朱雀門高校攻略戦~丹碧が灼ける日

    作者:魂蛙


    「緊急事態だ。朱雀門高校でスパイ活動を行っていたルイス・フロイスから情報を受け取った」
     神崎・ヤマト(高校生エクスブレイン・dn0002)は、教室に集まった灼滅者達に資料を配りつつ説明を続ける。
    「情報によると、現在朱雀門高校のトップに収まっているロード・クロムは朱雀門内部にスパイの存在を疑い、この粛清に乗り出したらしい。それも、スパイも忠実な部下も見境なく一般生徒を全てデモノイド化する、という過激かつ極端なやり方でだ」
     実際にロード・クロムの想像通りルイスのスパイは存在するわけだが、その情報攪乱により先の胎蔵界戦争という武蔵坂学園を攻める絶好機を逃した事が、今回の粛清の引き金となったらしい。
    「朱雀門の生徒全員にデモノイド化の素質があったわけではないが、それでも戦力増強となるのは間違いない。デモノイドが調整中で動けない今がチャンスだ。朱雀門高校に乗り込み、これを制圧するんだ」
     作戦目標は朱雀門高校の制圧だが、ロード・クロムを灼滅するチャンスでもある。ただし、ロード・クロムの居場所は特定されておらず、高校内に居るかどうかも不明だ。ロード・クロム灼滅に拘り過ぎて、高校の制圧に失敗する本末転倒は避けねばならない。
    「今回の作戦の目的は、朱雀門高校に突入し、高校内の警備を倒しつつ調整を受ける元一般生徒のデモノイドを灼滅し、制圧する事にある。あまり時間をかけ過ぎると、爵位級ヴァンパイアの軍勢が増援に現れる恐れがある。それまでに、調整中のデモノイドを全滅させるのが目標だ」
     調整中のデモノイドは、カプセルのような物に入れられて改造を施されていると推測される。
    「だが、どこにデモノイドがいるのか、他に戦力があるのか、詳しい状況は不明だ。すまないが、六六六人衆及びアンブレイカブルに向けて撃ったサイキック・リベレイターの影響で、俺達エクスブレインも力になってやる事はできない」
     ただ、警備の主戦力もクロムナイトを含むデモノイドである可能性は極めて高い。どの辺りを捜索するか、またその方法等、探索の方針を決めておく必要がある。
    「ロード・クロムについても同様だ。校舎内のどこかにいる可能性は高いが、確実ではない。もしロード・クロムがいないなら、その捜索は完全に時間の無駄となる。判断が難しい所だな」
     また、ロード・クロムの発見後にはその撤退を阻む為の対策も必要になるだろう。
    「探索に警備との戦闘、そしてロード・クロムへの対処。全てを1つのチームでこなす事は難しい。可能な限り、複数のチームで連携して作戦に当たってくれ」
     今回の戦場は朱雀門高校、敵の本拠地だ。攻略は容易ではない。
    「組織の土台とも言える人員を粛清する今回の暴挙。いよいよロード・クロムも追い詰められている、という事なのかもしれないな」
     一通りの説明を終えたヤマトが呟いた。
     ロード・クロムとは中々直接対決する機会に恵まれず、配下のクロムナイトと幾度も激戦を繰り広げてきた。それらの戦いが決して無意味ではなかったと、証明する日がやってきたのかもしれない。


    参加者
    夏雲・士元(雲烟過眼・d02206)
    風真・和弥(風牙・d03497)
    泉・星流(魔術師に星界の狂気を贈ろう・d03734)
    冴凪・翼(猛虎添翼・d05699)
    獅子鳳・天摩(幻夜の銃声・d25098)
    平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)
    松原・愛莉(高校生ダンピール・d37170)

