修学旅行2017~今帰仁城をめぐる

    作者:佐伯都

     今年の修学旅行の日程が、7月4日から7月7日までの4日間に決定しました。
     この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。
     また、大学1年生と大学4年生が、同じ学部の仲間などと親睦を深める為の親睦(卒業)旅行も、同じ日程・スケジュールで行われます。

     修学旅行の行き先は沖縄本島です。
     これには、先日のアッシュ・ランチャーによる上陸作戦の際に、沖縄に取り残されたアンデッドや兵士がいないかの捜索と安全確認を行うという理由もあります。
     が、勿論、旅行先では沖縄料理を食べ歩いたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツやトレッキングなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
     さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!

    ●修学旅行2017~今帰仁城をめぐる
     沖縄県は名護市の西、今帰仁村(なきじんそん)。琉球王朝より前に沖縄に存在していた北山王国の王・北山王の居城跡である今帰仁城(なきじんグスク)跡があることで知られている。
    「日本語ではグスクに『城』の字があてられますけど、古いものには御嶽(ウタキ)……琉球信仰における聖域が高い確率で含まれることから、軍事要塞や居城という単純なものではなく、もっと多様な場所だったのではと考えられているみたいですね」
     机の上へ分厚いガイドブックを広げ、松浦・イリス(ヴァンピーアイェーガー・dn0184)は色鮮やかな写真のうちの一枚を指差した。
     『琉球王国のグスク及び関連遺産群』として世界遺産にも指定されている、首里城に匹敵する県内最大規模のグスク・今帰仁城。緑豊かな高台の斜面に築かれており、日本の城郭のように直線や角ではなく、曲線を描く精緻な石垣が特徴的だ。
     今帰仁城の正門である平郎門(へいろうもん)をくぐると、7段、5段、3段の繰り返しになった通称『七五三の階段』と呼ばれる石畳の参道に出る。1月中旬から2月中旬には参道の両側に植えられたカンヒザクラが見頃を迎え、花見の名所としても知られているようだ。
     平郎門のすぐ左手には大隅(ウーシミ)への入り口があり、馬の歯や骨が大量に出土したことから、馬の訓練場だったのではないかと考えられている。
    「なんでも大隅の中央にある洞窟は非常時の抜け道に使われていたのでは、って伝説もあるみたいですよ。グスクの東に流れている志慶真川(しげまがわ)の崖の中腹に出るらしい、とかなんとか」
     今は入ることができないのが残念なところだろう。
     さらに平郎門右側の階段を登った先にはカーザフ、自然の険しい谷間を利用して掘として取り込んだ落差を見ることができる。
     グスク最上部である主郭、通称本丸と呼ばれる高台からは城の東を流れる志慶真川、ここの険しい谷に沿って志慶真門郭(しじまじょうかく)という城壁と裏門が築かれているのが見えるはずだ。
    「なんでも80メートルもの断崖絶壁の上にあるのだとか」
     これは間違いなく難攻不落ですね、とイリスは少し楽しそうだ。主郭は城主の住居跡であり、山北王と今帰仁監守の住居跡を見学できる。
     女官達の住居跡・御内原(ウーチバル)の北からは、よく晴れれば与論島が見られるはずだ。敷地の東に隣接するテンチジアマチジの御嶽(ウタキ)は琉球国造りの神が天下る聖地であり、石垣で囲まれたそこで祈願する人の姿は今も絶えない。
     他にも祭祀の場とされていた大庭(ウーミャー)、天然の岩盤のすき間を利用した険しい旧道を登れば、当時のグスクの様子や行き交う人々の姿を想像できるだろう。旧道の両側には季節の植物が彩りを添えているので、目も楽しいはずだ。
