戦神アポリアの提案~共生の条件

    作者:佐伯都

     六六六人衆第七一位、『戦神アポリア』。
     いや元・狐雅原・あきら(戦神アポリア・d00502)と表現したほうがわかりやすいか、と成宮・樹(大学生エクスブレイン・dn0159)はやや平坦な口調で続けた。
    「その『戦神アポリア』が武蔵坂学園との共闘を申し入れてきた。ミスター宍戸はもちろん上層部の同意もある以上、こちらがそれを望めば共闘関係が成立する可能性は高いと思ってくれていい」
     こちらが望むならね、と樹は手元のルーズリーフへ落とした視線を動かさないままもう一度繰り返した。

    ●戦神アポリアの提案~共生の条件
     『戦神アポリア』の提案としては、こうだ。
     ――武蔵坂が当方にサイキック・リベレイターを使用したことを確認した。このままなら全面戦争となり、人間社会を巻き込み甚大な被害を出すことは避けられない。
     しかし当方のプロデューサー・ミスター宍戸は人間であり、六六六人衆全体としては人間社会の支配に興味はない。名の通り他の種族に比べ数は少数でもあり、序列を争って殺しあうため一定以上の数にもならない。
     これは六六六人衆だけが人類と共存できるダークネス組織、と言える。
     確かに一般人を殺戮する必要はどうしても残る。だがこれは肉食動物が草食動物を補食する食物連鎖の範囲であるし、一定数を確保できるなら武蔵坂が指定した範囲で行うとすることで、歩み寄りたいと考えている。武蔵坂が受け入れられる条件を提示してほしい。
     犯罪者、末期患者、無職者、先の短い老人、外国人、エトセトラ。
     もし共存を望むなら、こちらが指定する場所へそういった、『殺してもいい人間のサンプル』を連れてくること。それをもって同盟の締結としたい――。
    「要するに『六六六人衆が殺してもいい人間を10名差し出せば』同盟が成立する」
     ただ引き渡しを行う場所は多数用意されていて、たとえ他で交渉が決裂し戦闘が発生したとしても、過半数で今回の交渉が成立すれば武蔵坂に同盟の意志があるものと判断する、という条件が付加されている。恐らく、少数のチームの独断が武蔵坂の総意として伝わる事態を避けたかったのだろう。
     過半数の場所で引き渡しが行われなかったならば、次の交渉へ駒を進めることはせず提案は取り下げられる。
    「……まあ無条件に、わかりました同盟しましょう、って内容ではないよ。でも一定の事実と真実を含んでいる提案だという事には間違いないから、検討してみる余地はあると思う」
     それこそダークネスに食い潰される側の口から出るには、凄惨な台詞だったかもしれない。樹自身にその自覚があったのかどうかは、表情からは窺えなかった。
    「この提案をどうするかは皆の判断に委ねるよ」
     受け入れるなら、10名の一般人を連れて引き渡し場所へ。
     受け入れないなら、いずれ行われる全面戦争での戦力を削るため引き渡し場所の六六六人衆の撃破を行うことになる。
     交渉決裂からの戦闘が十分に予測できるだけに引き渡し場所に現れる六六六人衆は捨て駒なのだろう、さほど能力は高くない。とは言ってもダークネスである事に変わりはないので、灼滅を狙うなら相応の準備は必要だ。
    「引き渡し担当として現れる六六六人衆は水無月・蛍(みなづき・ほたる)。セーラー服にボブカットの、見た感じ大人しそうな女子中学生って感じ」
     バトルオーラと解体ナイフで武装しており、戦闘となれば黒死斬、オーラキャノン、集気法、ジグザグスラッシュ、ヴェノムゲイルを駆使して身軽に立ち回るだろう。
     場所はかなり老朽化した廃工場前のロータリーが指定されており、時間も夜遅くなので音や人目を気にする必要はない。
     そしてダークネスの側からサイキック・リベレイターという単語が出たことに驚いた者もいるかもしれないが、戦神アポリアによって武蔵坂の情報は相当漏れていると考えていいだろう。
