決戦アッシュ・ランチャー~不死者艦隊へと挑め!

    作者:波多野志郎

     ジジ――と、一瞬ノイズが画面に走る。アッシュ・ランチャーが沖縄に攻め寄せた軍勢の撃退に成功した灼滅者達の元へ、最新の予知情報を元にした依頼説明ディスクを運び込まれたのだ。
     画面に映った湾野・翠織(中学生エクスブレイン・dn0039)は、深呼吸と共に語り始めた。
    『みんな、お疲れ様っす。みんなの活躍で、沖縄に攻め込んだ軍勢の撃退に成功したっす。そのおかげで、アッシュ・ランチャーを灼滅するチャンスを得たっすよ』
     統合元老院クリスタル・ミラビリスの元老であるアッシュ・ランチャーを灼滅する事ができれば、謎に包まれたノーライフキングの本拠地への侵攻も可能となるかもしれない――だが、敵軍の戦力は未だ強大であり、生半可な覚悟で反攻作戦を行う事はできないだろう。
    『それに加えてノーライフキングと協力体制にあるご当地怪人の移動拠点、ご当地戦艦『スイミングコンドル2世』が、艦隊に合流したようっす』
     その上、アッシュ・ランチャーが座乗する艦艇は擬似的に迷宮化され、アッシュ・ランチャーを灼滅しない限り破壊する事は出来ず、内部にはノーライフキングをはじめとした強力な戦力がある為、攻略は非常に難くなる。ここでアッシュ・ランチャーを取り逃がせば、今回のような事件を再び起こす可能性は高い――今が、好機なのだ。
    『スイミングコンドル2世には、闇堕ち後、行方不明になっていた、椎那・紗里亜(言の葉の森・d02051)さんが囚われていることも予知されているっす。彼女は闇堕ち時に特殊な力を得たようで、エクスブレインとは違う予知能力を獲得しており、その能力がノーライフキングにより悪用されているようっす』
     未来予知能力を敵が得る事は非常な脅威だ。可能ならば、彼女の救出――或いは灼滅も求められた。
    『アッシュ・ランチャー艦隊は、艦隊を再編してゆっくりと撤退しようと動き出しているっす。でも、これだけの大規模な艦隊が簡単に動きだせる訳がないっす。今すぐ追撃すれば艦隊に大規模な襲撃をかける事が可能になるんすよ』
     こちらから攻撃をしなければ、戦闘を行う事無く相手は撤退していくが、アッシュ・ランチャーと艦隊が健在である限り、似たような軍事行動が再び行われるのは間違いない。それを防ぐためにも、ここで、アッシュ・ランチャーを灼滅する必要があるっだろう。
     また、ノーライフキングの首魁『統合元老院クリスタル・ミラビリス』の一体である、アッシュ・ランチャーを灼滅する事ができれば、所在不明のノーライフキングの本拠地の情報を得る事が可能かもしれない。
    『敵艦隊までの移動手段は、漁船やボートなども徴用しているっすけど、最終的には灼滅者の肉体による強行突破となるっす』
     戦艦の砲撃でも灼滅者はダメージを受ける事はないが、漁船やボートが耐えられない。漁船やボートの操縦方法のマニュアルは用意しているので、可能な限り漁船やボートで接近、撃沈された後は、灼滅者のみで敵艦に潜入して内部の制圧を行ってほしい。最初から泳いで近づく事もできるが、漁船やボートが利用できればより迅速に敵艦に接近する事ができるだろう。
    『アッシュ・ランチャーは『撤退可能となった艦艇』に移乗して、戦域からの撤退しようとしているっす。この撤退を阻止するためには艦隊の外側、撤退準備が整っている艦艇を優先して制圧していく必要があるっす』
     艦艇には人甲兵やアンデッド兵だけでなく、多くの一般兵が乗船している。人甲兵とアンデッドを殲滅した後にESPなどを利用して一般兵に言う事を聞かせ、他の艦艇の退避を邪魔するように移動させれば、アッシュ・ランチャーの撤退を防ぐ事ができるだろう。
    『撤退が不可能となれば、アッシュ・ランチャーは艦隊の人甲兵やアンデッドを呼び集めて、自分を守らせようとするっす』
     アンデッドや人甲兵は、救命ボートのようなもので移動したり、或いは、海中を泳いだり歩いたりして集結してくる。集結する戦力はアンデッド1000体弱に、人甲兵が300体程度だ。だが、この戦力が集結してしまえば、打ち破るのは困難になるだろう。
    『だから、アッシュ・ランチャーを撃破するには、この増援を阻止する事が重要となるっす』
     ここまで作戦が進めば、アッシュ・ランチャーが座乗する艦艇に乗り込み、アッシュ・ランチャーに決戦を挑む事ができるだろう。アッシュ・ランチャーは、ノーライフキングの首魁の一員だ。非常に強力で、親衛隊ともいえる強力な人甲兵の護衛もいる。そのため、撃破するには相応の戦力が必要となる。
     さらに、後方から増援の人甲兵やアンデッドが押し寄せれば、撃破に失敗する可能性もありえる。撤退を阻止する、増援を阻止する、アッシュ・ランチャー及び護衛と戦うという3つの作戦を同時に成功させなければ、アッシュ・ランチャーを灼滅する事はできないだろう。
    『それと最初からスイミングコンドル2世にアッシュ・ランチャーを避難させた場合には、灼滅者がスイミングコンドル号に押し寄せてきて、スイミングコンドル2世が制圧されてしまう事という『紗里亜』さんの予知があったので、アメリカンコンドルは『アッシュ・ランチャー艦隊と灼滅者が戦って混乱した所』で介入する作戦を行おうとしているっす』
     何の対策しなければ、アッシュ・ランチャーと決戦中にアメリカンコンドルとご当地怪人の軍勢によって横槍を入れられてしまう。そうなれば、アッシュ・ランチャーを奪われてしまうだろう。
     これを阻止する為には、スイミングコンドル2世への攻撃も同時に行わなければならない。スイミングコンドル2世の戦いでは、条件さえ整えば、アメリカンコンドルの灼滅の可能性もある。また、スイミングコンドル2世のスーパーコンピューターに接続され、予知を行う為の装置として利用されている『椎那・紗里亜』の救出あるいは灼滅も目的の一つになるだろう。
    『かなり困難な状況っすけど、うまくいけば大きく状況を動かせるっす。どうか、頑張ってくださいっす』


