今年度の武蔵坂学園の運動会は6月11日。
今回も組連合ごとに力を合わせ、優勝目指して頑張りましょう!
「さすが武蔵坂学園、色々な競技がありますねー」
坂月・ルオ(中学生魔法使い・dn0247)が種目の掲示を眺めている。
「徒競走……は定番ですけど、これはただの徒競走じゃないみたいです」
ルオが目を止めたのは『おんぶ徒競走』。
2人1組、もしくはサーヴァントとペアになり、どちらかが相手をおんぶした状態で100メートルを走り抜く競技だ。
「抱っこもOKなんですね。ふふ、微笑ましい光景が見られそうです」
とはいえ、もし自分が誰かをおんぶして出場するとしたら、
「すごく、ゴールが遠そうです……」
運動会に向けて走り込みでもしようかな……と今さら思うルオだった。
というわけで、こちらの競技は『おんぶ』や『抱っこ』で参加する徒競走。
4〜6ペアが同時に100メートルを走り、最終的にMVPを決定します。
お姫様だっこはもちろん、肩車等も大丈夫。
愛情、友情、家族愛、サーヴァント愛、主従愛、師弟愛、雇用関係などなど、これを機会に深めてみませんか?
●
「えっ、そちらは参加の方ですよ?」
と言った北條・薫(炎の隣で煌めく星片翼・d11808)に、
「今年こそMVPを目指しますよ!」
熊谷・翔也(星に寄り添う炎片翼・d16435)が微笑み、
「もしかして去年と同じパターン……ひゃあああ!?」
薫を抱き上げた。
「しっかり抱き付いてくださいね」
「え、こう、ですか?」
薫、恥ずかしさのあまり翔也の首元に顔をうずめる。その耳元に、
「もっとぎゅーっと、ですよ」
「も、もっと、ですか?」
お姫様抱っこは慣れたもの。ゴールする頃には薫の顔は真っ赤、翔也はニコニコ。
「とっても楽しかったですね」
「はい、でも……あの、もうおろしてくださってもいいのですよ……というか、恥ずかしいのでおろしていただきたいです……」
「うふ、今日はヒナが貴方の王子様よ」
「うにゅ、じかん、です? うにゅ、あったかくて……ねむ、ねむ……」
周防・雛(少女グランギニョル・d00356)はエステル・アスピヴァーラ(おふとんつむり・d00821)をあやしながら可愛い寝顔にメロメロ。
「……にゅー……ゆさゆさ、なの、」
「あら、起きちゃった? もう競技は始まってましてよ」
「えすてる重くないです?」
「やだ、羽みたいに軽いわ♪ ついでにミルクの甘い匂いも……v」
「んっ、ひなちゃんもいい香りなのー」
2人で顔を近づけ合い、ラブラブでゴール。
「むぅ、ひなちゃん疲れてそうなの」
よつよつと手を伸ばすエステルに、息は上がっているものの雛は笑顔を向け、
「平気よ。2人きりの時間が作れて嬉しかったわ……v」
「んー、楽しかったの、ひなちゃんといっぱい遊べたのー」
エステルが雛のほっぺに、ちゅ。
「重くはありませんか?」
豊満さ故、マリィアンナ・ニソンテッタ(聖隷・d20808)が心配するが、
「この重さが俺に力をくれるんですよ。堂々と抱きしめられて最高です♪」
神田・熱志(ガッテンレッド・d01376)は満足そう。
とはいえ彼の負担を減らそうと、レース中色々頑張ってみるマリィアンナだったが、
「ごめんなさい、うまくいかなくて……」
心遣いに熱志は彼女を抱きしめて応え、安全第一で走りきった。
「ありがとうございました。最後までお連れ頂けて幸せです」
人前なのでキスは軽く。熱志は微笑み、
「まだですよ、これからもずっと一緒です♪」
もう1度抱きしめ、キスを返した。
初めての参加はボールを挟んで30cm、次は二人三脚。
「な、なんか年々密着度が上がってるんですが!」
ガッチガチの花園・桃香(はなびらひとひらり・d03239)と、
「それはアレだ、親密になって距離が近くなったってことでっ!」
平静を装いつつ内心バクバクの七瀬・遊(烈火戦刃・d00822)。
(「おんぶと迷ったけど、背中越しに当たると見えない分想像力が、」)
「遊さん?」
「……コホン。ん、まぁ、こーゆー競技なんだし桃香も腹を括れ!」
ひょいっと遊が桃香を抱き上げた。途端遊の感覚はたちまち桃香の体温や息遣い、柔らかさでいっぱいに。周りも気にならなくなってくるから不思議。
「……あれ? もうゴールですか……って、えぇぇ!?」
答えるより先に遊から、やっぱり意識の飛んでいた腕の中のお姫様へ目覚めのキス。
