朱雀門高校攻略戦~デモノイド・パニック

    作者:のらむ


     爵位級ヴァンパイアに従うデモノイドロード、ロード・クロムが、朱雀門高校の一般生徒を全てデモノイド化させた。
     教室に集められた灼滅者達に、エクスブレインの天野川・カノンはそう告げた。
    「この情報はルイス・フロイスから知らされた情報です。現在朱雀門高校の組織はロード・クロムが掌握していましたが、組織の要となる部分はルイス・フロイスのスパイが握っていた様です」
     ルイスのスパイ達はロード・クロムの情報収集を邪魔していた為、武蔵坂学園とノーライフキングの決戦の時期を察知することができなかったらしい。
    「当然先の大戦は、ヴァンパイア勢力にとって武蔵坂学園を襲撃する絶好の機会でもありました。それを察知する事が出来なかったロード・クロムに対する爵位級ヴァンパイア達の評価は、当然ながら下がる結果になった様です」
     その様な経緯があり、ロード・クロムは情報収集の失敗の原因が『ルイス・フロイスのスパイ』がいる為だ、と思い立ったらしい。
    「しかし、そのスパイが誰なのかまでは分からない。ならば、全員殺せばいい。そういう事でしょう。実にデモノイドロードらしい……いえ、ダークネスらしい考えです」
     デモノイドになる素質がなく、そのまま死亡した者も多いだろうが、このまま放置すればデモノイドの戦力が強化されるのは間違いないだろう。
    「サイキックアブソーバーの予知がないという状況ではありますが、今朱雀門高校に攻め入れば、調整中のデモノイド達が動き出す前に灼滅する事が可能でしょう」
     そして更には、ロード・クロムの灼滅も狙える可能性があるだろう。
    「改めて説明しますが、今回の作戦の目的は朱雀門高校のデモノイド勢力の打倒です。確実ではないですが、ロード・クロムが朱雀門校舎内にいた場合、彼の灼滅も目標となります」
     先程カノンが言った通り、今回はアブソーバーの予知が無い。その為朱雀門校舎内のどこにデモノイドがいるのか、何処に調整中のデモノイドがいるのか。何処にロード・クロムがいるのか、そもそも居るのか。という情報は、全く判明していない。
    「どの様な場所を主に捜索するのか。ある程度の指針を決め行動することが必要となるでしょう。襲撃開始後、時間をかけすぎれば爵位級ヴァンパイアの増援が現れる事も考えられます。素早く、そして的確に行動する様心がけて下さい」
     ロード・クロムがいるか否かは不明だが、居るなら多少無茶をしてでも灼滅するべきだろう。撤退を行うことを躊躇する様な男では無い為、その為の対策、場合によっては他のチームとの連携も必要となってくるだろう。
    「ロード・クロム。最近ではクロムナイトを利用しシャドウのサイキックエナジーを奪おうと試みた事もあり、手段を選んでられる状況ではないのかもしれません。恐らくロード・クロムは、ルイス・フロイスのスパイを消すと同時に、武蔵坂学園に察知されずにデモノイドを大量生産しようとしたのでしょう……状況は、実際に朱雀門高校に突入しなければ分からないことが多いです。それでも皆様が最小の被害で、最大の結果を得られる事を願っています」


    参加者
    月翅・朔耶(天狼の黒魔女・d00470)
    守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)
    ヴォルフ・ヴァルト(花守の狼・d01952)
    影龍・死愚魔(ツギハギマインド・d25262)
    ルーナ・カランテ(ペルディテンポ・d26061)
    雲・丹(きらきらこめっとそらをゆく・d27195)
    富士川・見桜(響き渡る声・d31550)
    フリル・インレアン(中学生人狼・d32564)

