「……先ほど、元朱雀門高校の会長、ルイス・フロイスから連絡があった」
集まった灼滅者達に、神堂・妖(目隠れエクスブレイン・dn0137)は陰気な声でそう告げた。
「……ルイス・フロイスと袂を別って爵位級ヴァンパイアについたロード・クロムが、朱雀門高校の生徒全てをデモノイド化するという暴挙に出たみたい」
その報告に、教室にざわめきが広がる。
「……この情報は、朱雀門高校に留まって、ルイス・フロイスのスパイをしてた生徒の一人が、命がけで脱出してもたらしたもの。信頼性は高いはず」
ルイス・フロイスが表舞台から姿を消した後、朱雀門高校の組織はロード・クロムが掌握した事になってはいたが、組織の重要な部分は、敢えて朱雀門に残ったルイス・フロイスのシンパが握っており、ロード・クロムの情報収集を邪魔していたのだという。
その結果爵位級ヴァンパイアは、武蔵坂学園がノーライフキングと決戦を行った『胎蔵界戦争』の時期を察知する事ができず、武蔵坂学園を攻撃する絶好の機会を逃すことになったのだ。
「……ロード・クロムは、その原因が『朱雀門内部にルイス・フロイスのスパイがいる』からだと考えたみたい。……それで、自分に忠実な生徒も含めて全ての生徒をデモノイド化してしまうという狂気の行動に出たの」
ダークネスらしく、誰がスパイか分からないならば全員を殺せば良いと考えたのだろう。
勿論、全ての生徒がデモノイドになる素質を持っているわけではない為、デモノイド化せずに死亡する者も多いだろう。だがこのまま放置すれば、デモノイドの戦力が増強されるのは間違いない。
「……今、朱雀門高校に攻め込めば、調整中のデモノイドが動き出す前に灼滅する事ができるはず。……サイキックアブソーバーの予知が無い状態での突入作戦になるけど、ルイス・フロイスの情報が正しければ、朱雀門高校内部の戦力はデモノイドのみみたいだから、力押しで制圧する事も不可能じゃない」
そこでいったん言葉を切った妖は「これは賭けだけど」と前置きして、話を続けた。
「……可能なら、デモノイドの首魁の一人である、ロード・クロムの灼滅までできれば最上だと思う。……でも、ロード・クロムの居場所は特定されていないから、朱雀門高校内にはいない可能性もある」
それから妖は、今回の目的について説明していく。
「……今回の作戦の目的は、朱雀門高校のデモノイド勢力を打倒する事。調整中のデモノイドを灼滅する事ができれば、戦力の増強に歯止めをかける事が出来るはず。……それから、もしロード・クロムが朱雀門校舎内にいれば、クロムの灼滅も目指してほしい」
この戦いで『ロード』を倒す事ができれば、爵位級ヴァンパイアの勢力に少なくない打撃を与える事ができるだろう。
「……ただ、サイキックアブソーバーの予知が使えない以上、朱雀門の校舎内の何処にデモノイドがいて、何処でデモノイドの調整が行われていて、どこにロード・クロムがいるのかは判らない。……そんな状況でみんなを送り出すのは心苦しいけど、どんな場所を主に捜索するかとか、どんな方針で捜索するかは、みんなで決めて」
ただし、襲撃開始後時間をかけすぎれば、爵位級ヴァンパイアの軍勢が増援に現れるかもしれないため、素早く的確な行動が求められることになる。時間内に全ての調整中のデモノイドを灼滅する事が、最も優先度の高い目標になるだろう。
「……あと、ロード・クロムが校舎内にいるかどうかは分からないけど、もし存在していて、なおかつ不利な状況になれば、撤退する危険もある。だから、撤退させない為の対策も必要かも」
そこまでを行うとなると、1チームだけでの対応は難しいため、ある程度他のチームとも連携できるのが理想だろう。
「……クロムナイトを利用して、シャドウ残党のサイキックエナジーを奪おうとしてたことといい、ロード・クロムは手段を選んでいられない状況なのかもしれない。追い詰められたロード・クロムがこれ以上の暴挙に出る前に、彼の計画を阻止して」
