夜、とある山中の河原付近に、数本だけ咲いている桜が有った。
普通の桜は咲き終わっているというのに、その数本だけが1枚も花びらを散らさずに存在している。
夜の闇の中、風に揺られても散らない桜の木々は、どことなく異質で気味が悪い。
「人を惑わす桜の木、あれです」
灼滅者たちを連れて来た、真咲・りね(花簪・d14861)が桜の木々を示す。
「惑わす……正常な判断力が出来なくなったり、無性に不安になったり、いつもと違う言動をしたり、性格が真逆になったりなど、でしょうか?」
桜と少し距離を保ちつつも、好奇心旺盛さを発揮するりね。
「でも折角咲いているのですし、被害者も居ないようですし、お花見が出来そうですね」
きょろきょろと周りを確認してから、夜桜に視線を向ける。
「きっと大丈夫でしょう。灼滅者ですし」
参加者 | |
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ポンパドール・ガレット(火翼の王・d00268) |
桜川・るりか(虹追い・d02990) |
ニコ・ベルクシュタイン(花冠の幻・d03078) |
真咲・りね(花簪・d14861) |
霧島・サーニャ(北天のラースタチカ・d14915) |
花宮・真琴(晴々天真爛漫・d15793) |
朝川・穂純(瑞穂詠・d17898) |
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「夜桜だもんね。絶対綺麗なはず」
「綺麗な桜には怖い噂もつきもので、惑わす桜というのも不思議とほんの少しの不気味さがあって良い」
桜川・るりか(虹追い・d02990)と、怪談話が好きな霧島・サーニャ(北天のラースタチカ・d14915)は、共に桜を見上げている。
(「放っておくと、一般人がパニックになっちゃうね。早く倒してしまおう」)
一般人の平穏を守ろうと、真剣に思案する、花宮・真琴(晴々天真爛漫・d15793)。
「お花見だー! やったぜ!」
元気良くはしゃいでいる、ポンパドール・ガレット(火翼の王・d00268)。
「私達なら何かあってもあまり変な影響受けなさそうですけど、油断は禁物ですね」
「油断せず、行こうか」
真咲・りね(花簪・d14861)の言葉に軽く頷く、ニコ・ベルクシュタイン(花冠の幻・d03078)。
「わあ! 夜桜綺麗! まずは楽しくお花見だね! 雰囲気出る様に、星がキラキラ輝く綺麗なランプを用意したよ」
朝川・穂純(瑞穂詠・d17898)が設置を始めると、仲良しのりねが率先し、続いて他の仲間たちも手伝う。
夜桜をそのまま眺めたい仲間のことも考え、数本の桜には光が当たらないように、配慮と工夫をする。
やがて準備が整い、灼滅者たちの楽しい花見が始まった。
●
「何が起こるか全然分かんないけど、被害者さんもいないみたいだし」
周囲を確認後、お弁当を取り出す、るりか。
「お弁当は3色弁当だよー。そぼろとたまごと絹さや」
説明しながら配る、るりかのお弁当は彩りもよく、見るからに美味しそうだ。
「団子とか、ジュースとか、色々と持って来たよ」
真琴も花見用に持参した物を取り出し、早速仲間たちに配る。
「先輩たちも持ってきたのでござるね」
サーニャのお弁当は、おにぎりやサンドイッチなどの軽食がメインだ。
「甘いものがあったら是非是非頂きたく! デザートでも、フルーツでも!」
甘党のサーニャは目を光らせ、甘いものを欲しがっている。
「私はお菓子持ってきたよ。ほら、桜のプリン! ピンク色で綺麗でしょ? それから桜餡のお団子、桜のマカロンもあるよ。折角だから桜づくしだよ」
サーニャを可愛く思ったのか、穂純は笑みを零しながら、サーニャにお菓子を渡す。
「これで最後の花見になるかもしれないし、思いっ切り楽しい時間を過ごすでござる」
真琴から貰った団子や、穂純がくれたお菓子を幸せそうに食べている、サーニャ。
「……って、なんかそのサクラ、見てるとヘンな気分になるんだって? 気をつけない……と……」
ポンパドールが桜を見上げると、なにやら奇妙な感覚が一瞬よぎり、咄嗟に目を逸らす。
「どんな感じになるのか正直どきどきしますけど、お花見も楽しんでいけたらいいですね」
ポンパドールの言葉を聞いたものの、りねは好奇心のほうが勝ってしまう。
「何だか桜の花が咲いてるって聞いたら、いてもたってもいられなくなっちゃった」
るりかは嬉しくてたまらない様子で、りねに来た理由を伝え、微笑み合う。
「皆のお弁当も分けてもらえて、夜桜見物でお弁当つきの、いい依頼だなあ」
「私もいただきます。お花は綺麗だし、お弁当はおいしいし。夜桜も素敵ですね」