    ■リプレイ


     朱雀門高校攻略戦、開始。
     正面門に集った灼滅者達は堅く閉ざされた門を破壊した後、敷地内に侵入。行動を開始した。
    「……? 無線が通じない……携帯も。敵も無策って訳じゃないみたいですねー」
     ルーナ・カランテ(ペルディテンポ・d26061)は、繋がらない無線と携帯電話を懐の奥にしまいこんだ。
    「保健室に入るには……あそこの窓からが近いみたいだね」
     校内の見取り図を手に持つ守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)が指差すと、灼滅者達は保健室の窓をぶち破り、校内に飛び込んだ。
    「デモノイド化装置なし、死体もなし……よし、次に行こう」
     素早く状況を確認した富士川・見桜(響き渡る声・d31550)が言い、一同は廊下へ飛び出す。
    「……なんとなく怖い、気ぃする? お化け屋敷とかそぉいう……んぅー」
     雲・丹(きらきらこめっとそらをゆく・d27195)は先程から鳥肌が立つほどの、しかし説明しようのないとても嫌な感覚を覚えていた。
     その後。音楽室等の特別教室を目指す事となった灼滅者達は、道筋を同じくする他の2チームと共に進軍する運びとなった。
    「デモノイドさん以外は見当たりません……本当に、みなさんをデモノイドにしてしまったんですね……」
     フリル・インレアン(中学生人狼・d32564)は虐殺された生徒たちの為にも、全力を尽くさねばならないと心に誓った。
     廊下を突き進む灼滅者。彼らの前に突如、進行を阻むように複数の蒼い影が現れる。
    「あれは……クロムナイトだ。数は12体。流石にこれは、応戦するしかないね」
     ヴォルフ・ヴァルト(花守の狼・d01952)がガンナイフを構え、仲間たちもそれぞれの武器を取り前進する。
     先行していたチームの灼滅者達に12体のクロムナイトが襲いかかるが……。
    「はい、ストップ。そっちには行かせないよ」
     影龍・死愚魔(ツギハギマインド・d25262)が4体のクロムナイトの前に飛び出し行く手を遮ると、シールドを広げ仲間たちに耐性を付与する。
    「クロムナイト……ということは、この近くにロード・クロムが? ……あまり時間はかけてられないな」
     月翅・朔耶(天狼の黒魔女・d00470)が言い、魔法弾で初撃を放つ。
    「「「「ギギ……ギギギギ……!!」」」」
     灼滅者達とクロムナイトの闘いが始まった。


