壊れし永遠、紡ぐ者達

    作者:篁みゆ

    ●永遠の誓いは無残にも
    「クーラーを付けてあるよ、入って。来てくれて有難う。ラジオウェーブのラジオ放送が確認されたよ」
     灼滅者達をクーラーの効いた教室に招き入れて、神童・瀞真(大学生エクスブレイン・dn0069)はいつもの和綴じのノートを開いた。
    「このままでは、ラジオウェーブのラジオ電波によって生まれた都市伝説によって、ラジオ放送と同様の事件が発生してしまう。放送内容はこんな感じだ」
     そう告げ、瀞真は放送内容の説明を始めた。

     そこはクルージングイベントなどを行う船が停泊する港のほど近く。白いドレスを身にまとった女性が、急いで歩いていた。
    (「やっぱりタクシーで来ればよかった……!」)
     どうしてもタクシーがつかまらず、徒歩で急ぐことを余儀なくされて。友達の船上誕生日パーティに遅れそうで急いでいるようだ。
    「あと少し……」
     絞り出すように告げて曲がり角を曲がった瞬間、どんっと何かにぶつかって。けれども衝撃で弾き飛ばされそうになった身体を、何かが支えてくれていた。
    「ああ、やっと会えた! 君の方から来てくれたんだね!」
     顔を上げれば、自分を支えてくれていた男性の姿が目に入る。着ているのは白の花婿衣装のようだが、激しく破れていて、血のようなものが滲んでいて――。
    「きゃーっ!?」
     女性は叫び声を上げたが、男の力が強くて逃れられない。
    「永遠を誓うはずだった君を、ずっと待たせてしまっていることだけが気がかりだったんだ……行こう、永遠を誓いに」
     そう告げて、男性は女性の身体を異常なほどの強さで締め上げたのだった。


    「赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)君の調査のおかげで、都市伝説を発生させるラジオ放送を突き止めることができたよ。ラジオウェーブのものと思われるラジオ電波の影響によって都市伝説が発生する前に、その情報を得る事ができるようになったんだ」
     瀞真はそう告げると、ノートのページをめくる。
    「今回の都市伝説は船上ウエディングの会場に行く途中に事故に遭って亡くなった新郎みたいだね。ラジオ放送の女性が襲われるのと同じ曲がり角を、白いドレスをまとった女性が通りかかると現れるよ。自分の花嫁が迎えにきてくれたと勘違いして、ね」
     囮が必要となるわけだが、女装でも問題ないだろう。ただし人や車の通る場所なので、人払いは必須だ。
    「都市伝説の新郎は強い力で締め上げたり、体当たりをして攻撃してくるけれど、一般人には脅威でも君たち灼滅者には弱い相手だから、油断しなければ大丈夫だと思う。以上の情報はラジオ放送の情報から類推される能力だからね、可能性は低いと思うけど予測を上回る能力を持つ可能性もあるので、その点は一応気をつけてほしいな」
     そう告げた瀞真は、口を閉じて暫く考えるようにして。
    「……もし、新郎の心残りを叶えてあげられたら、戦闘にならずに消えてくれるかもしれないね」
     ヒントはラジオ放送の中にあったという。
    「そうだ、これ。せっかくだから良ければ行っておいで」
     そう告げて瀞真が差し出したのは、その日の夜のディナークルーズの招待チケット。
    「料理も夜景も素晴らしいって評判だから、おしゃれして、夜景と美味しいものを堪能しておいで」
     そう告げて瀞真は微笑んだあと、悲しげな表情を浮かべた。
    「本当は、相手は誰でもいいはずなんてないと思うんだけどね……」
     そう呟いた後、瀞真はいつもの優しい表情に戻っていた。
    「油断しなければ大丈夫だから、言っておいで」
     告げて彼は和綴じのノートを閉じた。