るりかの隣に座り、頷き返しつつお弁当を味わう、りね。
「お弁当色々あって嬉しいなあ。いただきます! 美味しい!」
仲良しのりねの隣に座り、穂純は一緒にお弁当を食べて、りねとるりかと3人で喜び合う。
なんとも微笑ましく、花のある光景だろうか。
「花見と言われると、人混みがどうにも苦手でな。そういう心配が無いという点では有難い話だ」
「桜も沢山咲いているし、人もあまりいない絶好の花見スポットでござるな」
静かに花見を堪能しているニコの言葉に反応し、ここなら人混みも無いと頷く、サーニャ。
「ね、ねえ、このサクラ、ちょっとヤバくネ? おれ、コワイんだケド……」
桜を見ている内に、ポンパドールは逃げ腰になり始めた。
いつも元気なポンパドールが、どうしてか気弱になっている。
「ははは、何を言ってるんだポンパドール! 綺麗な桜じゃないか! 一杯やりながら楽しみたい気分だ!」
油断はしていなかったハズなのに、ニコが思いっきり変わってしまった。
基本的に真面目で、大声を出すことも滅多に無いニコの変わりように、ポンパドールはショックで固まる。
りねなら、ニコの変貌ぶりに同じく驚いてくれるだろうと、半ば助けを求める形で、ポンパドールがりねに視線を向けた。
「ねー、ポンちゃん一緒に遊ぼうよ」
「ポンちゃん!?」
視線が交わった瞬間、りねが発した呼び名に、驚くポンパドール。
自分の知っているりねの面影が、無い。
「お花見お花見。お弁当食べさせてあげようか」
いつもは真面目なりねが、はじけまくっている。
そんなりねに、ポンパドールは、たじたじだ。
「あうう、暗いところは苦手だよ、桜の化け物が襲ってきちゃう……怖いよー」
「マコトはさっきまで明るい感じだったよネ!?」
明るかった真琴が、臆病な性格に変わってしまったことに、思わずツッコミを入れてしまう、ポンパドール。
「穂純ちゃんも一緒にお花見だー、嬉しいー。ニコさんも一緒にお花見しよ?」
やはり、りねは真面目さを失っている。
ポンパドールは、りねと仲の良い、るりかと穂純に、おそるおそる視線を向けた。
●
るりかは、黙々と食事をしていた。
普段のるりかなら、豪快に食べているところだが、今は大人しい。
「ニコさん、以前のビーチバレーのお礼どうぞ」
飲み物をニコに渡し、他の仲間たちにも渡す、るりか。
そしてまた黙々と、るりかは幸せそうに食事を続ける。
穂純は、普段の元気を失い、とても眠そうだ。
「もうこのまま冬眠……じゃなくて春眠? もうずっと眠り続けたいなあ……でも寝ちゃうと夜桜楽しめないし、美味しい物も食べられなくて勿体無いよね」
うとうとしながら、穂純は霊犬の、かのこを優しく抱く。
かのこは気弱で怖がり屋になり、穂純に必死にくっついている。
「もふもふで気持ちいい……」
ぷるぷると震えているかのこを、大切そうに抱きしめ、うつらうつらしている穂純。
「みんなどうしちゃったのー!?」
ポンパドールは思わず叫び、いつもならあざといほどに可愛らしい、ウイングキャットのチャルダッシュを抱きしめようとする。
チャルダッシュはツンツンとした性格に変わってしまい、ポンパドールを冷たくあしらう。
「そ、そんなあ……!」
「美女に囲まれて花見とは幸せだな! お前も楽しめポンパドール!」
半泣き状態のポンパドールに、ニコが大声をあげ、容赦なく絡んでくる。
親友のニコの、あまりの変わりように、ポンパドールは声も出ない。
「どうしたポンパドール! 美女と綺麗な桜に囲まれてるんだ、もっと楽しめ!」
肩を組んで来るニコは、満面の笑みだ。
「もー、みんな何かいつもと違うよー」
自分も変わっていることを気にしていない様子で、りねはクスクスと楽しそうに笑っている。
「ある意味、わいわい騒いでるでござるな」
主にニコが……と、サーニャはニコを見ていた。
ニコは誰彼構わず絡み、はっちゃけ、誰よりも花見を楽しんでいるかのように見える。
数本有った桜の木がほとんど消えているので、効果はバツグンのようだ。
「人を怖がらせる桜と聞くけれど、皆でわいわい騒いで、むしろ桜の方をうらやましがらせちゃえ!」
仲間たちが更に盛り上がるように、声を掛ける、サーニャ。
サーニャはまだ変わっていないように見え、ワラをも掴む勢いで、ポンパドールがサーニャに泣きつく。
「ニコさんは、いつもはあんなんじゃなくて……りねもあんなきゃぴきゃぴしてなくて、みんな変わっちゃって俺どうしたらいいの……」
オロオロしまくっているポンパドールも、自分が変わっていることに気づいていない。
高校生のサーニャは、年上で大学生のポンパドールの頭を、よしよしと撫でる。