    ■リプレイ


     灼滅者達の朱雀門高校攻略作戦は、正門からの正面突破によって始められた。
     門を破壊し雪崩れ込む侵入者をデモノイドが迎撃するも、これを複数班の灼滅者達が火力を集束して蹴散らし、一気に校舎へと突入する。
     班ごとに目標を定め校舎内の各地へ散る中、風真・和弥(風牙・d03497)らの目的は放送室の制圧だ。
     和弥はルイス・フロイスから提供された見取り図を確認しつつ、先導するように走る。
     獅子鳳・天摩(幻夜の銃声・d25098)は廊下の窓からグラウンドを見やる。
    「ここが朱雀門……。彼らもオレ達と同じような学生生活してたんすかね」
     試験や部活に打ち込んだり、恋愛したり。朱雀門の生徒がどんな生活を送っていたかは分からないが、少なくとも彼らにとっての日常が、指導者である筈のロード・クロムの手で蹂躙された事は確かだ。
    「見境なし、か。ロードとはいえ、所詮はデモノイド。本性は単純だったということか」
    「いつの世も、上の都合に振り回される下っ端が一番苦労しているもんだ……」
     平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)の言葉に和弥が頷きつつ、嘆息を零した。
    「なんていうか……気に入らないな今回の一件……」
     泉・星流(魔術師に星界の狂気を贈ろう・d03734)は呟きに不快感を露わにした。
    「立場が同じならウチの学園長と気が合うんじゃないか?」
     星流は脳裏に過った武蔵坂防衛戦における校長の発言に当て擦る。
     と、地響きを伴う轟音に校舎が揺れる。震える窓に目を向けると、先ほど突破した門から火の手が上がっていた。
    「戦闘が始まったかな?」
    「……ダメ、やっぱり繋がらないわ」
     夏雲・士元(雲烟過眼・d02206)に答えようとした松原・愛莉(高校生ダンピール・d37170)は携帯電話を操作し、溜息混じりに首を横に振った。
     朱雀門の敷地に入って以降、携帯は圏外で無線機器も通じない。妨害電波の類か、超常の力か、何にせよ敵地だけあって灼滅者達の連絡手段を断つ用意はあったらしい。
    「ボクらのやる事は変わらない。放送室へ急ごうか」
     ロードゼンヘンド・クロイツナヘッシュ(花束を・d36355)の言葉に、一同が頷く。
     ならばこそ、放送室を制圧する事の意義は小さくない筈だ。
    「もうすぐだ。この先を――」
     ――右に、と言おうとした和弥が足を止めたのは、目指すべきその場所、放送室の扉の前に立つデモノイドの姿を認めたからだ。
    「分かりやすい目印が置いてあるじゃねぇか」
     灼滅者に気付き威嚇するデモノイドに、冴凪・翼(猛虎添翼・d05699)は構えを取る。
     デモノイドは2体。肘から刃がヒレ状に張り出した個体と、頭に一対の捻じくれた角を持つ個体。どちらも全身に刻んだ治癒しきらない傷痕から、歴戦の個体だろうと推測できる。それが門番を任されているとなれば、クロムナイト型でない事は侮る根拠足り得ない。
    「こいつらは元生徒……じゃねぇな。だったら、思いっきり暴れさせてもらうぜ」
     デモノイドの咆哮が、戦闘開始を告げる合図となった。


