マーダーパーティー

    作者:飛翔優

    ●力を求めて
    「しっかし、わっかんないねぇ」
     石壁に掲げられている松明の灯りだけが頼りとなる暗い暗い迷宮の中。最後尾を歩いていたガトリングガンを携えている高校生くらいの少女が一人、首を傾げて立ち止まった。
    「あ?」
    「何だいきなり」
     不機嫌そうに振り向いたのは、ナイフを握る中学生くらいの少年二人。間に挟まれる形となった高校生くらいの少年が壁際へと退避する中、少女は言葉を続けていく。
    「殺すんならこういうのの方が楽だろうに、なんてナイフなんかにこだわるんだい? あんたはそもそも何も持っちゃいないけど」
     最後に視線を向けられた高校生くらいの少年は、瞳を閉ざして言葉を無視した。
     一方、中学生くらいの少年二人は顔を見合わせ、ニタニタと下品な笑みを浮かべていく。
    「決まってるじゃねぇか、なあ」
    「殺す感触が手に伝わる、叫び声を近くで聞ける、怯えてる顔を間近に見える……そんなもんじゃ味わえねぇ感触が、これにはある」
    「そんなもんかね」
     要領を得ないといった様子で少女が唇を尖らせる中、高校生くらいの少年が両者を手で制した。
    「おしゃべりは終わりだ」
     指先で少年二人の背後を示せば、脚をひきずりながら近づいてくるアンデッドの群れ。
     彼らは即座に身構える。
    「あ、何体来たって蜂の巣にしてやるよ! あんたたち、邪魔するんじゃないよ!」
    「はっ、あいつらは俺の獲物だ」
    「いいや、俺の獲物だ。奪うんじゃねーぞ!!」
     ナイフの少年二人が群れに向かって歩き出す。
     少年二人を巻き込む射線を保ったまま、少女はガトリングガンをぶっ放した。
     数多の弾丸がアンデッドを貫いていく光景を見つめながら、無手の少年もまた全身にオーラをたぎらせ始めた。
     ――物足りない。
     死者が相手では物足りない。
    「……全てはここをクリアしてから、か」
     瞳の中に強い光を宿しながら、無手の少年もまたアンデッドの群れに突っ込んでいく。たとえ腐ったアンデッドの肉だとしても……人の肉でなかったとしても、手慰み程度にはなるだろう……と。

