●
戦後処理にあてられたのは、僅かな時間。
戦いの空気そのままに、沖縄の地で、灼滅者たちはエクスブレインの声を聞くこととなる。
運び込まれた依頼説明ディスク――それを再生し、情報を得るのだ。
『みなさん、お疲れ様! 沖縄に攻め寄せた軍勢を、無事、撃退したのね!』
遥神・鳴歌(高校生エクスブレイン・dn0221)の第一声。
『みなさんの頑張りで、敵は、揚陸部隊が橋頭堡を確保することに失敗しました。アッシュ・ランチャーの作戦は大きく狂うこととなったはず。
そして、こちらはアッシュ・ランチャーを灼滅するチャンスを得ることができたわ』
鳴歌は言葉を続けた。
要約するとこうだ。
統合元老院クリスタル・ミラビリスの元老であるアッシュ・ランチャーを灼滅することができれば、謎に包まれたノーライフキングの本拠地への侵攻も可能となるかもしれない。
しかし、敵軍の戦力は今だ強大であり、生半可な覚悟で反攻作戦を行なうことはできないだろう。
更に、ノーライフキングと協力体制にあるご当地怪人の移動拠点、ご当地戦艦『スイミングコンドル2世』が艦隊に合流したようだ。
『アッシュ・ランチャーが座乗する艦艇は疑似的に迷宮化されていて、アッシュ・ランチャーを灼滅しない限り破壊することは出来ず、内部にはノーライフキングをはじめとした強力な戦力があるの。攻略は非常に難しいと思うわ。
けれど、ここでアッシュ・ランチャーを取り逃せば、今回のような事件を再び起こす恐れがある――ここで、彼を灼滅すべきでしょうね。
そして、スイミングコンドル2世には、闇堕ち後、行方不明になっていた椎那さんが囚われていることも予知したの』
椎那・紗里亜(言の葉の森・d02051)――彼女は闇堕ち時に特殊な力を得たようで、エクスブレインとは違う予知能力を獲得しており、その能力がノーライフキングに悪用されているようだ。
『このまま囚われたままにしておくわけにはいかないわ。可能なら、椎那さんの救出を。……或いは灼滅を、お願いしたいの』
●
『現在の状況を、説明するわ』
アッシュ・ランチャー艦隊は、艦隊を再編してゆっくりと撤退しようと動き出している。
しかし、これだけの大規模な艦隊が簡単に動きだせる筈もなく、今すぐ追撃すれば艦隊に大規模な襲撃をかけることが可能になっている。
こちらから攻撃をしなければ、戦闘を行うこと無く相手は撤退していくが、アッシュ・ランチャーと艦隊が健在である限り、似たような軍事行動が再び行われるのは間違いない。
それを防ぐためにも、ここで、アッシュ・ランチャーを灼滅しておきたい。
また、ノーライフキングの首魁『統合元老院クリスタル・ミラビリス』の一体である、アッシュ・ランチャーを灼滅することができれば、所在不明のノーライフキングの本拠地の情報を得ることができるかもしれない。
『敵艦隊までの移動手段は、漁船やボートを徴用しているけれど、最終的にはみなさんの灼滅者としての体による強行突破になると思うわ』
戦艦の砲撃でも灼滅者はダメージを受けることはないが、漁船やボートは耐えられない。
漁船やボートの操縦方法のマニュアルを用意されており、それらで可能な限り接近して、撃沈された後は、灼滅者の身一つで敵艦に潜入して内部の制圧を行ってほしいと鳴歌は言う。
『最初から泳いで近付くこともできるけれど、漁船やボートが利用できればより迅速に戦艦に接近できると思うしね』
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アッシュ・ランチャーは『撤退可能となった艦艇』に移乗して、戦域からの撤退を画策している。
この撤退を阻止するため、艦隊の外側、撤退準備が整っている艦艇を優先して制圧していく必要がある。
艦艇には、人甲兵やアンデッド兵だけでなく多くの一般兵が乗船しているので、人甲兵とアンデッドを殲滅した後、ESPなどを利用して一般兵に言う事を聞かせ、他の艦艇の退避を邪魔するように移動させれば、アッシュ・ランチャーの撤退を防ぐ事ができるだろう。
『撤退が不可能となれば、アッシュ・ランチャーは艦隊の人甲兵やアンデッドを呼び集めて、自分を守らせようとするはず』
アンデッドや人甲兵は、救命ボートのようなもので移動したり、或いは、海中を泳いだり歩いたりして集結してくる。
集結する戦力は、アンデッド1000体弱に、人甲兵が300体程度だが、この戦力が集結すれば、打ち破るのは困難になるだろう。
