トワイライト探偵

    作者:四季乃

    ●Accident
    「ラジオウェーブによるラジオ放送が確認されました」
     灼滅者たちが揃うと、五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)は開口一番そう切り出した。
     放置していればいずれ電波によって発生した都市伝説が、ラジオ放送と同様の事件を起こしてしまう。彼女は少し声量を落とすと、静かな口調で放送の内容を語り始めた。

     その洋館には、怨みがたゆたっている。
     由緒正しい華族のお屋敷で、一家惨殺という凄惨な事件が起きた。奉公人にまで魔の手が迫り、一夜にしてその輝かしさは血塗られてしまったのだそうだ。
     敷地内のどこにも犯人に繋がる手掛かりや痕跡が残っておらず、事件は計画的犯行によるものだと思われた。犯人は、未だ見つかっていない。
     難を逃れた奉公人たちは逃げるように洋館をあとにした。周囲から羨望の眼差しを一心に受けていた華々しい洋館は、今や虚ろな淀みを孕むおぞましさの塊である。
     親族たちは洋館を手放す決意をし、屋敷中のものを運び出してオークションにかけるつもりであった。常であれば買い手が付かぬものも、オークションならば曰くつきとは言え物珍しさゆえに買い取る奇特な者がいると思ったからだ。
     しかし、親族たちが清掃をかねて屋敷に入ると、一人、また一人と行方不明者が相次いだ。特に男性に関しては惨たらしい姿となって、帰らぬ人となるそうだ。そこで彼らは察したのだ。
     一家を惨殺したのは、身内の犯行なのだと。そして彼らは、まるで家を守るかのごとく、我々の侵入を許さないのだと――。
    『立ち去りなさい……貴方たちが手にして良い品など此処にはありません』
     黒い闇で潰れた両目は、もう世界を映すことはない。けれど恨みと無念が彼らを、突き動かす。

    ●Caution
     その屋敷は、近日オープン予定のアトラクションなのだそうだ。
     屋敷のあちらこちらにヒントボードが設置されており、謎を解いて何処かに隠されているお宝を探し当てるというゲームらしい。都市伝説が発生するのにこれ以上にない絶好の舞台だろう。
    「放送によると、どうやら一家には金の無心を続けたことで一族から追放した次男と、管理を怠りアレルギーを持つ子どもにその食材を出したことでクビにしたコックが居る、という設定だそうです」
     他にも金品を盗もうとしたメイドや家庭教師など、素行の悪い者は徹底的に処罰し、追い出した。
     つまるところ、皆にはこれらを演じて都市伝説を誘き出してもらいたいのだ。
    「都市伝説は放送内にもありましたとおり、一家と奉公人のようですね」
     放送内で被害に遭ったのは父、母、長兄、末の妹。奉公人の執事が一人、そしてメイドが二人。全員が攻撃を仕掛けてくるかは分からないが、奉公人たちは主を護る盾となる可能性が高い。この場合やはり父である男性が、その中心である核と見て間違いないだろう。
     放送によれば舞台の時代は明治大正あたりとのことだそうなので、杖や拳銃を持っていてもおかしくはない。
    「これらは放送内で得た情報のため予知ではありません。万が一にも予測を上回る能力を持つ場合があるかもしれません」
     とは言え、今回は赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)の調査によって、都市伝説を発生させるラジオ放送を突き止めることが出来た。情報を得られただけでも十分な収穫だ。
    「実際に惨殺された一家など居なかった。そう思うだけでも随分と違いますので……どうか皆さん、心置きなく演じきってください」
     姫子はそう言って、少し悪戯っぽく微笑んだ。


    参加者
    風宮・壱(ブザービーター・d00909)
    峰・清香(大学生ファイアブラッド・d01705)
    皆守・幸太郎(カゲロウ・d02095)
    各務・樹(カンパニュラ・d02313)
    関島・峻(ヴリヒスモス・d08229)
    黒嬢・白雛(天翔黒凰シロビナ・d26809)
    フリル・インレアン(中学生人狼・d32564)
    野々村・まゆ(炎上天使・d36734)