     今帰仁城だけでも見どころは満載だが、ちょっと見通しの悪い場所や身を潜めるにはよさそうな場所も多い。特に、先日のアッシュ・ランチャーによる上陸作戦の直後とあっては万が一、という事もあるかもしれない。
    「まあ軽ーく確認も兼ねて見回りしておきましょうか、ってことですね!」
     そう、あくまで修学旅行は修学旅行。
     琉球文化の情緒を楽しみながら、遠い昔に栄えた王朝に思いを馳せるのもきっと楽しいだろう。


    ■リプレイ

     斜面を見上げると、まぶしいほどの緑の草地の向こうに曲線を描く今帰仁城(なきじんグスク)の石垣が見える。燦々と降りそそぐ陽光の下、遠目にもとても精緻な石組みがされていることがよくわかった。
     城壁とか石垣という単語からはいわゆる四角形で構成されており、裾広がりでその上の多層構造の城を支えている土台――というものを想像するかもしれない。
     今帰仁城そのものは今は遺跡であるため往時の建物は存在していないが、野面(のづら)積みで組まれた石垣は上から見ると放射状に広がったいくつもの棘をもつ星型に似ており、角は直角ではなくすべてが曲線になっている。
    「これなんて言うんやっけ……そや、万里の長城や!」
    「やっぱり中国の影響を受けてるからなのか、何となく万里の長城に似てますね」
     随分長いですね、と感嘆を混じらせた声で呟いた想希に、悟が我が意を得たりといった表情で首肯した。
    「こんなめっちゃ長い道に城壁、俺もこんな城初めてや!」
     大蛇のようにうねる城壁、斜面の中腹を切り取って縦横にのびる石垣はなるほど万里の長城に似ているかもしれない。日本のものではない確かな異文化の匂いは悟の好奇心をくすぐるに十分だ。
    「ふふ、本州の城とは違っていて多少攻めあぐねますが……」
     前の首里城に続いて琉球の山城を攻めるとしますか、と続けた想希の顔には笑みがある。
    「おう、俺もガンガン攻めるで! たまには変わった城も攻めとかんと、いざって時に攻められへんしな!」
    「その意気です、悟。さて七……五、三。わ、本当にこの階段、七五三ですね」
    「ほ? なんかそういう割合なっとるんか」
     七五三が登りやすかったのだろうかとしきりに首をひねる悟に、想希は楽しそうに笑うだけ。どうやら想希からは答えが得られないらしいとわかると、こらジャンプし甲斐のある幅やで、と悟は幅跳びの要領で石畳を跳んでゆく。
    「……主郭に着いたら、もう少し北の方へ行ってみてもいいですか」
     七五三の階段すらそうなのだから、悟はそこに何があるのか知らないのかもしれない。あるいは旅行のしおりは読んだものの、端から覚える気がなかったのかもしれない。
     それは悟の怠慢ではなく、想希の口から聞きたい、それだけの事なのかもしれない。
    「海が見えるみたいですよ」
     ――それが自分の独りよがりでなければいいのだけど。
     少し試すような気分で続けた想希に、悟は石畳の途中であざやかに身を翻し、満面の笑顔を返してきた。
    「おう、城の果てまでいってみよや! ぱーっといくで!」
     想希と悟がにぎやかに石畳を登っていくのを横目に、織兎は都璃が用意してきた今帰仁城内部のマップを広げる。
    「世界遺産か~すごいな~! 外国っぽいし広い! でっかいど~!」
    「確かに、文化が違うせいか外国みたいだ」
     ふふ、とひとつ笑って都璃は兵郎門から続く七五三の階段を指さした。今は花を落としているものの、直線の参道の両側には青々とした葉を茂らせたカンヒザクラの並木が続いている。きっと桜の時期にはたいそう見応えがあるだろう、そんな気がした。
    「自然豊かな遺跡、と言う感じなのかな」
    「眺め良さそうだし、とりあえず上登ろう上! とりちゅんガイドブックお願い!」
     規則正しく積まれた石段を進むにつれ、小高い斜面に築かれた今帰仁城の姿が少しずつ広がりを見せてくる。並木の下で南国特有の強い日射しを避けつつも、織兎はどうにもあちこち気になるようだ。