「な、なぜ、きゃあっ」
わたわた落ちかけた桃香だったが、勿論遊が落とすわけがなかった。
「その……わたし見た目より重いので辛かったら言ってくださいね」
皇樹・零桜奈(漆黒の天使・d08424)に鬼城・蒼香(青にして蒼雷・d00932)が言う。重さの原因は110cmに及ぶ胸なのは間違いなく。しかし零桜奈は、
「そうかな……? ……結構……軽いと思うけど……」
とはいえお姫様抱っこで走り始めたら胸が押し付けられて。気になりすぎて躓いた拍子、蒼香の体操服の下へ手がすべりこんでしまった上、思いきり胸を揉んでしまった。零桜奈はすぐに手を離し、
「ご……ごめん……」
「零桜奈くんこそ怪我はないですか?」
逆に気遣ってくれる蒼香に、零桜奈も改めてゴールまで集中。
「お疲れ様……大丈夫だった……?」
「はい。きつかったと思いますがありがとうございます♪」
「ん……こっちこそ……ありがとう……」
「緊張してる?」
「まぁ今年は承知の上で参加だから……恥ずかしくはあるけど……異論は無いわ」
照れるエリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)に彩瑠・さくらえ(幾望桜・d02131)はついくすりと笑みをこぼす。去年はまだ始まっていなかった2人。今年は結婚の約束も交わして。
「大丈夫、悪いようにはしないから」
大人しく抱き上げられるエリノア。が、
「なんて言いたいとこだけど……昨年と同じじゃつまらない、でしょ?」
主に僕が。付け加え、エリノアの頬に素早く口づけを落とす。
「さ、さくらえ、こんな人前で!? い、いくら頬でもっ!」
非難されてもなんのその、
「例によって、文句は全部後で聞いたげる」
「う、うぅ~! 言ったわね! 覚悟しておきなさいよ!」
「はいはい♪ ほら、ちゃんと掴まって?」
さくらえは速度を上げ、宝物の串刺し嬢と1位でゴール。
「重くないっすか?」
たずねた山田・菜々(家出娘・d12340)に清水・式(愛を止めないで・d13169)は横に首を振る。付き合って5年目、超絶ラブラブな2人。お姫様抱っこされた菜々はにっこり、
「期待してるっすよ」
とキス1つ。式は菜々が密着するようにして走り出す。好きな人に触れていられるって、とっても素敵で幸せな事だ。
「お疲れ様っす。ご褒美っすよ」
ゴールした後にも、2つ目のキス。
茶倉・紫月(影縫い・d35017)が神乃夜・柚羽(睡氷煉・d13017)を抱き上げる。恋仲ながら素直になれない柚羽はツンドラ極寒。暴れないといいけど、と紫月が思った瞬間、
「やっぱり無理です無理です無理ですーーー」
じたじたしだした柚羽を抱えてスタート。
「ゆーさん、危ないから、」
「無理ったら無理ですー!」
駄々をこねつつこれでも離さない辺り男の子って強い、なんて思う柚羽だったが、
「柚羽!」
動きが止まる。呼び捨てには弱い。その後は大人しくゴールまで運ばれた。
「お疲れ様。……ゆーさん?」
見れば、胸に顔を埋めた柚羽の耳が真っ赤。
「……ええと、降りたくない、です……顔見ないで欲しいので……」
紫月は微笑み、
(「ゆーさん、やっぱり可愛い」)
●
守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)と秦・明彦(白き雷・d33618)、葦原・統弥(黒曜の刃・d21438)と志穂崎・藍(蒼天の瞳・d22880)。探求部の仲間同士でエールを送り合ってから、先に出走の明彦が、結衣菜を抱き上げた。
結衣菜は負担が軽くなる様、首に手を回して体を密着。明彦、重さは苦にならないのだが、
「なんか良いなあ……」
結衣菜の柔らかさと温もりに顔が緩む。が、
「レースの為だからね! 真面目によろしくだよ!」
結衣菜の言葉に煩悩振り切ってスタート。
結衣菜が闇堕ちから戻ってきたからこそ思い出をまた作っていける。明彦は、1位目指して全力で走る。
「お疲れ様だよ。走っている姿、とっても格好良かったよ!」
結衣菜が言った。お姫様抱っこ終了は少し残念。明彦も結衣菜を抱きしめてからゆっくり下ろす。
結衣菜からのキスは、唇に。
「よろしくお願いします。ちょっと重いかもしれませんが……」
優しく抱き上げてくれた統弥に藍が言う。
(「うう、ダイエットすればよかったかな?」)