    ■リプレイ

    ●遺産は
     一人の女学生が唇に緩やかな弧を描く。
    「時は大正、所は日ノ本。これより語られますは然る華族の血塗られた悲劇に御座います」

    「私は銀狼・布理流です。憧れの洋館でメイド見習いをしていました。――ですが、おっちょこちょいな性格が災いして、ついに今日クビにされてしまいました」
     人気の失せた玄関ホール。吹き抜けの天井から屈折した淡い光が絨毯に光の輪を作る。その中央で、今にも泣き出しそうな表情をして声を震わせているフリル・インレアン(中学生人狼・d32564)は、悲しみのあまりワッと両手で顔を覆い隠していた。
    「ふえぇ、ちょっと失敗した位であんなに怒らなくてもいいじゃないですか。それにクビなんてひど過ぎです。それに誰も見送りに来ないなんて。こうなったら旦那様が大事にしていたこの壺を叩き割って憂さ晴らししちゃいます」
     てくてくと玄関ホールの脇に飾られてあった小ぶりの壺の元へ近付き両手で持つと、何のためらいもなく頭上高く振り上げた。
    「ちょっとお待ちになって」
     背後から呼び止められ、小さく息を呑んだフリルが背後を顧みると、そこには矢絣柄の着物に袴を合わせた金髪の女性が居た。金縁眼鏡の奥から真っ直ぐこちらを見つめていて、着物の色に合わせた色の大きなリボンが可愛らしい。
    「それ、とっても値打ちのあるものなのよ。割ってしまうのは惜しい代物だわ」
    「あ、貴女は……」
     おずおずと云った風に問いかけると、彼女――各務・樹(カンパニュラ・d02313)はポニーテールに結い上げた髪を小さく揺らして人差し指を唇に押し当てると「怪盗よ」そう、微笑んだ。
     聞けば彼女は金目のものが無いかこの屋敷にやって来たのだとか。「怪盗」と舌の上で反芻していると、彼女の背後から自分と同じメイド姿の黒嬢・白雛(天翔黒凰シロビナ・d26809)が、ひょこりと顔を出した。
    「とりあえずお金になりそうなものを取りに来たのですわ」
     しかしその割に白雛は物の価値などはまったくわかっていないのか、玄関に飾られた絵画や調度品を無遠慮にべたべたと触って値踏みしているのだ。フリルは腕に抱えたままの壺が一体幾らするのだろうと視線を落とした。
    「もうみすぼらしい服は着たくありません」
     その時だった。一人ダイニングから姿を現したのは、樹と同じように女学生の恰好をした、野々村・まゆ(炎上天使・d36734)だ。
    「遺産はまゆがいただきます」

    ●一体
     末娘の家庭教師であったというまゆは、メイド見習いと怪盗の前に立つと、そんな風にきっぱりとした口調で吐き捨てた。
    「いくら金を毟ろうとダイニングにまゆの席はないまま。解雇されて思い知りました。どうせまゆは要らない子です」
    「華やかな裏で随分と悪どい事やってる様だな」
     いじけたように零したまゆの言に、まるでその言葉の意味を知っているとでも言うかのように突如響いた青年の声。り返ると、観音開きの扉を両手で押し開け、白線帽子の下から赤茶の瞳を細めて小さく笑う関島・峻(ヴリヒスモス・d08229)が居た。
     カツカツと足音を響かせ玄関ホールを真っ直ぐに進むと、豪奢な階段の手すりに手の平を宛てがい、なぞるように指を滑らせる。
    「証拠も揃ってるんだ。見ろよこの機密書類……破棄したつもりだろうが見つけてやったぜ。このままじゃお嬢さんの将来にも傷が付くかもな」
     まるで何処かに隠れた人物への問いかけのようだった。詰襟の学ランに将校マントを羽織った峻の横顔は不穏な気配を孕んでいる。
    「黙ってて欲しけりゃ……分かってるだろ? 金だ」
    「いやいやみんな勝手なこと言わないで」
     声を張り上げ突如ゆすりを始めた青年に待ったをかけたのは、洋室から現れたモボファッションに身を包む風宮・壱(ブザービーター・d00909)である。その隣の客間からは、外したばかりなのだろう額縁に入った絵画を片手にした皆守・幸太郎(カゲロウ・d02095)が顔を覗かせている。
    「ここにあるのは全部相続主の俺のだから、ね? ああ、家族を殺されて悲しいなあ」
    「いや、ここの次男は俺なのだが」
     幸太郎が壱に向かってぼそりと答えると、壱は「はあ!?」と大袈裟に驚いてみせた。
    「いや、俺だからね? っていうか何してたの?」
    「遺産整理」
    「遺産は俺のものなの!」
    「ぶみゃ」
     息子は俺だと主張しあう二人の傍。大きな壺から生えたように腹がつっかえて身動きが取れなくなっているきなこを目にした壱と幸太郎は、「ンンッ」噴き出しそうになってしまう。
     だがそこへ。
    「邪魔するぞ!」
     バーンと豪快に玄関を開いて颯爽と現れた峰・清香(大学生ファイアブラッド・d01705)が、呆気に取られる皆の前で突然、歌い始めたではないか。
    「著作権切れの昔の歌くらいはスマホで検索すれば出てくるから便利なものだ」
     一度そんな風に、うんうん頷いてみせたが、またすぐに歌を再開する。
     そんな近所迷惑を考えず大声で歌う来客に、堪忍袋の緒も切れたのだろう。
    『好い加減になさい!』
     光は、弾けた。