    参加者
    神條・エルザ(イノセントブラック・d01676)
    刻野・晶(大学生サウンドソルジャー・d02884)
    御神・白焔(死ヲ語ル双ツ月・d03806)
    北斎院・既濁(彷徨い人・d04036)
    氷上・鈴音(去りゆきし紅雪の友に誓う・d04638)
    水瀬・ゆま(蒼空の鎮魂歌・d09774)
    武藤・雪緒(道化の舞・d24557)
    迦具土・炎次郎(神の炎と歩む者・d24801)

    ■リプレイ

    ●手作りで
     海の匂いが濃い。埠頭にいれば当然その空気を吸い込むことになる。海の匂いと強い日差しに、不快感よりも近づいてくる夏らしさを感じるかもしれない。
    「この辺がいいか」
    「倉庫とコンテナの影……いいんじゃねぇの?」
     御神・白焔(死ヲ語ル双ツ月・d03806)と北斎院・既濁(彷徨い人・d04036)は人の来そうにない、物陰になる場所を探していた。
    「戦闘を避けて気持ちよく昇天? してもらえたらそっちのがいいよね。ここにしようよ」
     同意した武藤・雪緒(道化の舞・d24557)がアイテムポケットから取り出したのは、小さめのコンテナ。中には飾り付け用の花や絨毯や神父服一式など。
    (「永遠を誓う筈だったという無念が形になった都市伝説。想いを遂げる事で満足をしてくれるならば」)
     せめて、その、手助けをと思う水瀬・ゆま(蒼空の鎮魂歌・d09774)は、手伝います、と花飾りを手にとって壁となる場所に貼り付けていく。
    「簡単な手伝いくらいなら、私にもできるだろう」
     神條・エルザ(イノセントブラック・d01676)も、ゆまを真似て花を飾ってゆく。
    「ケーキはとりあえず誓いが終わるまではここでいいかしら?」
     用意したクロカンブッシュを木箱の上に乗せて氷上・鈴音(去りゆきし紅雪の友に誓う・d04638)が問う。仲間たちが頷いたのを見て、鈴音はファーストバイト用のシューや仲間たちと食べる文の小皿を用意しながら思う。
    (「都市伝説の元になった彼は、さぞ無念だっただろう。人生最良の日を最愛の人と迎える筈だったのに、最悪の形で終わってしまって」)
     だからといって被害者を出していいわけではない。だからこそ、自分たちはここに来たのだ。
    (「仮初めの華燭の典だとしても、都市伝説の彼には最良の時間を過ごして欲しい。最高の笑顔で旅立てるよう……」)
     そっとポケットの中に手を入れて、鈴音は祈る。指先に触れるのは、忍ばせた方位磁石。願わくは争うこと無く穏やかに事が運ぶように。
    「準備もできたことやし、ほな、行きますか」
     雪緒と共に赤い絨毯を敷き終わった迦具土・炎次郎(神の炎と歩む者・d24801)が声をかけたのは、白焔と刻野・晶(大学生サウンドソルジャー・d02884)。
     都市伝説を呼び出す囮となる晶は白のドレスを纏い、ベール飾りの付いた帽子をかぶっている。携帯電話を通話状態にしバッグへといれた。
    「行ってくる」
    「お気をつけて」
     手作りの会場待機のゆまたちに見送られ、晶と白焔、炎次郎は問題の場所へと向かう。そっと、鈴音が殺界形成を展開した。

    ●紡ぐ幸せ
     小走りで、晶は『その場所』へと向かう。問題の角まで、あと少し。
     どんっ……角で何かにぶつかった。その『何か』が何であるか、晶は知っている。
    「ああ、やっと会えた! 君の方から来てくれたんだね!」
     倒れそうになった身体を支えるように優しく背中に伸ばされた腕。その持ち主を見れば、服装こそ乱れているけれど、その瞳はキラキラと喜びに満ちているようにみえる。
    「逢いたかった! 長いこと待っていた気がするよ」
     ぎゅぅ、強い力で抱きしめられる。一般人ならば耐えられぬそれも、灼滅者である晶であれば耐えられる。
    「待たせてごめんなさい」
     抱きしめられたから、抱きしめ返そう。晶も都市伝説の新郎の背へと腕を回して。
     待っていてくれたなら、これくらい返すのは当然だと思うから。
    「あちらに、皆が用意して待っていてくれています。行きましょう」
    「そうだった、待たせてしまって失礼なことをしたね。行こう」
     新郎の腕を取り、先導する晶。その様子を繋いだままの携帯電話で確認した白焔は、隣の炎次郎へと頷いてみせる。炎次郎もまた、繋いだままだった携帯で鈴音へと、誘導がうまく行っていることを伝え、一足先に会場へと向かった。