なので、アッシュ・ランチャーを撃破するには、この増援を阻止することが重要となる。
『ここまで作戦が進めば、アッシュ・ランチャーが座乗する艦艇に乗り込み、決戦を挑むことができるわね』
アッシュ・ランチャーは、ノーライフキングの首魁の一員であるため、非常に強力で、親衛隊ともいえる強力な人甲兵の護衛もいる。撃破するには相応の戦力が必要だ。
さらに、後方から増援の人甲兵やアンデッドが押し寄せれば、撃破に失敗する可能性もありえるだろう。
撤退を阻止する、増援を阻止する、アッシュ・ランチャー及び護衛と戦うという3つの作戦を同時に成功させなければ、アッシュ・ランチャーを灼滅することはできない。
説明は次へと移った。
ご当地戦艦・スイミングコンドル2世。
最初から、スイミングコンドル2世にアッシュ・ランチャーを避難させた場合、灼滅者がスイミングコンドル2世に押し寄せ、スイミングコンドル2世が制圧されてしまう――という『紗里亜』の予知があったため、アメリカンコンドルは『アッシュ・ランチャー艦隊と灼滅者が戦って混乱した所』で介入する作戦を行おうとしている。
『対策が何もなければ、アッシュ・ランチャーとの決戦中に、アメリカンコンドルとご当地軍勢に横槍を入れられて、アッシュ・ランチャーを奪われてしまうわ』
これを阻止するには、スイミングコンドル2世への攻撃も同時に行わなければならない。
スイミングコンドル2世の戦いでは、条件さえ整えば、アメリカンコンドルの灼滅の可能性もある。
また、スイミングコンドル2世のスーパーコンピューターに接続され、予知を行うための装置として利用されている『椎那・紗里亜』の救出或いは灼滅も目的の一つになるだろう。
『大変な状況が続いているわ。
けれど、一歩、もう一歩と進んでいけば、いつか辿り着くはず。
明けない夜はない、って言うしね。
敵は強力だけれど、この状況はチャンスでもある。うまくいけばノーライフキングを追い詰めることもできると思うの。
どうか、頑張って。健闘を祈るわ!』
参加者 | |
---|---|
古室・智以子(花笑う・d01029) |
ミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125) |
志賀野・友衛(大学生人狼・d03990) |
咬山・千尋(夜を征く者・d07814) |
木元・明莉(楽天日和・d14267) |
三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115) |
鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382) |
琶咲・輝乃(紡ぎし絆を想い守護を誓う者・d24803) |
●
海原に広がる艦隊。
隊を再編し、ゆっくりと撤退を行なおうとしている敵群に向かって、灼滅者たちが沖縄の海を行く。
砲弾が放たれ、海上は次々と水柱がそそり立った。造られた荒い風が灼滅者の髪を乱す。
水煙おさまらぬうちに灼滅者たちは船で駆け抜けていった。
予知によれば増援に動くアンデッドや人甲兵たちは前線を目指す――アッシュ・ランチャーが座乗する艦艇――それが不明な現在、艦隊を大きく0時と据え、艦隊外辺8時方向へとまずは位置取る。
隠密を心がけ移動する高速ボート。運転は、咬山・千尋(夜を征く者・d07814)とミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125)だ。
撤退しようとする艦艇を攻略、制圧中であるこの時間、しかし艦隊は止まらない。
「艦艇が動き出している」
双眼鏡を使い戦況を見た鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)が言った。
その時、直撃した、かなり大きな砲弾の音。
「――!」
確認しようにも艦隊に阻まれ上手く視認できない。多くの艦艇は、灼滅者の視界を塞いでいた。
しかし、強く大きな荒い波が絶えず迫りくるのは分かった。咄嗟に、千尋とミカエラがそれぞれのボートを減速させた。
その後も戦艦に直撃するかのような砲弾の音は止まず、思わずミカエラは双眼鏡を手に取ってスイミングコンドル2世を確認する。
「……ッ」
琶咲・輝乃(紡ぎし絆を想い守護を誓う者・d24803)は微かに身を震わせ、真下の波の動きを注視した。
まさか……艦艇が沈んでいる?