     角付きが右腕を砲身化させて構えると、同時にヒレ付きが口から酸を放射する。
     飛び出した翼は雷撃化したオーラで覆った右拳で酸弾を叩き落とし、発射寸前の角付きの砲口を蹴り上げた。翼は蹴り足をそのまま深く踏み込ませ、暴発した光線で天井を焼く角付きの腹へ雷拳を打ち込む!
    「支援射撃、行くぞ!」
     和守が小銃型のAR-Type89で弾丸をばら撒き、ライドキャリバーのヒトマルも機銃で弾幕を厚くする。
     同時にデモノイドの足元に発生した青い魔法陣は、士元が展開した物だ。しゃがんだ士元が床に浮かび上がる相似の魔法陣に掌を押し当てた瞬間、呼応したデモノイド直下の魔法陣が絶対零度の閃光を放出した。
     一気に前に出た和弥を、ヒレ付きが刃に変化させた腕を振り上げ迎え撃つ。
    「邪魔はさせないっすよ!」
     和弥を追い越した天摩が建速守剣をヒレ付きの刃にぶつけ、そのまま鍔迫り合いに持ち込む。側面に回り込んだライドキャリバーのミドガルドの体当たりが、ヒレ付きを壁に押し込んだ。
     和弥は角付きとの間合いを詰め切り、交差させた右手の日本刀の風牙と左手のクルセイドソードの一閃で斬りかかる。
     和弥は突進から角付きの胸を両の刃で斬り払い、右側面から回り込みつつ逆水平に一閃を振り抜き、角付きが振り下ろす腕を風牙で受け捌く。
     和弥と入れ代わり、ロードゼンヘンドが上から角付きを強襲、その肩口に妖の槍を突き立てた。掴みに来る角付きの手を躱して跳んだロードゼンヘンドは、大上段に掲げた槍に落下の勢いを乗せて振り下ろす。
     星流はヒレ付きの突進を捌いて跳躍、箒を模したマテリアルブルームロッド・ゴットジャッジメントを構えた。角付きを狙って放つ光弾の反動さえ駆使し、しつこく追いすがり刃を振り回すヒレ付きを星流は翻弄する。
     角付きは光弾の直撃を受けながらも、低く唸り声を上げて灼滅者達を睨む。弾けるように飛び出した角付きは、その肉弾をもって天摩を大きく吹っ飛ばした。
     フォローに行こうとした翼と和弥の前にヒレ付きが割って入り、刃化した両腕を振り下ろし、薙ぎ払い、壁や床ごと斬り裂き捻じ伏せる。その間に角付きは砲身化した腕を天摩へ突き出し、チャージを完了していた。
     起き上がった天摩は後ろの仲間をちらりと見やって、覚悟を決める。
     その場に仁王立った天摩は建速守剣でガードを固め、放たれた閃光にその身を曝す。建速守剣の鋭い切先が光線を切り散らすが完全とは言えず、拡散した光線が容赦なく天摩を焼く。
     苦悶を漏らしながらも床に突き立てた剣を支えに踏み堪えた天摩の視線の先の映るのは、第2射の発射体勢に入る角付きの砲口だった。
     直後、天摩の視界を塞いだのは、渦巻きながら形成した盾で砲撃を防ぐダイタロスベルトだった。
     ベルトを飛ばした愛莉が前面に飛び出し、二指で挟んだ防護符を投げ放つ。破裂した護符は光の盾を展開、角付きの砲撃もヒレ付きの酸弾も纏めて遮断した。
    「お願いね、なのちゃん!」
    「ナノ!」
     愛莉の傍らのナノナノのなのちゃんがふわふわハートを飛ばし、仲間達の傷を癒す。
     愛莉が投げ放つ護符とダイタロスベルトの追撃に、デモノイドは後退を余儀なくされる。その間に、灼滅者達も態勢の立て直しを完了していた。
    「まだまだ、勝負はこれからよ!」