    ●教室にて
     灼滅者たちを出迎えた倉科・葉月(大学生エクスブレイン・dn0020)は、メンバーが揃った事を確認した上で説明を開始した。
    「暗殺武闘大会決戦で闇落ちした久遠・翔さんが動いているみたいです」
     久遠・翔(悲しい運命に抗う者・d00621)はミスター宍戸の計画に協力しており、ミスター宍戸プロデュースによって闇落ちした中高生を引率し、現存するノーライフキングの迷宮を用いた探索訓練を行わせている様子。
    「探索を行う中高生は六六六人衆になったばかりですが、サイキック・リベレイターの効果もあり、ノーライフキングの撃破は問題なく成功するみたいです。彼らが経験を積み重ねれば、有力な敵となってしまうかもしれません」
     そうなる前に対処する必要がある。
    「今回皆さんには、ノーライフキングを撃破して意気揚々と迷宮から出てきた彼らを奇襲し、灼滅してきて欲しいんです」
     彼らは完全に油断しているため、戦闘態勢に移るまでに多少の時間がかかるだろう。また、ノーライフキングの迷宮の戦いでの消耗もあるため、数は多くとも十分に勝機はある。
    「続いて、今回相手取る新人六六六人衆について説明しますね」
     個体数は四体。内訳は、ナイフを持つ中学生くらいの少年が二人、名をラディとゴーシュ。オーラを滾らせる高校生くらいの少年・ケン。ガトリングガンをぶっ放す高校生くらいの少女・キィカ。
     ラディとゴーシュは攻撃特化。得物であるナイフは解体ナイフに似た性質を持っており、技も足取りを鈍らせる黒死斬、防具ごと切り裂くティアーズリッパーの他、それらを増幅させるジグザグスラッシュ……に似たものを用いてくる。
     ケンは自分の生存を最優先にしつつ、散発的な攻撃を仕掛けてくる。得物であるオーラはバトルオーラに似た性質を持っており、技もティアーズリッパーの他、避ける事を許さぬオーラキャノンや傷を癒やし毒などを浄化する集気法……に似たものを用いてくる。
     キィカは後方に立ち、精度の高い射撃を行ってくる。技は敵を蜂の巣に変えるガトリング連射、弾丸を嵐のように撃ち出し敵陣にプレッシャーを与えるバレットストーム、爆炎の弾丸を連射するブレイジングバースト……に似たものを用いてくる。
     彼らは仲が悪いのか個人主義なのか、連携を取る気配はない。誰かが危機に陥った時はすぐに見捨てる、といった性格であるとも思われる。その辺りも留意して戦い方を考えると良いだろう。
    「また、戦闘が長引いた場合、引率者である翔さんが救援に現れる可能性があります」
     翔は強力な六六六人衆であるため、救援に来られた場合は勝ち目がなくなってしまう。幸い、翔は灼滅者の撃破よりも新人の回収を優先するため、無理に戦わず撤退すれば危険はない。
    「ですので、翔さんが救援に来る前に、可能ならば全員の討伐を。それが不可能でもできるだけ多くの六六六人衆を灼滅できるように、どうかよろしくお願いします」
     最後に……と、葉月は繁華街の外れにある廃ビルを指し示した。
    「皆さんが赴く日の夜九時頃。この廃ビルの入り口が、迷宮の出口となります。つまり、ここで待ち構えておいて奇襲を仕掛ける、という形になりますね」
     廃ビルの玄関口やコンクリートの地面を割り繁茂している植物、打ち捨てられたままになっている機材など、隠れる場所には事欠かない。奇襲は問題なく行うことができるだろう。
     以上で説明は終了と、葉月は地図などを手渡しながら締めくくる。
    「本来……と言いますか、新人六六六人衆は闇落ちしたばかりなので説得は不可能ではないはずです。ですが……彼らは元の人間性が、その、六六六人衆に近いようで、説得は困難を極めます。また、それだけ危険な方々ということでもあります。ですので、説得はあまり考えず、灼滅することを優先して下さい。何よりも無事に帰ってきてくださいね? 約束ですよ?」


    参加者
    鏡・剣(喧嘩上等・d00006)
    花藤・焔(戦神斬姫・d01510)
    神門・白金(禁忌のぷらちな缶・d01620)
    李白・御理(白角・d02346)
    龍統・光明(千変万化の九頭龍神・d07159)
    御門・心(日溜まりの嘘・d13160)
    成田・樹彦(禍詠唄い・d21241)
    ニアラ・ラヴクラフト(宇宙的恐怖・d35780)

    ■リプレイ

    ●夜の闇に身を潜めて
     熱を集めていた灰色も、粘着くような暑さに負けずに押し寄せていた人波も、全て夜の帳の向こう側に閉ざされた。残されたのは夜風に冷やされていく静かな空気。もっとも、動けば熱が篭り騒がしくなる程度にはもろいものだったけれど。
     壊れることなく世界を抱く闇の深い場所。街灯もろくにない路地の中にある廃ビルの正門、玄関へとつながる道の途中。無秩序に繁茂する草の中に、李白・御理(白角・d02346)は身を隠していた。
     鼻腔をくすぐる草の匂い、風が運んでくる仲間たちの息遣い。自然と流れてくる彩りをより分けながら、静かな思いを巡らせていく。
     今回の相手は六六六人衆になりたての者たち。名をラディ、ゴーシュ、ケン、キィカと聞く。
     彼らがこの廃ビルの入り口に拠点を設けているノーライフキングを倒し、出てきた所を襲撃する算段だ。
     本来なら情けをかけても良かったかもしれない。もっとも、恋人の姉がいなければ、の話ではある。偶然とはいえ彼らは大切な人に武器を向ける事になったのだから。
     だから、せめて死化粧を。
     彼らの死体が残るなら。
     その時間があるのなら。
    「……」
     風が小さな足音を運んできた。
     耳を澄ませば、四人分。
     玄関口へと視線を向ければ、景色が歪んでいる様も見えた。
    「……っ!」
     呼吸を止め、設置しておいたライトを点灯し、走り出す。
     視線の先、玄関口に出現した四名の男女……六六六人衆たちが驚きの表情を浮かべながら立ち止まっていく。
     素早く四人の得物に視線を走らせ、ナイフを腰に差している左側の少年へと殴りかかった。
    「まずは、この方を」
    「うっし! やってやるぜ!!」
     左側の少年が慌てた様子で腕をクロスさせて受け止めていく中、姿勢を落として懐へと潜り込んだ鏡・剣(喧嘩上等・d00006)がみぞおちに雷を宿した拳を打ち込んでいく。
     くぐもった声が響く中、三人の体に影が差した。
    「ダンジョンアタック帰りで申し訳ありませんが新人潰しの時間ですよ。覚悟してください」
     花藤・焔(戦神斬姫・d01510)が月を背負い、処刑人の剣を振り下ろす。
     左肩に食い込ませ膝を突かせた直後、神門・白金(禁忌のぷらちな缶・d01620)の鋼糸が両腕ごと絡め取った。
    「……ふむ」
     鋼糸に力を込めるも、まだ、少年の力は弱まらない。
     せわしなく呼吸を繰り返しながらも振りほどき、血だらけの腕でナイフを引き抜いていく。
    「なんだ、てめぇらは……」
     同様に他の三体も得物を抜き……本格的な戦いが開幕した。

