朱雀門高校攻略戦~蒼悲劇に終幕を、作手には引導を

    作者:飛翔優

    ●教室にて
     足を運んできた灼滅者たちと挨拶を交わしていく倉科・葉月(大学生エクスブレイン・dn0020)。メンバーが揃ったことを確認し、説明を開始した。
    「ルイス・フロイスから、ヴァンパイア勢力の動きについて情報が入りました」
     爵位級ヴァンパイアに従うデモノイドロードの一体、ロード・クロム。彼が、朱雀門高校の生徒全てをデモノイド化するという暴挙に出たのだという。
     この情報は朱雀門高校に留まり、ルイス・フロイスのスパイを行っていた生徒の一人が命からがら脱出したことで得られた情報だ。
    「朱雀門高校の組織は、ロード・クロムが掌握したことになっていましたが、組織の重要な部分はあえて朱雀門に残ったルイス・フロイスのシンパが握っており、ロード・クロムの情報収集の邪魔をしていたのだそうです」
     その結果、爵位級ヴァンパイアは、武蔵坂学園がノーライフキングと決戦を行った胎蔵界戦争の時期を察知する事ができず、武蔵坂学園を攻撃する絶好の機会を逃すこととなっていた。
    「ロード・クロムはその原因が朱雀門内部にルイス・フロイスのスパイがいるからだと考え、自分に忠実な生徒も含めて全ての生徒をデモノイド化してしまうという暴挙に出た……ということらしいんです」
     ダークネスらしく、誰がスパイかわからないのならば全員を殺せば良い、とでも考えたのだろう。
     もちろん、全ての生徒がデモノイドになる性質を持っているわけではなかった。そのため、デモノイド化せずに死亡するものも多いと思われる。しかし、このまま放置すれば、デモノイドの戦力が増強されるのは間違いない。
    「ですので……今、朱雀門高校に攻め込み、調整中のデモノイドが動き出す前に灼滅する……それが可能であり、必要な事となっています」
     サイキックアブソーバーの予知がない状態での突入作戦になるが、情報が正しいのならば、朱雀門高校内部の戦力はデモノイドのみ。力押しで制圧することは可能だろう。
    「上手く事が進めば、デモノイドを撃破した上で首魁の一人であるロード・クロムの灼滅もできるかもしれません」
     もっとも、ロード・クロムの場所は特定されていない。彼は朱雀門高校にいるかどうかは、賭けとなるだろう。
    「あくまでも、今回の作戦の目的は朱雀門高校のデモノイド勢力を打倒すること。それを念頭に置いて下さい」
     調整中のデモノイドを灼滅することができれば、戦力の増強に歯止めをかけることができるだろう。
     また、先に説明したとおり、確実ではないがロード・クロムが朱雀門校舎内にいる可能性もある。その際に灼滅する事ができれば……ロードを倒すことができれば、爵位級ヴァンパイアの勢力に少なくない打撃を与えることができるだろう。
    「朱雀門の校舎内のどこにデモノイドがいて、どこに調整中のデモノイドがいて、どこにロード・クロムがいるのか……それは分かっていません。どのような場所を主に捜索するか、どのような方針で捜索するかなど、予め指針を決めておくことが必要となるでしょう」
     また、時間をかけすぎれば爵位級ヴァンパイアの軍勢に増援が現れる可能性もある。そのため、素早く的確な行動が求められる。
    「繰り返しになりますが、時間内に全ての調整中デモノイドを灼滅すること。それが、目標の一つになりますね」
     ロード・クロムは朱雀門校舎内にいる可能性は高いが、予知がないため絶対とは言えない。存在しないロード・クロムの捜索に時間をかけるわけにはいかないが、もしいるのならば是が非でも灼滅するべきだろう。一方で、ロード・クロムは状況が不利となれば撤退する危険もあるので、撤退させないための対策も必要となるかもしれない。
    「一チームで全てを行うことはできません。ある程度の連携ができるのが理想となります」
     以上で説明は終了と、葉月は締めくくる。
    「以前、ロード・クロムはクロムナイトを利用してシャドウのサイキックエナジーを奪おうとしていました。それを考えると、ロード・クロムは手段を選んではいられない状況なのかもしれません。ですが、それを看過する理由など何もありません。どうか、全力での行動を。何よりも無事に帰ってきてくださいね? 約束ですよ?」