     ヒレ付きが威嚇するように両腕の刃を打ち鳴らす。
     そこに突っ込んだ天摩とヒレ付きが数度切り結ぶが、ヒレ付きの重い一撃に体勢を崩される。何とか後足で踏ん張るも、既にヒレ付きは右の刃を高々と振り上げていた。
    「天摩さん、これを!」
     愛莉が放ったダイタロスベルトが、天摩の左腕に巻き付く。天摩は強靭な盾と化した左腕でヒレ付きが振り下ろす刃を受け、捌いて流す。天摩は即座に踏み込み、ヒレ付きの腹へ剣の切先を体ごと捻じ込む!
     天摩がヒレ付きを抑え込む間に、ロードゼンヘンドが角付きへ単身突撃を仕掛ける。光線の迎撃が頬を掠めるも、ロードゼンヘンドが浮かべる笑みは僅かにさえも歪まない。
     ロードゼンヘンドは角付きの砲身を駆け上がり、マテリアルロッドで角付きの横っ面をぶっ叩く。
     着地から深く身を沈めて角付きが薙ぎ払う腕をやり過ごし、ロードゼンヘンドは立ち上がり様に魔力光を収束させたロッドで角付きを打ち上げる。即座に投げ放ったダイタロスベルトで角付きを捉え、渾身の力で引き寄せ地面に叩き付ける瞬間、衝撃が角付きに打ち込んだ魔力を撃発させた!
     が、しぶとく立ち上がる角付きは残る力を振り絞り、視線の先の星流を狙って光線を発射した。
     星流は既にロッドを構え、その先端に魔力を収束させていた。魔力の迸りは、砲口を思わせる五芒星の魔法陣として顕現する。
     星流は迫る光線、その先の角付きを見据えて爆発的に膨張した光弾を――、
    「この一撃は、外さない!」
     ――撃っ放す!
     光線と真っ向から激突した魔力弾は光線を散り散りに蹴散らしながら飛翔、角付きを直撃して爆裂した!
     吹き付ける爆風に尖がり帽子を押さえた星流の視線の先。薄れ消える爆煙の向こうに、角付きは跡形もなく消滅していた。
     咆哮を上げたヒレ付きが灼滅者達へ遮二無二の突進を敢行する。
    「突っ込んでくるか。だが……」
     和守は弾帯をHMG-M2C【ExCaliber】に装弾し、力強くレバーを引く。重厚な金属音で応えたExCaliberのチャンバーへ初弾が送り込まれ、リンクベルトを排出した。
    「こいつのストッピングパワーを、侮るなよ」
     和守はC・ODアーマーの装甲で鎧った両脚で床を割り砕かんばかりに踏み締め、ExCaliberをマウントした左腕を持ち上げ射撃体勢に移行する。
    「この弾幕、そうそう抜けられると思うな」
     単発で放たれた初弾はヒレ付きの肩口を浅く捉え、和守は射弾観測から狙いを修正、直後に制圧射撃を開始する。
     常人なら肩が吹き飛ぶ反動をC・ODアーマーのサスペンションが抑え込み、ExCaliberは焼けた薬莢を散らしながら際限なく弾丸を連射する。床が、壁が、ヒレ付きの表皮が爆ぜ、なお有り余る被弾の衝撃がヒレ付きの前進を完全に押し止めた。
    「あまり時間を掛けてもいられないからね。一気に畳み掛けようか、センパイ!」
    「俺も乗っからせてもらうっすよ!」
     契約の指輪を填めた手を突き出す士元と、トリニティダークXXを構えた天摩が和守の左右に並び立つ。
    「まずは動きを止めて!」
     士元が放った制約の弾丸がヒレ付きの右手を、左手を貫きそのまま空間に固着、もがくヒレ付きを磔にする。その間に天摩が砲撃機構を展開、和守はAR-Type89とExCaliberを構え、士元が指輪に魔力を注ぎ込んだ。
     そして一斉射する光線、弾丸、光弾のフルオーケストラがヒレ付きに襲い掛かる!
     好機を和弥と翼は見逃さず、既に飛び出していた。
    「決めるぞ。合わせられるか、冴凪!」
    「いつでもいけるぜ!」
     2人のエアシューズが発火、炎のトレイルを床に焼き付ける。加速する2人がシンクロし、
    「行くぞ、いち!」
     血を焼き焦がしながら踏み切り、
    「にの!」
     地を蹴り跳躍、
    『さんっ!!』
     蹴り足を突き出し炎の矢となってヒレ付きに突撃する!
     反動からバク宙に繋いだ翼は着地した右足で地を擦ってワイドスタンスに移行、そのまま重心を落としつつ弓引くように右手を引き付ける。
     堪えたヒレ付きが左腕を振り上げながら眼前の翼に襲い掛かる。が、その直上に捻りを跳躍していた和弥が旋転を加速させながら落下、空を切りながら紅蓮の輝きを放つ風牙と一閃の2連の斬撃でヒレ付きの左腕を斬り落とした!
     ヒレ付きは執念深く右腕を振り下ろすも、翼は左腕をカチ上げて捌き、がら空きとなったヒレ付きの胴を見据えて鋭く吸気する。
     床を圧し割る踏み込み、
     腰を切って回転する上体、
     捻じ込む肩、
     鋭く伸びる腕、
     握り込む拳。
     全てが刹那に連動し、繰り出す正拳が――、
    「せぃぃいやッ!!」
     ――ヒレ付きの土手っ腹をブチ貫いた!!
     翼は静かに拳を引き抜き、押し出すように息を吐く。
     ヒレ付きがゆっくりとその巨体を横たえる。地に臥したその体は白煙を上げ溶け崩れていくのみであった。