    ●殺戮の使徒
     ニアラ・ラヴクラフト(宇宙的恐怖・d35780)は語る、歌うがごとく。
     ビハインドの隣人を最前線へと向かわせながら。
    「次の新人灼滅機会だ。一匹も逃さず潰すのが良好。我が憤怒は所以も忘れ、酷く醜い一人走りを開始する。観よ。奴等の殺意が精神を擽った。冒すのは我だ。冒されるのも我だ。故に我は殺意も抱擁する、盲目的な敵対者で在る」
     杖に魔力を注ぎ込み、血だらけの少年を目指して大地を蹴る。
     灼滅者側の隙をうかがっているかのような三体を一瞥しながら、真っ直ぐに杖を突き出した。
    「殺戮には殺戮で応えるべき」
     ナイフの腹とぶつかり合い、魔力を爆破。
     腕を跳ね上げ、守りを崩し――。
    「蹴り貫く、九頭龍……龍穿翔」
     龍統・光明(千変万化の九頭龍神・d07159)の龍が体の中心を捉え、廃ビルの壁へとふっ飛ばした。
    「ぐ……」
     くぐもった声を上げながら、立ち上がっていく少年。
     一瞥した後、笑い始めていくナイフを持つ少年とガトリングガンを構える少女。
    「ゴーシュー、生意気なこと言っててそれかよ、おい」
    「近ければ肉の感触が楽しめる、だっけ? 楽しめてないじゃん、あはは」
     灼滅者たちが最初のターゲットに定めたのがゴーシュ。ならば、笑った少年はラディ、少女はキィカ。我関せずと言った様子で構え続けている少年はケンなのだろう。
     彼らはゴーシュを助けようとする気配など微塵も見せず、前衛陣の間合いに踏み込んできた。
     すかさず焔が進路上に――。
    「っ!」
     ――踏み込もうとした時、火薬の爆ぜる音がした。
     影を盾代わりに掲げれば、数多の弾丸が向かってくる。
     弾丸が一つ、二つと影を貫き、焔の体を掠めていく。
     直後に振り上げられたラディのナイフは、隣人が得物を用いて受け止めた。
     音なく放たれたケンのオーラは御門・心(日溜まりの嘘・d13160)が受け止め、静かな息を吐き出していく。
    「連携どころか、チームを組んでる意味があるかすら怪しいところですね、こりゃ」
     攻めるには容易いと、壁を支えに立ち上がっていくゴーシュとの距離を詰めた。
     右の二の腕に注射針を刺し、体力そのものを吸収していく。
     少しずつ痛みが弱まっていくのを感じる中、優しい歌声に抱かれた。
     歌い手たる成田・樹彦(禍詠唄い・d21241)は長柄の斧を構えながら目を細めていく。
    「……ちょっと心もとない、かな」
     仲間たちのダメージを樹彦一人ではまかないきれていない。だから援護を要請し、万全を尽くせるよう務めていく。
     もっとも、慎重になって長い時間をかけるわけにも行かない。
     長い時間をかければ、戦闘によって消耗した状態では手の届かぬ相手だろう久遠がやって来てしまうのだから。
     早々なる決着を望み、ニアラは踏み込む。
     長柄の斧を肩に担いで。
    「闇狩りの技、滅びる刹那まで瞳に写せ」
     横に薙げば、甲高い音が響くと共にゴーシュの身体が玄関口まで飛んで行く。
     刃がすんでのところでナイフに阻まれた事を知っているから、ニアラは再びゴーシュのもとへと向かっていく……。