    「何と言うか、すごく宍戸らしいと言うか……厭らしい話だな、と」
     平坦だった声が最後のワンフレーズだけ、やけに低く響いて聞こえた。


    参加者
    紫乃崎・謡(紫鬼・d02208)
    一・葉(デッドロック・d02409)
    丹生・蓮二(エングロウスドエッジ・d03879)
    碓氷・炯(白羽衣・d11168)
    祟部・彦麻呂(快刀乱麻・d14003)
    鈴木・昭子(金平糖花・d17176)
    土也・王求(天動説・d30636)
    エメラル・フェプラス(エクスペンダブルズ・d32136)

    ■リプレイ

     祟部・彦麻呂(快刀乱麻・d14003)が探すまでもなく、目的の人物は目立つ場所に手持ち無沙汰な様子で待っていた。廃工場からだろう、梅雨の終わりの生ぬるい風が重油や赤錆の混じった臭いをエメラル・フェプラス(エクスペンダブルズ・d32136)の鼻先まで運んでいる。
     打ち捨てられたままのいくつものコンクリート片、すっかりひび割れたアスファルト。後衛を張る紫乃崎・謡(紫鬼・d02208)と碓氷・炯(白羽衣・d11168)、そしてただ一人中衛を望んだ一・葉(デッドロック・d02409)が背後にくるよう丹生・蓮二(エングロウスドエッジ・d03879)はゆるやかな斜面を登った。
     くふりと隣の鈴木・昭子(金平糖花・d17176)が小さく鼻を鳴らしたことに気付き、土也・王求(天動説・d30636)はまっすぐ前を見据える視線を揺らさず呟く。
    「どうじゃ」
    「一応ダークネスですし……真っ白とは、いきませんよね」
     それもそうじゃな、と王求は軽く同意しておいた。闇堕ちしてなお業を背負わずにいられたなら、それはとどのつまり灼滅者だろう。
     『さほど能力は高くない』という情報に見合う量の業、と昭子は判断した。
    「特筆すべき点は、なにも。能力は高くないという情報通り、といった所です」
    「じゃあとは、少ーしキミの時間をちょうだい、ってボクたちの方針を伝えるだけだね」
     にこりと笑ったエメラルがロータリーへ続く傾斜の最後をスキップで上がった。
    「こんばんは! とりあえず、こっちから戦いを仕掛けるつもりはないから安心してほしいな!」
     よく晴れた夜空に、赤錆にまみれた廃工場。その前で、いち、に、と小声で灼滅者の人数を数え、はち、と呟いたあと蛍は表情を曇らせた。
    「……こんばんは。わたしは六六六人衆の水無月・蛍……ですが、提案が受け入れられず残念です」
    「ボクは紫乃崎・謡。確かに返答は見ての通りだが、少し待ってもらいたい。交渉担当として貴女と話がしたい」
     謡の申し出に、蛍は意外そうな顔をする。それもそのはずだろうと炯は周囲の警戒を怠ることなく考えた。六六六人衆からの申し出はイエス・オア・ノーの返事しか期待しない内容だったのだから、ここで交渉を持ちかけられるとは思わないだろう。
    「ですが、同盟は拒否なのでは?」
    「そりゃそーだ。世の中生きる価値もねぇヤツ、例えば俺とかお前とかみたいな死ねばいいヤツてのはいっぱいいるけどなー」
     そんな理由で殺していい人間なんてものがまかり通ってしまったら、自分達の商売は上がったり――そんな葉の言い分に、蛍は表情を曇らせた。
    「結論として、考えるに値しない、と申し上げておきます。僕はいわゆる命の選別はしませんし、するつもりもなければ、その立場にもありません。……確かにろくでなしなどいくらでもいますが、一応日本は法治国家ですので」
     罪人は法の下に罰し罰せられるもの、それが炯の大前提だ。
     なにより、こちらの内情を知った上での提案ならば六六六人衆も手の内を明かすべき、と炯は考えている。まあ、その『手の内』がどんなものか、炯自身興味はないのだが。
