運動会2017~舞いあがれ! 風船拾い競争!

    作者:那珂川未来

    ●今年もあるよ! 運動会!
     今年の武蔵坂の運動会は、6月11日に開催されます。
     組連合ごとに集まった生徒たちが一丸となって競い合い、優勝を目指す。
     勝っても負けても、楽しかったと思えるように。正々堂々戦い抜いて、学園の皆で一つの思い出を作り上げていこう!

    ●新競技、ゴミ拾い競争ならぬ、風船拾い競争!
     今年は何に出ようか。競技種目が書かれたプリントを見ながら、あれこれ考えるのも運動会の楽しみの一つ。
    「パン食い競争や、騎馬戦、おなじみのMUSASHIのほかに風船拾い競争っていうのが今年追加されたわけなんだけれども」
    「風船拾い競争ですか! なんかふわふわしているものを追いかけるのも面白そうですよねー」
     仙景・沙汰(大学生エクスブレイン・dn0101)からエントリー募集の紙を受け取ったレキ・アヌン(冥府の髭・dn0073)は、ちょっとこれ面白そうと目を輝かせて。
     ――そもそも風船拾い競争とは。
     変わり種の種目であるが、所謂ゴミ拾い競争とルールは大体は同じである。グラウンドに散らばった風船は状態によって点数が決まっており、拾った風船の点数が高い人が勝ちである。
     ふわふわとグラウンドの上を彷徨う風船を捕まえるのは、人が群がればその人の流れによって起きる気流で舞い上がったりして案外大変だが、そんなふわふわしているものを追いかけるのも楽しい。物によってはわんこやにゃんこ風船とかナノナノ風船があり、ノーマル風船以外はちょっと点数が高いので狙う価値はある。しかし数は多くないので、逆にノーマル風船を狙う方が数が拾えるかもしれない。
     そして、ここが武蔵坂学園らしさともいえようか、単純に拾うのでは面白くないということで、特殊なルールが設けられている。
     風船割り競争と似ているが、敢えて拾われる前に割ることによって相手連合の邪魔も可能だ。割れた風船は一律一点で計算されるため、奪われるまえに敢えて風船をヒップドロップやらフライングボディーアタックで割るとか、そんな妨害行為も可能。
     ただし、当然ながらサイキックやESP、サーヴァントを利用することは不可だ。もちろん相手がすでに拾ったもを割るのも禁止である。
    「僕、にゃんこ風船あるならついそれを追いかけちゃいそうですっ」
    「ゲット間近で割られないように注意してね」
     きっとレキなら、割れた風船を前に打ちひしがれている図が想像出来ちゃうから。すでにルンルンしているレキへ、沙汰は笑いながら注意促しつつ。
     友達と競ったり、協力したり、やりようによっては面白い事になりそうな気がしないでもないこの風船拾い競争。
     年に一度の運動会だから、もちろん優勝目指し、そして楽しめるように。
    「ね、よかったらキミも一緒にやってみようよっ」
     レキはにぱっと笑った。


    ■リプレイ


     今年も晴天に恵まれた澄み渡る空。
     グラウンドには、色とりどりの風船がふわふわと用意されている。
     普通の丸い風船はもちろん、にゃんこやわんこ、それにナノナノの形をした風船も、ふわふわと漂っている。その様は、まるでこの競技を楽しんでいるかのよう。
    「かわいいの何個ひろえたか、競争してみる? ヤナが勝ったら、ごはんおごって」
     そう、夜奈がにっこり微笑めば。
    「競争どんとこい! 負けないし手加減しないし! それじゃー私が勝ったらパンケーキな!」
     祝はそれに乗ったと言わんばかりに、かわいい風船に狙いを定めて。
     【Cc】の4人も集まり、ふわふわ浮かぶ風船を見つめている。
    「ふわふわの風船……集めたい。……ゲーンズボロは、何狙い?」
     サズヤがさり気なく隣のシェリーに尋ねると。
    「わたしはナノナノ風船を、いっぱい集めるの。……はっ、サズヤの質問が自然過ぎて、思わず情報漏らしちゃった!」
     でも負けないよというのも忘れない。そんな二人の様子を、依子は微笑ましく見つめて。
    「サズヤ君、気合十分ですね。さて、互いの健闘祈って、えいえいおーと行きましょうか?」
    「はい! やるからには、負けないこころで挑むのです! えいえい、おー!」
     昭子も気合十分。4人は顔を見合わせ、その拳を空に掲げた。


