●warning!!!
教壇に立つ鷹神・豊(エクスブレイン・dn0052)の表情は険しかった。いつもの事ではあるが、普段とは異質な、何かもっと複雑な感情の入り混じった険しさだ。
あのロード・クロムが、朱雀門高校の全生徒をデモノイド化する暴挙に出た――。
朱雀門に留まり、スパイ活動を行っていた生徒の一人が命からがら脱出して持ち帰ったその一報が、ルイス・フロイスを通して武蔵坂の耳にも入ったのだった。
「朱雀門高校はロード・クロムが掌握した事になっていたが、重要な部分は敢えて朱雀門に残ったルイスのシンパが握っていたのだそうだ。情報収集を妨害された爵位級ヴァンパイアは、胎蔵界戦争の時期を察知できなかった、と……成程な。好機であったにも関わらず、奴らが横槍を入れてこなかった原因はそこにあったわけか」
クロムもここに来てようやくスパイの存在に勘づいた。
そして、冒頭の暴挙につながる。
「当然デモノイドは増える。デモノイド化の素質がない生徒は……死ぬ。誰がスパイか分からんなら全員殺しちまえってか? ふざけやがって……このまま手をこまねいて待ってはいられない。俺達の予知が利かない状態ですまないが、調整が終わる前に朱雀門高校へ突入願いたい」
情報が正しければ、朱雀門高校内部の戦力はデモノイドのみのはず。
力押しでの制圧もけして無謀ではないだろう。
作戦の目的は、朱雀門高校のデモノイド勢力の打倒だ。
調整中のデモノイド達を灼滅できれば、戦力の増強に歯止めをかけられる。
「可能ならばここでクロムの野郎にもきっちり引導を渡したい所だが、奴が校舎内にいるか否かは未確定だ。もしも発見できれば大手柄。『ロード』である奴を灼滅すれば、爵位級ヴァンパイアにも一泡吹かせられるが……」
校舎内のどこにデモノイドがおり、どこに調整中のデモノイドがおり、どこにロード・クロムがいるかといった情報は一切ない。
主な捜索場所、捜索の方針や方法、それらの指針を明確に定め、迅速かつ的確に行動する事が求められる。時間をかけすぎれば、爵位級ヴァンパイアの軍勢が増援に現れるかもしれない。
「時間内に調整中のデモノイドを全て灼滅する事を目標の一つとしてくれ。そしてクロムの野郎だが……『いる可能性が高い』というだけで『絶対いる』とは言えない状況だ。奴のみに固執する事は避けたいが、いるならば是が非でも灼滅すべきだろう」
ロード・クロムは状況が不利となれば撤退する危険もあるため、逃走対策も必要だ。
1チームのみでこれら全てを行う事は不可能だろう。
ある程度他チームと連携し、作戦にあたるのが理想形となる。
「朱雀門が壊滅した事で、爵位級ヴァンパイアは日本の情報を得る手段を失った。クロムは失策によって相当立場が危うくなったのかもしれん。先のシャドウ襲撃といい、いよいよ焦って暴走し始めたとすると見事な醜態ではあるが……あまり笑えんな」
クロムナイトを量産し、数々の非道な実験を繰り返した男、ロード・クロム。
その末路はいかに。はたまた、この窮地を脱してみせるのだろうか。
これまでに関わってきた事件を思い返してか、鷹神はいやに苦い顔をしていた。
参加者 | |
---|---|
風宮・壱(ブザービーター・d00909) |
楯守・盾衛(シールドスパイカ・d03757) |
蜂・敬厳(エンジェルフレア・d03965) |
嶌森・イコ(セイリオスの眸・d05432) |
関島・峻(ヴリヒスモス・d08229) |
漣・静佳(黒水晶・d10904) |
庭月野・綾音(辺獄の徒・d22982) |
冠木・ゆい(ポルトボヌール・d25508) |
●1
朱雀門高校は燃えていた。
「……初めて生徒会長さんに出会ってから、ずっとご縁があって、一度来てみたかったのよ」