     治療が足りない。
     足らせれば攻撃が疎かになり、否応にも戦闘時間は伸びてしまう。
     その狭間でみるみるうちに消耗していく焔を横目に、剣はラディの刃を左腕で受け止めた!
    「そら、どうした、殺人鬼とかいっときながら満足に俺も殺せねえのか、口先だけならかえってままのおっぱいでものんでな!!」
     右の拳を放つ。
     左肘に叩き落された。
     わざと地面を転がるようにして、脚に炎を宿しかかと落とし!
    「っ!」
     クロスする腕に受け止められ、勢いのままに高く飛んだ。
     着地するとともに視線を向ければ、ラディは笑う。
    「はは、そう焦るなよ! まだまだヤリ足りねぇが血も足りねぇ。十分に切り刻んでから、殺してやるからよぉ!」
    「やれるもんならやってみろ!!」
     剣は再び踏み込み、殴りかかる。
     拳とナイフがぶつかり冷たい音色の響く戦場で、白金は駆ける。
     脚を引きずりながらも距離を取ろうとしたゴーシュの懐へと入り込み、真っ直ぐに拳を突き出した。
    「ぐ、あ……」
     頭に、両肩に、腹に撃ち込み、その体を硬い壁に押し付ける。
    「座せ」
    「わかった」
     ニアラに言われるままに座り込む。
     彼女の頭上を飛び越えたニアラが長柄の斧を振り下ろした。
     硬質な音色が響き渡る。
     遅れて、鈍い音が戦場を支配しはじめた。
    「クソ……クソっ!!」
     左腕を切り落とされたゴーシュは顔を憤怒に染めながら、二人を押し返して駆け出した。
     呼吸を乱しながらも同様に傷だらけの焔へとたどり着き、真っ直ぐにナイフを振り下ろしてくる。
    「っ!」
     焔はチェーンソー剣を横に振るい、薙ぎ払う。
     ナイフを弾かれたゴーシュがよろめく中、焔も勢いを打ち消しきれずにふらついて――。
    「……俺が貰い受けよう」
    「あ……」
     ――ケンの放つオーラにふっ飛ばされた。
     風を強く感じる中、焔は悟る。
     もう、一撃も受けられない。
     悲鳴を上げる全身がそれをうるさいほどに伝えてくる。だから……。
    「……せめて、あなたを……」
     地面に激突する前に帯を放ち、ゴーシュの左脇腹を貫いた。
     ゴーシュがうめく中、地面に激突していく焔の体を数多の弾丸が打ち据えていく。
    「おっと、先を越されちまったみたいだなぁ」
     草むらの中で昏倒していく焔を見つめ、ラディがそう呟いた。
     瞬間、剣が雷を宿した拳を打ち込んでいく。
    「よそ見なんてさせねぇよ、なあ!」
    「っ……は、確かによそ見なんてできねぇなぁ!!」
     笑顔を浮かべながら、殴り斬り合っていく剣とラディ。
     横目に白金は座り込んでいくゴーシュの元へを歩み寄り、鋼糸をしならせ……。
    「うむ、良い感じだ」
     最期の言葉も紡がせず、鋼糸で抱き狩り尽くした。
     表情を変えずに残る六六六人衆たちへと視線を向ければ、ケンを除いて笑っている。
    「おっと、死んじまったか」
    「その分、私達の殺す相手が増える……ってね」
     あいも変わらず自由な行動を取っている六六六人衆たちを見つめながら、白金はラディへと向き直り――。