     いよいよ準備も整い、ぱーんとスタートの合図音が鳴り響いた。
     アヅマは風船の密集している場所……ではなく、人の少ない場所を狙って駆け出し。
    (「人が集まると数を狙い難いし、妨害があると尚更面倒だからな」)
     どうやら、アヅマは質よりも量を取るよう。取りやすい風船を一気に自分の籠へと放り込んで。
     【なりクラ】もすぐさま、行動に。
    「一個でも多く集めなきゃ……がんばろーね、黒木さん」
    「頑張りましょうっ!」
     シャオがそう声をかければ、闇霧も元気よく返して。さっそく二人は風船を囲い始めて、回収役のミサがその中に入り、風船を取っていく。
    「童心に返る思いですね。……もう少し殺伐としてなければですけど」
     そうミサがわんこ風船に手を伸ばした時。
    「あぶねっ!」
     一番最初に外からの妨害を阻止したのは、葉月。続いてもう一つの風船も割れる。
    「割るのは得意なのですよ。高得点風船、ことごとく台無しにしてあげるので覚悟してくださいね?」
     望も負けじと体を使って、妨害してくる参加者を防いで。
     ある程度、囲み内の風船を取ったのを確認したノルディアが声をかける。
    「葉月さん、風船処理をお願いします! ……ふふ、何をする気ですか?」
     ぱんと風船が弾けて、ミサが驚きその場でフリーズ。
    「焦らなくても大丈夫ですよ、ミサさん♪ 絶対に守りますから」
    「あわわ、す、すみません! ありがとうございます、ノルディアさん」
     そう声をかけられ、何とかミサも回収へと戻れた様子。
     ちなみに葉月、望、ノルディアは妨害を阻止して、回収していく仲間を守る役目を担当。
     このように彼らは、それぞれ役割分担し、着実に風船をゲットする作戦を立てていた。
     エアンと百花は、沙汰を誘い3人チームで参加。
     夢中で拾っている百花の前に、誰かの手が見えた……気がした。
    「ももひっぷ・あたーっく!」
     百花はそれを阻止するために、迫力のある攻撃!
     しかし、誰かの手だと思ったものは、よくみるとにゃんこ風船の耳!?
    「ももっ!!」
     それを見ていたエアンが、取られないようにゃんこ風船を蹴り上げ、よろける百花を片手で支える。
    「えあんさん、ないすきゃっち……!」
    「うん、ナイスキャッチ」
     百花の手の中に納まった風船を見ながら、エアンは満足げな微笑みで頷いた。
    「風船がいっぱい飛んでいま……ふええっ!?」
     ふわふわと浮き上がる風船を見上げているうちに、フリルはぽてんと後ろにひっくり返って。
     その所為で、他の参加者よりも少し出遅れてしまった。しかし。
    「でも、皆さんから少し離れて見ると、狙いやすい風船とかも見えてきますね」
     取りやすい風船と、割れちゃって残されてる風船などをちゃっかり、フリルは楽し気に回収回収。
     移動する際の風圧を使い、風船を上手く誘導していくのは、サーシャと悠花のペア。
     その甲斐あってか、悠花は確実に風船の数を稼いでいるらしく。
    「そこの風船まてーっ……あれ?」
     サーシャの手が掴んだのは、ふんわりした風船ではなく、ふにゃんとした……。
    「……」
     悠花の胸。
    「あ、あはは……怒ってる?」
     未だ、その手を離さず、ふにふにとその感触を。
    「……とりあえず、2回目は確信犯ですね?」
     サーシャの頭を手が滑ったふりして、悠花はぺしぺしと叩きながら、お仕置きを開始した。
    (「くっ、ナノナノもわんこもにゃんこも可愛らしすぎるだろ!!」)
     心の中で悶えながら、悠はその瞳を輝かせて。
    「ならば、やることは一つ!」
     いつも一緒にいる相棒もとい、ナノナノにそっくり(だと思っている)風船をいち早くキャッチ。
    「ナノナノへの愛は、誰にも負けないッ!!」
     更なる愛(ナノナノ風船)を求めるために、次のターゲットに手を伸ばそうと。
     ぱあんという見事な音ともに、風船が割れた。何食わぬ顔をして妨害している夜奈の仕業のよう。
    「ッ……ナノナノォ~ッ!!」
     その悠の叫びはまるで、愛する相棒(ナノナノ)を失ったかの如く。と、目の前にふわりと舞い降りる天使こと、ナノナノ風船。それだけで、悠は復活を遂げた。マジで。
    「よっ、よっと」
     唯織は次々と目につく風船を手当たり次第、自分の籠へと入れていく。
    「塵も積もれば山となるってな」
     とにかく、数を稼ぐことに専念。そのため、籠の中の風船の数も徐々に増えてきている様子。
     風船集めに熱中するあまり、迫って来る影に気付かず。
     目の前にあった高得点風船が、勢いよく割れた。
    「うぉっ!? びっくりしたぁ」
    「油断してちゃだめだよー!」
     脱兎の如く逃げていくのは、祝。こちらもしっかり妨害して……あれ? 足が止まった?
    「うっわなんだこの絵面めっちゃかわいい! あああカメラないつらい!! みっちゃああああん白星の写真とっといてええええええ!!」