お姫様抱っこで走ってもらうのは気恥ずかしいような申し訳ないような。でも、
(「恋人同士だから甘えてもいいよね」)
とも。統弥にとっては藍は軽い位。そして間近の藍に改めて可愛いなあとつい見入ってしまったり。
統弥は前傾姿勢でスピードアップ。藍も呼吸を合わせてサポートする。
藍の想いと重いを受けて、自分の想いと力を重ね。統弥がテープを切った。
「お疲れ様でした。格好良かったですよ」
藍が統弥の頬にキス。
「ありがとう!」
統弥は笑顔で藍を抱きしめた。
「なぁ、勝てたらハンバーグ作ってや!」
「勿論。茶碗蒸しも付けましょう」
「おっしゃー!」
喜ぶ東当・悟(の身長はプラス三センチ・d00662)に若宮・想希(希望を想う・d01722)はふふと笑って、
「これでも筋トレしてきたんです。だらしない所は見せられませんからね?」
と肩車しようとした瞬間、
「俺はここやで!」
悟、足の指で肩をぐあしっと掴んで仁王立ち。腕を組んでドヤ!
暫く呆気にとられていた想希も思わず笑い出し、
「どうです? 俺の肩から見る眺めは」
「モチロンサイコーや!」
「信頼してますからね」
「当然や! いくでぇ、うおおお! ハンバーグぅぅぅ!」
抜群の安定感。想希も全速力。自分で立って並んで駆ける、
「それが俺らや!」
そして、
「ゴぉぉル! やったでー!」
悟は肩車になり想希の頭に抱きついた。
「やりましたね、悟! 悟……あの……」
想希は肩を回し、
「風呂上がりに肩……揉んでくれます?」
「えっ? そ、その……わたくし軽くはありませんよ?」
雪嶋・義人(雪のような白い餅をこの手に・d36295)に背中と足に手を添えられ、驚く姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)。
「大丈夫だよ。先輩の全部を抱えたいんだ」
お姫様抱っこした義人はにこっと返す。
ところが走る度に100cm超えのセカイのましゅまろが上下に跳ねて視界を塞ぐ。その上セカイがぎゅっとしがみついたものだから、
「せ、先輩?!」
(「わぷっ、顔に、当たってるっ?!」)
柔らかい感触が……いい匂いが……くらくらふらふら前が見えないまま走り続けてやっとゴール。
「あの、先輩、そろそろ離れてもいいんだよ……? くっついてるの嬉しいけど……」
照れながら義人が言う。
「あ、あら。そうでしたね。お疲れ様で……きゃあ」
セカイが義人に倒れかかり、また彼の顔は。
「誰もが予想できることをやってたんじゃ面白くないからな!」
北条・葉月(独鮫将を屠りし者・d19495)は水野・真火(水あるいは炎・d19915)に抱きかかえられている。
「この身体お前に預ける。俺たちの絆、見せつけてやろうぜ!」
「絶対に落としたりしませんよ。貴方が僕を信じてくれている限り」
それに弓を扱ってきた為、ある程度の腕力はある。
葉月は負担が軽くなるようにと真火の首に腕を回し、
「幸い速さを競う競技じゃないからな。一歩ずつ進んでいけばいいさ」
「そうですね」
真火はゆっくりスタート、徐々に小走りに。
「痛かったり、辛かったりしたら言ってくださいね?」
「心配するな。それより、MVP取れたらご褒美やるからな」
「ご褒美、ですか……それじゃあ……1日傍にいさせてください、なんて……」
「わかった。そんじゃ取れたらデートしようか!」
「はい!」
ゴールまであと少し。
「マサムネさんをおんぶかだっこ……? どっちも……自信は、ない……えっ、ち、違うのか……?!」
深草・水鳥(眠り鳥・d20122)は勘違いに動揺しつつ、
「よ、よろしくお願いします……」
「オレ結構筋力自信あるし、水鳥のためなら頑張れる! 愛は人を強くするんだぜー!」
へへ、と笑うマサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・d21200)。重かったらごめんね、と水鳥は様子を窺うが、
「わ、軽いのなお前! もっと食って肉付けろ肉! そうだ、今度なんかうめーもんでも食いに行くか?」
「うめー、もん? 食べに行く……?」
「ああ! オレ水鳥といろんな思い出作りたい!」
「うん、一緒に、行こう……っ!」
水鳥がぎゅっと掴まり、マサムネは水鳥が怖がらないようペースを守る。と、きこえた応援の声に恥ずかしくなった水鳥は、マサムネの胸に顔を隠した。