    「お? あっちは何があるんだろ~」
    「地図を見るかぎりでは、この壁の向こうが大隅(ウーシミ)のようだ。……こらこら、ちゃんと前を見て歩かないと転ぶぞ」
     あっちへふらふらこっちへふらふら、180越えの織兎が20cmも身長差のある都璃にたしなめられている光景はなかなかに微笑ましい。
     ……織兎とはこの前まで同じ制服を着ていたけれど、もう大学生。その事実に何かこう、どこか心に穴があいたような気がしていたけれど織兎はやはりいつもの織兎で、都璃は内心ほっとする。
    「それにしても私達も大学生か、早いものだ」
     気分を変えるようにあかるい口調で呟き、都璃は地図を閉じた。石垣島のまぼろしの花の香、水族館であおく大きな水槽を前に沖縄フードを楽しんだ2年前の記憶。
    「前の修学旅行も最近行ったような気がするけど、そうだな、」
     早いなあ、と穏やかに続けた織兎の背中をすぐ後ろで追いながら、都璃はただ黙って微笑んだ。
     左手に大隅、右手にカーザフをそれぞれ仕切っている石垣を見ながら斜面を登ってゆくと、やや急峻な坂に組まれた旧道。坂を登りきったその向こうは大庭(ウーミャー)、主郭、志慶真門郭(しじまじょうかく)、そして御内原(ウーチバル)が続く。
     子供の脚には少々難儀な気がする旧道前で、翠は分厚いガイドブックを抱きしめたまま栞を見上げた。
    「あっ翠、なっ今帰仁城のこと、うんとお勉強してきたの……。しっ栞お姉ちゃん、案内、するの」
     あたふたと言を次いだ翠に栞が小さく首肯を返した。うすい微笑に瞳が細まる。
    「行き、ましょう」
     修学旅行という学校行事とは言え、久方ぶりに義姉と二人きりの時間を持てることは翠にとってただひたすらに嬉しいことだった。しかし弱気で内気な翠には、それを上手に言葉にして栞に伝えることはとても難しい。
    「案内、よろしく」
     それでも、そんな翠の想いは十分に伝わっているのだろう、栞は宥めるようにやや目線の低い義弟の頭を撫でている。
     ぽふぽふなでなで、無言のまま頭に置かれる優しい手が優しい言葉をかけてくれているようで、つい翠の目へ涙がにじんだ。嬉しい。
    「う、うん、ありがとう……嬉しい」
     岩盤の隙間を利用して整備されている旧道は、万が一敵に攻め入れられても容易に駆け上がれないよう登りにくい工夫がしてる。かつての北山王や城郭内に暮らした人々もこの道を通ったはずだが、そちらの利便性よりももしもの時の備えのほうが大事だったのだろう。
    「えと、お花は、一月中頃から二月に、かけてが、カンヒザクラ……秋はツワブキ、ショウキズイセン。イボイモリが出ることも、あるみたい」
     旧道の両側に生い茂る草や高い幹の梢など、訥々と翠が解説しては栞が首肯を返してくれていた。ただひたすら栞が喜んでくれればと考え、片っ端からガイドブックを調べたおし頭に入れてきている。
     時間内にすべてをと思うあまり急ぎ足になったのか、微妙に傾いた段へ足をかけた瞬間、翠が足をすべらせた。栞が息を飲み、転倒の痛みよりもむしろ転んだこと自体に驚いた翠が茫然とその場へうずくまる。
    「だいじょう……ぶ?」
     気遣わしげな声にようやく我に返ったのだろう、遅れてやってきた、膝をすりむいた痛みと情けなさが胸の奥で絡まり、涙になった。
    「せっ折角、栞お姉ちゃんに、ほっ褒めて、貰えたのに……いっ痛いよ……」
    「翠」
     まぶたへ盛り上がった涙が頬を濡らす前に栞が手を伸ばす。
     痛いの痛いの飛んでいけ、とすりむいた箇所に触れぬよう翠の膝をなでて、安心させるように笑みを強めた。
    「私、ちゃんと、います」
     ……ずっと一緒にいられない事もあるかもしれないけれど。それでも、これからも私とあなたはずっと一緒。離れていても、心はずっと一緒。
    「いき、ましょう」