    ●誰のもの
    『恥を知りなさい! 恥を!』
     キーッとでも言いたそうな表情で頭に響く大声を上げたのは、少女のメイドであった。
     縁なしの眼鏡をかけた年嵩のメイドと童顔のメイドの二人は、キッチンの方から現れた。手にはそれぞれ薙刀を手にしており、鋭い眼光でこちらを見据えている。その奥には、儚げな表情を宿した女性と少女が身を寄せ合うように立ち尽くしていた。
     清香の影でそろりと交通標識を握り締めたまゆは、前衛たちにイエローサインを放ってみせた。
    『こそこそと何をしているのですか』
     いつの間に現れたのか、逃げ道を塞ぐように玄関の前に立っているのは、首から血を流す一人の執事である。彼は仕込み杖をするりと引き抜くと、その隠された刃を真っ直ぐに突きつける。
    『此処はあなたたちのような者が立ち入ってよい場所ではありません』
     その鈍くあやしい光に瞬発的な動きを見せたフリルは、己の片腕を半獣化させると、その鋭い銀爪で力任せに引き裂きにかかった。その迫力に続くかのようにクロスグレイブを担ぎ上げた白雛は、
    「さぁ……断罪の時間ですの!」
     武器に黒白の炎を纏い、高らかに宣言する。
    「狩ったり狩られたりしようか」
     スレイヤーカードを解放しながらニィっと唇に笑みを浮かべた清香は、白雛のオールレンジパニッシャーがメイドたちの躯体を薙ぎ払うその中央、バベルブレイカー・憤怒の穿ちによるジェット噴射で敵に飛び込んでいく。
    『きゃあ!』
     年嵩のメイドの躯体に蹂躙のバベルインパクトが命中すると、見かねたのか妹が清香の身体にしがみついてきた。
     そちらに駆け付け攻撃に加わろうとした峻は、ふと頭上からの視線を受けて立ち止る。見上げれば二階の段上。手すりに右手を添えてこちらを静かに見下ろす男性が一人、立ち尽くしていた。
     その双眸には黒い闇が塗り込められ、頬を伝っている。
    「……お久しぶりで、旦那様」
     その言葉にぴくりと頬を動かした男性であったが、彼が懐に手を差し込むより峻が階段を駆け上がり、ティアーズリッパーの一撃に掛かる方が早かった。血濡れた上質のフロックコートが、ひらりと舞い上がる。その内に隠された肉体に斬撃が喰いこむかと、思われたが、しかし。
    『させません!』
     声に伴い、鋭い熱が峻の背中を襲い掛かる。
     ちらと尻目に見やると、階段の下から薙刀を振り上げた状態でこちらを睨み付けるメイドが一人。どうやら彼女の一撃が放たれたらしい。その隙に主人は隠し持っていた拳銃で妻たちに一番近い場所に居た樹に発砲すると、階段を下りていく。そのあとを追いかけようとした峻の眼前に、自身と変わらぬ身の丈をした青年が現れた。片手には抜き身の日本刀、胸に赤い花を咲かせた青年は、
    『父上、お早く』
     そう言って、峻の攻撃を庇い受けたのだ。
     なるほど、どうやら彼が長兄のようだ。とすれば、この場に全員都市伝説が出現したことになる。
     階下で少女メイドの薙刀を受け止めていた壱のその背後、周囲に現れた彼らを前にした幸太郎は、「名家の息子が困窮するなんて世間体が悪い」「だから俺には金が必要なんだ」そんな自分を罰する為に両親達が化けて出てきたと思い、
    「……やらなきゃこっちがやられる。仕方……ないんだ……!」
     男性に向かって斬影刃を叩き込んだ。みなにも劣らぬ迫真の演技である。だがその攻撃を、すかさずメイドが受け止め、男性はするりと抜けていく。向かう先は妻たちの元だ。