「よっし、しっかりつかまってろよ!」
神代・蓮(神に愛された無頼漢・d36326)の首にシャオ・フィルナート(猫系おとこのこ・d36107)が腕を回す。
なるべく体をくっつけて上体をあげる、が調べた重くならない方法。でもこれがきつい。心配をかけたくない一心、気づかれない様必死なシャオだが、
(「何か距離が近いような? いや抱きかかえてるから当然なんだけどよ」)
蓮が視線を落とせば顔は真っ赤、あちこちぷるぷる。早くゴールしてやりたいものの慌ててシャオを落とすなんて事はしたくない。宝物を運ぶ様に、でも素早くと蓮も頑張る。
少し慣れてきたシャオは、
「100m……短いなぁ……」
呟いてみたりもして。そして、
「ほら、ゴールだ! よく頑張ったな!!」
「お疲れさま……」
蓮の頬にキスを贈った。
●
「えへへー、自慢の相棒を見せびらかしにきましたっ!」
桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)が霊犬のティンを抱き上げる。
「おんぶは首が疲れそうだから抱っこでね!」
ふわふわつやつやの白黒の毛並み。尻尾が狐っぽいのもカッコいい上、戦闘ではめっちゃ頼りになる。
「いつもありがとう。大好きです!」
夕月がティンを抱きしめると、応援席から拍手。
篠崎・零花(白の魔法使い・d37155)はウイングキャットの黒猫、ソラを頭の上にのせての参加。
四軒家・綴(二十四時間ヘルメット着用・d37571)は、
「……ライドキャリバーに栄えあれッッ!」
とマシンスネコスリーを担ぎ上げ、
「俺……フルスロットルッッ!」
猛ダッシュで駆け抜けた。
零花はソラを落とさないようバランスをとりながら。
物心ついた時に出会ったソラ。感情を表に出せなくなる前から理解してくれたソラ。
(「……それがすごく、嬉しいときがあるのよ」)
幼馴染や兄弟みたいにも感じるソラ。ご飯を手作りする事も。
(「……だから、ソラとなら頑張れる気がするわ」)
ゴール後、ソラを抱っこして頭を撫でる零花の口元は、微笑んでいるように見えた。
一方ティンは、
「……何故なんだいティンさんや」
前足で夕月をぺしぺし。ぺしぺし。ぺしぺし、
「ごめん、ちょっと重……うん、ごめん、何でもないから叩くのやめて?」
意地でもと最後まで走りきった夕月の頬を、ティンがぺろぺろなめた。
●
「小さい時は良く転んで、朔夜におんぶされて帰ったよね。思い出すと何だか恥ずかしいな」
神凪・陽和(天照・d02848)が言う。
「あの頃は歩くのがやっとだったなあ」
神凪・朔夜(月読・d02935)も懐かしみつつ、
「今は成長したよ、走れるくらいには。さ、背中に」
頼もしくなった朔夜におんぶされる陽和。大事な魂の半身同士。
(「辛い事もあったけど、いつも陽和が引っ張ってくれた」)
(「朔夜が支えてくれた」)
「任せたよ、よろしくね」
「うん!」
信頼してくれている陽和の為にもと朔夜は全力で走る。
「やったね!」
1位でゴール、ハイタッチ。
「……運動苦手なのに……珍しいけど……がんばろうね……」
しかも自分より背も小さいフランことアリス・フラグメント(d37020)に背負われ、アリス・ドール(絶刀・d32721)が言った。
フランは関係を詳しく話したがらない。が、ドールはフランに親近感があり、無愛想な彼女が本当は優しい子だとも知っている。
「はぁはぁ……」
想像以上に苦しいが、無理は百も承知。フランがよろけてもドールは動じず、
「……フラン……この体……預けるよ……だから……思い切り……いこう……」
「はい」
(「わたしの夢の1つが叶ってるんです」)
「必ず完走します」
(「わたしがあなたを簡単に背負える頃には、あなたは……」)
「正直こうなる気はしてました……」
羽柴・陽桜(ねがいうた・d01490)に背負われ、ルオが言う。
「っと、それより本当に平気ですか?」
「あたしこれでも力持ちさんです! 中学最高学年の底力をみせてあげます!」
と走り出した陽桜、運動神経は良いものの力は普通の女の子。速度はそれなり。
「あの、大変だったら途中で代わります」
「だめです! 宣言したからには最後までなのですよ!」
「ですよね……」
そして、
「「やりましたー!!」」
順位はともかく完走!