――でも、こんな事になるとは思ってもいなかった。漣・静佳(黒水晶・d10904)は噴煙を見上げ、全てが始まったあの夜へと想いを馳せた。
正面班が攻撃を開始して間もなくの出来事だった。双眼鏡を覗いた楯守・盾衛(シールドスパイカ・d03757)は、仲間の破壊工作が予定通り進んでいる事を確認する。グラウンド近くの塀を乗り越え門外から侵入した各班は今、各々の目標施設をめざしていた。
「目が醒めたら青モップ怪人デシたとか人生山谷あり過ぎッてナ。モップだけに人類のお掃除道具で使い倒される前に、パッパと片してやろうかネ」
「ああ……」
ルイスに貰った地図を検討し直していた関島・峻(ヴリヒスモス・d08229)は、おい話しかけるなと盾衛に目配せした。兎の着ぐるみ姿の変態に絡まれては気が散る。案の定、兎はニヤニヤ笑うだけだが。
「よく考えたら内部に詳しいルイス達が離反しているのは敵も承知の筈だよな。改築を行ったり、逆用して罠を仕掛けていてもおかしくない」
「確かにあんまり頼らない方がいいかも。無線も通じないし……」
冠木・ゆい(ポルトボヌール・d25508)が不安げに頷く。意外ではあったが、念のため笛を持ってきたので抜かりはない。その時、DSKノーズでの索敵を試みていた庭月野・綾音(辺獄の徒・d22982)が訝しげな顔をした。
「血の臭いがする」
五感を研ぎ澄まし、周囲を警戒していた嶌森・イコ(セイリオスの眸・d05432)も同様に感じるという。濃厚な鉄の臭いに微かに混じる、甘酸っぱい腐敗臭。その異常な臭気の元凶は目標の一つである武道場のようだった。扉は一応閉ざされているが、壊れている。隙間から臭いが漏れているようだ。
あの時救えなかった彼女を想い、逃げずに勇気を振り絞って来た。
だが扉の向こうの光景を思うとゆいは泣きそうになった。だってこの臭いは……人間の死臭だ。
「……入るよ」
気遣うように、風宮・壱(ブザービーター・d00909)が一声かける。迷惑かけない様に頑張らないと。そう思ってゆいが頷くと、盾衛が勢いよく扉を開け放った。
「突撃★隣の朱雀門! 学食メニューは血のフルコースかオラァン!」
武道場の床一面に乾いた血が広がっていた。
「メンゴメンゴ、シャレになンねェわコリャ」
言葉とは裏腹、盾衛が珍しいほど率直に顔をしかめた。髪……人の髪が、固まった血とともにこびりついている。入口には壊れたバリケード。窓には板が打たれ、デモノイド化装置は見当たらない。死臭の元は、床に点在する人間の残骸だった。壁際に寄せられた指や耳や臓物の中に、人体模型のように美しく解剖された胴や頭部が安置されていた。
「これでも綺麗にした方なんだ。片付けは苦手でね」
中央に、クロムではない人物がいた。血塗れの白衣がいやに似合う、中性的な黒髪の青年。惨状を前に立ち尽くす一行を見た彼は、青白い美貌に冷たい微笑みをたたえ、肩を竦めた。
●2
「……ルイス一派が救出に来るなら真っ先にここだろうとは思ったけど、お使いの灼滅者か。ご苦労様、歓迎するよ。でも少し遅かったかな」
頭に疑問だけが渦巻いていた。
誰だ。何の話をしている。そして何より、これはなんなんだ。
出かかっている答えを否定したかった。とても受け入れ難く、あまりに残酷な考えだった。
「酷い……ひどい、何てひどい事を」
綾音がうわ言のように呟く。眼前の青年から漂うむせ返るような『業』の臭いが、全てを肯定している。生存者へかける望みを一瞬で打ち砕く壮絶な処刑場。スパイの一人が、命からがら脱出し――その言葉だけがゆいの脳内でぐるぐる回る。
「ヒトの感覚だとそうなるか。ごめんね、暇だったから」