     灼滅者達が突入した放送室は敵が潜んでいる事もなく、すぐに探索に移る事ができた。
     目を引いたのは、テーブルの上に置かれた見るからに強力そうなアンテナを備えた機械であった。
    「何だこれ? パソコンはないし、ルーターじゃないよね?」
     士元が首を傾げ、和守は危険がないか確かめつつ検分する。
    「アンテナがついているなら、電波を出す装置だろう。という事は……」
    「妨害電波!」
     思い当たった愛莉が声を上げ、ならばと天摩が拳を振り上げる。
    「だったら早いとこ叩き壊して――」
    「――あ、コンセント抜いたよ」
     星流が引き抜いたコンセントをぷらぷらと揺らして見せ、天摩が頷く。
    「なるほど」
     なるほど。
     あっさりと機械は沈黙し、早速愛莉が携帯を取り出す。
    「うん、繋がる! それじゃ、私は皆に連絡を取ってみるよ」
    「あ、俺も手伝うぜー」
    「なら、僕は外を見張っておくよ」
     愛莉と翼が携帯で他班との連絡を試み、星流は万が一の敵襲に備えて廊下に出る。
     残るメンバーで放送室を探索する中、和弥は停止した電波妨害装置を睨んで眉を顰めていた。
    「どうかしたか?」
    「いや、こんな機械で携帯の電波を妨害できるなら、これからも敵地で連絡を取るのは難しい、と思ってな」
    「そうだな。そもそも、携帯は立地次第では妨害がなくとも電波が通じなくなる事もある」
     和弥の言葉に和守が頷く。
     思い返せば、直近ではアッシュ・ランチャーの艦隊との決戦の時にも、灼滅者の通信手段は遮断されていた。これからの戦いでは、工夫が求められる点となるだろう。
     士元とロードゼンヘンドは棚に保管された映像ディスク等の各種記録媒体に当たりをつけ、片端から回収すると決めて行動に移っていた。
    「ここで内容を確認している暇はない、かな」
    「そうだね。学園に帰って、開けてみてからのお楽しみかな」
     士元はディスクを手に取りながら頷く。黒の王の「目と耳」となっている筈の、かつての友人の情報が得られれば、という思いもあるが、今は個人的な感情は脇に置いてとにかく情報を根こそぎ持ち帰る構えだ。
    「え? 本当に!? 倒したんですか!?」
     総出の回収作業の中、声を上げたのは愛莉だった。
    「ロード・クロムと遭遇して戦闘になったって! それで、さっき灼滅したって!」
     通話の内容を仲間に伝える愛莉は、興奮を抑えきれていない。が、それでも要点は伝わった。
    「ロード・クロムを確かに撃破したんだな?」
     和守の問いに愛莉が大きく頷き、灼滅者達が色めき立つ。
     となれば、放送室を抑えた和守達がすべき事は1つだ。
    「手伝うっすよ」
     放送用のマイク向かう和守の隣に天摩が立ち、操作盤の状態を確かめる。幸い、電源を入れるだけで校舎全域に放送ができる状態に設定されているようだ。
     天摩は最後の放送は何だったのかと考え掛け、思考を無理矢理に止めてスイッチを押した。
     ぴんぽんぱんぽん。
     戦場にはそぐわぬチャイム音は、それ故に際立つ。天摩はチャイムの余韻が消えるのを待ってからマイクの音量を上げ、和守にキューを出した。
    「こちら放送室、平・和守だ。皆、聞こえるか? 放送室の制圧、並びに通信機器の電波を妨害していた装置の停止に成功した。そしてたった今、ロード・クロムと交戦していたチームより、ロード・クロムを灼滅したとの報せが入った。繰り返す。ロード・クロムは灼滅された」
     言葉の意味が浸透するのを待つように、1つ呼吸を置いた和守は仲間達を見やり、頷いた。
    「……この戦い、俺達の勝利だ」
     万感の思いを込めた勝利宣言が、陥落した朱雀門高校に響き渡った。

    作者:魂蛙 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年7月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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