深夜の狩人アトラクション

    作者:東加佳鈴己

    ●廃棄された遊園地
    「どういうことだよ……!」
     かつて人と喜びで満ちていた、遊園地。数年以上前に打ち捨てられた山奥の施設内を、深夜に疾走する姿があった。その姿は小さく、しかし走るたびに手足がぶくぶくと膨れていく。
     ──その足にはいくつもの矢が刺さっていた。
     膨張した闇が矢をぐずぐずと体外に出していくが、ヒトの形をとっていた時のダメージを消せるはずもなく。鈍った足に諦めたかのように、小さな姿、シャドウは足を止めた。
    「なんでこの場所が分かったんだよ! せっかく逃げきれたと思ったのに!」
     少年の姿を取っていたシャドウは、全身に両腕にダイヤのスートを浮かび上がらせながら大きく伸びをし、巨大な闇の塊へと姿を変えた。両腕には傷まみれの鋭い鉤爪。
     シャドウの背には、巨大な柵。眼前には、8体のクロムナイトがシャドウを追い詰めんと距離を詰めてきていた。
     シャドウは先ほどまでの諦観はどこへやら、巨体を弾ませながら両腕を旋回させて鉤爪をクロムナイトへ叩き込む。構えた盾を割り、シャドウの一撃は鎧ごとクロムナイトを粉砕した。闇の吹き出す足で、地を蹴って距離を取ろうとした、その時。
     物言わぬ、弓と銃を構えたクロムナイト4体が一斉にその足を攻撃した。背中をさらしたまま、シャドウが崩れ落ちる。前衛を務めるクロムナイトたちの武器が、その背に叩きつけられ、逃げ続けていたシャドウはとうとう地面へ伏した。
    「お前らごときに──っ」
     クロムナイトの一人が、逃げられないようシャドウを踏みつけた。仲間から受け取った不思議な金属でできた儀式剣を、ゆっくりとその背へ突き立てる。
    「ぎゃああぁぁアァあ……ァ……」
     断末魔の叫びが途切れ、儀式剣が青く光りだす。剣を突き立てられたシャドウはもはや、動くことはない。
     クロムナイトたちは互いに頷き合った。
    「サイキックエナジーのゴウダツ、セイコウ。タダチにキカンスル」

    ●教室にて
    「元朱雀門高校の会長、ルイス・フロイスから連絡があった」
     教室に集まった灼滅者たちに、神崎・ヤマト(高校生エクスブレイン・dn0002)は厳しい顔で告げた。
    「現実世界に潜んでいるシャドウを狙ったクロムナイトの動きが、また発生するみてーだ」
     すでに何件か発生している、シャドウのサイキックエナジーの強奪を狙う事件が発生しようとしているらしい。
    「知っているやつもいるかと思うが、元朱雀門高校の組織は、ロード・クロムによって再編成され、爵位級ヴァンパイアの配下に入っちまってる。ロード・クロムは自分に従わない連中を粛清しながら、直属の配下のクロムナイトを量産して支配を確立してるんだ」
     ルイス・フロイスからもたらされた情報によると、ロード・クロムは第三次新宿防衛戦で生き残り、現実世界に潜伏しているシャドウ達からサイキックエナジーを奪い、より強力なクロムナイトを生み出そうとしているらしい。
    「ロード・クロムに従っている連中の中には、ルイス・フロイスのスパイが多くいるからな。元朱雀門高校の連中が阻止に向かうと、下手すりゃ内部に入り込んだ連中が危なくなる。そこで──武蔵坂の灼滅者の手で、ロード・クロムの野望を阻止してほしい、っていうのがルイスの依頼だ。頼めるか?」
     爵位級の戦力拡大は武蔵坂にとっても大きな脅威になる。灼滅者たちが力強く頷くと、ヤマトは黒板へと情報を書きはじめた。