    「第一、下手な条件つけるよか今まで通りで十分だろ。同盟を持ちかけるならそのメリットをまず提示するもんじゃね? お互いこれっぽちも信用してねぇんだから、信用するに足りるメリットを提示してくれよ」
     ま、殺したきゃ殺せば? と続いた葉の発言に、蛍はやや首をかたむけた。
    「そうしたら灼滅してやっからさ。だいたい、六六六人衆は息をするように人を殺すんだろ、そんなヤツらが吸う空気を選んで息ができるもんなのかよ」
     提案を拒否したうえで改めての交渉を申し出ているはずだったがメンバーの一部は交渉に否定的だったのか、挑戦的な発言が続く。雲行きが怪しくなる気がして、慌ててエメラルが葉の後をひきとった。
    「あのっ、要するにね、今戦わなくて済むなら、キミもその方がいいよね? 一緒にずっと笑顔で過ごしていくのは、難しいかもだけど……でも、何にもやらなかったら可能性はゼロのままだもの」
    「同盟提案を受け入れられぬとはそういうことじゃ。妾は必要ないのなら命は奪いたくない。ダークネスの命も」
     まあ今更なんじゃがな、とごちた王求に、蛍は曇った表情で首をかしげた。
    「それは、違うのでは」
     ぽそりと漏れた呟きに何か、決定的な意識のズレのようなものを感じ、蓮二はしばらく成り行きを見守ることにする。そのズレがこちらに有利に働きそうか、あるいは予想もつかない方向に転がるかは今はまだわからない。
     ただひとつ言うとするなら、きもちわるい――とにかく、違和感が凄まじい。
    「殺して良いか悪いかは、そんなのは、他人に決められることではありません」
     わずかに身を乗り出したせいか、ちりり、と鈴の音が昭子から聞こえた。
    「あらがう術がない人たちを巻き込むような条件は、承諾しかねます。選択肢を叩き潰す理不尽は、ゆるせないので……狙うなら、その立場を了承している人にしませんか」
    「とにかく、こっちとしてはお前らに殺させてもいいって思える一般人のサンプルがいなかった、それだけだ。そもそも俺は『誰かが誰かに殺されてもいい』って思えなくって、見つけられなかった」
     なかば違和感の捌け口を求めるように早口になってしまった気はするが、蓮二としては言っておきたいことは言えたので少しすっきりする。
     やや間があり、そうですか、と蛍はやはり浮かぬ顔のまま続けた。
    「要するに皆さんは、一般人を殺すことは理不尽であり受け入れられないので、提案は拒否すると」
    「殺すのが一般人じゃなくて、お前らとか、俺ら灼滅者とか。それならとりあえず『殺し合い』はできると思うよ……まあ死ぬのは嫌だから、ハナっから殺されてやるつもりもないけど」
    「ならばこれ以上話し合うことに意味はありませんね」
     顎の線ほどの黒髪を揺らし、残念だ、と言わんばかりの蛍に蓮二が訝しげな声をあげる。
    「……どういう意味だ」
    「だって、灼滅者がダークネスを灼滅することをやめるのは不可能で、必要な行為なのでしょう? 一般人を苦しませ殺すことをやめるのが不可能でそれを必要ともしているわたしたちと、一体どこの何が違うのでしょう」
     灼滅者はダークネスを灼滅することで闇堕ちせぬための癒しを得ており、それを放棄することは不可能だ。武蔵坂に籍を置く者なら誰でも知っている。
    「ダークネスが一般人を苦しめ殺すのは繁殖行為でもあります。人間のように生殖行為で殖えないなら、新しい闇堕ちがなくなれば滅ぶ。一切の食べ物を取り上げられたうえで去勢しろと言われて、貴方がたは従えますか」
     なかなかに生々しい単語を蛍はすらすらと口にする。やはり考えが甘かったのか、と彦麻呂は唇を噛みしめた。
     彦麻呂も『他人の命をどうこうできる権利はないし、殺しあうならダークネス同士でやってくれ』と言うつもりではいたものの、言われてみればそれ以前の問題だった事になる。ダークネスで殺し合ったところで得られるものはなく、さりとて次の世代も生まれない。なるほど一般人を殺すのは食物連鎖、その通りだ。