    参加者
    迅・正流(斬影輝神・d02428)
    明石・瑞穂(ブラッドバス・d02578)
    八葉・文(夜の闇に潜む一撃・d12377)
    神之遊・水海(宇宙海賊うなぎパイ・d25147)
    空月・陽太(魔弾の悪魔の弟子・d25198)
    ヘイズ・フォルク(青空のツバメ・d31821)
    木津・実季(狩狼・d31826)

    ■リプレイ


     海上を、一隻の漁船が滑るように駆けていく。
    「この間のでだいぶ削いだかなって思ってたのにこんなに戦力残ってたんですかよ!」
     木津・実季(狩狼・d31826)の言葉は、この場にいた者達の代弁でもある。アッシュ・ランチャーが座乗する擬似的に迷宮化された艦艇、それに加えてノーライフキングと協力体制にあるご当地怪人の移動拠点にご当地戦艦『スイミングコンドル2世』――眼前に広がるのは、文字通り大艦隊とも言うべき戦力だった。
    「蜜に群がるアリみたいに、ウジャウジャとよー集まって来るわ。ひょっとして、アレ全部相手にしなきゃならないの~? メンドくさいわねぇ」
    「いえ、重要なのは自分達が増援の阻止だという事です」
     辟易した明石・瑞穂(ブラッドバス・d02578)の文句にそう答えたのは、迅・正流(斬影輝神・d02428)だ。役割を果たすためには、戦うべき相手を選ばなければならない――だからこそ、既に散発的に戦いが始まっている中でダグラス・マクギャレイ(獣・d19431)は敵の動きを見極めていた。
    (「頭、アッシュ・ランチャーは既に戦闘中か。前まで行って分断している連中がいる、だとすれば――」)
    「あそこだね」
     既にフードを脱ぎ、単発ボルトアクション式対物狙撃魔銃を構えた空月・陽太(魔弾の悪魔の弟子・d25198)が言う。アッシュ・ランチャーを中心とする船の動き、それを見極めた時狙撃手と獣の意見は一致した。
     突出した前衛艦隊は抑えられている、アッシュ・ランチャーを救いに行く敵本隊からの動きを迎撃する――!
    「……自分の役割……精一杯、果たそうか」
     八葉・文(夜の闇に潜む一撃・d12377)が、船首に立つ。同時に船から撃ち込まれる、銃弾の雨。その銃弾を見極めながら、文が言った。
    「……あそこの――」
    「任せとけ」
     その瞬間、甲板を蹴って跳んだのはヘイズ・フォルク(青空のツバメ・d31821)だ。一般兵に紛れていたアンデッド兵を文の警告で見抜き、雷華禍月の柄へと手を伸ばす。
    「さぁ、禍月。存分に敵を切り裂き、糧としろっ!」
     ザン! と居合いの一閃でアンデッド兵の脇腹を斬り裂き、ヘイズは止まる事無く敵艦の甲板を駆けた。銃口を向けられるものの、銃弾が放たれた時にはヘイズの姿はもうそこには無い。
    「こっちだよっと!」
     敵艦の手すりにダイダロスベルトを絡ませ、神之遊・水海(宇宙海賊うなぎパイ・d25147)が大きく跳躍。クルリ、と空中で一回転、甲板の上に着地した。
    (「苛烈な戦場の気配に内なるダークネスがざわつく……だけど、これには頼らずに勝ってみせるの!」)
     決意と共に、水海は迫るアンデッド兵にレイザースラストを射出する。その直後、ダグラスの声が響いた。
    「――飛び乗れ!」
     敵艦が鈍い轟音と共に、大きく揺れる。それとほぼ同時、灼滅者達が甲板へと躍り出た。
    「退いて下さい!」
     実季の声に、兵士達に衝撃が走る。向かうべき敵に足が向かず、後退していく――それと入れ替わって前に出るのは、アンデッド兵達だ。
    「……ウチは……刃……貴様の闇……切り裂き……穿つ……刃……」
    「影よ光と共に在れ! ――大灼甲!」