    「ギギガ、ガァアアアアアア!!」
     腕と一体化した蒼い武器を振るい、クロムナイトは強烈な攻撃を撒き散らす。
    「いやー、これは中々。攻撃にはあまり手を回せなさそうですねー」
     ルーナの放つ黒煙が、灼滅者達の身体を包み傷を癒やしていく。
    「4体相手取るだけでこの猛攻。3チームで動いてたのが幸運だったみたいだね」
     ヴォルフは言い、ガンナイフ片手にクロムナイトに迫る。
     対するクロムナイトはヴォルフに蒼い銃口を向け、強烈な酸の弾丸を撃ち放つ。
    「……! 今のは中々、危なかった」
     咄嗟に姿勢を低くしヴォルフはこれを回避。立ち上がりの勢いを乗せ、ガンナイフの刃を鎧の隙間にねじ込んだ。
     そして3発の銃声。ヴォルフの足元に、蒼い血の様な液体が滴り落ちる。
    「まだトドメはさせていないぞ。決めてやれ」
     そこに朔耶が放った魔法弾がクロムナイトの頭に直撃し、その巨躯を床へ叩きつけた。
    「分かったよ、相棒。次で仕留める」
     ヴォルフは地を蹴り跳躍すると、倒れ込んだクロムナイトに上に着地する。
    「悪いけど、俺達は君等だけに構っている程暇じゃないんだ」
     そして片腕を獣化。そして幾度となく振り下ろされる銀の爪。爪は鎧を突き破り、蒼い肉を抉り。1体目のクロムナイトが沈黙した。
    「クロムナイトさん……この方達も、無理やり闇堕ちさせられた犠牲者なのでしょうか……」
     だとしても、手を止める訳にはいかない。フリルはロケットハンマーをギュッと持ち直した。
    「ギギギ……!!」
     弓を構えたクロムナイトが、無数の矢を撃ち放つ。
    「負ける訳には、いかないんです」
     矢の雨をくぐり抜けフリルが放った一撃が、鎧ごとクロムナイトを打ち、吹き飛ばす。
    「ギギ、ギギ!!」
    「まだまだ、防いでみせる……!!」
     見桜はフリルに向け放たれた巨大な矢を横っ飛びで受け止め、即座にリングスラッシャーを撃ち返した。
    「これで、終わりです……!!」
     再び距離を詰めたフリルは護符を展開、周囲に結界を構築する。
     クロムナイトは結界から逃れる暇も無く全身がボロボロと崩壊し、そして消滅した。
    「残り2体……どうにか凌げない事も無いかな」
     死愚魔はウイングキャットの『マオゥ』と共に仲間の盾となり、前線を維持していた。
    「ギギ……ギ……!」
     両腕のチェーンソーから火花を散らし、クロムナイトが死愚魔に突撃する。
    「殺す気満々って感じだね……まぁそれはこっちも同じか」
     避けられないと判断した死愚魔は、片腕に闘気を込めて待ち構える。
     そして振り下ろされる刃。ガリガリと身体が削られる感覚に死愚魔はほんの僅かに顔をしかめたが、反撃は早かった。
    「この距離なら外さない」
     闘気の砲弾がクロムナイトの腹を吹き飛ばし、大きな風穴を空けた。
    「ガ……ガガガガ……」
     この状態でまだ生きている。それを死愚魔が確認した直後、『マオゥ』の魔法が発動する。
     虚空から現れた骸骨達が瀕死のクロムナイトに掴みかかり、湿った怪音と共にその身体をバラバラに引き裂いたのだ。
    「あー、トドメ取られちゃった。まあいいか」
     死愚魔が傷を癒やしながら呟いた。残るクロムナイトは1体。
    「他のチームも大詰めや……ウチらのチームが一番乗りで倒すんよぉ」
     丹は軽いステップで距離を詰め、クロムナイトは巨大な腕の刃で迎え撃つ。
    「ギギ……ガァァアアアア!!」
    「威勢だけ良くても駄目なんよぉ? 隙だらけやぁ」
     横薙ぎに振るわれた刃を軽く跳んで避けた丹は、そのまま流れる様な動きでクロムナイトの顔に回転蹴りを叩き込む。
     その蹴りの勢いに顔面がひしゃげ、よろめくクロムナイト。
    「あと少し……このまま倒しきろう!」
     結衣奈は対になった帯でクロムナイトの両膝を抉り、無理やり膝を付かせる。
    「これでトドメやぁ!」
     丹は構えた槍に妖気を込め、勢い良く何度も突き出した。
     氷のつららはクロムナイトの全身に次々と突き刺さり、刺さった先から肉体が凍りつく。
    「ふぅ……結構しんどかったなぁ」
     そう言って息を吐た丹の背後で、クロムナイトが砕け散った。
     他のチームの様子を見ると、彼等もクロムナイトを倒しきった所だった。
     しかし灼滅者達が安堵する暇は無い。ヴォルフがその事に一早く気づく。
    「来る。あれは……ロード・クロム。それにクロムナイトが……12体」