     ダークネスは人間を殺す=人間を殺すものは許せない=ダークネスは許せない、では交渉にもなっていない。
    「少なくともこの二つが受け入れられないなら交渉の席についたとは言えないと、わたしは感じます。どうでしょう」
     ……何か言わなければ、考えなければ。でなければ、話し合いはここで終了だ。彦麻呂は必死に考えを巡らせる。
     一般人を生け贄に差し出せなんて条件は飲めない、たとえそれが灼滅者の癒しのように決して譲れぬものだとしても。彦麻呂自身、何故よりによってこんな無理ゲーを好きこのんで、と正直思わないこともない。それでも本気で、共存したいと考えている。互いのメリットを提示し歩み寄る方法がきっとどこかにあるはずだと信じている。
     ――ただ今の彦麻呂にはそれを実現するための方策が、絶望的なほどに、思いつかない。
    「……例えば蛍ちゃんが、私と仲良くしたいなら、それは全然歓迎なんだけどな」
    「なるほど。ではわたしが灼滅者になるしかありませんが、灼滅者になる方法とはどんなものですか」
     そんなものはどこにもないし、蛍自身、回答など期待しないという顔をしている。ダークネスから灼滅者になれたのはごくごく一部の例外中の例外であって、誰もがなれる方法など見つかっていないのが現状だ。彦麻呂は自分の靴の爪先を睨むしかない。
     話は終わったかと言い置いて、葉が肩の上へ担ぎあげていた交通標識を地面へおろす。いや待ってくれ、と謡が咄嗟に制止した。
    「確かに六六六人衆の衝動、灼滅者の癒しの二点から、申し出の通り一般人を利用するのが現状合理的なのも理解している。でも、けれど、生命を食物にせずすむ方法を模索する者もいるんだ、少なくとも、ボクはその一人だ」
     難題をクリアする方法を現状では思いつかず軋轢を解決できなくとも、今はとにかく方法を模索したい、このたび謡が望むのはその一点だ。
    「なあ、六六六人衆の……蛍、お主がこの提案をどう思っているかを聞かせてほしい。お主は、妾達と歩み寄りたいと思っているのか? 正直に言えば、提案が提案で相手が相手だけに信用したいができやしない」
     王求の訴えに蛍は、もうやめましょう、とごく静かに告げる。
    「信用できぬ提案を持ってきた、信用できぬダークネス。今あなたがそう言ったのが、わたしです」
    「なあ、いつまでやってんだよ。最初から意見は一致してるじゃねえか、提案は却下、折り合いはつけられねえってな」
     交渉のため葉は自分から仕掛けるつもりはなかったが、これ以上は互いに無意味だと判断するしかなかった。そもそも提案を容れないなら、灼滅するようにと言われている相手でもある。灼滅しない理由はどこにもない。
    「ええ、やはり六六六人衆と僕は相容れないようです。今更という気もしますが」
     正直、炯としては蛍を生かすよりかは殺したいと思っていたほどだ。灼滅できるならそのほうがずっとやりやすいし後顧の憂いもない。
     得物を構えた葉をながめ、蛍はセーラー服の下から解体ナイフを抜いた。ばらりと【cursor】が葉の周囲にひろがり、そのまま襲いかかる。
    「ケツまくって逃げ帰んなら見逃してやらあ!!」
     蛍はなんとか痛打を避けたものの、あまり能力は高くないと言われていた通りだった。皺一つないセーラー服の衿と袖が片方落ち、その下にはもう使い物にはならなさそうな左腕。
     激痛に顔を歪めたものの、蛍は濃い灰色のスカートを真っ赤に染めて反撃にくる。やや小柄な体躯から十分に予測できる身軽な立ち回りをするが、こちらはそれも織り込み済みだ。
     論理が破綻している、と指摘されたことは王求にとって痛かったかもしれない。しかしダークネスと諍いをせずにすむのならそれが最良であるはずだと王求が望んでいるのは事実だった。……だが、それを実現できる方法がなく、そんなものできっこない、と諦めている部分もある。相反する気持ちが自分の中でせめぎ合っていてとても息苦しい。
