、篁・凜の投網に巻き込まれた。それを見て三成が携帯に叫ぶ。
    「こちら――」
    『長姫が追えてる! 向こうも組織立って来てるぞ!』
     その頃、逃げ出した三人――静流と十七夜・狭霧、そして清純の三人だ。特に清純は変装をして正体を隠している。
     その三人の前へ細い路地からインラインスケートで加速した無常が姿を現した。
    「……よい高速機動の練習だ」
     だが、それを見越したようにフュルヒテゴットが無常の前へと回り込んだ。
    「うちはただでは捕まらへん!」
     フュルヒテゴットが煙玉で煙幕を張る――無常は構わずフュルヒテゴットを抑え込んだ。
    (「うちの分まで頑張って……!」)
     そう、たった一人を逃がす――これはそのための戦いなのだ。信じるから託す――彼等の行動にはそれがあった。
     そして、無常もまた同じだったのだ――生徒会の仲間達を。
    「確認したわ、ちょ!? 増えてるんだけど!?」
     ビルの屋上。双眼鏡を手に身を乗り出したチアキが唸る。静流と十七夜・狭霧、清純の三人を守るように集まる者達がまだいるのだ。
    「く……!」
     三人を狙う狙撃を鍋の蓋シールドで受け止めながら律はバックの中のビー球をばらまく。だが、その妨害を掻い潜り跳躍した光がしがみつき、押し倒した。
    「違反行動を確認……通しはしないでありますよ、トリックスター!」
     清純が壁を乗り越える――その瞬間だ。
    「逃がさないわ!」
     清純へと隠れていた綾沙が小麦粉で目潰しをかます。しかし、防塵眼鏡装備だ。効かないと悟ると綾沙は飛びかかろうとした。
    「我を知らずや其の昔、葛城山に年経りし、土蜘蛛の精魂なりーってな!」
     だが、それを華丸の舞台用蜘蛛の糸が阻む。それを騒動を聞きつけた黒斗が後ろから羽交い絞めにした。
    「いくらマラソン大会でもお祭り気分で不正をしてはいけない。嘘は泥棒の始まりだからね」
    「みんなーっ、こっちだよ! 上!」
     オリエンスの誘導に生徒会側の生徒達が殺到する。
    「ゲホゲホ」
     だが、不意に聞こえた咳に数人が足を止める。その隙に走っていく仲間達をナオは見送ると――その場から一目散に逃げ出した。
     その場から逃げる者の前に摘佳が立ちはだかった。その手にはいくつもの胡椒や豆板醤、わさびなどを混ぜ込んだ液体を注入した水風船を投げつけた。
    「ぐは!」
     当たると同時にその刺激物が服やマスクに染み込んでいく。これにはマスクをつけていた清純もたまらない。慌ててマスクを外して咳き込んだ。
    「――ッ!」
     そして、そこへ華鳳子がカラーボールを投げつける!
    「ここは俺に任せて先に行け!」
     静流が色つき煙増量の花火を炸裂――その中を清純と十七夜・狭霧が駆け抜いていく。
    「逃がすか!」
     それをヴァイスが追おうとしたその時だ、鋭い飛び蹴りがヴァイスを狙いヴァイスはかろうじてそれをかわした。
    「行かさないって。その方が面白そうだ」
     ススメがそう言った。そして、護々那もまたその前に立ちはだかった。
    「私自身は、不正をしてまで勝つ気もありませんし、他の勝ちたいという方、やりたい事のある方を手伝ってあげたいと思いまして」
    「そうか」
     ヴァイスの横にウィクターが並ぶ――ここに進む物と阻む者の激闘が幕を開けた。
    「……ッ……」
     蝸牛が確かにその一部始終を見届けた。