     仲間意識などまるでなく、仲間の死にも笑みを浮かべながら攻めてくる六六六人衆。守りを固め、少しでも傷つけば自らを癒やしていくケンを除き、攻めるのはとても容易かった。
     ラディと殴り合っていた剣は、横合いから差し込まれたガトリングガンの弾丸を分厚いオーラで受け止めていく。
     一方、ラディは弾丸とすれ違うようにして飛び込んだ心が槍で首を押さえつけてかっさらった。
    「そろそろ辛くなってきたのではないですか?」
    「はっ、まだまだこれから! キルスコアも稼げないまま逝けるかよ!」
     壁へと至る前に弾かれるも、着地とともに踏み込み回転刺突を放っていく。
     甲高い音が響く中、後方では樹彦が歌い続け剣の治療を行っていた。
     彼は一人しか癒せない。
     霧は、近い距離にいる者たちしか向けられないのだから。
    「光明、心の治療を頼むよ」
    「わかった。創破の意味を知れ、九頭龍……龍癒翔」
     攻撃の手を止め、光明は心の治療を開始した。
     距離が噛み合わず治療がままならない状況を少しでも良化させるため、白金は鋼糸を振り回す。
    「っ、しまっ」
    「……」
     ラディの両腕を絡め取り、力を込める。
    「っ……!」
     引きちぎることは叶わずとも、動きを封じることはできた。
    「今だ」
    「はい」
     頷き、心は槍を構える。
     剣が殴り、ニアラが打ち上げ、空へと向かっていくラディを目指し跳躍する。
    「くっ、この……」
     鋼糸を振りほどかんとしているラディの中心に狙いを定め、真っ直ぐに槍を突き出した!
    「ぐ……あ……」
     体の中心を貫かれ、ナイフを落としていくラディ。
     動きが止まるのを待った上で振り払い、残る二人へと向き直る。
    「後はあなたたちだけ、覚悟してくださいね」
    「……」
    「じょーだん。私は、早々にはやられないわよ!」
     つまらなさそうにオーラを滾らせていくケン、ガトリングのトリガーを引いていくキィカ。
     先に狙うのはキィカの方と決めていた。
    「覚悟してくださいね」
     御理が氷の塊を放ち、次はキィカだと示していく。
     しかし……。

    ●夜の闇に響くは死の音色
     届かない。
     数人の仲間は、好きに行動させるのも気に食わないと動くケンに阻まれ、キィカに攻撃を届けることができていない。
    「蹴り貫く、九頭龍……龍穿翔」
     だからこそ最大限の攻撃を行っていくのだと、光明はキィカに龍を差し向ける。
     ガトリングの砲台とぶつかり合っていくさまを見つめながら、次はケンに……と刀を横に構え直した。
     ケンは全身にバトルオーラを巡らせながら、遠距離攻撃を持たぬ者たちの攻撃を受けていた。
     攻撃を受けるたび、自らの治療を行っていく。
     故にだろう。攻め手は遅々として進まぬが、治療も樹彦だけで概ね賄えるようになっている。
     樹彦の治療を超えて打ち倒さんというのか、キィカが御理に砲口を向けてきた。
     御理は氷の塊を生成しながら、蛇皮の尾飾りを盾のごとく構えていく。
     弾丸を弾きながら、氷の塊を解き放った。
     煌めきを残しながらガトリングの横を抜け、キィカの胸にぶち当たった。
    「つっ……中々やるじゃない!」
     胸元を凍らせながらも、キィ化は表情を崩さない。
     時々ケンを罵倒しながら、楽しそうに弾丸をばらまいてくる。
     表情を変えぬまま、光明は再び龍のオーラを解き放った。
    「合わせます」
     心の氷が追いかける。
     龍を打ち払うキィカの腕を打ち据えていく。
     冷たい煌めきが腕を覆い始めるも、表情に変化は訪れない。
     倒すにはまだまだ時間がかかるだろうと、樹彦は御理に歌の力を――。
    「っ!」
     ――地面を、何かが走ってくる音が聞こえてきた。
     凄まじい殺気を纏っていた。
     ニアラが目を細め、影に力を注いでいく。
    「時間か。しかし……」
     まだ、わずかでも時間はあるとキィカめがけて影を放った。
     影は獣がごとき姿に代わりキィカの体を飲み込むも、ガトリングの弾丸に打ち据えられて霧散する。
    「……」
     灼滅者たちは背を向けた。
     光明が焔を抱え、退却を開始する。
     少なくとも、消耗した状態では翔には敵わぬから。
     六六六人衆たちも追いかけるつもりはないらしく、一様に力を抜き始めている。
     そんな折、光明の腕の中で焔が目覚めた。
    「……戦況は……?」
    「……」
     語りながら、灼滅者たちは夜の闇の中に消えていく。
     二体は倒す事ができた。
     後は次に繋げるだけ。
     そのためにも、十分に体を休めておこう。

    作者:飛翔優 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年7月5日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