繰り返す惨劇の夜

    作者:ライ麦

    「諸君、事件だ」
     インバネスコートに鹿撃ち帽。手には虫眼鏡と、どこかの探偵を思わせる格好をした野々宮・迷宵(高校生エクスブレイン・dn0203)が短く告げる。
    「ラジオウェーブによるラジオ放送によって、その放送通りの都市伝説が生まれていることは、皆も知っているね? 実は、真柴・櫟(シャンパンレインズ・d28302)君からの情報を元に調査してみたところ、本当に彼が予測した通りのラジオ放送が確認されたんだ」
     まずは、その放送内容を聞いて欲しい。そう前置きして、迷宵は語り始めた。

     それは、さる富豪の別荘である洋館で起きた。富豪の娘の婚約発表会を兼ねたパーティが行われた夜、娘の婚約者を含む招待客が次々に殺されたのだ。婚約者は大広間でのパーティの最中に毒を盛られ、ある招待客は一階のトイレで絞殺され、またある招待客は部屋で撲殺され、ある招待客は二階の廊下で刺されて殺された。遺体を発見した屋敷の者達は震えあがる。連続殺人事件の残虐さは勿論のこと、何よりも恐ろしいのは当時、洋館が密室状態にあったことだった。戸締りはきちんとされていたし、洋館自体、断崖絶壁の上に建てられていて、到底誰かが侵入できそうではなかった。ということはつまり、当時洋館にいた誰かが犯人ということになる。富豪の家族か、パーティに招かれていた誰かか、使用人か……。状況は様々な憶測を呼んだ。婚約者を始め、殺された招待客は皆、娘の花婿候補だったため、花婿の座を争った招待客達が互いに殺し合った説、実は誰とも結婚したくなかった娘が凶行に及んだ説、密かに娘に想いを寄せていた使用人が殺した説、あるいは二人の共犯説。富豪のことを快く思っていなかった招待客が富豪への腹いせに殺害した説から、はたまた洋館に住まうという幽霊が殺したという突飛な説まで。
     だが、様々な憶測が流れはしたものの、結局事件は解決されないままに終わった。捜査が突然打ち切られたのだ。そのこともまた、様々な噂を呼ぶ。身内が犯人だったため、富豪が家の名を汚さないために真相を秘匿しただの、いくら調べても犯人が分からない、不可解な事件だったために捜査が打ち切られただの。だが、いずれにしても確かなのは、『犯人が捕まっていない』ことだった。事件のせいなのか、富豪はやがて没落し、手放した洋館も殺人事件のせいで買い手がつかず、廃墟と化した。荒れ果てた洋館を見た人々はやがて、口々に噂するようになる。犯人は未だにあの洋館に居て、凶行を繰り返しているのではないかと。そして、実際に面白半分で忍び込んだ若者のグループが、まるでかつての事件を再現するかのように殺された――。

    「――放送内容は以上だ。つまり、このままでは洋館に訪れた若者グループが話通りに殺されてしまう。尤も、幸いにして事件はまだ起こっていないがね」
     それも、赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)君の調査のおかげだと迷宵は言う。彼の調査によって、都市伝説を発生させるラジオ放送を突き止め、ラジオ電波の影響によって都市伝説が発生する前に、その情報を得る事ができるようになったからだと。
    「だが、放置しておけば、必ずや都市伝説『犯人』は殺人を犯すだろう……その前に君達には『犯人』を倒し、事件を未然に防いでもらいたい」
     よろしく頼むと、迷宵は頭を下げた。
    「都市伝説『犯人』は夜に、誰かが殺人事件の現場となった『大広間』『一階のトイレ』『二階の客間』『二階の廊下』のいずれかで一人にならないと、姿を現さないようだ」
     つまり、誰かが囮になって『犯人』をおびき寄せる必要がある。なお、同時に複数人で条件を満たした場合(例えば誰かが大広間で一人になり、さらに同時に別の人が廊下でも一人きりになった場合など)は、そのうちの誰かの元にランダムで現れる。事件の真相は分かっていないが、都市伝説としての『犯人』は一体であるため、同時に複数の場所に出現することはないようだ。
    「いずれにしろ、『犯人』は、一人になった人物を元となった事件の通りに殺そうとするだろう。都市伝説が出現し次第、仲間が駆けつけられる状態にしておいた方がいいだろうね」
     『犯人』はラジオ放送から推察するに、元となった事件と同じ殺害方法で攻撃してくるだろうと迷宵は言う。
    「つまり、『毒殺』ならば毒を投与し、『絞殺』ならば紐で絞めつける、『撲殺』ならば鈍器で殴りつける、『刺殺』ならば刃物で刺す、といった具合にね。他、闇に紛れることで自らを回復させたりもできるようだ」
     『犯人』は囮となった人物を優先的に狙いはするが絶対ではなく、状況に応じて臨機応変に攻撃する相手を選ぶ。その命中精度も高いらしい。
     ただし、これらはあくまでラジオ放送の情報から類推される能力である為、可能性は低いが、予測を上回る能力を持つ可能性もある。念のために注意して欲しいと迷宵は告げた。
     ちなみに、と迷宵はつけ加える。
    「元となった連続殺人事件だが、実際に起きたのかどうかは実のところ、分からないんだ。あるいは元となった事件自体、作り話なのかもしれないしそうではないのかもしれない……どちらにしても、事件の真相は分からずじまいだ」
     それでも。その事件を元にして生まれた都市伝説の事件なら解決することができる。
    「君達ならば、必ずや『犯人』を倒し、事件を解決に導いてくれると信じているよ」
     そう微笑んで、迷宵は灼滅者達を洋館へと送り出した。