ならば、この止まぬ荒波の理由も分かる気がした。
航海計器のほぼ半数は正確な情報を伝えてこないこの海域。
妨害されているのか電波などの周波を捉えることのできない場はまさに魔の海。ノーライフキングが座する戦場海域で、灼滅者たちもまた携帯電話、無線といったものから正確な情報を得ることができない。
「な、何が起こっているんだ」
狼の耳をピンと立てた志賀野・友衛(大学生人狼・d03990)の言葉は、灼滅者たちの『今』を代弁したかのようで。
更に事態は、思わぬ方へと進んだようだ。
響き渡る轟音。砲弾ではない、ぶつかり合う音だ。
「戦艦と戦艦がぶつかったのかな?」
波に取られそうになるハンドルを握りしめ、ミカエラ。
『何』を見つけ、体当たりしたのか――それは自ずと導き出されていく。
「増援が動き出したの!」
「了解! 向かうよ」
古室・智以子(花笑う・d01029)の声に、千尋が高速ボートの進路を右へと切り替えた。続くもう一艇。
海域は混乱しているのか、こちらに砲弾は飛んでこない。
だが慌てたように増援が――まずは足の速い軍用ボート二艇が行くのを視認する。
「三体ずつ、全部アンデッドなの」
一般人が乗っていない旨を報告する智以子。
「向かわせるわけにはいかない」
船首に立った木元・明莉(楽天日和・d14267)が透蛇尾を振るう。自在に延びる半透明の刃が一気に三体を薙ぎ払った。
その直後、三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115)の全方位に放出された帯が敵群を捕縛した。
二拍遅れて渚緒が軍用ボート上へ降り立つ。
「うん。援軍を決戦の場へは近づけさせない――全力で敵と相対しよう」
●
まずは速度を重視し、海上を行くアンデッドを撃破していく八人。
澄んだ海で時折、蠢く影が過ぎる。
それらを視認した友衛が白き炎纏う灯籠を掲げれば、ゆらりと海中を行くモノが現れる。
小妖怪の幻影群が海底を進むアンデッドへと襲いかかった。
翳りを見せる青の海に、友衛は苦い思いを抱いていた。
「私たちは綺麗なこの海を知っている。絶対に、取り戻してみせよう」
学園の灼滅者たちが過ごした沖縄の思い出は翳ることはない。
脇差が腕を振るえば、鞭のように弧を描く刀身がアンデッド群を斬り裂く。
二度、三度。四体のアンデッドを縦横無人に。薙いだ刀身は、鈍ることなく更なる加速でより鋭利さを増した。
(「折角ここまで追い詰めたんだ。邪魔なんてさせて堪るかよ」)
そこへ、対角に位置する船から輝乃がfamilia pupaをアンデッドへと向けた。二体の片翼の人形が罪を灼く光条を放ち、アンデッドたちを薙ぎ払った。
輝乃の瞳は海上の敵を一心に見つめている。
「灼滅完了」
「よし、それじゃ次の敵に向かうよ」
千尋の声に、こくりと頷く輝乃。その表情は少し強張っている。
初手の段階で、ゆるされた時間のなか移動をし、最前線にて動くチームは、やってくる増援、そして敵艦隊の主力を分断する位置だ。
千尋の周囲に顕現した影のカード群は彼女の手の動き一つで、二つ三つ四つと、鋭利な短兵器へと姿を変え投射される。
それが捉えているのはドッグ型揚陸艦開口部から海中に降りようとしている人甲兵だった。
「三蔵先輩、頼んだよ」
接舷するまでまだ距離はある。
カード群は鋭い槍の形を取り、人甲兵を穿つ。
敵が怯んだその時、海風が意あるものへと変化した。上空から袈裟懸けのように、風刃が人甲兵の外装に傷をつける。
「強風警報、所により頭上に注意、ってね」
敵の大型複合艇からダブルジャンプし、揚陸艦開口部へと降り立った渚緒が破邪の剣を手に言う。