    参加者
    タシュラフェル・メーベルナッハ(白茉莉昇華セリ・d00216)
    神凪・燐(伊邪那美・d06868)
    椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)
    皇樹・零桜奈(漆黒の天使・d08424)
    備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663)
    富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)
    有城・雄哉(大学生ストリートファイター・d31751)
    秋山・梨乃(理系女子・d33017)

    ■リプレイ

    ●蒼の悲劇に満たされて
     死の香り。
     亡者の臭い。
     支配者が暴走し朱雀門高校は破滅へと誘われた。
     蒼の狂宴に満たされた校内に支配者、ロード・クロムが残っているかもしれないから。何よりも朱雀門高校の悲しき末路に幕を下ろさなければならないから、灼滅者たちは頭数を揃えてやって来た。
     怒号にも似た叫び声を聞きながら、富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)は携帯端末を操作する。
    「……やはり、電波は通じていないみたいですね」
    「その分、ルイスから見取り図をもらえたのは幸いだったな。もっとも、ロード・クロムもこちら側に見取り図があること前提で対策しているかもしれないが」
     有城・雄哉(大学生ストリートファイター・d31751)は朱雀門高校の見取り図を広げていく。
    「予定では地下室の捜索、だったが……」
    「見えている場所ではこちらの建物にあると思います。旧校舎かもしれませんし、こちらから回っていきましょう」
     肩越しに地図を覗き込んだ良太は、比較的大きな別棟を指し示した。
     それからいくつかの候補に印をつけた時、正門の方角で大きな音が響く。
     良太たちは無言でうなずき合い、塀をよじ登りはじめた。
     程なくして塀の内側へと到着。
     校庭にいたデモノイドの大半は正門側から攻め込んだ仲間たちに反応したらしく、近くにはいない。
     ただ……。
    「……燃えてますね」
    「そうだな」
     良太と雄哉が見つめる先、建物正面で火災が発生していた。
     誰が火を放ったのかはわからない。
     目的外の方角であることは確かだった。
     彼らは逆巻く赤から視線を外し、旧校舎と思しき別棟へと向かい歩き出す。
     落ちている切れ端は、きっとデモノイドの元となった生徒が着ていたもの。地面を汚す紅は、きっとデモノイドになりきれなかった生徒のもの。
     あらゆる意味で異質な臭いを感じながら、椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)は目線を落とす。
    「俺達の目的は調整中のデモノイド達の破壊だけどさ。そいつらも、元は朱雀門の生徒だったんだよな」
    「そうだな」
     雄哉が短く吐き捨てた。
     良太は肩をすくめていく。
    「これでは、完全に悪の秘密基地ですね」
    「裏切り者も仲間も一緒に始末するとは……外道もいいところだな」
     肩に乗るウイングキャットのミケに頬をくすぐられながら、秋山・梨乃(理系女子・d33017)は目を細めた。
     短く感想を伝えあいながら、灼滅者たちは別棟へ向かって歩いて行く。
    「……待て」
     程なくして、雄哉が仲間たちを手で制した。
     立ち止まり、良太が彼の視線を辿っていく。
    「……何か気配がありますね」
    「ああ、だが……」
     少なくともデモノイドとは違う。
     ロード・クロム本人かそれにまつわるものか。それとも……。
    「……どうやら、あまり気を張らなくてもいいみたいですよ」
     良太が肩の力を抜き、近づくよう促した。
     気配の主は別働隊。
     自分たちとは別の塀から朱雀門高校内に侵入した者たちだろう。
     情報交換を行うため、別働隊のもとへと歩みよっていく……。