    「やれやれ。第一陣の出荷が終わった後で、兵が足りないというのに。面倒なことをしてくれたものです」
     事件の元凶、ロード・クロムは、眼鏡を押し上げながらため息を吐く。
    「しかし、あなた達の方からここへ来てくれたことはある意味幸運でした。あなた達を捕らえて『撤退しなければ殺す』とでも脅せば、腰抜けの灼滅者達は必ず撤退するはずですから」
     まるで善良な好青年の様な笑みを浮かべ、ロード・クロムはおもむろに眼鏡を外した。青かった双眸が赤く染まり、
    「人質の半分をすぐに解放して、残り半分は俺が撤退する時に残していくといえば、交渉に応じざるを得ないだろう。なあっ!」
     ロード・クロムが腰の長剣を引き抜くと、その身体が西洋甲冑の様なデモノイド形態へ変化する。
    「安心しろ、おまえらは大事な人質だ。命だけは取らないでおいてやるっ!」
     掲げていた長剣を振り下ろし。12体のクロムナイトが一斉に灼滅者達に襲いかかった。
     第二の闘いが、否応なしに始まってしまった。
     現在ロード・クロムは他のチームと交戦を行っているが、4体のクロムナイトとロード・クロムを同時に相手している。そう長くは持たないだろう。
    「12体のクロムナイト……しかも今度は、ロード・クロムも……だけど!」
     絶望的な状況。結衣奈はそれを理解していたが、その心までは絶望に染まっていなかった。
    「人の意志、絆は力や思惑、悪意すら超えるという事を見せてあるよ!!」
     真っ直ぐと杖を突きつけ。そして突撃してくるクロムナイトに、逆に飛び込んでいった。
    「……当たって!!」
     魔力を込めた一撃がクロムナイトに叩きつけられ。流し込まれた魔力がクロムナイトの右腕を吹き飛ばした。
    「ギギ、ギギギャアア!!」
     叫声を上げ、クロムナイトは明確な殺意を持って刃を振り下ろす。
     グシャリ、と。肉が断ち切られる音が響き渡る。しかし倒れたのは、結衣奈では無かった。
    「ああ、これ結構痛いな……まあ、後は頼んだよ」
     結衣奈を庇って肩を抉られた死愚魔は、大量の血を流し倒れ、気を失った。
    「……立ち続けている限り、私は攻撃し続ける!」
     結衣奈は自らの魔力を引き出し、返り血塗れのクロムナイトに照準を合わせる。
     轟音と共に放たれた魔法弾の弾幕が、クロムナイトの全身をバラバラに吹き飛ばした。
    「グガァアアアアアアア!!」
    「グッ!! ……3体残しちゃったか……みんな……」
     直後、別のクロムナイトが蒼い機関銃を乱射。その銃撃をまともに喰らった『マオゥ』と結衣奈が、戦闘不能に追い込まれる。
    「中々の状況だな。悪い意味で。だが、やるしかないだろう」
     朔耶はナイフを構えると、依然猛攻を仕掛けてくるクロムナイトと相対する。
    「行くぞ、リキ」
     そしてナイフを振るう。放たれた毒の竜巻がクロムナイトを巻き込み、天井に勢い良く叩きつける。
     そこに霊犬の『リキ』が斬魔刀を振るい、クロムナイトの片腕を切り落とした。
    「ガギガガガ」
     クロムナイトは口から強酸の塊を吐き出し、前衛に立ち続けていた『リキ』に直撃。そのまま消滅してしまう。
    「今度は俺が手伝うから。決めてやってよ、朔耶」
    「ああ……了解だ、相棒」
     ヴォルフが銃撃でクロムナイトの動きを鈍化させ、その隙に朔耶がナイフを構えクロムナイトに接近する。
    「これで終わりだ」
     朔耶が放った斬撃はクロムナイトの首を胴体から綺麗に切り落とし、首が落ちると同時に全身が消滅した。
    「ギギギギギギギ!!」
    「あぁ、これは……俺ももう限界だね」
     直後、クロムナイトによる再度の銃撃を被弾したヴォルフは、傷を抑えながら気を失った。
    「こっちが相手してるクロムナイトは後2体……ロード・クロムも生きてる。一方こっちは5人。この状況で撤退しても無理、死ぬ気でやるしかないわね……って、結局やる事に変わり無かったですねー」
     ルーナは言い、残るクロムナイトに青い炎を掲げる。
     そこから放たれた小妖怪の幻影が、クロムナイトの全身を齧り取り、畳み掛けるように霊犬の『モップ』が六文銭でクロムナイトを撃ち抜いていく。
    「ウチはまだまだ元気やぁ。クロムナイトもロード・クロムも、まとめて全部蹴散らすんよぉ」
     更に丹が氷の刃による刺突の連打でクロムナイトを壁際に追い詰めると、
    「燃え尽きなさい」