    「ルイスからもたらされた情報によるとだな」
     今回、シャドウは近くに廃棄された遊園地のある、山奥へと潜伏していたようだ。潜伏場所が発見され、逃げるうちに遊園地内へ追い込まれたらしい。
     廃棄された遊園地ということで一般人は全くいない。まれに障害物の大きなアトラクションがあるが、基本的には戦場は広くとれるだろう。逆にいえば遮蔽をとって潜伏する場合は場所が限られる。
    「逃げているシャドウは、人間形態は少年。シャドウの形態になると、両手両足が肥大化した巨人のような姿になるらしい。腕にダイヤのスートが浮かび上がる。今わかっているのはこれくらいだな。すまん」
     具体的な戦力情報がないことを謝りつつ、ヤマトは説明をつづけた。
    「このシャドウを撃破するために、8体のクロムナイトが向かっている。天星弓を主体にしたスナイパーが3体、メディックが1体。WOKシールドとサイキックソードを主体にしたディフェンダーが2体。魔導書を持ったジャマ―が2体だ」
     後衛のスナイパーのダメージ主体の構成のようだ。
    「この通り、クロムナイト側の戦力はシャドウより多い。ほっときゃクロムナイト側が勝利して、シャドウのサイキックエナジーを奪っていっちまうはずだ」
     ヤマトは目を閉じ、指を頭に添えた後、カッ! と目を見開いた。
    「俺の脳に秘められた全能計算域(エクスマトリックス)がはじき出した作戦はふたつ! 一つは、『シャドウとの戦闘中に乱入する』か。もう一つは、『クロムナイトがシャドウに勝利した瞬間に奇襲をしかける』か、だ」
     とはいえなあ、とヤマトは嘆息する。
    「乱入の場合は、タイミングや相手が共闘してくる可能性も考慮する必要がある。シャドウが最後に生き残ったら、こっちに牙をむいてくる可能性もあるだろうな」
     今回は慎重に作戦を練る必要がありそうだ。
    「第一の目的は、サイキックエナジーをクロムナイトたちに奪われないことだ。でもよ、シャドウも負けた影響で隠れているだけで、いずれは俺たちの強大な敵になりうる。
     ──かなり厄介な依頼だが、お前たちなら必ずやり遂げてくれると信じてるぜ!」
     ヤマトは灼滅者たちを、力強く激励した。


    参加者
    アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)
    ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)
    七瀬・麗治(悪魔騎士・d19825)
    斎宮・飛鳥(灰色の祓魔師・d30408)
    富士川・見桜(響き渡る声・d31550)
    カーリー・エルミール(元気歌姫・d34266)
    媛神・白菊(にくきゅうぷにぷにのおおかみ・d34434)
    十束・唯織(末那識・d37107)

    ■リプレイ

    ●廃墟に潜む闇
     いつから使われてないのだろうか。だが、丈夫に作られたゲートと柵は、今も外界と遊園地を隔離していた。
     ゲート前に集った灼滅者たちは、各々の方法で廃棄地域との境界を抜けていく。
    「最強のクロムナイトか……いったい何が最強なんだろうね?」
     小柄なカーリー・エルミール(元気歌姫・d34266)は、斎宮・飛鳥(灰色の祓魔師・d30408)に抱え上げられゲートを超える。
    「なんでしょうかねえ。ま、今自分らがやることはきっちり灼滅することっすよ。ヴァンプの元生徒会長からのたれ込みってのが気にかかるっすけど。ロード・クロムにサイキックエナジーを渡すわけにも、シャドウを野放しにしておくわけにもいかないっす」
    「んんー……難しいことは分からないから、早く終わらせてご飯にしようよ」
    「そーっすね!」
     疑問に答えながら、ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)は鉄柵に手をかけ、ふわり、と飛び越えた。
    (「ロード・クロムのクロムナイトか。実戦配備されたばかりの頃は、八人がかりで互角だったものだけど」)
     同じように柵を超えながら、アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)は、自分たちも成長したものだ、と思う。とはいえ今回は、シャドウもいる。厳しい状況なのは変わりない。確実に作戦を成功させるため、アリスは頭の中で作戦手順を諳んじた。
     一方、富士川・見桜(響き渡る声・d31550)は集合前から沈黙したままだ。
    (「これ以上、デモノイドになる人が増えるのは嫌だ。研究が進まないように私になんとかできることがあるなら、する」)
     そう願い依頼に参加しているが、シャドウに刃を翻す事を思うと迷いが生まれそうになる。だから、彼女は沈黙で決意を固めていた。
     倒すと決めた以上、覚悟してやり切らなくては。

