闇間の幕引き荒らす者

    作者:幾夜緋琉

    ●闇間の幕引き荒らす者
    「なーなー。ちょっと聞いてくれよー!」
    「あぁ? なんだよ? つまんねー事言ったらキレるぜオレ」
    「つまんなくねーって。オレさ、昨日初めて人を殺したんだよ! 血がブシャーって顔に掛かってすっげー興奮したんだぜ!」
    「なんだよ。おめーまだ一人だけかよー。オレは5人ぶっ殺してるぜ?」
    「なっ、すっげー!! あー、でもでもオレだってまだはじまったばっかだし、これから先、何人も殺せるはずだぜー!」
     と、物騒な言葉を掛け合っているのは、四人の男達。
     男、と言っても、その年齢の程は15歳位の……今年入学したての高校生だろう。
     しかし、彼らの目の前にあるのは、ノーライフキングの作った地下迷宮。
    「さってと、ま、なんでもええやん。この迷宮を制覇すりゃーいいんだろ?」
    「んだな。ま、六六六人衆の力を振るえば、軽く軽く乗り越えちゃえるってな♪ 亡者をぶったおして、日頃の鬱憤晴らしだぜー!!」
     ……新たに六六六人衆の力を手に入れた彼ら、新人六六六人衆の少年達。
     意気揚々と、ノーライフキングの作り出した迷宮へと潜り込み、中に巣くうアンデッドを次々とぶっ殺して進んでいくのであった。

    「皆さん、集まって頂けましたね。それでは……説明を始めます」
     と、五十嵐・姫子は、集まった灼滅者へ向くと共に。
    「暗殺武闘大会決戦で闇堕ちした久遠・翔(悲しい運命に抗う者・d00621)さんが、どうやら行動を開始している様なのです」
    「翔さんは、ミスター宍戸の計画へ協力している様で、ミスター宍戸がプロデュースした、闇墜ち中高生を引率し、残存しているノーライフキングの迷宮探索訓練を行わせている様なのです」
    「探索を行う中高生達は、どうやら六六六人衆になった人達ばかりの様です。とはいえ、サイキック・リベレイターの効果もあり、ノーライフキングの撃破については問題なく成功すると思われます」
    「しかし……彼らが経験をこのまま積んで成長すると、有力な敵になるやもしれません。そうなる前に対処する為、皆さんには、彼らがノーライフキングを撃破し、意気揚々と迷宮から出て来た所を奇襲し、灼滅してきて頂きたいのです」
    「彼らが迷宮を出る時は、完全に油断しきっている状態ですから、最初のターンは一方的に攻撃出来る、つまり奇襲が可能です。更にノーライフキングの迷宮内での戦いでの消耗もあり、敵の数は多いですが、充分に勝機はあるものと思います」
     そして、更に姫子は、彼ら新人六六六人衆の戦闘能力について説明を続ける。
    「彼らはノーライフキングと戦った事も在り、体力としては総じて半分程に減っています。皆さんが新人六六六人衆が油断しきった所へ、一体集中で攻撃すれば、一ターンの間に一人潰すことは難しくはありません」
    「又、迷宮の入口は、廃校舎の地下倉庫に続く階段の先にある様ですね」
    「ちなみに彼ら四人の戦闘能力は、全員が解体ナイフを装備しています。彼らは素早い身のこなしで攻撃を仕掛けると共に、攻撃回避能力も高い様です」
    「ただ、体力は低い為、上手く攻撃を当てれば長引かずに一人、また一人と倒す事は可能でしょう」
    「ちなみに、戦闘が長引いてしまうと、引率者である『久遠・翔』が救援に現れる可能性がある様です。彼は強力な六六六人衆であるが為、彼に救援されると勝ち目がありません」
    「ただ、翔さんは灼滅者の撃破よりも、新人の回収を優先しますので、無理に戦わず、撤退すれば皆さんの命の危険はありません」
    「つまり、翔さんの救援が来る前に、可能ならば新人六六六人衆を全滅させる。それが不可能であっても、出来るだけ多くの新人六六六人衆を灼滅出来る様、作戦を考えて頂ければと思います」
     そして姫子は、改めて灼滅者達を見渡し。
    「新人六六六人衆は、闇堕ちしたばかりです。説得して救出する事も不可能では無いと思いますが……元々、彼らの人間性は六六六人衆に近い様で、説得は非常に難しいとは思います。どうするかは皆さんにお任せしますが……どちらにせよ、気をつけて下さいね」
     と、頭を下げた。