「蒼穹を舞え、『十八翅戦蜂帝』!」
宣言と共に蜂・敬厳(エンジェルフレア・d03965)は武装し、音を遮断した。立て籠もる仲間の救出など依頼された覚えはないし、此方に責任はない。だが、敬厳も峻も無念を感じずにはいられなかった。あと少し報せが早ければと。惨すぎる。こいつらはどれだけ奪うのか――。
「蜂家十八代当主、敬厳がお相手致す。お主も名を名乗れ」
「IDが無いと不便だったね。僕はロード・サス。おいで」
やはりクロムと同じデモノイドロード。サスがマスクを装着すると、天井から何か落ちてきた。二体のデモノイドが灼滅者達を挟む形で退路を断つ。
「ロード・サス――貴方には、眠って貰う、わ。それが餞だから」
静佳の放った光が血塗りの床に天魔の法陣を描き、敵を退ける。不快感に毛を逆立て、尻尾の輪を光らせながら威嚇するきなこを宥め、壱は眼前のデモノイドの胸に炎を纏った拳を突き入れた。硬い。
「今回の事、スパイがいるにしてもあまり良い手とは思えないな。クロムはどうしちゃったの?」
「さあ? 彼は二面性が激しいから。内心怒り心頭だったのかもな……だから僕がここの制圧を任された。だから期待に応えた。死ねない切り方をどこまで続けられるか試してあげた」
デモノイドが放つ死の光線から後衛を庇っていた壱は、踵骨腱に致命的な痛みを覚え、バランスを崩して転倒した。寄生体を纏い、メス状に変形したサスの指から壱の血が滴っている。
「ところで君はサッカー部かバスケ部にいた事はないかな。そこの彼は食生活が偏っているし、君達は全体的に寝不足。朝まで作戦会議でもしてたかい」
「……口だけじゃないってことか。言われてるよ関島センパイ」
「ロードに健康診断されるとは驚きだ」
軽口を交わしつつ、壱はイコの手を借りて立ち上がった。清澄な氣が腕から流れこみ、脚の痺れが弱まる。綺羅星の双眸はこの惨状を前にして一切の負を抱かず、凛と冴えていた。その芯の強さが頼もしい。二人の横を真珠色に輝く枝状のオーラが通り抜けていく。
「峻殿、まずはこやつからじゃ!」
敬厳の呼びかけに素早く呼応した峻の帯が枝を追尾し、蒼い巨体を共に絡めとった。
「これも朱雀門の生徒なの。これがロードクロムの望んだ成功作なの」
これでは死んでいるのと同じだ。痛みも苦しみも無く暴れるだけのデモノイドを十字架で殴りつけ、綾音は言った。中庸な声音のどこかに責めるような色が滲んでいる。
「実は僕もあまり見分けがつかない。でもこの子達は前からいるから違うよ」
「……ねえ、『不具合』を起こして実験から脱走したデモノイドに気づいてた? 『彼女』はあの日、廃工場で抗って泣いてた」
「ああ……君が処分してくれたのか。稀にある事故さ。可哀想だったね」
可哀想、の言葉は一体誰に向けられたのか。その一言はかつて同様に『失敗作』として廃棄されかけた綾音自身の心にも突き刺さる。
「貴方に同情なんてされたくない」
秀麗な横顔に悲しみを秘め、首を振るう綾音を見て、ゆいは涙が出てきた。躊躇いを殺し、サスが餌のように撒く回復薬を貪るデモノイド達を鬼の拳で止める。二年前、共に事故に関わった彼女達の心情は察するに余りあった。
感傷に浸ってる場合じゃない。俺がしっかりしないと。壱は己の頬を叩き、脂汗を拭う。
「きなこは二人の傍にいてあげて。俺達はあっちだ」
「承知ですっ。入口側はわたしにお任せを!」
壱とイコは前後に分散し、サスを守るデモノイド達をそれぞれ引き受ける。同時期、別件で不完全体を目にしたイコは、あんな終わりは迎えさせまいと強く決意していた。醒めずに睡らせるお役目は担って下さる筈、と他班に想いを託す。