    「この別棟が旧校舎でもあると思って来たんだけど、ちょっと違うみたいね。それで、状況を教えてほしいのだけど……」
     簡単な挨拶と自己紹介を行った後、タシュラフェル・メーベルナッハ(白茉莉昇華セリ・d00216)は尋ねた。
     色射・緋頼が頷いていく。
    「クラブ棟の地上部分は、先ほど窓から偵察し終えました。見た限り、地上部分は重要な施設ではなさそうだったのですが、この棟には地下部分があるのです。地下探索で背後を突かれないよう、地上のデモノイドを灼滅してから向かいたいのですが……」
     タシュラフェルはクラブ棟に視線を向けた。
     説明通り、窓の向こう側で暴れているデモノイドが見える。
    「……」
     目を細め、緋頼に向き直った。
    「それで、ここでは何を」
    「一階、二階それぞれ十体程の気配が蠢いていました。万が一、戦闘中にすべてに乱入されると、わたしたちだけでは危険だと、救援を探していたところだったのです」
    「なるほどね。なら……ちょっと待ってね。今、相談するから」
     同道してきた仲間たちへと視線を送る。
     皇樹・零桜奈(漆黒の天使・d08424)が口を開いた。
    「……私たちの目標が何であれ、作戦全体の目的はデモノイドの殲滅。そちらを優先すべきだ」
     もとより、緋頼たちがいなくともこの別棟は調査していた可能性が高い。ならば、安全確実な道を選ぶべきだろう。
     タシュラフェルは全員の確認を取った上で、改めて緋頼へと向き直った。
    「わかったわ。一緒に戦いましょう」
    「ありがとうございます。では、階で分担して頂けますか。各階の状況は――」
     クラブ棟の構造は、一階は小さな部室が連なっていて、二階は共用のレッスンルームで広い部屋になっている。二階は一度に多くの敵と戦うことになるだろう。
    「そうね、なら……」
     分担のため、それぞれのメンバー構成を確認し合った。
     結果、サーヴァントの分、防衛能力に余裕があるタシュラエル側が二階を担当するのが妥当だろう……という流れになった。
    「わかりました。掃討後は、向こう側の地下階段前で落ち合いましょう」
    「ええ。それじゃ、一階はよろしくね」
     タシュラフェルは微笑み、クラブ棟へと向き直る。
     同道する仲間たちと戦闘の際の作戦確認を行いはじめた彼女の背中に、緋頼の声が聞こえてきた。
    「見ればわかると思いますが……あまり気分のよい場所ではないようなので、手早く片付けましょう」