     ゲートを抜けた8人は、遊園地の中を小走りに進んでいく。メリーゴーランド、コーヒーカップ、ミラーハウス。アトラクションの建物は大きく、けれど通路は広い。障害物は多いが、直線の見通しは悪くない。
    「シャドウがクロムナイトを1体を屠ったとこで介入できれば最良じゃが……良い潜伏場所はあるじゃろうか?」
     周囲を見渡しながら、ニホンオオカミ姿の媛神・白菊(にくきゅうぷにぷにのおおかみ・d34434)がつぶやく。
     同じように見渡して、飛鳥はうーんと唸った。
    「難しいかもしれません。事前に遊園地の地図などを手に入れられていたら、叶ったかもしれませんが……」
    「ふむ。であれば、シャドウが倒される前に介入できる距離であればどこでもよいな」
     灼滅者たちは、奥へ奥へと走っていく。すると、星天弓のサイキックの煌きが正面方向で瞬いた。
     見通しは良い。潜伏は難しく、突撃したほうがよさそうだ。
    「さあ、参りましょう……Slayer Card、Awaken!」
    「じゃ、ゴミ掃除といきやすか!殲具解放!」
     アリスが純白の光を、ギィは対照的に黒い渦を纏わせながらスレイヤーカードを開放する。
     七瀬・麗治(悪魔騎士・d19825)も続いてスレイヤーカードを手に、解放コードを口にする。
    「ディープブルー・インヴェイジョン」
     その言葉と共に、麗治は蒼い全身甲冑――クロムナイトへ似た格好へと、姿を変えた。武器は剣でも弓でもなく、巨大なチェーンソー型の動力剣と、伸縮機構を持つウロボロスブレイドの双剣だ。
     次々とスレイヤーカードを開放していく乱入者の気配に、クロムナイトたちとシャドウが足を止める。
    「さあ、季節外れのハロウィンパレードといきましょう!魔物の騎士に影の巨人。そして私たち光の担い手。闇は一欠片も残さず灼滅するわよ!」
     好機を逃さぬアリスの宣言と共に、8人は戦場へ躍り出た。

    ●共同戦線
    「久々に会ったと思ったらまた、サイキックエナジー集めてんのかよ!? 暇人かお前ら!!」
     走り込みながら、十束・唯織(末那識・d37107)がクロムナイトに呼びかける。彼らからの返答はないが、予想通りだ。彼は続いてシャドウへ声をかけた。
    「今だけでもいい、手を貸しちゃくれないか? 俺達は万年猫でも手を借りたい状態なんだ」
    「武蔵坂の連中か!馬鹿を言え、お前らなんか――」
    「今のままでは、お主はクロムナイトどもに勝てぬ!」
     幻狼銀爪撃を放ちながら人の姿へ変わった白菊が、シャドウを遮り声を張る。
    「自分でも気づいておるじゃろ? わらわたちはお主のサイキックエナジーをクロムナイトに渡したくない。
     お主は生きのびたい。ならばまずは共通の敵であるクロムナイトを共に倒そうではないか。その後改めて決着を付けようぞ」
    「テキ、ゾウエントハンダン」
     弓を構えたクロムナイトたちが、シャドウに、そして灼滅者たちへ弓を向ける。
    「クロムナイトと戦い、傷ついたわらわたち相手なら楽勝じゃろう?」
     放たれた彗星の如き矢が、両者を襲う。ギィがすかさずシャドウのカバーにはいった。
    「そういうことっすよ」
     明確に示された援護の意思と、その後決着をつけるという条件に、シャドウの心は決まったようだ。
    「……今だけだ、手を貸すのは!」
     シャドウは闇に膨れた巨体を弾ませながら、両腕を旋回させて鉤爪を叩き込む。構えた盾を割り、シャドウの一撃は鎧ごとクロムナイトを粉砕した。