     そんな小さな願いは翠も同じで、差し出されたしろい手を握りあい、そして最後に涙を拭いた。もう転ばないように手を繋いで、急がないで、ゆっくりと。
    「毎年駅番白虎隊の修学旅行生は首里城を巡り、我々の領土としての印に草を置くのが慣例――」
     重々しくそんな台詞を口にした舞依の後ろで、うんうんと靜華が腕組みをして同意した。【駅番】メンバーにおける毎年の修学旅行の任務(と言う名の慣例)、首里城内に草の陣を敷く……というものがあったのだが、今年は残念ながら首里城見学が修学旅行の行程に含まれていない。
    「だがしかぁし! たかが首里城見学がなかった程度で領土拡張を断念する駅番ではないわっ」
     ではないぞー、と靜華がやはり背後でタイミングよく唱和する。
     はるか遠くに与論島がうかぶ青い海を見下す御内原の高台でなにやら気合い十分な舞依の様子にやや気圧されながら、邪魔をしないよう栞と翠が急ぎ足で通り過ぎた。藪をつついてナントカとか、君子危うきにナントカとか、二人が考えていたかどうかは神のみぞ知る。
    「首里城の代わりに今年は今帰仁城がある!! ……要するにこれは我々にさらなる領土拡大をせよとの事に違いないわ!!」
     そうだそうだー、とこれまた靜華がシュプレヒコールをあげた。空は快晴、海の波は白く、さらなる領土拡大には絶好の日和に間違いない。しかも場所は首里城と同じく世界遺産の今帰仁城、駅番領土としてこれ以上の条件はないだろう。
    「気合い入れていくわよ出島! おしにん!!」
    「了解プリンセス! おしにん!!」
     なぜ靜華が出島なのか、なぜ舞依がプリンセスなのかは激しく謎だがなんか当人同士はわかっているようだしすごい盛り上がっているみたいなのでここはそっとしておこう、と悟は想希と共に御内原の北へ向かうことにした。やはりさわらぬ神にナントカとか考えていたかどうかは彼等にしかわからない。
    「フハハハハハハッ! これは絶好のフォトスポット……駅番土産の俺様ブロマイド撮影を行うにふさわしい!!」
     何しろこの美しい俺の最新オリジナルブロマイド、きっと泣いて喜ぶに違いない! と自信満々で輝く太陽を背に、靜華はどこからともなく撮影セットを取り出し華麗なジャケットプレイを次々ファインダーに収めていく。
    「フフフ……この俺様の美しさに見とれているのかプリンセス。なんて罪な俺……」
     うっとりと目を細めていた舞依が自分の肉体美ではなく、南国特有の海の青さにすっかり酔いしれていたなど靜華は知るよしもない。忙しいシャッター音でようやく我に返り、舞依は釘を刺した。
    「って、ちょっと出島、撮影はいいけどちゃんとマナーは守るのよ! あとやたら脱いじゃダメ」
     フハハハハ無粋なことを! と高笑いしながらさらにジャケットプレイを高速化してゆく靜華を思わず二度見しながら、イリスは御内原を志慶真門郭へ向かって抜けていく。
     主郭より一段低い場所にあるそこは、今帰仁城の裏門にあたる場所でもあり戦略上の要であったようだ。この周辺は城壁もほぼ原形に近い形で残っているようで、長い年月のうちに埋もれてしまった階段や段をなして造成されていた宅地跡、建物跡の発掘跡もあって当時の生活の様子が垣間見える。
     城壁のすぐ外は険しい崖になっており、イリスの耳へ志慶真(しじま)川が流れる水音が遠く聞こえてきた。今でこそ日中は多くの観光客が訪れるものの、そもそもが人里離れた遺跡である。ちょっとした物陰や見渡しにくい城壁の外にアンデッドが潜んでいてもおかしくない。
     一応そういう安全確認の目的もあるし、念のため、念のため。
     そう考え、やや崩れかけている石垣の陰からイリスが身を乗り出した瞬間。
    「――う、っひゃ」
     がつり、と鼻先をかすめ石垣に爪を立てたのは朽ちおちかけた手。バランスを崩し尻餅をつきかけたもののそこは灼滅者、一瞬で体勢をたてなおして封印解除し、腰からガンナイフを抜いた。至近距離からの零距離格闘。