「先程からご親切にして下さりますけれど、狩りの場に情けはご無用。手練の方とお見受け致しました故に、謹んで挑ませて戴きます。クロムさんの野望も、デモノイド化という人格と魂を穢す所業も、此処で潰えさせます……!」
「強そうに見える? それはどうも……では慎んでお相手しようかな」
思えば、探索予定であった食堂や倉庫も物資が豊富で籠城に使われそうな場所だった。ロード・サスと遭遇する運命は選んだ時点で決したのだろう。それが与えられた役割ならば、闘うまで。
敬厳達が速攻で壁を撃破しようと動く中、盾衛はサスの牽制を重視し、分解延長した七曲を頭上から叩きつけた。サスも冷静に応じ、鎖を跳ね飛ばす。
「ドーモ。サッチャン=サン。オレサマが急患チャンだァ、診断書寄越せゴラァ!!」
「君の悪い所は診るまでもない。脳だ」
互いの口と刀が丁々発止と切り結び、見えない斬撃の応酬で甲高い金属音が響く。その合間にも投擲される薬瓶を壱の盾が砕いた。強酸性の薬品が全身にかかり、両脚の肉を溶かす。静佳が即応急処置を施すも、包帯代わりのベルトはすぐに厭な色の膿で染まる。
震える両脚を見て、相当無理して立っているのだと察した。殺傷率の高いデモノイドの攻撃は壁役に激しい負担を強いている。
峻もデモノイドには良い思い出がなかったが、綾音やゆいに止めをささせるのはあまりに酷だ。敬厳と共に率先して動き、その役割は引き受けた。
●3
「ああ……ついに死なせちゃったか。残念だ」
寄生体の残骸を眺めるサスの表情は読めないが、あながち嘘とも思えない。彼が配下を使い捨てるタイプではないらしい事にゆいは複雑な思いを抱いた。
「ロードにも色んな人がいるんだね……」
「慣れれば可愛いよ。人間よりずっとね」
だが、彼は彼なりの、ダークネスらしい倫理観に則っているだけだと気付く。抱きしめていたきなこを放し、赤黒い床を蹴った。
「暴虐はもう終わりだよ。だってあの日、きっと私達が酷い実験を止めてみせるって誓ったもの……!」
温かい雨がイコの頬を打つ。ゆいの涙だと解った時、続いて綾音も流星の如く前に飛びこんできた。
「これ以上の悲劇は断ち切る……断ち切ってみせるよ!」
先輩方もきっと今、何か超えるべき高い壁に挑もうとしている。然らばそのおこころを支え、護ることこそ――わたしの矜持。頸部や手首の動脈を正確に狙ってくるサスの刃を紙一重で受け、噴き出た血すら白銀の炎へと変えてイコは踏み止まる。
掃討を想定して用意した列攻撃は全て死に技と化している。正直な所、非常にやりづらい。静佳の後ろ盾を得た壱とイコが重傷もやむなしの覚悟で壁に徹す中、綾音とゆいは必死の執念で敵の脚を集中攻撃した。綾音の振るった十字架が青年の貧弱な脚を殴打し、ぼきりと厭な音を立てる。
サスがにわかに眉を寄せ、寄生体で全身を覆う。そこで二人はいったん退き、敬厳と峻に攻撃の主軸を引き継いだ。すかさず受けた峻が怪物と化した躰に注射器を突き立て、敬厳が光の枝に包まれた拳で猛連打を浴びせた。一度道が拓けば、誇りと使命感で暴虐を砕かんと進む彼らの意志が揺らぐことはない。
「犯した罪は背負ってもらうよ」
安堵と同時に、毒と強酸で溶解しきった脚の感覚がすっと消えた。気づいたら壱は膝をついていた。幾ら力を入れても一歩も動けず、痛みでやけに鮮明だった意識が急に遠くなる。
明滅する視界の端で赤く染まる壁に、かつて生徒が貼ったのだろう表彰状や大会のポスターを見た。皆、ここで確かに生きてきたんだ、と思う。
護りの盾が尽きる頃には、敵も纏わりつく影の犬から急所を庇うのがやっとだった。寄生体で膨れ上がった腕で煩わしげに盾衛を打ち払ったサスは、変身を解除し、菓子でも貪るように薬を噛み砕き始めた。その手を静佳の裁きの光が撃ちすえる。死期を悟ったか、落ちた薬を拾いもしない。