「私がサズさんを抱っこするの!」
「……気持ちはわかった。だが、俺は重すぎる。怪我をしたら……大変」
若草・みかん(スィートネーブル・d13977)を宥める暴雨・サズヤ(逢魔時・d03349)。
「みかんには……司令官を、頼む」
「司令官!」
みかんの目が輝く。
「かっこいいのね。指示は任せて、ね?」
頷きサズヤは片手でひょいっとみかんを抱えるとロボ的超かっこいいポーズ。テテーン。
スタート後は司令の言う通り。後半は抱っこにかえて、
「サズさん、スピード、まだ上がる?」
「ん……しっかり、掴まってほしい」
「わかったのよ」
みかんがぎゅっとしがみついた。そわっとしたのは内緒、重心を低くしビュン!
「頑張って、あとすこしよ!」
大好きなサズヤに抱えられ、頬を撫でる風が気持ちよくて。
「ん」
はしゃぐみかんの声援を力に変え、一緒に目指す一等賞。
「ありゃ……?」
咬山・千尋(夜を征く者・d07814)を背負った師走崎・徒(流星ランナー・d25006)は、予想より軽い事に驚く。千尋、数日前から食事を減らし、おやつは厳禁で体を軽くしてきたのだ。
「無理しなくていいってのに」
と言いつつニヤケる徒。
(「乙女なことしてもらったからには、頑張らんと!」)
気合で全力疾走。千尋は徒の肩に手をかけ重心を前に、息のあったバランス取りで先頭を走る。が、
「うわっ!」
まさかの転倒。足捻ったか、と思う間もなく、
「のって!」
千尋が徒を背負って走り出し、ゴール。
「ごめんな……」
落ち込む徒に、
「気にしないで、順位はどうでもいいよ。これを機に徒先輩との絆が深まればいいんだ、あたしは」
「千尋お……」
「そうだ、帰りにご飯食べに行かない?」
「ん、ご飯は奢るよ。でもその前に、」
徒は背筋を伸ばし、
「フォークダンス、一緒に踊ってくれるかな?」
「落ちないように確り抱きついてますね」
「落とすなんてそんな事! 絶対にあっちゃ駄目……勝つげんよ私……」
莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)は大好きなシルキー・ゲーンズボロ(白銀のエトワール・d09804)をお姫様抱っこで走り出す。が、銀の髪ふわり、
(「うぇあ、いい匂いする……」)
きゅん。とかしてる間に引き離され。
「ど、どうしよ」
「まだ勝負は中盤ですわ」
頑張って、とシルキーの唇からはぁとが飛んだ。
「!?」
何かが切れた想々、
「あんたらそこ退かんかいこんダラァアア」
「あらあら、ふふふ。お早いのね」
そして、
「ハッ!」
気付けばゴール。
「わっ私大丈夫け? 変じゃなかった?」
「とっても頼もしかったわ、お疲れ様でした」
(「ひぇ……!」)
シルキーに頭を撫でられた想々、あと1kmは行けそうだ。
「重くないかな? 私のほうが背高いし……」
と言ったサナ・ゴシック(黒曜の刃・d37549)に、
「サナより重い猫抱えたことあるから大丈夫」
舞音・呼音(キャットソウル・d37632)が言う。
「……それ本当に猫だったの?」
「脚力には自信あるから」
呼音がサナを抱き上げた。2人は同じクラスの友達。今日はサナの恥ずかしがりと怖がりを克服する為の参加でもある。
「なるべく揺れないようにするから頑張って耐えて。落とさないから安心してね」
サナが頷く。が、スタートするとやはり視線に耐えられず、呼音にぎゅっとしがみついた。
「走り辛かったらごめんね。それに注目されちゃうかも……」
「私は見られても平気だし、サナを自慢したいから構わないよ」
呼音の気持ちがサナに伝わり、
「おつかれさま」
落ち着かせてくれる声に、安心する。
MVPは、千尋と徒に贈られた。
作者:森下映 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年6月11日
難度:簡単
参加:46人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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