    ●そして、終わり際の攻防
     そう、祭りはもうすぐ終わりを告げようとしていた。
    「うん、もうここからは大丈夫ね」
     アルベルティーヌが時計を確認する。坂の前で最初からタイムをはかり、ショートカットしたか否か判断していたのだ。
     ここで止められた者もわずかだがいる――まさに影の功労者とも言うべきだ。
     ――そして、その時を待っていた者がいた。
    「くくく、そろそろか」
     晃は先頭集団が通り過ぎてから動き出した。綿密な計画を練った。汗を偽装するためにわざわざ濡れもした――だからこそ、晃は絶対の自信をもってこっそりとそのマラソン列へと紛れ込んだ。
     勝った、計画は完璧だ――そう思った瞬間だった。
    「待てよ」
     そう呼び止めたのは栄華だった。それに晃は息を飲む。だが、その視線でわかる――相手が、自分の不正を見破った、と。
    「馬鹿な……どこで間違えたと言うのだ……」
    「――いなかっただろ? 途中で」
     栄華が自信を持っていう。そう、その双眼鏡で、あらゆるカメラで、デジカメで――それぞれの横の繋がりをもって確実な証拠としてしたのだ。
    「……結束の勝利とでも?」
     晃は笑う。それに栄華は肩をすくめるだけだった。負け犬はただ自分の敗北を味わった。
     ――そう、まさに驚異的な結果と言ってもいい。
     トリックスターを内側から、外側から、魔人生徒会側の生徒は掴み、暴き、そして確実な証拠を積み上げていったのだ。
    「……みんな行ったでありますね」
     美空がそう静かに呟く。それに斎がうなずいた。
    「後、少しです。気を抜かずにいきましょう」
    「そうでありますな」
     美空は気を引き締めなおす。その横ではカマルがご満悦なメルフェスを見た。
    「まだ、戦いは続いてるって。魔王様」
    「そうみたいね」
     そうメルフェスは笑みをこぼす。その横には首輪にリードをぶら下げた彩香の姿がある。「ごしゅじんさま、どうぞ?」のあまりのあざとさ鼻血を吹き出し数分間戦闘不能になったりしたが、まぁ、目的は果たしている。
     それでもメルフェスは胸を張って言った。
    「ええ、幼女を愛でに最前線へ」
    「仲間を助けにいきましょうよ」
     思わず、斎がツッコミを入れた。
     そして、最前線はまさに蝋燭の火が消えるように激しさを増していた。
    「悪に染まった汚いお顔を洗浄して差し上げてよ★ 泣き叫んで反省なさい♪」
    「不正行為は正さないとね!真面目に頑張ってる人もいるんだから!」
     ティアリスの石鹸水攻撃の支援を受けながら瑠璃羽が駆ける。それをルーシアが呻いた。
    「ブルマ以外の印象が残ってるなんて!」
    「写真が残ってんだよ、記念に持って帰れ!」
     瑠璃羽とルーシアから挟むように逃げ場を奪った嘉市が叫ぶ。
    「マラソンは最後まできちんと走り抜いてこそ、ってもんだ。それをサボろうなんてのは見逃せねぇ。歯ぁ食いしばって待ってろよトリックスターども!」
    「俺達は三本向こうの路地だ」
    「わかった」
     瑠璃羽からの携帯を受けて志命が蓮が答える。機械オンチと方向オンチのコンビは自分達の特性をよく理解していた。
    「Yeah!鬼さんこっちらー♪」
    「くそ!」
     別の場所――メトスがスケボーで加速していく。ダンッ! と階段の手摺りの上にボートを乗せて滑っていった。
     それに自転車の立夏は追いつけない。メトスが着地し、そのリードのまま引き離そうとした時だ。
    「――ッ!?」
     メトスが息を飲む。着地と同時、徹也が塀の上から投網を投げ込んでいた。
    「徹やんずっこいやーん!わいにも貸してやー!」
    「……1つしか用意していなかった、すまない」
     自転車を使っておいての立夏と大真面目な徹也――二人の性格がよく出たやり取りだ。なお、結果は立夏が四人、徹也が六人のトリックスターの捕獲に成功した。
    「ちぇー……でも面白かったからいいやー!」
     メトスは悪びれない。何故なら、思う様にトリックスターを楽しんだからだ。
     ――そう、トリックスターも魔人生徒会側も全員が等しく笑顔だった。
    「魔人生徒会さーん、ズルしてる人がいまーす!!」
     和己が他のトリックスターを売りながらダッシュする。だが、それに赫絲は騙されない。
    「悪く思わねェで下さいよ、此方も仕事なンで」
    「ふふ、たくさん引っ掛かったね」
     歌菜も心底楽しげに自分の張ったトラップの出来栄えに満足していた。
    「あぁ、こういうこんな戯れも悪くない」
     謡も小さくそうこぼす。何にせよ、全力で考え、全力で行動し、全力の結果を目にするのは気分がいいのだ。
     全力でマラソンを走る者も。
     全力でマラソンから逃げる者も。
     友と一緒に同じ時間を共有した者も。
     また腹を満たしながら歩いた者も。
     全員が同じ時間を共有した――だからこそ、笑えるのだ。
     そして、最後の勝負を賭ける者達がまだ残っていた。
    「間違いないよ、あいつだ」
     亮太郎の言葉に生徒会側が色めき立った。
     清純だ。ゴールが近い――魔人生徒会の生徒達は殺到した。
    「こいつは俺達にまかせなぁ!」
    「俺達が、行くから。他のやつらの方、お願い」
     一番最初にかけたのは伊織と千太郞のコンビだ。しかし、それを遮る者がいた、京一だ。
    「待つでござる! その二人は生徒会側の生徒ではござらん!」
    「っし! 行くぞ、空屋!」
     伊織と千太郞の前へ魔人生徒会が数人駆け込み、押さえていく。その間に清純が取り押さえられていた。
    (「信じてるっすよ、センパイ)」
     清純――変装した十七夜・狭が内心でそうこぼした。

    ●そして、祭りは終わる
     ――グランドに清純が姿を現した時、会場が割れんばかりの喝采に包まれた。
     順位はお世辞にも高いものではない。むしろ、トリックスターは皆が思い知ったはずだ――魔人生徒会との戦いによって自分達が十キロ以上の走行距離を走らされた事を。ましてや、ここまで来た労力を考えれば、その順位はお世辞にも高いものではない。
     だが、不正は不正だ。だからこそ、魔人生徒会の生徒が総力を上げて清純を掴み、抑え込む。その光景に喝采と悲鳴と笑いが巻き起こる。
     トリックスター、全員捕獲。これが今年の成果だった。
     グランドを走る時もトリックスターの表情には悲嘆はない。清純もまた、仲間から、他のトリックスターから健闘を称えられた。
    「訓練だと思っていたが、俺は楽しんでいたのか……」
     無常は自分の頬が緩むのを確かに感じていた。
     そう、誰もが楽しんだのだ――このマラソン大会以外のもう一つの祭りを。
     魔人生徒会よ、また来年もトリックスター達の暴走を防いでみるといい。
     トリックスター達よ、来年こそは今年の雪辱を晴らし、堂々とゴールするといい。
     そう、来年もまた――それは灼滅者として、また来年もそこに立つと言う決意になる。
     心が闇に染まり、闇堕ちにしないですむように――今日の楽しい思い出を胸に明日を生きるのだ……。

    作者:波多野志郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年10月31日
    難度:簡単
    参加:323人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 29/感動した 8/素敵だった 30/キャラが大事にされていた 34
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