そう言って妖は、灼滅者達を送り出したのだった。
参加者 | |
---|---|
華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389) |
神凪・陽和(天照・d02848) |
槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877) |
神凪・朔夜(月読・d02935) |
六藤・薫(アングリーラビット・d11295) |
黒嬢・白雛(天翔黒凰シロビナ・d26809) |
冬城・雪歩(大学生ストリートファイター・d27623) |
押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336) |
●突入
朱雀門高校の正門が吹き飛び、総勢40名の灼滅者達が、朱雀門高校の敷地内に雪崩れ込んでいった。たちまちのうちに、護りに付いていた6体のデモノイド達が蹴散らされていく。
「生徒会長のルイスからもらった見取り図によれば、こっちが生徒会室や校長室だよ」
冬城・雪歩(大学生ストリートファイター・d27623)が地図を片手に、校舎の一角を指さす。
「このままデモノイドと遭遇せずに済めばいいんだけどね」
神凪・朔夜(月読・d02935)が『スーパーGPS』で現在位置を確認しつつ呟けば、
「そうね。ロード・クロムを見つけるまでは力を温存しておきたいね」
双子の姉の神凪・陽和(天照・d02848)も同意を示す。
「デモノイドの灼滅は他の方々にお願いして、私達はロード・クロムをここで倒させて頂きましょう」
黒嬢・白雛(天翔黒凰シロビナ・d26809)の語る通り、彼らの狙いはロード・クロム唯1人。
同じく校長室や生徒会室等を目指す2つのチームと共に校舎内に突入した灼滅者達は、徘徊するデモノイド達を避けながら、探索を開始したのだった。
「チッ、スパイが誰か分からないってだけでこうまでしやがるとは胸糞悪くなる野郎だぜ。早いトコ見つけてとっちめてやらあ」
六藤・薫(アングリーラビット・d11295)が、徘徊するデモノイド達に目を向けながら、ロード・クロムへの敵意を剥き出しにする。
「! 正面から、クロムナイトが向かってくるっす! ……って、ちょっと多すぎじゃないっすか!?」
押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)が驚愕の声を上げるのも無理はない。精鋭であるクロムナイトが、なんと12体もこちらに向かってきていたのだ。
「ちっ、なんとかこいつらをかわして先に進もうぜ」
槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)は敵の手薄な箇所を探して目を走らせていたが、そこで目撃したのは、クロムナイトの集中攻撃を受ける詩夜・沙月の姿だった。
「仲間の危機は見過ごせないぜ!」
思わず沙月を庇いに入る康也。それを見て、灼滅者達は全員が戦闘態勢に移行していった。無駄な戦いは避けたいが、ここで仲間を見捨てていくことなど、できない。
「華宮・紅緋、これより灼滅を開始します!」
そして、華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)のその一言が、戦いの開幕を告げる合図となった。
●邂逅
「邪魔する奴はぶっ飛ばす!」
康也が、断斬鋏でクロムナイトの鎧を断ち切る。続けて、陽和の放った影が相手の青い皮膚を切り裂いていき、
「朔夜、後はお願いね」
「うん、任された」
双子ならではの息の合った連携で、朔夜が『玉兎』をクロムナイトに叩きつけた。強大な魔力を流し込まれたクロムナイトが、その身を内から破裂させる。
『ガ、アアア――!!』
仲間がやられたことで、残るクロムナイト達が猛り狂ったように暴れ出す。
「ロード・クロムを見つけるまでは消耗は避けないと……。円、ここはしのぎ切るっす」