     文が五連粉砕爪”アインハンダー”を構え、己の影から闇堕ち時の姿を呼び出し増加装甲としてまとった正流が炎の奔流と共に名乗った。
    「斬影輝神ギル・ガイア! 光臨!」
     それが正式な戦いの合図となり、彼等の増援阻止のための戦いが幕を開けた。


     蜜に群がるアリ――そう表現した瑞穂は、正しい。アッシュ・ランチャーへと挑んだ武蔵坂学園の生徒達は、好戦しているのだろう。だからこそ、アッシュ・ランチャーを助けるべく多くの戦力が密集していた。
    「まったく、キリがないわねぇ。弾がいくらあっても足りゃしないわぁ」
     長大なM37フェザーライト・カスタムを操り、瑞穂はアンデッド兵を精確に撃ち抜いていく。この混戦だ、10を数える増援阻止のチームが次々に敵艦を足止めしているのだから――。
    「だからこそ、抜けようって奴もいる。させねぇがな」
     ダグラスは言い捨て、混雑を抜けようとした船へと跳び乗った。迫る銃弾の雨、それを獣は掻い潜ると血の匂いのする笑みで言い捨てる。
    「普段しねえ真似してちとばかり肩凝っちまってるからな。今度はがっつり身体動かすとするか!」
     Harkenを構え、ダグラスは横一閃に振り抜く。それに合わせ、巨大な氷柱がアンデッド兵の胸を刺し貫いて、甲板へと叩き付けた。アンデッド兵は、それで怯まない。狙いもそこそこ、アサルトライフルによる射撃を放つのみだ。
    「……させない、よ……」
     その銃弾を体で受け止めたのは、文だ。銃弾の衝撃を無視して、文は両手を振るう――ズドン!! と胸元から伸びた無数の眼が描かれた布が射出、アンデッド兵の両肩を貫いた。
    「せいやっ!」
     そこへ、水海が神薙刃が風の刃を発動させる。手足を、胴体を、アンデッド兵は水海の神薙刃に飲み込まれ、四散した。
     ――乱戦。そう呼ぶのにふさわしい、混沌とした戦況だ。アンデッド兵達が、ボートや自力で海に飛び込み始めた頃には、もはや戦況を正確に把握出来る者などいなかった。
    「無双迅流の真髄は闘志にあり!」
     正流は叫びつつ炎を噴きながら前進、足場となったボートへと大剣を突き立てる。大剣はあっさりと、ボードの底へと届いた。穴から滲む海水が、瞬く間にボートを傾けていく。
     間隙を縫って、一台のボートが抜けていこうとした。それに、ヘイズが声を上げた。
    「俺を跳ばせ、全力でっ!」
    「――承知!」
     跳んだヘイズに、正流は破断の刃を横一閃に振りかぶる。振り回された破断の刃、その腹を足場に加速を得たヘイズはボートへと追いつき、雷華禍月の一閃を放った。
    「海の藻屑と消えろっ!」
     ボートごと断ち切る勢いで放たれたヘイズの居合いが、アンデッド兵を両断する。だが、残ったアンデッド兵がすばやく抜いたコンバットナイフでヘイズを狙い――ダン! と、その頭を撃ち抜かれた。
    「遅滞戦闘は狙撃手の得意とするところだ」
     ガシャン、とボルトアクションで魔弾を再装填。陽太が、冷たい視線で言い捨てる。自身は敵艦の上から動かなくていい。目に付く、魔弾が届く範囲を丁寧に掃討していけばいいのだ。
     そういう意味では、自分こそが要だ――その自負を持って、陽太は狙撃魔BarrettM99Mによる狙撃を続けていた。
    「的が逃げちゃダメですよ? 全部ブチ抜いてやりますから」
     実季は足元から伸ばした影の刃で、泳ぐアンデッド兵を狩っていく。数の少ない大物ではなく、数の多い雑魚こそ確実に――実季のこの判断は、この場合は正しい。海面に浮かぶアンデッド兵達の数は、それだけ多いのだ。
     この数が、もしもアッシュ・ランチャーの増援に至れば決戦中の仲間が危機に陥るのは間違いない。アッシュ・ランチャーの戦いに決着がつくまで、決して行かせる訳にはいかなかった。