    参加者
    羽柴・陽桜(ねがいうた・d01490)
    花凪・颯音(花葬ラメント・d02106)
    高麗川・八王子(KST634初期メンバー・d02681)
    冠木・ゆい(ポルトボヌール・d25508)
    天華・涼風(あまつかぜ・d26495)
    真柴・櫟(シャンパンレインズ・d28302)
    水燈・紗夜(月蝕回帰・d36910)
    高城・牡丹(高校生七不思議使い・d37764)

    ■リプレイ

    ●惨劇の幕が上がる
     据え置きランプに照らされたその女性の顔は、不安な色に満ちていた。
    「……『招待状』が届いたから来たのだけど……差出人、『H』って、一体誰なの……?」
     そう零す女性――冠木・ゆい(ポルトボヌール・d25508)(19)の手には、『必ずお越しください Hより』と書かれた招待状が。
    「H……H……誰かのイニシャル……? わ、私じゃないでち!」
     豪奢な縦ロールの美少女、高麗川・八王子(KST634初期メンバー・d02681)(11)が慌てて首を振る。
    「でも、普通に考えれば、送ってきたのはこの館の主人さんなのでは?」
     高城・牡丹(高校生七不思議使い・d37764)(15)が問うが、館の主人の娘らしい黒髪の少女――水燈・紗夜(月蝕回帰・d36910)(16)はかぶりを振った。
    「お父様なら、送ってないはずですわ」
    「……ということは、つまり」
    「いるんでしょ。俺達に招待状なんか出した黒幕が、この中に」
     良家の子息らしい金髪の青年、真柴・櫟(シャンパンレインズ・d28302)(19)が淡々と述べる。その言葉に、一同の不安は一気に高まった。口々に「私じゃない」「俺じゃない」と声が上がる中、花凪・颯音(花葬ラメント・d02106)(19)はポツリ呟く。
    「俺達はまだ知らなかったんだ、この屋敷で起こる惨劇を……」
     水を打ったように静まる空気の中、颯音は続けてニカッと笑って言った。
    「……ってナレーション流したくなりますね!」
    「もう、縁起でもないこと言わないでくださいよ~」
     牡丹は笑って流そうとするが、場の雰囲気は重苦しいままだ。
    「どういうこと……まさか、『あの人』が……」
     ふと、ゆいが意味深に呟く。
    「『あの人』……って?」
     八王子の問いに、ゆいははっとしたように首を振った。
    「ううん、なんでもないの」
     明らかに何か知ってそうな感じだが。八王子がそれ以上何か尋ねる前に、羽柴・陽桜(ねがいうた・d01490)(14)がそれを遮った。
    「誰が出したかとか、そんなことはどうでもいいんです」
     その目は真っすぐに紗夜を睨みつけている。
    「あたしは絶対認めません! いいとこの娘だか何だかしらないけど、殺してでも結婚やめさせてやります!」
     どうやら、バツイチ子持ちの父親の代理でここに来たらしい。しかしどうやら父親と館の娘との結婚を快く思っていないようで。据わった瞳でそう言う彼女に、紗夜は面白そうに口角を上げた。
    「へぇ……君が『私』を殺してくれるのかい?」
    「娘さん……?」
     何かキャラ変わってませんか、と心配そうに尋ねる牡丹に、紗夜ははっとして。
    「……いえ、なんでもありません……少し疲れてしまったので、一人にさせてください」
     と立ち上がる。
    「逃げるんですか」
     睨む陽桜に、
    「休ませてもらうだけです、失礼します」
     紗夜は一礼して部屋を出ていく。
    「俺も部屋で休ませてもらう」
     険悪な雰囲気に耐えかねたか、櫟も立ち上がった。傍らに控えていた燕尾服の男性、天華・涼風(あまつかぜ・d26495)(19)が気がかりそうに声を掛ける。
    「しかし、櫟坊ちゃま……」
    「うるさいな、こんなとこにいられるか」
     見事な死亡フラグを立てて出ていく櫟を不安そうな眼差しで見送りながら、ゆいは呟く。
    「一体何が起きてるの? こんな所、来なければ良かった……!」
     わっと顔を覆って泣き出す彼女の背中を、心配そうに牡丹が擦る。八王子も困ったように眉根を寄せていた。
    「やっぱり、はおちにはチンプンカンプン……どうしたら良いでちか?」
     とりあえずこの状況で一人にはなりたくないと、3人で固まる。一方、陽桜は連れてきた犬と一緒に、娘を探して館内をうろうろしていた。
    「許さない……絶対に見つけ出してやるのです」
     呟く彼女の手には、いかにもな果物ナイフが。不穏な行動をしだす陽桜を尻目に、櫟と、それについてきた颯音と涼風は客間前でちょっとした押し問答を繰り広げていた。
    「おい、なんでついてくるんだよ」
    「使用人は主人に付き従うものですから」
    「そうそう! それに、櫟君の雄姿、彼女さんに伝えないと……ちょ、冗談だってその拳は降ろして!」
     揶揄う二人に、櫟は振り上げた拳を降ろしてため息をついた。
    「もういい、俺は部屋で休むから……絶対に入ってくるなよ」
    「はいはーい、邪魔にならない程度に見守ってまっす!」
    「何かありましたらすぐにお呼びつけくださいませ」
     相変わらず揶揄う調子の二人に、櫟はこめかみを押さえつつ、客間に入った。そこで一人、持参したランタンの灯りで本を読みながら物思いに耽る。
    (「犯人はまだ花婿候補を探してるのかな」)
     一方の娘……紗夜もまた、大広間で一人。椅子に座ってぽつねんと物思いに耽っていた。
    (「『私』はそうであれと道を歩まされて来たけれど、ある出来事と、告げられた言葉が……それに耐える事を出来なくさせた。レールに敷かれた道を歩くお嬢様では、どうしてもいられなくなった。その時『私』は『僕』になったんだ。だから『僕』はその状況を打開する為に……」)
     ……そして。