ハリマは、霊犬の円と共にクロムナイト達の攻撃を捌き、仲間への被害を最小限に食い止めていく。
「ロード・クロムかぁ、ハンドレッド・コルドロンで倒せていれば、今こんな悲劇はなかったんだろうなぁ」
雪歩も、そう慨嘆しながらスカートをひらめかせてクロムナイトの攻撃を受け流し、隙を見ては拳や蹴りを叩き込んでいった。
「無理やりデモノイドにされた連中も、敵だったにしろ解放してやんねえとな」
薫は、自らの放つ風をある時は刃に、ある時は清浄な癒しの波動に変え、攻撃に回復に大忙しだ。
「そちらに回復の暇は与えません!」
ついに、紅緋の拳の連撃がクロムナイトの一体を粉砕し、
「さぁ……断罪の時間ですわ!」
白雛がクロスグレイブから放った白と黒の炎が、残るクロムナイトを焼き尽くしていく。
自分達が受け持った4体を灼滅し、周囲を見回せば、他のチームもそれぞれにクロムナイトを撃退したこところだった。
だが、灼滅者達に息をつく間は与えられなかった。彼らの向かっていた生徒会室や校長室、特別教室のある区画から、新たなクロムナイト達がこちらに向かってきていたからだ。その数、12体。いや――もう1人、クロムナイトの背後から悠然と歩み寄ってくる者がいた。
「やれやれ。第一陣の出荷が終わった後で、兵が足りないというのに。面倒なことをしてくれたものです」
その長身の青年は、ノンフレームの眼鏡を押し上げながら、溜め息をつく。
「ロード・クロム!」
かつてロード・クロムと遭遇したことのある紅緋が息を飲んだ。そう、目の前にいる知的な印象の青年こそが、今回の事件の元凶たる、ロード・クロムなのだ。
「しかし、あなた達の方からここへ来てくれたことはある意味幸運でした。あなた達を捕らえて『撤退しなければ殺す』とでも脅せば、腰抜けの灼滅者達は必ず撤退するはずですから」
人の良さそうな笑みすら浮かべて。ロード・クロムは平然とそう言い放つと、おもむろに眼鏡を外した。青かった双眸が赤く染まり、そして、
「人質の半分をすぐに解放して、残り半分は俺が撤退する時に残していくといえば、交渉に応じざるを得ないだろう。なあっ!」
ロード・クロムが腰の長剣を引き抜くと同時に、その身が西洋甲冑にも似た青い異形へと変化していく。
「安心しろ、おまえらは大事な人質だ。命だけは取らないでおいてやるっ!」
がらっと変わった口調で不敵にそう告げると、ロード・クロムは掲げていた長剣を振り下ろした。それを合図として、12体のクロムナイトが一斉に襲いかかってくる。
「そっちから出てきてくれるとは、手間が省けたぜ」
薫が、パーカーのポケットに手を突っ込んだまま、不敵な笑みを浮かべた。
「俺達が一番あいつに近えっ! このまま推し通って、あいつをぶっ飛ばす!」
康也が、先頭を切って駆け出していく。だが、ロード・クロムはクロムナイト達の後方に陣取っている。最低でも、護衛している4体のクロムナイトを同時に相手取る必要がありそうだ。
「敵はロード・クロムを含めて5体か……。厳しいね」
朔夜が、鬼神と化した腕でクロムナイトを殴り飛ばしつつそう呟けば、
「そうね。でも、ここで彼を逃がすわけにはいかないわ」
陽和は狼と化した爪を、クロムナイトの鎧の隙間に突き立てていく。
「全生徒デモノイド化といい、自分から人質取りに出てきた事といい、クロムも相当追いつめられてる……? なら、付け入る隙は必ずあるっす」
ハリマが、得意の張り手をクロムナイトの一体に連続で浴びせた。クロムナイトの巨体が吹き飛び、わずかだが背後に控えるロード・クロムの姿が露になる。
「ロード・クロム! 隠れても無駄ですわ!!」
すかさず白雛のクロスグレイブが全砲門を開放し、黒と白の光線がロード・クロムとその直衛らしい弓を構えたクロムナイトを直撃する。
「ちっ、大人しく人質になっていれば、痛い目を見ずに済んだものを」
クロムナイトの眼が、妖しい光を放つ。
「そっちこそ、やってることが滅茶苦茶だよ。自分の組織壊滅させてまですることなのかな!」