     淡々と言い、ルーナが赤い炎が灯った蝋燭を掲げる。
     そして放たれた鮮やかな業火の花がクロムナイトの全身を包み、5秒とかからずに蒸発させた。
    「あと、あと1体です……! 早く倒して、他のチームの皆さんの援護を……!!」
     フリルは赤い魔力を帯びた指で空に逆十字を描く。すると一寸遅れ、クロムナイトの胸に全く同じ傷が刻まれた。
     激しい叫び声を上げ、クロムナイトは両腕の機関銃で再々度の銃撃を放つ。
    「グ……!! アア……!! まだ、まだよ!!」
     最後の前衛となった見桜は、これまでと同じように仲間を庇い、そして不屈の精神で立ち続けていた。
     固く剣を握り締め、眼前の敵を見据える。頭から流れる血が視界を邪魔するが、最早そんな事気にはならなかった。
    「くらいなさい!!」
     そして再び剣を振るう。青白い燐光と共に放たれたその一撃が、クロムナイトの胴体を深く斬りつけた。
    「ギ、ギギ、ギガガアガガ」
     狂った様に放たれるクロムナイトの銃撃。今度のそれは、明確に見桜を狙ったものだった。
     普通なら倒れていたであろう一撃。しかしそれでも倒れなかったのは、見桜の覚悟が普通では無かったからだろう。
    「…………アアアアァァアアアアアアアアア!!」
     魂の奥底からの咆哮。そして、一閃。
     ほぼ無意識で振るわれた刃はクロムナイトの魂と肉体を同時に両断。跡形もなく消し飛ばした。
     休む暇は無い。4体のクロムナイトを倒した灼滅者達は、すぐさまロード・クロムの元へ向かう。
    「エアン、さん……っ」
    「サフィさん、無茶ですっ……!」
     戦況は崩壊寸前。ロード・クロムの凶刃が攻撃役の要エアン・エルフォードに向けられ、瀕死のサフィ・パールが庇いに出る――。
    「ここからはウチらが相手になるんよぉ!!」
     その時。ロード・クロムの背後から強襲した丹がその後頭部を思い切り蹴り飛ばし、赤い双眸が丹に向けられる。
    「邪魔だ、退け!!」
     振り返りざまに放たれる光の斬撃。それは丹に一瞬にして迫り――。
    「………………」
     最後まで仲間を庇い続けた見桜に直撃。見桜は剣を構え立ち続けながら、気を失った。
    「ロードクロムさん……これまでの全ての犠牲者さん達の為にも、あなたはここで倒します……!」
    「やれるもんならやってみろ! 最後にものを言うのは言葉じゃねぇ、行動だ!!」
     フリルが振り下ろすハンマーの一撃がロード・クロムの脳天を打ち付け、交差して放たれた月の如き一閃が、灼滅者達を追い詰める。
    「俺達は正義を名乗るつもりはないが……悪は最後に滅びるものだ、ロードクロム」
     朔耶の影がロード・クロムに纏わりつき、再び剣を振るおうとしたロード・クロムの動きが、ほんの一瞬だけ鈍った。
    「なんだとっ……!!」
     この一瞬によって、ロード・クロムの次なる斬撃は大きく狙いが逸れ、攻撃から逃げ延びたルーナが真正面から突撃した。
    「終わりよ」
     堅牢な鎧を突き破り、紅い手甲を纏った右腕がロード・クロムの腹に深々と突き刺さった。
     ロード・クロムの鎧がガラガラと音を立てて崩れ落ち、人間形態となったロード・クロムがルーナの前に現れた。
    「………………」
     腹を貫かれたロード・クロムは、それでも尚、不敵な笑みを崩さずにいた。
    「……こんな時でも笑っていられるなんてね……あなたは立派な悪役だったわよ、ロードクロム」
    「……そうですか?」
     ズブリ、と自ら腹に刺さった腕を引き抜いたロード・クロム。膝を付き、血溜まりの中に倒れた。
    「まあ、精々この世を謳歌するが良いですよ、灼滅者……」
     そう言い残し、ロード・クロムは息絶えた。
    「…………」
     ルーナは死体となったロード・クロムを一瞥し、
    「あなたとは違う方法で、ですけどね」
     そう呟くと目を逸らし、二度と視線を戻す事は無かった。

     ロード・クロム、灼滅完了。

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年7月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 11/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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