    ●虚構と真実
    「くっ……」
     毒のカプセルを受けて蹲った紗夜が、目の前の『犯人』を睨みつける。暗闇の中で、その『犯人』はせせら笑っていた。
    (「見事に釣られたね」)
     睨む目線はそのままに、紗夜はフッと笑みを浮かべる。そう、今までのは全て都市伝説をおびき出すの、とは関係なしに遊びでやってたお芝居である。特定の場所で一人で居さえすれば都市伝説は現れるし。それらしい舞台と犯人揃ってたら殺人事件劇っぽい事して遊んでみるのはお約束だよね♪ ということで。だから紗夜の百物語と陽桜のサウンドシャッターで洋館からの人払いはバッチリだし、怪しい『招待状』は自作だし、陽桜はバツイチ子持ちの娘じゃないし、涼風は使用人どころか、自身に付き人がいるほどのぼんぼんだし。
    (「尤も、僕の過去は殆どそのままだけどね」)
     打開の先の事実は家出。そして今に繋がっている――。少しだけ過去に想いを馳せ、紗夜は武器を構えた。
    「おやおや、役は此処までだね」
     冷気のつららを撃ち出し、『犯人』を凍り付かせる。後は仲間に連絡――しかし、思えばこちらに現れた場合、仲間に連絡する方法をはっきり決めていなかった。
    (「僕としたことが、少し役に入り込み過ぎたかな」)
     今回の場に上手くハマる事だったし。少しだけ後悔を覚えつつ、とりあえず役に沿って「キャーッ! だれかー!」とか叫んでみる。
    「くっ、どこに隠れたんですか、隠れても無駄で……はっ!」
     役になりきって娘を探していた陽桜がその声に気付いた。急ぎ素に戻り、携帯で他の仲間に連絡の上、声がした方に駈け出す。陽桜の連絡を受けて、他の仲間も大広間に向かって走り出した。
    「仮面車掌・八高レディ、定刻通りただいま到着♪」
     スタイリッシュモードで変身した八王子が、名乗りを上げながら合流する。息を切らしながら合流した牡丹は、持参した懐中電灯の灯りを『犯人』に向けてみた。鈍器で紗夜を殴りつけていた『犯人』がギラリとした瞳でこちらを見る。
    「うわ、本当にアレな感じで黒いし目だけ見える~」
     駆けつけた颯音がうわ~、と感想を漏らす。
    「まさかお前が犯人だったとはね……」
     ついで合流した櫟がランタンで照らし……たのは涼風だった。
    「な……何をおっしゃっているのですか、櫟坊ちゃま……」
     涼風が動揺する。
    「えっ、犯人は涼風さん??」
     武器を構えたまま、八王子は目を白黒させる。たまらず、ゆいは叫んだ。
    「私、本当は知ってる……知ってるからここに来たんだよ。あの日……あなたが花嫁を自由にする為に全てを壊すと決意した事を……でもまさかこんな事に……真実はなんて残酷なの!」
    「な……なんだってー!?」
     驚愕に目を見開く颯音。カシャーンと音を立てて果物ナイフが落ちた。
    「そんな……そんなことって……あたし、なんてことを……」
     わなわなと震えながら、陽桜は口元を押さえる。
    「そうか、君が『私』を解放してくれようとしていたんだね……」
     せっかくだから乗ってみる紗夜。……目の前に本物の『犯人』がいるのに、櫟の一言でまた茶番が始まってしまった。あっけにとられている犯人。
    (「普段めっちゃクールだけど実はノリが良いよね、櫟君」)
     思わず笑ってしまう颯音。
    「あれ、これって使用人の人が犯人だった流れ……?」
     首を傾げる牡丹。
    「……いや、犯人は俺だよ!」
     我に返った犯人が突っ込む。オチまで待っててくれる犯人、意外とやさしい。
    「くそ、今から本物の殺人ショーを見せてやる!」
     半ばヤケクソ気味に見えない紐で紗夜を『絞殺』しようとする犯人だが、櫟がそれを庇って遮る。
    「残念、もう俺達の手の内だね」
    「もう事件は終わりにしよう?」
     ゆいも紗夜を祭霊光で癒し、
    「元の事件も不可解乍らどろどろしていそう……真実は果たして……と過去に想いを馳せるのは程々に、今の惨劇をさくっと止めるとしましょうか!」
     颯音はしなやかな黒猫を思わせるファーブーツで飛び蹴りをかます。
    「……犯人を返り討ちにするのって、よくある被害者・犯人逆転トリックみたいだね。証拠は残さず完全犯罪にして帰ろうか」
     淡々と言う櫟が、サイキックソードで犯人を斬り裂いた。イツツバが拳銃を手に霊撃で応戦する中、櫟は使用人設定を良い事に涼風に命令してみる。
    「ねぇ使用人、早く回復して」
    「仰せのとおりに」
     くすりと笑い、涼風は指先に集めた霊力を櫟に撃ち出して回復する。相変わらず食えない奴だ、と櫟は肩を竦めた。シュトラが光らせたリングの加護を受け、陽桜はあまおとと共に鬼神変で殴りかかる。
    「僕の綺瞑も君の見えない紐に負けず劣らずだと思うんだ」
     試してみるかい? と不敵に笑い、紗夜は高速で鋼糸「綺瞑」を操って犯人を斬り裂いた。その間に八王子は己に絶対不敗の暗示をかけ、牡丹は高純度に詠唱圧縮された「魔法の矢」で犯人を貫く。