「っと、奥にアンデッド発見! 気を付けてね」
「了解した。それならば――」
人甲兵、そしてアンデッドの体を凍り付かせる死の魔法を放つ友衛。
「海に落ちないように、まずは押し込むの」
移乗してきた智以子のオーラが桔梗の花の形を成した。可憐なそれは一気に智以子の拳へと集束され、人甲兵を殴りつける。
硬質な外装を殴り続け、後退に追い込む智以子。
「援護は任せて!」
海水面に弧を描く高速ボートから揚陸艦の開口部めがけて、星界の霊力が込められた矢を放つミカエラ。
軌道なる煌きが暗部へと到達し、矢群が人甲兵とアンデッド群に降り注ぐ。
追撃するようにビハインドのカルラが顔を晒した時、ハッチを開き新手が降りてくるとともに毒風が起こった。
「敵だ!」
「邪魔するものは倒せ!」
アンデッドの声は、軍人らしく厳つい。
しばしの攻防。
智以子の炎纏う蹴りに人甲兵が傾いだ時、雷に変換された闘気が――明莉の拳が外装を砕き、中のアンデッドの胴まで届いた。
見かけは人の身でありながら、しかし明莉の拳は屍肉であることを感じ取る。
輝乃のミドガルドの蛇が、喰らうかのような結界を構築し残るアンデッドを灼滅していった。
同時に、脇差が上段から月夜蛍火を一刀する。頑丈な作りの刀、一の太刀疑わぬ軌道が人甲兵の外装深くまで斬りこんでいった。
乗員のアンデッドと人甲兵が灼滅され、沈黙する揚陸艦――残敵はいないようだ。
「次に行こう」
明莉が言う。
這入口から反響するように、一瞬海音が場を制するのだが、灼滅者たちに聴き入る暇は無い。耳に入るのは剣戟、海上の攻防。
「この調子でがんばっていこーねっ」
ミカエラの白炎が、ゆらりと、船に戻った前衛を迎え入れていく。
敵数は、アッシュ・ランチャーとの決戦、そして敵艦からの離脱を容易く阻むほど。
次々と敵を倒していけば、その頑張りは仲間の助けになる。
●
船から船へ。
ガガッ!!
今や聞き慣れ始めた重厚な音。繋ぐ鎖の先――甲板に錨が喰いこんでいて、智以子が移乗攻撃を行う。
「そこから先は行かせないの」
智以子は専用にカスタマイズした贅沢な黒で、軽やかな跳躍をみせ、炎纏う蹴りを放った。
甲板にはアッシュ・ランチャーの座乗する艦艇に乗り込む準備をしていたアンデッド群。
接舷準備に動くのは、一般兵だ。
「ただちに作業を止め、できるならボートで逃げてくれ」
友衛がパニックテレパスとともに警告すれば、慌てたように軍用ボートの方へと向かっていく一般兵たち。
一般人の無力化を行なえば、刹那的に増援の進軍が止まる場所もある。
推進力の落ちた船を錨と鎖で引き寄せる智以子。
友衛の白炎灯籠が音なく爆ぜた瞬間、上にある艦艇へと巻き上がって行く白炎――青炎、そして百鬼夜行の幻影群へと彩りが変化していった。
初手の制圧時に轟沈したと思われる艦艇を避けながら船を繰るミカエラ。船は当初のものではなく敵の高速艇を使っていた。
灼滅者が乗り入れるたびにその身を癒し、再び敵の灼滅のため離船するのを補助する。
そのなかで体当たりを受けたと思わしき艦艇を見つけ、戦いが四方で行われる戦場のなか割り込みヴォイスで明莉へと声を届けた。
「敵、アッシュ艦に到達しつつあるよ」
アッシュ・ランチャーが座乗する艦艇の内部は迷宮化している。故に、内部への入り口は常識的でない場所にあるかもしれない。
「障害物多いけど、できるだけ近付きまっす!」
今まさに自艦からアッシュ・ランチャーの艦艇へ跳び移ろうとする人甲兵。
同船していた明莉が、肉体を覆う光の集合体――桜の花のようなそれを両手に集中させ、敵目掛けて放出した。
「衝撃くるぞ!」