     戦場でないゆえにサウンドシャッターは展開できなかったが、晶たちが到着する前に会場に着いた炎次郎は、一番にふたりを出迎える。
    「おめでとうさん。夢にまで見た光景やろ? ほら、皆がお祝いを用意してくれてるで」
     手作りの小さな会場は、新郎が本来行う予定だった式とはだいぶ違うだろう。それでも炎次郎に背を押された新郎は、「みんな、待たせてすまない」と笑顔で晶をエスコートする。白いドレスの女性が皆自分の新婦に見えるように、彼にとって重要なのは『彼女と永遠の愛を誓うこと』なのだろう。
    「新郎新婦の到着です。ウェディングケーキに賛美歌、さらにはプレゼントまであります」
     司会進行役として告げる炎次郎の言葉に従うように、新郎は晶とともに神父姿の雪緒の前へと向かう。ゆまとエルザの紡ぐ賛美歌が、ふたりを祝福している。晶たちの後を用心してつけていた白焔はさり気なく参列者として合流し、既濁は思うところがあるのか、ボーッとした様子でその光景を眺めていた。
    「指輪は、ここに」
     誓いの言葉を終えての指輪の交換。晶が用意していたペアリングを取り出して。
    「あなたは、せっかちでしたもの、ね」
    「君がしっかり者で助かったよ」
     晶を自分の花嫁と信じて疑わない様子の都市伝説は、彼女の指にそっと指輪をはめる。
    「では、誓いのキ――」
    (「あっこれ、キスどうしよ」)
     そこまで口にしかけて、雪緒は言葉を切って晶を見る。晶もどうしようかと考えていたようだが。
    「みんなの前で、君との永遠を誓うよ」
     そっと頬に添えられた手に、ここで拒絶するわけにはいかないと考え、それを受ける。
    (「……相手は都市伝説だ、だからノーカンだ、うん」)
    「皆様、新郎新婦に惜しみない祝福を!」
     炎次郎の言葉に白焔が率先して拍手を始めたのに周りも合わせて。そして鈴音がクロカンブッシュを運んでくる。
    「ケーキ入刀からのファーストバイトです」
     炎次郎の進行で行われるケーキ入刀。鈴音がタイミングよくファーストバイト用のシューを二人に手渡して。
    「新郎から新婦への一口は『一生食べる物に困らせないから』。新婦から新郎への一口は『一生美味しい物を作ってあげる』って意味があるのよ」
     二人のその様子を、既濁とエルザはなんとなく薄膜の向こうから眺めている感覚でその場に立っていた。それは、きっと、彼らの心の中に複雑な想いがあるから。
    「お二人もどうぞ」
     鈴音が取り分けたクロカンブッシュをゆまが既濁とエルザにも持ってきてくれて。それを受け取り、口に含む――甘い。
    「ああ、君と永遠を誓えるなんて、幸せだなぁ」
    「これで、叶えられました?」
     感慨深げに呟く新郎を見上げる晶。そんな彼の姿は、今や薄らいで見えて。誰の目から見ても彼の状況は明らかだった。
    「これであんたも悔いはないやろ。お幸せに」
    「ああ、ありがとう」
     炎次郎の言葉に改めて全員を見回した新郎。送られる拍手は、彼の望みが叶った証。
    「僕は君と永遠を誓えた。もう、花嫁を待たなくていいんだ――」
     日射しに溶けゆくように、新郎の姿がどんどん薄らいでゆく。けれども彼の表情が本当に満足げなものだったから、見送る灼滅者たちも彼と同じように、後悔の念はなかった。