     夜奈の可愛らしい風船取りの姿を目にしてしまい、しばらく行動停止しちゃったようで。
     一方、【刹那の幻想曲】の面々も負けていない。
     高く飛びあがり、わんこ風船をキャッチして降りてくる空凛の姿は、誰が見ても見事ととしか言えなくて。
    「空凛さん、ホンマすっごいなぁ」
    「おおっ。黎明寺さんは動きが軽やかですごいです……」
     乃麻と薫らが思わず感嘆の声をあげた。その姿に奮い立ったゆまも目の前の風船に手を伸ばすものの。
    「何で逃げるの風船さんー! わたしのこと嫌いなのー?」
     と、ゆまの取り逃した風船を、空凛がキャッチ。
    「……大丈夫ですか?」
    「わあ、ありがとう! わたしも負けてられません」
     もう一度と目の前のわんこ風船を見つめて。
    「わんこさんを割るなんてできないよぅっ! 北條さーん!」
     思わず、薫にへるぷみー。
    「どうされました? 大丈夫ですか?」
    「だって……可愛くて割れないのですよぅ!」
     そういうゆまに乃麻も。
    「あ、ゆまさん、手伝うわー。このわんこ風船、可愛いなぁ」
     と手を伸ばすが、なかなか難しい様子。
    「ふわっ!? ……難しいなぁ、次はこれー!」
     運よく漂って来たナノナノ風船目掛けて飛び付く。果たして、乃麻は風船をゲットできるか!?
     体をめいっぱい広げて明は、その後ろで風船を集める紗里亜をガード。
    「うんうん、可愛いですね~♪」
     それを頼もしげに眺めながら、可愛い風船に思いをはせる。
     明もかなりの攻撃をさばいているのだが、やはり一人だけでは限界がある。
    「椎那、行ったぞ!」
    「わかりました! 一気に高得点ですよ♪」
     警告を受けて、紗里亜は風船めがけてダイビング! の、はずが。
    「きゃっ!!」
     バランスを崩してしまい、明の上に倒れ込んでしまった。
    「ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」
     慌てて立ち上がる紗里亜に明は。
    「……いや、うむ。特にどうという事はないよ」
     その言葉に紗里亜もホッとした様子を見せていた。
    (「心配してた引きこもってた間の体重増は、なかったみたいですね……」)
     こちらは再度、【Cc】の面々。
     所属する組連合はあまり一致していないが、楽しく競技に参加中。
    「これは私がもらいます」
     さっとサズヤの取ろうとした風船を依子は見事に奪っていく。
    「!? ……森田の跳躍は……犬変身仕込み?」
     思わずサズヤはそう呟いて。
    「そういえば、昭子とわたし、同じ連合だよね! 一緒に頑張って沢山風船集めようね」
     シェリーも嬉しそうにそう話しかける。昭子も頷き、話しかけようとしたその時。
    「あれは! そのナノナノ風船は渡しませ……」
    「昭子ちゃん、戦えて嬉しいですよ」
     二人同時に飛び付き……ぱんと割れてしまう。残念、割れた風船となって回収に。
     風船が密集したところで、ぼんと風船が跳ね上がる。
    「これ、もらってくよ」
     了の跳ね上げた風船は、見事、彼の手の中へ。
    「暑いのは苦手、だけど1分間なら頑張れる……かな?」
     タイムリミットまで、何とか全力で楽しもうと了は決めたようだ。
    「か、かわいいにゃんこ風船です……!」
     レキがにゃんこ風船に目を奪われているのに気付いた陽桜は、にこにこと。
    「レキちゃんもあれ、ゲットしたいです? それじゃあね、あたし、お手伝いしちゃうのですよ!」
     陽桜が守っている間に、レキは念願の風船をゲットして、ご満悦。
    「レキちゃん、一緒にがんばりましょー?」
    「はい、一緒に頑張りましょー!」
     笑顔で頷きあい、二人は協力しながら風船集めていく。
     ところで、【なりクラ】の面々はというと。
    「……ねこ」
     にゃんこ風船を追いかけて、シャオは円陣から少し離れてしまう。一緒に近くの風船を割りながら闇霧は。
    「妨害しまくっちゃいますよっ! ニヒヒ」
     と真顔でちょっぴり怖い雰囲気を漂わせていたが。
    「シャオさん! 円陣と合流しましょう! 残り30秒ですっ!」
     円陣から少し離れたシャオにそう声をかけた。
    「あ、そうだ時間……急がなきゃ、ひゃうっ!?」
     声掛けに我に返ったシャオが皆のいる所へと駆け出して、躓いて。
     だけど、地面にはぶつからなかった。
    「ほらー、気をつけろー、怪我はないか? まだ時間はあるから頑張ろうな」
     それに気づいた葉月がシャオを見事に抱きとめる。
    「うぅ……ごめんなさい貴夏さん」
     素直にシャオはそういって、頭を下げていた。
     残り30秒を切ったところで、回収組も風船回収に加わり、ラスト15秒になると、守備に専念していた者達も風船を集め始める。
     この切り替えも彼らの作戦の一つ。
    「ふふふ、これはこれで楽しいですね」
     ミサも移動する際に取れないと判断した風船を楽しげに割っているよう。