    ●そして終焉へ
     まだ標的を殺すのは諦めていない犯人が、再び紗夜に向かって毒を仕込んだカプセルを投げつけた。しかしそれはあまおとに庇われ、届かない。ゆいが『殺人事件注意』の黄色標識で前列に耐性を与えたのを切欠のように、皆で犯人を集中砲火する。
    「毒をもって毒を制す? 違う?」
     首を捻りながら、牡丹は七不思議の怪談を語り、颯音が優美な曲線を描く真白の葬槍で犯人を穿ち、櫟は寄生体を派手に蠢かせつつDESアシッドで装甲を腐食させる。続くイツツバの霊障波。涼風が炎を纏った蹴りを放てば、シュトラは合わせるように肉球パンチを喰らわせる。
    「謎解きは大人のみなさんに任せるでち! 力仕事は、はおちにお任せ♪」
     ウインクした八王子が、力一杯「電車斬り」という名の戦艦斬りを叩きつけた。
    「くそ、このままやられたら俺の犯人としてのメンツが」
     集中攻撃喰らった犯人は、脂汗をかきつつ闇に紛れる。そこに陽桜は容赦なく、桜咲く十字架から光の砲弾を浴びせかけた。
    「犯人が探偵を殺そうとして返り討ちに遭うのもお約束ですから!」
     そうだよね、とちょっとだけ犯人が可哀そうになりつつも、ゆいはそっと縛霊撃で犯人を縛り上げる。そこに八王子は得意の青春18キックを叩き込んだ。
    「若い頃……というか犯罪を犯す前の純粋な思い出を胸に蘇らせ昇天してください! 青春18キック!!」
    「まだ殺してねぇよ!!」
     ツッコミながら吹っ飛ぶ犯人。そろそろ限界も近そうだと、紗夜は都市伝説『紙カルテ』を語る。犯人に執着し、貼り付く紙カルテの怪談。
    「さて、都市伝説君の死因はカルテになんて書かれるだろうね?」
     楽しげに笑う紗夜。
    「嫌だぁ! 誰も殺さずに死ぬとか嫌だぁ!」
     せめてひとりでも道連れに、と犯人は最後の力を振り絞って紗夜をめった刺しにしようとするが、シュトラに阻止された。
    「ごめんね」
     涼風のスターゲイザーが、犯人の機動力を奪う。続く櫟が、十字架戦闘術で犯人をボコボコにして足止め。今だ、と颯音は激しく渦巻く風の刃を犯人に向かってシュート!
    「いっけぇー!」
    「うぼぁー!?」
     避けられなかった犯人は、風の刃に斬り裂かれて消滅した。これで事件は解決。もうどっちが犯人か分からないが。