    ●船の上で
     白焔と鈴音、雪緒を中心に現場の片付けを行った後、せっかくだからとディナクルーズ船へと乗り込んだ灼滅者達。
     炎次郎と白焔と雪緒は、共にテーブルを囲んで、学生にはちょっと豪華な料理をいただく。流石にきちんとしたコース料理なだけあって味は確かなものである。とりとめのない話をしていたが、食事が終わると解散してそれぞれの時間を過ごすことになった。

     ゆまは食事もそこそこに、食堂となっているホールで、窓際に置かれたソファに座ってひとりで夜景を眺めていた。
     ふと思い出すのは、想うあまりに鬼となった古の畏れの女性のこと。想いというのは、それほど深いものなのだろう。
    (「でも、わたしにはそれが良く解らない……だから、わたしには永遠を誓う資格も誓われる資格もないのでしょう」)
     一人で生きる、覚悟はできている。だから、せめて、周囲の人達は、幸せになって欲しいと思っていた。
    (「……わたしが不幸だというわけではないけれど。わたしには、手にできないものを代わりに」)
     想いが形になった新郎のことを、思い浮かべる。彼が幸せを感じてくれて、よかった、と。
    「水瀬さん。隣ええかな?」
    「!」
     物思いに沈んでいたゆまの思考を引き戻したのは、食事を終えて一度は退室しようとしていた炎次郎だった。
    「いや、ナンパやなくて少し聞きたいことがあってな」
     慌てて付け加える彼に、ゆまは笑顔で言葉を紡ぐ。
    「先日は闇堕ちから救ってくださってありがとうございます。ふふ、大丈夫ですよ。迦具土さんが誠実な方なの、知ってますもの」
     その言葉にホッとしたように息をついた炎次郎は、ゆまの隣に腰を下ろして口を開いた。
    「……好きな人にされたら嬉しいことってなんかある? 深い意味はないけど水瀬さんの意見が聞きたくてな」
     流石に少し照れ顔の炎次郎。ゆまはそんな彼の姿を微笑ましく思いながら、首を傾げて少し考える。
    「そうですね……わたしは、してもらって嬉しい、というよりも。してくれようとした、気持ちが嬉しいから……」
    「ふむふむ」
    「相手の方が自分の事を一生懸命考えてくれた。それが解れば、何だって嬉しいと思います。ごめんなさい、曖昧なことして言えなくて」
     恐縮するゆまに炎次郎は礼を言う。
    「おおきに。参考にさせてもらうわ……いつかあの人にそれを実行できるとええな……え? な、何でもあらへんよ」
     つい口にしてしまった言葉をごまかすかのような炎次郎の姿が微笑ましくて、上の空状態になってしまった彼に小さく告げる。
    「頑張って、くださいね」
     いつか貴方にも、祝福の歌を。

    「さすがに味も一流だな」
     器用にフォークとナイフを使い、晶は料理を口にしてゆく。視界に入る夜景が最高のスパイスとなって、より一層料理の味を引き上げているように感じた。
     料理の最後に追加でジュースの入ったワイングラスをもう一つ頼んだら、ウェイターは不思議な顔をしたけれど。
     向かいの席に置いたもう一つのグラスは幻の新郎へ。
    「乾杯」
     今日だけは、彼のパートナーだから。

     浅葱色のカクテルドレスに身を包んだ鈴音は、甲板で、手にした花束をじっと見つめて。
     ブロワリアとかすみ草の花束。ブロワリアの花言葉は祈り。かすみ草の花言葉は永遠の愛。都市伝説の花婿の幸いと、噂の元となった彼への弔いの想いを込めて――ハイヒールの踵を鳴らして手すりに近寄り、花束を海へと投げ入れる。
     水面に浮かぶ花束は、ともすれば闇に呑まれて見えなくなってしまうけれど。鈴音の想いだけは、簡単に消えることはないから。