     8人を敵増援とみなしたクロムナイト達は、攻撃の矛先の大半を灼滅者たちに向けてきた。
     弓を構える敵後衛に、アリスが先制のフリージングデスを浴びせかけた。
     庇いに入ろうとしたクロムナイトを、ギィが戦艦斬りを叩き込みながら抑えに回る。
     見桜はそっとシャドウのカバーに入りつつ、作戦通りに、敵メディックへDESアシッドを放った。その軌跡を追うように、白菊、麗治、飛鳥の攻撃が立て続けに命中する。
     激しい攻撃に、メディックは自己回復をあきらめたのか、スナイパーの一人に癒しの矢を使用した。スナイパーたちは体力の低い白菊と、本来のターゲットであるシャドウを狙い、DESアシッドを放つ。体力の半分弱を奪われる程の攻撃を食らい、白菊が小さく悲鳴をあげた。
     クロムナイトの攻撃はまだ続く。ジャマー2体は前衛と後衛それぞれにゲシュタルトバスター。全体にバッドステータスを付与していく作戦のようだ。ディフェンダーはソーサルガーダーを使い、ギィからの攻撃に備える。
     白菊のまつり二号はしゃぼん玉で、カーリーは集気法で集中攻撃を浴びた白菊をたちどころに癒した。
     最後に、唯織が鏖殺領域でメディックを追撃する。
     5人からの集中攻撃を受けたメディックは、こらえきれず地に倒れ伏した。
     接敵1分で6対8。現状は、作戦が功を奏した灼滅者たちが圧倒的有利だった。

     一方的な展開かと思いきや、敵も攻撃を集中させ一人ずつ倒す算段のようだった。防具の備えで回避できる攻撃もあるとはいえ、執拗な後列狙いに、カーリーのカバーが追い付かない。癒しきれないダメージのたまった白菊へ、DESアシッドが降りそそがんとした、その時。
     ボロボロになりかけている見桜が体を張って一撃を遮った。
     だが、あと一撃。
    「約束をたがえる気か」
     いつの間にか矢まみれだった足が癒えていたシャドウが、白菊の前へ躍り出た。冷たい目で見降ろしながらも、身代わりとしてDESアシッドを受ける。
    「れ、礼は……言わぬぞ」
    「当然だ。武蔵坂は俺たちシャドウを滅ぼした仇だ、反吐が出る。金髪野郎に庇われた借りを返しただけだ」
     忌々しげにギィをみてから、シャドウは白菊から距離を取った。二度と庇う気はないといわんばかりの態度だ。
    「(……敵意はないとよかったんだけどな)」
     仇。その言葉に、シャドウへ説得を仕掛けても無駄だろうと、戦いは仕方がないことだと、唯織は悟った。

    ●窮鼠、猫を噛むか
     乾いた砂の上には、青い鎧の巨人が6体、横たわっていた。最初に倒れた1体は、すでに砂塵と化していた。
     仲間を守り切れなかったディフェンダーへ、よく似た姿の麗治が真直ぐにガントレットを構える。
     その指先から放たれた強酸は、狙いを違わず鎧に着弾して。強酸で砕かれた鎧をぼろぼろと崩れ落ちさせながら、青い巨体は力なく大地に倒れ伏した。
     からん、と音を立てて儀式剣が転がりおちると同時に、周囲に伏していたクロムナイトたちが砂塵と化す。