スカートと袖を翻してクロムナイトと戦っていた雪歩が鋭くそう返せば、ロード・クロムは文様のような口を奇怪に歪めた。
「俺の邪魔をしに来たというのなら、俺自らが相手になってやる。殺すつもりはないが、五体満足でいられるとは思うなよ」
●悪と善
「ご無沙汰です、クロム卿。以前の宿題の答えを持ってきました」
紅緋が、眼前のクロムナイトに風の刃を浴びせながら、背後のロード・クロムに声を掛ける。
「宿題だと? そういえば貴様、どこかで会ったことがあったな」
「あの時あなたは言いました。『善を説く神が正しいならば、何故この世にダークネスが存在するのか?』と」
「その答えを持ってきたというのか? 面白い、続けてみろ」
手を緩めず攻撃を繰り出しながら、ロード・クロムは先を促した。
「ダークネス人格は、知的生物の意識がソウルボードに触れることで発生します。そしてソウルボードを生むのは、現状への怒り、変革への欲求です。その欲求が他者を省みない時、デモノイドはロード種となり、周囲と共にあろうとすればヒューマン種となります」
それは、ガイオウガ決死戦で得られた情報を元に導き出した答え。
「つまり、絶対悪などなく意志の強さが全てを決める。どうです、クロム卿!」
紅緋は、そう言い放つと同時にクロムナイトへ渾身の拳を叩き込んだ。
「面白いな。そういう解釈もあるのか。だが」
ロード・クロムの持つ剣の刃が赤黒い光を放ち、放たれた光刃が紅緋に迫る。
「おっと、やらせないよ! ボクの拳でキミの技を打ち砕く!」
そこにすかさず雪歩が割って入り、袖の下に隠した縛霊手で、光刃を受け止めた。
「俺の目的はデモノイド種全ての進化だ。それは『周囲と共にあろうとする』ことではないのか?」
クロムナイト達を捨て駒のように扱いながらそう言い放つロード・クロムに、康也の怒りが爆発する。
「てめぇみたいに、敵も味方も利用することしか考えてねぇような奴が、ふざけたこと抜かしてんじゃねえっ!」
襲い掛かってきたクロムナイトの剣化した腕を受け止めると、橙に白の混ざった炎を宿した狼の爪で、そのクロムナイトを串刺しにする康也。
「見解の相違だな。絶対悪であることは俺の――いや、デモノイドロードの本質だ。否定したければお前達の語る善とやらの力を見せて見ろっ!」
ロード・クロムの号令を受け、彼の隣に控えていたクロムナイトが、弓に束ねた矢をつがえ、撃ち放った。複数の矢が、一斉に灼滅者目掛け降りかかる。
「悪がどうのこうのは難しくてわかんないけども……そも、自分を悪と定義した時点で本物じゃない気はするっす。悪とは善の視点からの認識だし」
降り注ぐ矢を『宿儺』で払いのけながら、ハリマがロード・クロムに反論した。だが、その隣で同じように矢を受け止めていた霊犬の円に、受け止めきれなかった矢が突き刺さる。既に傷ついていた円は苦し気に身をよじると、そのまま姿を消してしまった。
「俺が本物の悪ではない、か。自分の半身を消された今でも、同じことを言えるかな?」
その様を見て、口元を笑みの形に歪めるロード・クロム。
「聞いていた以上に趣味の悪い方ですね。絶対にここで止めなければいけない方だと、思い知らされました」
陽和の想いを体現するかのように、その影が檻となり一番傷ついていたクロムナイトを飲み込んでいく。
「オレは、貴様みたいな仁義を重んじない奴が大嫌いだ」
朔夜の口調が、普段のクールさからは想像もできない荒いものに変わっていた。そして、朔夜の怒りを乗せて放たれた雷撃が、影に飲まれたクロムナイトを直撃する。その一撃で、ロード・クロムを護り続けていたクロムナイトは、どうっとその場に倒れ伏した。
ロード・クロムを護る壁の一角が崩れた機を、白雛は見逃さない。
「あくまで絶対悪と嘯くなら、この天翔黒凰シロビナ、あなたを断罪しますわ!」
名乗りと共に放たれた黙示録砲が、狙い違わずロード・クロムを直撃し、その身を凍てつかせていく。