何処か虚ろな瞳を見た静佳は、この病的な青年の名に覚えた引っかかりの正体に気づいた。
「本で読んだの、思い出した、わ。サスは、ステンレス鋼。クロムのお仲間、だったわ、ね」
「…………」
サスの反応を見て綾音は直感した。
「何処かに居るのね。彼は」
「ああ。だが恐らく、どんな手を使っても逃げると思う」
この期に及んでもなお卑劣な作戦を用いかねないというクロムに、敬厳は激昂した。
「自身の行動に巻き込まれた者達の思いを受け止めるのが、上に立つ者として当然の責務じゃ。だからわしはふさぎ込んだり、悩んで足を止めたりはせぬ。お主の主君にはその覚悟がないのか!!」
――願わくは、私達の刃が彼に届きますように。
偉大であった祖父を偲ばせる激しい一喝と共に、薔薇の茎を思わす敬厳の光剣が全てを照らすような一閃を放つ。寄生体を纏った腕を巨大な刀とした綾音も逆方向から袈裟斬りを放ち、サスの胸を致命的な深さで引き裂いた。
「なあ、ずっと思ってたが、お前やけにお喋りだな」
「……クロムはもう末期かもしれないからね。自棄が伝染したかな」
「キメてットコ悪ィケド、テメェを五体満足でイかせちャ筋が通ンねェ」
盾衛の自在刀が敵を雁字搦めにした。先程は何て場違いな扮装で来てるんだと思ったが、案外そうでもないかと、峻は緋色に染まる槌を構えながら思った。白かった左耳まで血に染め、三白眼をぎらつかせる巨大な黒兎は、この終末的悪夢に一番馴染んでいる。
殺人衝動も偶には役に立つものだ。
「あばよセンセイ。信頼と実績の楯守外科で施術は一秒、お代はテメェの一生ッてナ」
四肢を切断され、目を見開いたまま絶命しているサスの瞼を一応閉じてやる。優秀な人材だったには違いない彼は、何を思い王に殉じたのか。峻は少しなら解る気がした。
救えないなら殺す。日常的な事だ。背負う覚悟と共に疾うに身につけた――思えば何かが変わったのは阿佐ヶ谷のあの夜だ。手当を施す静佳の元へ駆け寄り、峻は壱に肩を貸す。
「帰る迄の我慢、よ。立てる、かしら」
「暫くバスケは出来ないな……有難うセンパイ達」
「働きは充分だ。撤退するぞ」
有無を言わせず断じた峻は返り血で全身が赤い。その横顔が誰かに似ていると壱は思った。ああ、鷹神だ。教室で苦さを噛み殺していた彼にそっくりだ。
放心状態のゆいを手びいて外に出る。皆の了承を得たイコは貧血で眩暈を覚えながらも、巨大な棺と化した武道場に火種を蒔いた。
「瑠架さんはこの現状を如何思うでしょうか……」
曇りなき心で戦線を支えたイコの雪肌に、ふと憂いの翳がさす。両の手を組み、じっと祈りを捧げるイコの隣で静佳もまた、遠い昔に出逢った騒々しい二人組が憤る声を聴いた気がした。
ねぇ、ヤズト、クロ。
貴方達がいたらこんな暴挙、許さなかったでしょうね。
燃えている。朱雀門が燃えている。長きに渡る因縁が、暴虐の城が崩れ落ちてゆく。
「……ひどいよ……。皆、どんな人だったの? どうしてこんな事できるのっ――!!」
ロード・クロムの灼滅を告げる校内放送が流れだした。だが、子供のように泣き喚くゆいを慰める者は誰もいない。
今は弱さが必要だった。一番悲しみに寄り添える者が思い切り、大声で泣いてやらねば。ここに散ったルイスの密偵達も浮かばれまいと、そう思った。
作者:日暮ひかり |
重傷:風宮・壱(ブザービーター・d00909) 死亡:なし 闇堕ち:なし |
|
種類:
公開:2017年7月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 6/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|