    ●真実のその先は
     事件解決後、ゆいはそっと供花して祈る。そして皆に向き直った。
    「お疲れ様! みんなの演技もすごかったね」
    「ええ、演技するのも面白かったですね♪ 探偵役はいませんでしたけど……」
     いたとしたら誰かなぁ、と陽桜は首を捻る。
    「少なくとも花凪は被害者だろうね。はしゃぎすぎてうっかり真相知って殺されるタイプ」
     演技の時の意趣返しに、櫟が颯音をイジれば、
    「その期待に応えて惨劇を偶然見ちゃいましたみたいなノリで皆に知らせたかったんだけどねー、犯人こっち来なくてちょっと残念」
     颯音は少々大げさに肩を竦めた。
    「自覚はあるのかよ」
     櫟のツッコミを聞きながら、牡丹は推理を巡らせる。
    「私がもし探偵役なら? 犯人は富豪自身だったとかかな。本当は娘を誰にも渡したくなくて……みたいな。う~ん……やっぱり推理は苦手だな」
     自身の推理に自信が持てず、軽く頭を振る牡丹。代って涼風が推理、というか願望を語る。
    「使用人を演じてみたから、じゃないけど、俺はそうであってほしいなと少しだけ思った。殺人を犯すほどの愛って少しだけ夢があるなあって」
     実際、茶番では偶然にもそんな感じの流れになってたが。本当のところは分からない。
    「連続殺人のリスク以上のメリットって、犯人像を誤認させられる事だよね。被害者を特定個人でなく『花婿候補』って属性に意識付ける目眩ましのつもりなら、婚約に動機が起因せず、屋敷中で犯行に及べる程内情に詳しい者が……なんて」
     櫟も顎に手を当てて考え込みながら推理を語る。八王子はううう~、と頭を抱えた。
    「さっぱり分からない……難しいことを考えるのは苦手でち!」
     最終的に投げた八王子。牡丹も、
    「想像すればするほど犯人が増えていく……犯人は私、もしくは他の誰かだったのかな。可能性はゼロじゃないよね。はは、悩みだしたらきりがないね」
     ちょっと怖い事言いながら、軽く笑う。
    「でも、真実は謎のままでも、犯人はもういない……これで安心できる、かな?」
     皆を安堵させるように、ゆいは花のような笑顔を浮かべた。
    「そうだね。そして誰もいなくなる……」
     紗夜の一言に、一同は一瞬ぎょっとしたように彼女を見た。その視線に、紗夜は笑いながら言う。
    「ああ、だって僕らはこの場には留まらないから。そういう意味さ」
     なあんだ、と笑いながら、一行は洋館を後にする。
     そして、血塗られた洋館には誰もいなくなった。犯人も、誰も。

    作者:ライ麦 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年6月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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