     あとに残されたのは、儀式剣と、8人と1人。

    「さて、あなたも逃がすわけにはいきませんね……」
     冷静に、飛鳥。かなりのダメージを負っているにもかかわらず、覇気のある声だ。
    「もとよりそのつもりだ、いくぜ!」
     やはりダメージを感じさせない勢いで、シャドウは漆黒の弾丸を形成すると飛鳥へ打ち出した。
    「させないよ!」
     大地を踏みしめ、『リトル・ブルー・スター』を構えた見桜が攻撃を受け止める。その体は傷だらけで、重い一撃に体が揺らぐ。
    「見桜さん!」
    「このくらい、大丈夫だよ!」
     集気法と共に飛んできたカーリーの声に、まっすぐな、よく通る声で見桜は答えた。その声が彼女自身の体を癒していく。
    「任せやした!自分は攻撃に回るっすよ!」
     ギィは愛刀『剥守割砕』を大きく振りかぶり、シャドウの闇に勝るほどの漆黒を纏った戦艦斬りを叩き込んだ。
    「闇は欠片も残さず灼滅するわ」
     アリスの周囲に五芒星型に配置された符が、白い光をはなちながらシャドウの周囲へ攻性防壁を築く。逃げるつもりはないと敵は言うが、事前策を怠る彼女ではない。
     麗治は動力剣を唸らせ、夜闇を凄まじい音で破りながら、騒音刃とシャドウに突きさした。飛鳥も鋼鉄拳でシャドウを狙う。
     ブラックフォームで蓄積した優位を削られ、シャドウは舌打ちした。
    「手加減は、せぬぞ!」
     ふらふらになりながらも、白菊は『品物比礼』から、剃刀の如く鋭い突き攻撃を繰り出した。サーヴァントのまつり二号は、主人をけなげに癒している。
    「……仕方ないか」
     唯織は小さく呟いて、黒死斬を放った。

     生き残るために、シャドウも必死だ。手心は一切なかった。
     トラウナックルで再び体力の減っている飛鳥を狙う。しかし、飛鳥はドレスを翻しながら、本能的に回避した。
    「我が身、既に鉄なり!我が心、既に空なり!」
     断罪輪を振り回して独楽のように舞いながら、抗雷撃で反撃をする飛鳥。
     その一撃は外れたが、勢いにシャドウがひるんだ隙に、ギィのレーヴァテインが体力を、唯織のティアーズリッパーが守りの闇を削り、麗治の蛇咬斬が動きを鈍らせていく。
     相当量の体力を回復していたとはいえ、介入がなければいずれ倒れるほど弱っていたシャドウだ。
     灼滅者たちの攻撃の前に、徐々に弱っていった。

    ●残された謎
    「お前らごときに──っ」
     執念のデッドブラスターが、今度は飛鳥を捉えた。ダンスのようなステップが止まり、ゆっくりと膝をつく。
    「ごときに、何かしら?」
     静かな声に怒りをたたえながら、アリスは純白の光を集わせ、す、と指をシャドウに振り下ろした。
     悪しきものを滅ぼすおびただしいほどの光の束が、シャドウに降り注ぐ!
    「ぎゃああぁぁアァあ!」
     一度は命をつないだ闇は、断末魔の叫びをあげながら、光の前に粉々に砕け散った。

     ――敵の気配が消えたことを確認して、麗治は甲冑を解く。
    「灼滅完了、だな」
    「厳しい依頼だったわね」
     アリスは倒れた飛鳥に手を貸し、助け起こした。
    「……ありがとうございます、アリスさん」
     ぼうっとした表情で起きあがりながら、飛鳥は周囲を見渡した。
     無造作に大きな儀式剣が地面に転がっている。小柄なカーリーが、それをひょいっと拾い上げた。
    「よいしょ、回収も完了だよ!」
    「何かわかるといいんだけどな」
     唯織は剣をまじまじと眺めた。学園に持ち込んでなにかわかればよいのだが。
    「ま、廃墟に長居は無用っすよ」
     唯織の肩を叩きながら、ギィが言った。カーリーと麗治が頷く。
    「そうだねー、かえってご飯♪ごはんたべよ♪」
    「……オレも腹が減ったな」
     長期戦に消耗した灼滅者たちは、明るい会話を交わし合いながら、戦場を後にする。
     ただ、最初から、言葉少なだった見桜は。
    「(正義とか、正しいとか、苦手だ……)」
     やはり黙したまま、クロムナイト達とシャドウを灼滅した場所を静かに立ち去ったのであった。

    作者:東加佳鈴己 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年6月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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