    ●狂宴を終わらせるために
     クラブ棟内の状態に名をつけるなら、無秩序。
     ダークネスとして未熟なのか、知能が著しく劣るのか。
     異臭を放つ何かの肉を口にする、嬌笑に似た鳴き声を上げながら我が身も顧みずに殴り合う、発情期の獣のように体を重ね合う……おおよそ、ダークネスとしてはありえない様を晒していた。
     そんな彼らにとって、灼滅者たちはとても魅力的な玩具となるのだろう。
     襲いかかってきたデモノイドには別働隊がぶつかり合う。
     一階の制圧を始めていく彼らを横目に武流らは階段を駆け上がりはじめた。
     階下の騒ぎに反応したか、階段半ばにてデモノイドがやってくる。
     すかさず武流が光の刃で斬りかかり、青銅のごとき腕とぶつかり合った!
    「上を取られたままじゃ不味い! まずは二階へ!」
     力のままデモノイドを壁へと押し付ければ、仲間たちが駆け上がっていく。
     二階へとつながる最後の段には新たなデモノイドが立ちふさがった。
     すかさず蒼炎を纏った盾を掲げデモノイドを押し返していく零桜奈を横目に、武流は弾き返され――。
    「まだまだぁ!」
     ――着地と共に駆け寄り、打ち合いへと持ち込んだ。
     音なき剣戟が続く中、不意に、デモノイドの体が硬直する。
    「今のうちに武流も登って!」
    「ああ!」
     タシュラフェルに促され、武流は階段を駆け上がる。
     一拍遅れて、頭に符を張り付かせたデモノイドが追いかけてきた。
     重々しい音を聞きながら、武流は最上段にて踵を返す。
     登ってくるデモノイドに狙いを定め、光の刃に熱き炎を走らせた。
    「ここは通さない!」
     一歩だけ前に踏み込むと共に振り下ろす。
     掲げられていく蒼き腕を撃ち落とし、脳天の半ばまで刃を食い込ませた。
     蒼き肉体が赤き炎に抱かれる。
     瞬く間に冷たき青に変化した。
    「……」
     武流が青き炎の担い手たる雄哉に視線を向ける中、デモノイドは階段を転がり落ちていく。
     階下へ至るとともに砕け散っていく音を聞き、一瞬だけ瞳をつむった。
    「ごめんな。救ってやれなくて」
     瞳を開くと共に表情を引き締め、二階へと改めて向き直る。
     レッスンルームだったと思しき広い部屋では、零桜奈が中心となってなだれ込んでくるデモノイドたちを抑えていた。
     力負けしたか、ふっ飛ばされていく備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663)の霊犬・わんこすけ、良太のビハインド・中君、ミケ。
     勢いのまま中衛へ向かおうとするデモノイドには零桜奈の帯が襲いかかる。
     デモノイドたちの視線は零桜奈にった。
     臆することなく、合計四体へ視線を走らせる。
     突き出された拳は帯でくるみ受け流した。
     刃は刀の鞘に滑らせ、砲弾は正面から盾で受け止める。
     衝撃に負けたふりをして後ろに飛び退けば、追撃をかけようとしていたデモノイドの拳が床を砕いた。
     着地と共に最前線へ戻ろうとした零桜奈を、鎗輔が呼び止めた。
    「待って。もう、わんこすけたちの治療は終わった。武流くんも向かってる。今は一度体を休めて欲しい」
    「……わかった」
     零桜奈の治療が行われていく。
     襲い来るデモノイドたちには武流とサーヴァントたちが立ち塞がる。
     上手く事が運ばぬ現状に苛立ったか、右端のデモノイドが刃に変えた腕を振り上げた。
     切っ先が頂点を示した時、その頬を梨乃の炎の膝が捉えた。
    「トドメは任せたのだ」
     デモノイドに炎を与えながら、仲間の方へと蹴りのける。
     サーヴァントたちが道を開ける中、ふらつくデモノイドを中心にフロア中の空気が氷結した。
     新たに参戦しようとしていた三体のデモノイドが戸惑い立ち止まる中、氷結の担い手たる神凪・燐(伊邪那美・d06868)が静かな息を吐いていく。
    「これで二体目、ですね」
     視線の先、前衛と中衛の狭間で一体のデモノイドが砕け散った。
     氷の欠片がきらめく中、零桜奈が最前線へと復帰する。
    「……ミケを一旦下がらせてくれ」
     頷きミケを下がらせていく梨乃から視線を外し、デモノイドたちへと向き直った。
    「……数はどんどん増えているが、いずれ潰える。今が正念場だ」
    「おう! 全力で守りきってやるぜ!」
     呼吸を重ね、武流は駆ける。
     零桜奈が、サーヴァントたちが続く中、良太もまた仲間たちの間に潜り込んだ。
    「……いずれ戦う運命だったとは思いますが……哀れですね」
     悲しげなつぶやきとともにバベルブレイカーを突き出し、杭を撃ち込んでいく。
     杭に貫かれたデモノイドは、悲鳴に似た断末魔を上げ……。

    ●蒼の巨人が眠る場所
     痛みは残る。
     塞がらない傷もある。
     けれど、灼滅者たちは誰ひとりとして欠けることなくデモノイドを撃破した。
     二階を隅々まで探索し、めぼしいものはないことを確認。一階にいる別働隊との合流を目指して階段を降りていく。
     地下階段前での合流を果たした時、別働隊のオリヴィア・ローゼンタールがねぎらいの言葉と共に微笑んだ。
    「そちらも全員無事のようですね。状況はいかがでしたか? 一階は重要そうなものはありませんでしたので、このまま地下に向かいます。ご協力のお陰でこちらの戦力の消耗は少ないですが……」
     燐が微笑み返し、静かな息を吐いていく。
    「こちらも万全……とはいいがたくとも、余裕はあります。おそらく、互いに補い合えば先ほどと同等の戦力が相手でも十分に戦えるでしょう」
    「引き続きご協力をお願いしてもよろしいでしょうか。とはいえ、地下空間の情報はありませんので、分担は難しいかと」
     もとより協力して調査する予定に変化はない。燐は仲間たちに視線で確認を取った後、頷いていく。
    「では、今度は二つのチームを混ぜる形で陣を組み、進みましょうか」
    「地下探索ならば、わらわの出番じゃの!」
     合同作戦が決定された時、別働隊の媛神・白菊がニホンオオカミに姿を変える。彼女とライト付きヘルメットを付けたナノナノが斥候を務める形で進軍していく作戦となった。
     消耗を補い合うことができるよう、灼滅者たちは役割に応じた位置に立つ。
     大所帯であるからこそ慎重な足取りで地下へと向かう階段を降りはじめた。
     一歩、二歩と進むたびに響く足音は、すぐに雑踏へと変わっていく。
     治療役として最後尾のグループに混じる鎗輔は、たびたびカンテラを掲げ暗がりを探っていった。
     地下が何に使われている施設なのかはまだわからない。
     ただ、ところどころに足跡や血の跡、破壊の跡といった、デモノイドが通った証は散見される。
    「……」
     カンテラを元に戻す中、頭に乗るわんこすけが小さく鳴いた。
     軽くその頭をなでながら、鎗輔は歩みを進めていく。
     やがて、先頭を歩いていた白菊たちが立ち止まり――。