    「まずはお兄様に、っと」
     目を眇め、階段中腹で刃を交える長兄を見つけた樹は、彼に目掛けてフリージングデスの魔法を解き放つ。意識していない方向からの攻撃にハッと短く息を呑んだ青年は、己の熱量を奪っていく魔法に、短く呻き声を上げたのだ。そして、メイドが二人、がくりと身を崩して身体の一部を凍りつかせている。
    「なるほど、把握したわ」
     樹はすかさずダイダロスベルトを握り締め、次の攻撃態勢に入る。
     一方、壱は自身から意識が逸らされたのを良いことに、未だ壺に咲いていたきなこを引っこ抜いてはメイドから受けた傷をワイドガードで癒しに走る。きなこは少し凹んだお腹に、ちょっと嬉しそうな顔をしていたが「それ一瞬だからな? あとですぐ戻るからな?」と壱に現実に引き戻され、面白くなさそうな表情を浮かべつつリングを光らせ、傷を負った峻の回復にまわっていった。
    『よそ見をしていて、よいのですか?』
     ヒュン、と乾いた音が耳元をよぎっていく。
     妹を剥がした清香は、死角から繰り出された仕込み杖をちらと見やると、振り向きざま持ち替えたウロボロスブレイド・運命裂きを振り払い、執事の躯体にその刃を巻き付ける。
     縛り付けられ、身を切り裂く痛みに、しかし執事は悲鳴をあげることはない。
    「これはどう?」
     その時、弾けるような樹の言葉がホールに響く。その言葉にハッ、と短く息を呑んだ執事が顔を上げると、翼の如く全方位に放出されたダイダロスベルトが、メイドと長兄たちを捕縛している。しかも、少女メイドが片膝を突くと、そのまま動かなくなってしまったではないか。執事は蛇咬斬から逃れると長兄の元へと駆け出していく、しかし年嵩のメイド一人では主人三人を護るには手薄だ。
     それは、一瞬の葛藤だった。
     パンッ、と乾いた音が立つ。主人の放つ弾丸のそれ。銀の鉛玉は、イカロスウイングを放ち妻と娘と、何故か柱までを捕縛したフリルに向けられていた。だが、銃口が突きつけられたことに気が付いた壱が、強く地を蹴って持ち前の運動神経で一気に駆けつける。
     少女の肩口にのめり込むかと思われた弾丸を、壱は無理やり身体を捻じ込んで庇い受けた。
     アッと短く声を上げたフリルであったが、
    「いきますわよー!」
     仲間のサポートに回るべく白雛がロケットハンマーを振り上げると一気に振り下ろす。地面を叩きつけることによって生まれた衝撃波は主人を襲い、都市伝説たちに僅かばかりの隙が生じたのだ。
    「あの世まで金は持っていけないんだよ。それに恨み晴らすなら犯人に、じゃないかな。あっ、もちろん俺は違うよ!」
     壱の言葉に、主人の視線が持ち上がる。彼の薄い唇が開かれ、何か言葉を発そうとしたようだったが。
    「痛かったですか旦那様。――いえ、お父様でしたね」
     攻撃を受けた壱に防護符を放ち回復を施すまゆの言に、主人は眉に皺を寄せて顔を持ち上げた。そう、まゆは家庭教師などではなく、旦那様を脅迫し金を絞りに来た貧しい妾の子であったのだ。
    「全ては貴方がまゆを認めて下さらないから」
    『えっ』
     全員が絶句する。
    「なぜ館で事件が起きるのか教えてあげます。最後に炎上するからですよ」
     やだなにこの子怖い。全員の顔にそう書いてあったに違いない。