     ――ピピーーッ!
     競技終了の合図がグラウンドに鳴り響いた。
     長いようで短い競技も、これでおしまい。
     選手達はその手を止めて、たくさんの風船が入った籠を抱えて集まってくる。
     果たして、その結果はいかに――!?


     一人ずつ、特設本部で風船の数を数えて、得点を記録していく。
     結果が出るのに少し時間がかかってしまうが、これもまた許容範囲。
     それに、ワクワクが続くのも、それはそれで楽しみ。

     MVPを狙っていたアヅマと唯織は、一人でかなりの数を稼いでいたが、あと少し足りなかったらしく。それでも、上位に食い込む点数だった。
     ちなみにナノナノ風船を優先的に取っていた悠は一番、ナノナノ風船を取っていたのだが……その他の風船が少し足りなかった模様。
    「えあんさん、仙景さん! 何個拾えた? ももは、割れてない風船は8個で、割れちゃった風船は16個だったよ」
    「それは凄いね。こっちはまあまあってところかな? エアンほどじゃないよ」
     そう答える沙汰に、今度はエアンに視線が集まる。
    「ノーマル風船がちょっと多かっただけだよ。それと、ももは頑張ったね」
     エアンはそう微笑み、百花の頭をなでてあげた。
    「うううう、負けたーっ!」
     うずくまる祝に夜奈がやってくる。
    「でも、かわいい風船の数は同じだよ? だから、引き分け」
    「……いいの?」
     祝の言葉に夜奈はこくんと頷き。どうやら、互いに約束したものを奢り合うことで成立した様子。
     その中でも、やはり高得点をマークしたのは、【なりクラ】の……。
    「あれ? 足りなかったですか?」
     回収役のミサは、たびたびフリーズしたのがいけなかったのか、意外に個数は伸びなかった。
    「……それは本当か?」
     一方、信じられない様子で結果を聞いているのは、葉月。
     移動しながら、毎回いろんな風船を回収していたのが功を奏したようだ。
    「……凄いです、貴夏さん……!」
    「これは驚きました」
    「塵も積もれば山となる、若しくは、柔よく剛を制す?」
     【なりクラ】のメンバーが、驚きながらも嬉しそうに葉月を祝福している。
     見事、MVPに輝いた葉月へと盛大な拍手が送られ。
     激しくも楽しい風船拾い競技は、こうして幕を閉じたのだった。

    作者:那珂川未来 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年6月11日
    難度:簡単
    参加:28人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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