     ――おそらくそこは、デモノイドの寝床として使われていた場所。
     淡い灯の中、敷かれている粗末な布、ばらまかれている毛布と思しき物体。
     起きたばかりなのか、目をこすっている五体のデモノイド。
     灼滅者たちは顔を見合わせ、言葉は紡がず頷き合う。
     僅かに陣を変え、改めて地下室へと向き直った。
     デモノイドたちはきょろきょろと周囲を見回している。
     座ったまま立ち上がる気配は見せていない。
    「……行くわよ」
    「ええ」
     タシュラフェルと燐が地下室内を凍てつかせた。
     反応もできずに体の各所を凍りつかせていくデモノイドたちを見つめながら、梨乃が地下室内へと突入する。
     素早く視線を走らせ、右奥にいたデモノイドへと向き直った。
    「まずは右奥のデモノイドから片付けよう!」
     脚の炎を宿しながら跳躍し、右奥デモノイドの胸元に蹴りを放つ。
     炎に抱かれながらも溶けない氷めがけ、後を追ってきた良太が杖をフルスイング!
    「これで……!」
     魔力を爆破し、胸を砕く。
     巨体を大きく揺るがした。
    「畳みかけるよ!」
     すかさず、別働隊の千尋が紅蓮の短剣を重ねていく。正流らが続いた果て、流希の刀が右奥デモノイドを両断した。
     崩れ落ちていく右奥デモノイドから視線を外し、梨乃たちは一旦入口前へと後退する。
     入れ替わるようにして武流、零桜奈らが防衛を担う者たちがデモノイドのもとへと向かっていった。
    「俺が、俺たちが、みんなを護る!」
    「……ああ」
     迎え撃たんと立ち上がっていくデモノイドを、抑えにかかっていく武流たち。
     もちろん、反撃を受けるだろう彼らのバックアップも万全だ、
    「これだけの回復量があれば、そうそう万が一が起きることもなさそうだね」
    「そうだな。……頼りにさせてもらおう」
     鎗輔や九十九ら治療を担う者たちが反撃に備えていく。
     さなかにも、梨乃は何本もの魔力の矢を生み出していた。
    「さあ、さっさと倒してしまうのだ」
    「ああ」
     梨乃が魔力の矢を解き放った時、間に紛れ込むようにして雄哉が飛び出した。
     貫かれていくデモノイドに、魔力の矢を押し込むかのような形で何度も、何度も拳を刻んでいく。
     消耗しているとはいえ、人数差も戦略も圧倒的。
     灼滅者たちは地下室を瞬く間に制圧し、治療しながらの調査を開始した。
     もっとも、最初に覚えた印象以上のものはない。全員の調査結果から導き出せる結論に、梨乃は静かな息を吐く。
    「なら、次へ向かおう。まだまだ、探す場所はあるはずだ」
     早々に新たな探索を開始し――。
     ――程なくして、ロード・クロム撃破の連絡がもたらされた。
     それは、望まずして命を落としたものたちへの、せめてもの手向けになることだろう。

    作者:飛翔優 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年7月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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