明莉が言うや否や、強い衝撃。
落ちてきた人甲兵は彼らの船にめりこみ、すぐには動けそうにない。そして船ももう動きそうにない。
カルラが霊撃を放ち、渚緒の射出した帯が敵の外装を貫く。
「どこかで船を調達しないとね――っと」
轟! と風の鳴る音が渚緒を打った――人甲兵の拳だ。
ミカエラが癒しの力をこめた矢を放つのと同時に、明莉の鍛え抜いた超硬度の拳が人甲兵の守りごと撃ち抜く。
「海底からアンデッドが三体、きたよ」
船と自身を繋ぐ、縄と七色に輝く帯を握りしめ、海上から顔を出した輝乃が決死の面持ちで言った。
海底地形図の『谷』辺り。
「次から次へと――行ってくる」
脇差が船上の仲間へ声を掛け、躊躇いなく海へと飛びこんだ。そして輝乃へと向き合う。
「大丈夫、呼吸出来れば地上と同じだ。心配すんな、俺がついてる」
きゅっと唇を閉じた輝乃が、こくりと頷き、共に海中へ。それを見送るのは千尋だ。
「気を付けて。あたしも援護するよ」
脇差の殺気が海中の敵を覆っていくなか、輝乃の虹翼の守護帯が速く泳ぐ魚のように向かっていく。
千尋のLily for Unknownが砲門を開き、アンデッドを灼く光線が放たれると海水面は弾かれ数多の水飛沫が起こる。それは跳ねる魚群のように。
●
何体のアンデッドを、人甲兵を倒しただろうか。
前衛の守り手は精度を高め、そして代わりに守り手となる後衛と、立ち位置を変えた。
果てなき増援を数えることなく、ただひたすらに戦い続ける灼滅者たち。
時間の感覚はなく、しかし進むにつれ一点を目指す敵群の密度は高くなり、迎撃する他チームの灼滅者とすれ違うこともあった。
灼滅から次の標的へ。彼らを目にした時――ふいに増援に向かう敵の動きが止まった。
波音だけが響く、不気味なほどの静寂。
その意味は、
「アッシュ・ランチャーが灼滅されたのか?」
明莉の声。
止まった敵たち、轟沈している艦艇。その光景は、平和からかけ離れた戦場。
「良かった。成功したみたいだね」
息を吐き、一度肩の力を抜く渚緒が再度戦場へと目を走らせた。
「まだアンデッドはたくさんいるみたいだ」
推進力で進むボートに乗るアンデッドを捕捉した千尋が言った。
手から赤きオーラの弾丸を撃ち、更にカルラが霊撃を放つ。
「残敵を倒していかなければならないな」
友衛が狼の尻尾を振り、周囲を見回し敵を探す。
智以子もこくりと頷いた。
「後始末は大事なの。大仕事だけれど、頑張らなくちゃなの」
「も、もう少しだから頑張れ」
脇差の声に、輝乃がやっとの思いで頷き返した。
紫の瞳は潤んでいて、まばたきをすれば零れ落ちそうなほど。
皆がいるからここまで頑張れた、あと少し、あと少しだけ、と。その気持ちが、今の涙を留める。
ミカエラは双眼鏡で、増援阻止チームの今の位置、灼滅されたであろうアッシュ・ランチャーの艦艇、スイミングコンドル2世の状態を確認していく。
果てなき沖縄の海での戦い、出口は見えた。
既に世界は朝陽のなかであったが、灼滅者たちは、ようやく夜が明けたような想い。大軍の蠢く様は、先の見えぬ夜のようであった。
これは、灼滅者たちが自身の手で紡いだ夜明けだ。
そして、どんな『一日』となるのだろうか――今はまだ、わからない。
作者:ねこあじ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年5月18日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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