     だがまゆのおかげで、都市伝説たちはすっかり意識が混乱してしまっていた。それ幸いと呆けている長兄に向かい黒死斬を叩き込んだ峻に続き、幸太郎がリングスラッシャー射出で追い打ちをかけると、青年がダウン。
     回復の手が足りそうだと判断した壱が、こそりとクルセイドソードを持ち上げ執事に神霊剣を叩き込むと、膝から崩れ落ちた彼の後頭部にきなこが肉球パンチで張り倒す。残るメイドは、懐疑的な視線を主人に向けると、妻と娘の前に庇うように立ったが――。
    「あら、こちらを忘れないで?」
     にっこりほほ笑んだ樹のレイザースラストに胸部を穿たれ、彼女もまた離脱。残された女性二人は、もとより戦力ではなかったのかその場に座り込んで放心してしまった。
    「思いがけぬ終幕ですわね」
     白雛の言葉に、主人の肩が大袈裟なくらい跳ね上がる。
    『わたしに妾など居りません!』
    「彼女に目を付けられたのが最後だったな」
     どこか同情的な言葉に、喉の奥が張り付いたように悲鳴が漏れる。至近で投げ掛けられた清香の言葉に瞠目する主人であったが、その指先が引き金に触れるよりも早く耳朶に触れるディーヴァズメロディによって、意識が混濁する。
     大地に手を突き、胸を抑えた主人は――。
    「もう、あの時の俺ではないから……」
     静かに放たれた幸太郎の言葉。その言葉の意味を反芻しながら、身に降りかかる黒死斬を受けた主人は、吹き抜ける屋敷の天井を仰ぐような形で倒れ込んで行く。
    「本当に欲しかったのは富なんかじゃない。絢爛の館、華族の名声。何より愛が欲しかった。――相続権はくれますね? もう全部まゆのモノです。お父様もお父様の愛した人も、みんな」
     まるで死刑宣告かのように踏み出される足音が一歩ずつ主人に迫っていく。いささか青い顔をした彼の元に近付いて行くまゆは、その顔近くにしゃがみ込むと、うっとりと微笑んだ。
     ホールに満ちる光に溶けるように消えていくその欠片たちは、どこか吸い寄せられるようにまゆへと吸収されていく。全て取り込んだまゆは立ち上がると満足そうに、一言。
    「流石まゆちゃん。全米が吹き飛ぶ名演技でした」

    ●犯人は誰?
    「……で、結局犯人って誰だったんだろう?」
     手を合わせ、家族としてその冥福を祈っていた壱は、ほとりと頸を傾げてそんな風に零した。
    「ラジオウェーブをどうにかしないとおちおちホラーアトラクションも作れないな」
     吐息交じりの清香の言葉に、皆の視線が周囲に向く。
    「しかしこのアトラクション、オープンしたら探偵役でやってみたい。折角良い設備が完成してるんだ、流行ると良いよな」
     アトラクションとは思えぬ出来栄え。峻の言葉に樹や白雛、フリルたちからうんうんと同意が落ちる。その中で一人、素に戻り缶コーヒーを片手に一服していた幸太郎は、事件について少しばかりでも救いのある結末に出来たなら良かったのだが、そう胸の内で小さな吐息を洩らした。
     新たなしこりを残してしまった感は、否めないけれど。まゆの横顔を見つけ、幸太郎は小さく肩を揺らして微笑した。

    作者:四季乃 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年5月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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