    「産業廃棄物の海中投棄は違法なんだっけ? ま、少なくと健康的とは言い難いわね、連中」
    「そうも言っていられない状況だ」
     瑞穂が召喚した輝ける十字架から放たれる光線の雨と、魔弾を即座に入れ替え陽太が放ったフリージングデスの一撃が海面ごとアンデッド兵達を穿ち、凍てつかせていく。そこへ、水海と実季がガトリングガンを構えて言い放った。
    「蜂の巣にしちゃうよ!」
    「ここから先は立ち入り禁止ですよ」
     ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ! と銃弾が海面を撃ち無数の水柱が、立ち上がる。その一角が掃討される、しかし、その直後だ。一台のボートがそこへ滑り込み――その上に乗った人甲兵が、リップルバスターの円盤状のレーザーによって周囲を薙ぎ払った。
    「させない!」
     人甲兵へ挑みかかったのは、破断の刃をレーヴァテインの炎で包んだ正流だ。豪快な一撃を、人甲兵は分厚い装甲と質量で堪える――その頭上を取ったのは、文だ。
    「……人に仇なす……その絆……ここで断つ……よ……」
     月下鳳翼の車輪を高速回転、赤い羽根をまとわせ文はかかとを落とした。ボートがその衝撃で、大きく傾く。その隙をダグラスは、見逃さなかった。
    「そこから跳べ!」
     ダグラスの叫びに、正流と文が別のボートへとそれぞれ飛び乗る。それを見切って、ダグラスの蹴りがボートの縁を強打した。既にバランスを崩していたボートはその蹴りで豪快に回転、ひっくり返った。
     ドボォ! と大きな水音を立てて海に落ちる人甲兵に、ひっくり返ったボートに見事に着地したダグラスが、駄目押しとばかりオーラキャノンを叩き込んだ。
     その直後、ヒュゴォ! と海面に猛毒の旋風が巻き起こる――ヘイズのヴェノムゲイルだ。
    「まだまだいるな」
    「強敵に挑むのも良いが、全力で只管戦い続けるってのも悪かねえ。ましてや全方向からの襲撃と来たら、テメェを鍛えるにゃもってこいってなモンだぜ」
     ヘイズの言葉に、ダグラスは歯を剥いて不敵に言ってのける。疲労がない訳ではない、損耗も決して少なくない。それでもなお――いや、なお闘志が熱く燃え上がっているのだ。
     ――戦場は、膠着状態が続いていた。それはすなわち、増援阻止が成功している事を意味している。今もなお、武蔵坂学園の仲間達がアッシュ・ランチャーを追い込んでいる証拠だ。
    (「行ける――か?」)
     敵から視線を外さず、陽太はそう判断する。思考に留め、断言しないのは油断がないからだ。アッシュ・ランチャーが灼滅された、そう判断が出来るまで――数の上では、俄然こちらが不利なのだから。
    「本当、面倒くさいわー」
     瑞穂は、そう吐き捨てる。面倒くさい、身も蓋も無いがこれ以上なく現状を言い表している。救援に向かう敵の足を遅らせ、あるいは止める。それをどこまで続けられるかが、勝敗を決めるとはいえ、数が多すぎるのだ。
     それでも、アンデッド兵達を倒し終えた敵艦が増えれば、一般兵を操って船による足止めも行える。徐々に、本当に徐々にだが、戦況は灼滅者側に傾き始めていた。
    「……鋏の断ち方……挟む他に……ある」
     文がアンデッド兵に、血桜を突き立てる。閉じたままの胸まである両刃の鋏を、文が強引に足で開かせた。
    「……中から……開いて……断つ……」