     ぬらりと城壁の向こうから伸びあがったアンデッドの眉間へブレードを叩きつけ、流れるように回し蹴りへ繋げる。
     あっさり城壁の向こうの藪へ吹き飛んだアンデッドがそれきり起き上がってこないのを確認し、ほっと一息ついたイリスに渡里と晶が駆け寄ってきた。
    「まさかアンデッドが? そこに隠れていたのか」
    「大丈夫、一体だけのようです」
     武蔵坂の学生ではない一般観光客の耳を避けるようにイリスが小声で呟くと、晶は相棒の仮面をさしむけようとしていた手を下ろす。万一の事があった場合に備えて渡里はサウンドシャッター、晶は避難呼びかけ用にラブフェロモンを準備してきていたが、どうやらここでは使用に至らずに済んでくれたらしい。
     何事もなかったように主郭への道のりへ戻りながら、晶はふと尋ねてみた。
    「そういえばお土産はどんなものを買う予定? 参考までに訊いてみたいのだけど」
    「お土産ですか。そうですね……琉球ガラスのグラスとかがあれば。紅型(びんがた)染めのブックカバーなんかもいいですね」
    「何だ、食べ物じゃないのか」
     どういうことでしょう、と不思議そうな顔をしたイリスに、渡里はひとつ笑う。
    「花より団子、という気がしてね。おいしいザータアンギャーの店があるようだから」
    「……それはそれでお聞きしておきたい感じはします」
     イリスが胸元に抱えるガイドブックの付箋が沖縄グルメのページに集中していることなど、渡里にはお見通しだったのかもしれない。
     そこから大庭へ抜けるイリスと分かれ、渡里と晶は主郭へ上がった。
     ここまで来れば、小高い丘をそのまま利用して作られているため標高は100mほどになる。城、という言葉から連想されるような天守閣はないが、北山王と今帰仁監守の住居跡が残っている。
    「……まさかとは思うけど、ここに黄金闘技場の入口ができてたりとかないでしょうね」
    「いやさすがに、いろいろ集まりやすい沖縄だからって」
     それはちょっと考えすぎではと続けようとした渡里が、いつになく深刻そうな晶の表情に途中まで出かけていた言葉を引っ込める。
     まあ、相手はダークネスだ。彼等のやることは時々想像の斜め上をきりもみ回転する事もないわけではないので、警戒だけはしておくに越したことはないのだろう。
    「うん……まあ、そうだな。一応気をつけておこうか」
    「折角の修学旅行なのだし、楽しみが削がれるのは面白くないじゃない。備えあればなんとやら、というやつよ」
     せっかくこんなにどこもかしこも綺麗な所なんだから、と晶が指差した向こうには、ふたつの石灯籠に守られた、火の神・今帰仁城監守来歴碑記が建っている。そしてその背景には輝く太陽に照らされた、どこまでも続くあかるい紺青の海。
    「ふふ、これでここも人知れず我々の領土ね」
     吉祥寺の皆に良い報告ができるわと呟いて、舞依ははるか地平線近くの与論島に目を細める。御内原の片隅に草を一束安置し、いまだ飽きもせずフォトジェニックなポーズを追求している靜華へ、そろそろ移動するわよと声をかけた。
    「絶景ですね」
     強い日射しを遮るように目元へ手をかざし、想希は感嘆の声をあげる。
     なるほど、ここで山と海の両方が混ざり合っているのだ。琉球神話における国造りの神が降臨するのも分かる気がする。
    「おお、きらっきらしとるで! 沖縄の海はやっぱすごいな、そら神さんも気に入るで」
     そして想希とも2お城ちゃーん制覇や、と笑った悟に、想希もまた笑顔を返した。
     遠い遠い海の音が、風に乗って届いている。

    作者:佐伯都 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年7月5日
    難度:簡単
    参加:10人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