6月の、お花見ぱーりぃ!

    作者:芦原クロ

     既に梅雨入りした、南の地域。
     噂が都市伝説となっていないか、花宮・真琴(晴々天真爛漫・d15793)は灼滅者たちを連れ、夜の山中へ入る。
    「は、花が……喋っ!? うわー!」
     とつじょ、聞こえて来た悲鳴。
     急いで声のしたほうへ向かうと、一般人の男性が気絶している。
    『どうしよう……話し掛けただけなのに、気絶されちゃった。この咲きほこった姿を、たくさん見て欲しかったんだけど。うーん……』
     近くで咲きほこっている美しいアジサイが、喋っている。
    「梅雨に紫陽花の姿をした都市伝説。間違いないようだね」

    『あれ? 新しいひとが来た。あのー、とってもキレイに咲いたので、アジサイのお花見とかどうですかー?』
     灼滅者たちに気づいたアジサイが、気さくに誘って来る。
     さいわい、雨は降っておらず、山道からも外れた場所なので、一般人が通うところでは無いようだ。
     気絶した一般人は、噂に釣られて面白半分で来てしまったのだろう。
     とりあえず、一般人を安全な場所まで運んでから、真琴は灼滅者たちに向き直る。
    「念の為、人払いはして……紫陽花のお花見っていうのかしら。色とりどりで、すごい綺麗な紫陽花だし、お花見を楽しむのも良いかもね」


    参加者
    アリシア・ウィンストン(美し過ぎる魔法少女・d00199)
    花咲・マヤ(癒し系少年・d02530)
    リディア・キャメロット(贖罪の刃・d12851)
    十六夜・深月紅(哀しみの復讐者・d14170)
    花宮・真琴(晴々天真爛漫・d15793)
    藤堂・夢麓(夢に誘う・d20803)
    矢崎・愛梨(高校生人狼・d34160)
    イサカ・ワンブリウェスト(夜明けの鷹・d37185)

    ■リプレイ


    (「紫陽花の都市伝説か、この季節にぴったりだけど……人に被害が出てしまっているし、放ってはおけないね」)
     安全な場所に運んでおいた一般人のことを、思い出す花宮・真琴(晴々天真爛漫・d15793)。
    「殺界形成は、リディアさんにお任せしますね」
    「人払いを試みるわね」
     花咲・マヤ(癒し系少年・d02530)が友人に声を掛けると、リディア・キャメロット(贖罪の刃・d12851)が即座に殺気を放ち、一般人を遠ざける。
     これなら、被害にあった一般人が起きたとしても、近づいて来ることは無いだろう。
    「花見をしてみてから、敵を弱体化させて倒す戦法をとりましょう」
    「最後ということで、とりあえずはお花見を楽しもうね」
     藤堂・夢麓(夢に誘う・d20803)が仲間たちに言い、矢崎・愛梨(高校生人狼・d34160)が頷く。
    「アジサイとお花見か、盛り上れるかのぅ……」
     アリシア・ウィンストン(美し過ぎる魔法少女・d00199)は、悩ましげに呟く。
     花見といえば、主に桜がメインなので、実際のアジサイを良く知らないアリシアにとっては、いまいちピンと来ないのだろう。
    「お花見かぁ……。日本の四季は、それぞれに楽しめる花があって羨ましいな」
     アジサイを見たことの無い、イサカ・ワンブリウェスト(夜明けの鷹・d37185)は興味津々の様子で、周囲の山花を見ている。
    (「特に、敵対心が、ある訳でも、ないし……お花見するのも、別に構わない」)
     十六夜・深月紅(哀しみの復讐者・d14170)は用意していた軽食を、取り出した。