     文字通り切り開かれたアンデッド兵が、崩れ落ちる。文は即座に再行動、五連粉砕爪”アインハンダー”の五本の杭を回転させ、人甲兵へと手刀のように突き刺した。
    「そこよ!」
     ガガン! と水海のレイザースラストが、人甲兵に突き刺さる。よろけた人甲兵へ、正流が破断の刃を振り上げて迫った。
    「無双迅流神技! 輝神断罪剣!」
     その刃の銘にあるように、正流の大上段による渾身の一撃が3メートルある人甲兵を縦に破断した。ボトボト! と二つになって海に落ちる人甲兵の残骸。そこに、海の中からアンデッド兵が躍り出た。振るわれるナイフ、しかし、それは正流へと届かない!
    「海上で近接ができないと思ったか? まぬけがっ!」
     海上を滑るように跳んだヘイズの赤い斬撃が、アンデッド兵の首を飛ばして切り倒した。ヘイズはそのまま、別の船へと到達する。
    「まだまだ、です!」
     泳ぐアンデッド兵達へ、沈んだボートの欠片を足場に跳ぶ実季がガンナイフの乱射で撃ち落としていく。その傍らで、一体の人甲兵と向き合っていたダグラスが、呼吸を整えた。
    「――獲るぞ」
     ダン! とダグラスが跳躍。人甲兵は、それを簡素なマニュピレーターによる殴打で迎撃しようとするが、陽太の炎の魔弾による狙撃に大きく体勢を崩した。
    「頼む」
    「よろしくね~」
     次の標的を捜す陽太と、瑞穂のバスタービームによる援護を受けてダグラスが破邪の光を宿したHarkenを横一閃に振り払った。
     ザン! と人甲兵の胴が横に両断され、崩れ落ちる。その動きのままダグラスが駆け出そうとして、不意に足を止めた。
     視界の端で、陽太がAnti-Materiel-Rifle 《BarrettM99M》の銃口を下げたからだ。それを皮切りに、水海と瑞穂も気づいた。
    「アンデッド達の動きが止まったわね」
    「そうみたいねぇ」
     増援に向かおうとしていた敵の動きが、止まっているのだ。それはアンデッド達の主である、アッシュ・ランチャーが倒れたのだと予感させるのに十分な光景だった……。


    「これで、帰りに沖縄観光ができますね」
     そんな想いを胸に秘めていた実季は、しかし、小さなため息をこぼす。
    「……その前に、処理をしないとですが」
     実季の言う通り、動きは止まってもアンデッド達を処理しなくてはならない。その労力を考えれば、ため息の一つも出るというものだ。
    「さすがに、この量を不法投棄はまずいわよね~」
    「そうだね、最後まで始末をつけよう」
     瑞穂のぼやきに、まだフードを被って終わらせる訳にはいかないと陽太はAnti-Materiel-Rifle 《BarrettM99M》に魔弾を装填する。
     アッシュ・ランチャーとの艦隊戦、それを完全に終わらせるための処置を灼滅者達は行なうために動き出した。手間のかかるこの処理さえ終えてしまえば、この戦いは本当の意味で終わりを告げる。
     沖縄を狙ったアッシュ・ランチャーを灼滅する、武蔵坂学園の勝利によってこの戦いは幕を閉じた……。

    作者:波多野志郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年5月18日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
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