     多くの客が食事を取っている時間、既濁はエルザを船尾へと誘った。
     エルザが清楚なデザインの黒いドレスを着た意味に、既濁は気がついてくれただろうか。
    「……んで、どーよその後は。元気でやってるかい?」
    「君にはどう見える?」
     既濁の問いかけにそう答えたエルザは、両手を広げて今の自分の格好を示した。少しは肌を出す格好で人前へ出られるようになった、それが進歩だと、既濁なら気がついてくれるだろう。
     着替えてきた当初、あまりエルザを見なかった既濁は、今はエルザの姿をじっと見つめている。否、見惚れているのだ。最初はあまりに美しすぎて直視できなかったけれど、こうして闇の中、光に照らされるように立つ彼女を一度見つめたら、視線を外すことができなくなってしまった。
     普段着の自分は不釣り合いか、なんて一瞬思ったりしたけれど、きっと彼女はそんなことは気にしないだろうと思い直した。
     結婚式の芝居を打った時、エルザの脳内に浮かび上がったのは、かつて抱いた乙女らしい式への憧れ。その想いは芝居がはねたあとも消えることなく、ともすれば徐々に強くなるほどだった。
    「私達もいずれ、ああいう式の事を考えるようになるんだろうか」
    「あー、結婚式なあ。そーかもな……全く頭になかったが、いずれはそうなるよな、うん」
    「……本当にそんな資格があるのかな、とは今でも思う。恋人を死なせ罪を重ねた事、淫魔の過去は消えない事実だし」
     過去という消せない事実がエルザの想いを、持っていて当然の憧れを塗りつぶしてしまおうとする。けれども。
    「それだったら俺も同じようなもんだからなあ。ひいふうみいよお……数えてらんねえや。綺麗事ばかりが人生じゃねえさ、俺たちなりに清濁合わせ飲んでいこうぜ」
    「……」
     既濁は重くなりすぎないようにと少し軽い口調で告げたが、返ってきたのは沈黙。けれども彼はエルザを信じている。だから、もう後ろ向きに塞ぎ込んではいないと思っていた――それが確信に変わったのは、エルザの姿を見たときだった。言葉にはしなかったが、彼女なりに立ち直ろうと、前に進もうとしているのが見てとれた。
    「なあ、まだあいつに引き摺られているのかい?」
     あいつ――エルザの中の淫魔のことだ。先日闇堕ちした際に、姿を現した、あの――。
    「……大丈夫、淫魔の声はもう聞こえない。でも多分、私一人で生きる自信はもう無いって事なんだと思う」
    「……何、それなら問題ねえな。それに、1人じゃなくても俺がいるだろ? 任せてくれよ」
     人はもとより一人で生きられるようには出来ていない。一人で生きようとすることは出来ても、いつか、どこかに歪みが出てしまうものだ。それに、エルザには、そばに居てくれようとする人がいる。
    「……責任は取ってくれるんだよな? 君が私を生き返らせたのだから」
     そう告げる彼女の表情はとても柔らかくて。もう後ろ向きに悩んでいるようには見えなかった。そして、その言葉の裏に隠されたものは。
    「あぁ……そりゃそうさ、当たり前よ」
     そう返事をしたものの、その裏に隠された意味を感じ取った既濁は。
    「しかし、なんだ、こー改めて言われると結構照れ臭いもんだな。ははっ……いや本当、結構照れるなこれ。めっちゃ恥ずかしいぞ」
     その破壊力に思わず顔が火照る。
    「俺赤くなってねえかな、これ」
    「大丈夫だ、暗くてそこまで見えない」
     そう告げたエルザは優しい笑みを浮かべている。きっと、既濁の紅潮した頬は彼女の視線に捉えられてしまっているのだろう。けれどもそれを告げない彼女の言動は、優しさか、ちょっとした意地悪か――それはこの先ずっと寄り添っていけば、自然とわかる日が来るのだろう。

     静かな星空のもと、想いは空へと昇華してゆく――。

    作者:篁みゆ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年6月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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