     一瞬目の前が暗くなり、我に返った王求が顔を上げれば、すぐそこにはぎらりと星明かりをはねかえす解体ナイフが迫っていた。無理な体勢から身体をねじ曲げるようにして回避し、王求は叫ぶ。
    「待て、蛍――お主がこのまま帰ると言うなら、妾は追うつもりはない! それだけは」
     信用するに値しないと断言した形になる以上、もうこちらから手は上げず行動でしか示せないと王求は防戦一方に追い込まれた。横から蓮二が割って入り、力ずくで引きはがす。
    「勘違いすんなよ」
     はあ、と肩で息をしてから、蓮二は血塗れの蛍と向き合った。
    「俺だって、共存しないとどうしようもないって事なんてわかってるんだ。でも六六六人衆が信用できる相手じゃない事もよく知ってる」
     あの殺戮衝動を忘れられるわけがない、とひどく苦い言葉を重ねた蓮二に、蛍は一瞬目を細めた。活路を開くつもりなのか、怒濤のように攻め込みながら言い募る。
    「ええ、ですから貴方がたが現実を受け入れ提案を呑むか、それとも互いに理念を捨てず曲げず総力戦へ突き進むのか選ぶべきです。どちらにしろ犠牲はゼロになどならない」
    「待って、待って、ください」
     激しく切り結ぶ蓮二と蛍を制止するように昭子が声をあげていたが、二人とも耳に入っていないようだった。夜の闇よりもなお暗い、アスファルトの中を滑空しているように見える鳥の群れのかたちをした炯の影業が謡の視界を横切る。
     無数の影色の翼に切り裂かれ倒れた蛍と、炯の間に今度は謡が割って入った。唇からは少し前から、どろりとした鉄錆の味がしている。
    「頼むから、皆待ってくれ、蛍さんも! ここで彼女を灼滅して、それで何か変わるのか」
    「そ、そうだよ、ここで灼滅しちゃったらいつもと同じだよ! 何もしてないのと変わらないよ!」
     戦闘は回避したかったものの衝突が始まってしまい、どうしたものかと困惑していたエメラルが慌てて叫んだ。
    「今更何を言っても無駄かもしれないけど、ボクたちができるなら戦いたくなかったのは、本当だよ……」
     常に笑顔はずのエメラルの表情が、笑ったままで涙に崩れそうになる。
    「じゃあ、こうしよう」
     なんとか上半身を起こした蛍の前へ彦麻呂が徒手空拳のままひとり、進み出た。
    「この提案には同意できない、それはもうどうにもならない。でも、だから決裂ってのは違うと私は思ってる。サイキックリベレイターが照射された以上、六六六人衆の盟主を叩かなければ人類滅亡の脅威に発展するのも、避けられない。でも勢力としての脅威をそぎ落としたら、歩み寄ることはできるかもしれない」
     喘鳴に似た呼吸を漏らしている蛍に、だから意見を持ち帰って、と彦麻呂は決然とした表情で告げる。
    「今はとにかく、同盟の提案が急すぎる。私たちの意見は話した通りだから、それを上層部に伝えてほしいんだ。命まではとらないから」
     行って、と彦麻呂が促すと、蛍は視線を合わせたままゆっくり立ち上がる。
    「……いいのか? コレ」
    「まずは何かひとつ、やってみるべきだろう。でなければ何も変えられない」
     葉の疑問に、彦麻呂ではなく謡が硬い声で答え、その中で蛍は無言のまま夜の闇の中へ消えていった。
     伝えるとも、伝えないとも明言しないまま。

    作者:佐伯都 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年7月11日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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