「なあ、ロード・クロムさんよ。自分達を保つ為の絶対悪を求めるのは構わねえ。けどそれが易々とまかり通ると思っちゃいねえだろ。結局はどちらの意地が強いか、だ」
そしてロード・クロムの指揮が止んだ隙に、薫は傷ついた仲間達を癒していくのだった。
●絶対悪の果て
「いいぞ。なかなかに面白い問答だった。特に女、貴様の宿題の回答は興味深かったぞ。礼として、貴様は俺自ら砕いてやろう」
ロード・クロムが振り下ろした剣から、赤黒い光の刃が放たれた。狙いは、紅緋。だが、
「狙いが分かってるなら、かばいやすいってものっす!」
そこに、ハリマが当然のように割って入る。
「クッハハハ、そうだ、善を気取るなら必然、そういう行動になるよな。それももちろん計算の内だ」
ロード・クロムの高笑いが響く中、ハリマがその場にくずおれた。ロード・クロムの一撃はそれほどに重く、受けきるにはハリマは傷つきすぎていた。
「さあ、目の前で仲間が後何人倒れれば、貴様の心は折れるかな?」
「……あなたという人は!」
紅緋がキッとロード・クロムを睨み、影の刃を放つ。だがその影も、クロムナイトが身を挺して受け止めてしまう。
「これが、他者を道具として扱える絶対悪たる俺と、貴様らの言う善の違いだっ!」
ロード・クロムの指揮の下、3体のクロムナイトが同時に紅緋に襲い掛かった。
「本当に腹の立つ野郎だな、てめえはっ! 意地でも守り抜きたくなってきたぜ!!」
それが罠だと分かっていても。康也はロード・クロムの言葉を否定するために、自分の信念を貫き通すために、敢えて自らの身を紅緋の前に晒した。二本の剣と一本の矢が、同時に康也の体を貫いていく。それでも康也はニヤッと笑みを浮かべ――そして、その場に仰向けに倒れた。
「これで2人か。さあ、そろそろ終わりにしてやる」
ロード・クロムが、剣を頭上高く掲げる。それは、全てを切り裂く月光衝の構え。
「キミが何度ボクたちの心を折ろうとしても、ボクたちは何度でもキミの前に立ちふさがるよ!」
咄嗟に、雪歩が紅緋の前に立ちはだかる。
「いいだろう。ならば2人まとめてくたばれっ!」
2人目掛け、衝撃波が放たれようとした、その時。ロード・クロムの死角に回り込んでいたエアン・エルフォードが、低い体勢からの紅蓮斬で、ロード・クロムに切りつけた。一瞬だがロード・クロムの体勢が崩れ、わずかに衝撃波の狙いが逸れる。エアンはすぐに後方へと飛び、間合いをとって微笑を浮かべた。
「まだ、これからだろう?」
その言葉に続けて、エアンの仲間達が、ロード・クロムへの攻撃を開始していく。
「……私達はそろそろ限界ですし、後は彼らに任せましょう。ですが、せめて護衛のクロムナイト達は、私達で引き受けさせてもらいます」
言うや、陽和は狼の腕でクロムナイトの一体を掴み、強引に廊下の片隅へ引きずっていった。
「そういうことなら」
朔夜もチェインリッパーを鞭状に変化させると、ロード・クロムの傍らにいたクロムナイトに絡みつけ、自らの方へ引き寄せる。
「クロムナイトは、私達できちっと決着をつけないといけませんわね」
白雛は飛び蹴りでクロムナイトを吹き飛ばし、ロード・クロムから引き離していた。
「動けなくなった2人のことは俺に任せてくれ!」
ハリマと康也に肩を貸しながら、薫が叫ぶ。
そして、彼らが受け持った3体のクロムナイトを灼滅したのと、ロード・クロムが灼滅されたのは、ほぼ同時だった。
「ロード・クロム、それが、絶対悪を貫いた者の末路なんですよ……。あまりに悲しすぎると思いませんか?」
紅緋の問いかけは、もはやロード・クロムに届くことはなかった。
作者:J九郎 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年7月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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