    「これがアジサイじゃな、いい色をしているのぅ」
     アリシアは、鮮やかな色のアジサイを見つけた。
     そのまま、見とれそうになるのをなんとかこらえ、アリシアはホウキに乗って空を飛ぶ。
     アジサイ以外の花々も、上空から見ることが出来る、特等席だ。
    「綺麗な紫陽花、だね。花見をしたら楽しそうだよ」
     深みのある美しさに、ほんの少しだけ、うっとりとなる真琴。
     やわらかな月の光を浴び、神秘的で美しく見えるのだから、無理もない。
    「皆、今日は楽しい花見を満喫しましょう、一旦都市伝説の事は忘れて、ね」
    「花見をするなら、弁当を持って来なくちゃね」
     夢麓が仲間たちに声を掛け、リディアは作って来た弁当を、ふるまう。
    「作りすぎたので皆で分けてね。まぁ、味はそこまで美味しくもなく、不味くもなく、普通の手料理だけど」
    「リディアさん、美味しいです」
     無表情でリディアは言うが、早速食べ始めたマヤが、素直な感想を述べる。
     気遣ってくれているのだろうとリディアは判断するも、マヤは友人の真琴や夢麓の意見も聞いていた。
    「お世辞でも無く、美味しいわ」
     夢麓は真琴と頷き合い、美味しそうに弁当を食べ続ける。
    「ん、まぁまぁの出来かな、今日はうまく出来たみたい」
     確かめる為、リディアは自分が作った弁当を食べ、ほっと一息。
    「僕は、お菓子とか色々と買ってきましたので、皆さんで分けてお召し上がりください」
     マヤは友人たちの楽しそうな様子に微笑みつつ、持って来たものを広げる。
    「サンドイッチや、紅茶を、用意、したよ」
    「僕はお弁当。皆の分も、作ってきたよ。中身は普通に、市販の食材を使って作ったけど」
     深月紅も仲間たちに配り、イサカも弁当を追加する。
    「僕の産まれた森だったら、その辺の野草でも料理できたんだけどね。日本の野草は、まだ勉強中だから、あんまり詳しくないんだ」
     弁当の中身を、オニギリなどの無難なものにしたイサカは、勉強を頑張ろうと意気込む。
    「お菓子とか持ってくれば良かったかな?」
     色々と持って来た仲間たちを見て、愛梨は少しだけあせる。
    「これだけ、あれば、いいと、思う」
     普段無口な深月紅が、愛梨にそっと言葉を掛けた。
    「花見だから、ジュースとか色々と買って来たから、良かったら皆で分けてね」
    「皆でジュースで乾杯でもしながら、色々と談笑しましょう」
     愛梨が安堵するのを見届け、真琴が飲み物を取り出し、マヤは配るのを手伝う。
     ホウキで空を飛んでいるアリシアにも声を掛けると、アリシアはゆっくり下降。
    「まずは……乾杯!!」
     そのまま戦闘態勢に入ろうとするアリシアだったが、乾杯の掛け声を聞けばそちらへ一直線。
     ジュースの入った容器を、仲間たちのと軽くぶつけ合い、乾杯を済ませるアリシア。
     いつでも戦闘に入れるよう、注意を払っていたアリシアは、アジサイを見つめ過ぎてしまった。
     アリシアのテンションは上がり、マンガやアニメで得たアジサイにまつわる話を、仲間たちに語りまくる。
    「もしかして、アリシア、テンションが、上がって、いる?」
     アリシアのじょうぜつぶりに、深月紅は首をかしげた。