変わらないサーニャを、頼もしく感じる、ポンパドール。
「……桜の花びらってお菓子みたいで美味しそうな気がしてきたでござる。ひとくちで食べれそうな、砂糖のお菓子みたいな感じ。どんな味がするのか気になってきたでござる」
心強い相手が出来たのは、短い間だった。
頼みのつなのサーニャも、食いしん坊になってしまう。
「お花だけど! 食べれないけど! あぁなるほど、これが惑わされるということなのでござるね……」
サーニャは1人納得し、自分にキュアを掛けてみる。
加速していた食いしん坊の衝動は一気に消え、キュアが効くことを伝える、サーニャ。
ポンパドールはオロオロしながらも、セイクリッドウインドでキュアを前衛陣に掛ける。
「こ、此れも作戦の内だ……」
我に返ったニコが、肩を組むのをそっと止め、背を向ける。
他の誰よりもニコにドン引きしたのは、我に返ったニコ本人だった。
「はっ、私は何をしていたのかしら? よくもこの私を惑わしてくれたね!」
キュアで元通りになった真琴が、桜を睨みつける。
いつの間にか桜は、1本だけになっていた。
「ニコさんの作戦が効いたな!」
先ほどまでの、うろたえぶりはどこへやら、ポンパドールが明るく言い放ち、ニコの傷を無自覚でえぐる。
「大丈夫だよかのこ、すぐに祭霊光でキュアするからね!」
大の仲良しの、かのこが怯えているのをなんとかしようと、穂純は眠気を堪えながらキュアを掛ける。
元気になったかのこは穂純に浄霊眼を使い、元の状態に戻してくれた。
「うーん、スッキリ!」
眠気が消え、穂純が大きく伸びをする。
「た、たまにはこういうのもイイよネ! うん!」
仲間たちにフォローを送りながら戦闘態勢に入り、ポンパドールは強烈な白光の斬撃を敵に浴びせ、チャルダッシュも攻撃に加わる。
「綺麗な桜をありがとう。普通の何の変哲もない桜ならよかったのにね」
異形巨大化させた片腕で、左右から同時に思いっきり敵を殴る、りねと穂純。かのこは回復役に回っている。
「ありがとうの気持ちは込めて……このままにはしておけないから、ごめんね」
「よ、よよよよくも醜態を晒させてくれたな、生かしてはおけん!」
謝りながら攻撃するるりかに合わせ、癖になっている舌打ちと共に、ニコは捻りを加えた槍で敵を突く。
再度舌打ちするニコは、羞恥心とも戦っていた。
「桜の季節ももう終わり。最後の一花、咲かせて魅せようこの河原!」
攻撃の流れが続くようにと、連携を意識していたサーニャが続き、螺旋を描くように槍を突き出す。
「それー、どんどん加速していく剣だよ、切り刻んであげる!」
真琴が高速で振り回す剣は、加速で威力を増し、敵を切り刻む。
真琴の攻撃がトドメとなり、都市伝説の桜は完全に消滅した。
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「夜桜でお花見させてくれたんだもん、ありがとう」
るりかがそっと、小さな声で呟く。
「みんなでお花見できてよかった。楽しい時間をありがとう、桜さん」
都市伝説の桜が消えた場所をぼんやり見つめ、少し切ない気持ちになる、穂純。
「……あ、あまり良く覚えていないのだが大変失礼をした。アルコールは流石に無いが、飲み物を色々持ってきたので今度こそ真っ当に花見を楽しもう」
ニコは真面目に仲間たちへ丁寧な謝罪をし、飲み物を配る。
「乾杯するなら飲み物はジュースが良いでござるな」
嬉しそうに飲み物を受け取り、仲間たちと乾杯をする、サーニャ。
「ふぅ……何だか惑わされた気分がまだ残っている感じがして、気分悪いなぁ。……わっ、すごい綺麗な花々だねー、中々の穴場だよね」
もやもやした気持ちを抱えていた真琴だったが、美しく咲く花々に気づき、瞳を輝かせる。
都市伝説が消えた場所は、桜の代わりに、様々な花が咲き誇っていた。
白くて愛らしい花や、青く美しい花の他に、スミレやハナミズキなども咲いている。
「よしゃ、気を取りなおしてお花見しよう! お弁当とかの用意、ありがとネ!」
ポンパドールが仲間たちに声を掛け、食べ物や飲み物を満喫する。
「終ってみると、何だか変な夢を見ていたみたいで、ちょっと面白かったかもです」
りねは、色々と思い出し、仲間たちに微笑みを向けた。
作者:芦原クロ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年5月5日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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