    「そうだ、私がジュースを買ってこようか? みんな何かリクエストあるかな?」
    「真琴さん、落ち着いてください。ジュースなら、もう有ります」
     とうとつに立ち上がった真琴を、マヤがなだめようとするが、真琴は高まった気持ちを晴らしたい様子だ。
    「紫陽花には、水をあげよう」
    『わーい! おいしい水だー』
     真琴から水を貰ったアジサイは、喜んでいる。
    「キュアが効くかな。真琴に祭霊光を試みるわね」
     リディアが指先に霊力を集め、真琴にキュアを掛ける。
    「ちょっとテンションを上げられてしまったかな?」
     真琴は、キュアで状態が治せると分かり、アリシアに清めの風を使った。
    (「この都市伝説は特に悪気があって人を狙っているわけでは無いみたいだけど、無自覚でも人に迷惑をかける相手は許せないわね」)
     しっかり討伐しようと、リディアは気を引き締めた。
    「元に戻ったようだし、花をのんびりと眺めることにするわね」
     夢麓とマヤが頷き合い、花見を再開する。
    「何か一発芸でもやった方がいいかしら? あまりそういうのは得意じゃないから、他の人に期待するわ」
    「紫陽花の花も綺麗ですね。都市伝説じゃなかったら、家に飾っておきたいくらいです」
     今度は夢麓とマヤが、テンションが高くなったり、気分が盛り上がってしまった。
    「ん、マヤは分かりにくいわね。本心、にも聞こえるけど」
     一応キュアを掛けてみる、リディア。
     真琴は夢麓をキュアし、元の状態に戻す。
     その間に、イサカはアジサイに接近。
    「綺麗だね。ちょっと、絵に描いてもいいかな?」
    『絵が描けるの? すごーい』
    『私のことも描いて!』
     アジサイの声がいくつか、イサカに要求して来る。
    「カチナはどんなところにでもいるんだ。だから、お花が喋っても不思議じゃないよ」
     アジサイが喋ってもイサカは驚かず、絵を描き始めた。
    『かちな? って、なーに?』
    「精霊だよ。全ての物にはカチナが宿っているんだ」
    『なんか、かっこいいかも』
     イサカの信仰心溢れる丁寧な説明に、惚れ惚れとする、アジサイ。
     描き終わった絵をイサカがアジサイに見せると、アジサイは次々と歓喜の声をあげる。
     直後、見る見る内に、アジサイが枯れてゆく。
    「機会が来たようじゃな」
    「紫陽花さん、残念だけど、あなたはここにいちゃいけないのよ」
     アリシアが素早く戦闘態勢にうつり、愛梨もアジサイを攻撃する。
    (「厄介ですね。早く倒してしまいましょう」)
     テンションが高くなったり、気分が盛り上がったりすることが、地味に厄介だと、マヤは判断する。
    「漆黒の弾丸です、その身に受けてみなさい!」
    「さぁ、花見も沢山楽しませてもらって申し訳ないけど、貴方はここにいてはいけない存在なのよ」
     マヤが黒き弾丸を撃ち、リディアはどす黒い殺気で敵を覆い、それぞれダメージを与える。
    「四肢を、掲げて、息、絶え、眠れ」
     カードの封印を解いた深月紅が、十字架を思わせる傷痕ノ十字架に、螺旋状の捻りを加えて突き出す。
    「まずは動きを鈍らせてあげるわ」
    「貴方にはかわいそうだけど、ここで終わらせちゃうよ」
     死角に回り込んだ夢麓が斬撃を浴びせ、真琴は回復に専念する。
    「できるだけ苦しませない方がいいよね。君の綺麗だった姿、忘れないよ……」
     あと一押しだと判断したイサカは攻撃に移り、彗星の如き強烈な威力の矢を敵に放つ。
     イサカの言葉が嬉しかったのか、都市伝説のアジサイは静かに消えていった。


    「アジサイも悪くないが雨の時の花見は勘弁じゃのぅ」
     梅雨の時期だとホウキで飛びづらいのか、アリシアはぽつりと呟く。
    (「折角なら親友や師匠を誘えばよかったかな?」)
     人物を思い浮かべる、深月紅。
    「紫陽花のスケッチは、持って帰って飾っておこうかな」
     上手く描けたアジサイの絵を、イサカは見つめていた。
    「ちょっとドタバタした花見だったけど、いまからでも、また花見の続きをしてみないかな?」
    「まだ花見が楽しめるのでしたら、花見を続けてみたいですね」
     真琴の提案に、賛成するマヤ。
    「まだ続くなら、わたしもお花見を楽しむよ」
    「改めて、色々な花をのんびりと眺めましょう」
     愛梨は嬉しそうに微笑み、夢麓が山の花に視線を移す。
    「戦闘が終わったら殺界形成を解除しておこうと思っていたけど、もう少し、解除しないでおくわね」
     花見続行に賛成したリディアが、一般人が来れない場所をしばらく保とうとする。
     灼滅者たちの前には、本物のアジサイの他に、白や赤や青、薄紫やオレンジ色や黄色など。
     色鮮やかな花々が、どれも美しく、凛と咲き乱れていた。

    作者:芦原クロ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年6月13日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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