    参加者
    近衛・一樹(紅血氷晶・d10268)
    マリナ・ガーラント(兵器少女・d11401)
    赤城・碧(強さを求むその根源は・d23118)
    斎・一刀(人形回し・d27033)
    ヘイズ・フォルク(青空のツバメ・d31821)
    篠崎・零花(白の魔法使い・d37155)
    篠崎・悠斗(黒白のマジシャン・d37418)
    八傘・奏過(中学生ご当地ヒーロー・d37927)

    ■リプレイ

    ●夢の力悪に
     新たに六六六人衆の力を手にし、ノーライフキングの残存する迷宮にて、探索訓練をしているという……15歳程度の中高生達。
     元々の性格事態、人を殺す事に対しての躊躇無い彼らは……ある意味、六六六人衆になるべくしてなった、と言えるかもしれない。
    「おっおー。ほんとにダメな子たちだおっ」
     と、マリナ・ガーラント(兵器少女・d11401)が笑顔でさらり、ばっさりと断じると、それにヘイズ・フォルク(青空のツバメ・d31821)や斎・一刀(人形回し・d27033)も。
    「ああ。ま、奴らにとってはただの暇つぶしのゲーム感覚。誇りも無ければ覚悟も無い。低俗の三流だな……呆れるどころか、怒りすら感じる」
    「カカカッ。そうだねぇ……まぁ、自分達に命の危険が迫ったら泣いて救いを請うんだろうねぇ……まぁ、説得は難しいって話も聞いてるけどねぇ……カカッ」
     何処か不敵な笑みを浮かべる一刀、とそれに篠崎・悠斗(黒白のマジシャン・d37418)と篠崎・零花(白の魔法使い・d37155)も。
    「説得は厳しい、か。まぁ……やる人が居るなら任せるけど」
    「……そうね……説得が厳しいんだとしても、可能性があるならやってみたいわね……戦いながら、話してみようかしら……?」
     首傾げる零花に、近衛・一樹(紅血氷晶・d10268)と赤城・碧(強さを求むその根源は・d23118)が。
    「そうですね。まぁ……説得に応じなければ倒す。それが私たちの使命なのは変わらないだろうしね。多少力尽くであったとしても、やるべき事はやるさ」
    「ま、ダンジョンから出てくる際には油断しきってる話だしな。そこを狙い澄ませば一体を倒す事は難しく無いと言うし……目の前で一人瞬殺されれば、一気に弱気になるんじゃないか?」
    「そうでしょうね。まぁ……何にせよ、うやむやには出来ない。確実な決着をつけるとしましょう」
     そして八傘・奏過(中学生ご当地ヒーロー・d37927)が。
    「装備よし……相手の予習もよし……敵味方とは言え同じ新人同士……働きで負ける訳には行きません。頑張りますよ」
     ぐっ、と拳を握りしめた奏過。
     そして灼滅者達は、姫子に指示されたノーライフキングの迷宮と繋がりし、廃校舎の地下倉庫へと続く階段へと向かうのであった。

    ●悪事の洗濯
     そして、灼滅者達が到着するは、廃校舎。
     深夜の刻、陰鬱な気配が漂い、静けさに包まれている周辺……そこに、息を潜めながら、新人六六六人衆達が姿を現わすのを、じっと待つ灼滅者。
     暗視ゴーグルを装着し、倉庫内、建物の影など、障害物の場所を確認した上で、直ぐに仕掛けられるよう、掃除用具の用具入れ等を入口の近くに移動させたりする。
     そして……道具類の移動も終わり、更に身を潜め、待ち構えていると。
    『へっへー。いやー、楽しかったなぁ!』
    『全くだぜ♪ あー、アンデッドの首を刎ねたりして血飛沫浴びるのがこんなに楽しいとはなぁ♪』
     ……などと、殺し血飛沫に興奮するだとか、危険な言葉を飛ばしている少年達。
     そして、彼らが地下倉庫の階段を出て来て……一番先頭を歩いていた少年に。
    「……開演」
     と、奏過のぽつり呟く一言を合図が如く、一斉に総攻撃。
     先ず零花がイカロスウイングを使用し強化した上で、初っ端、悠斗が黒死斬で一閃すると、マリナが斬影刃で一閃。
     更に一樹のレイザースラストと、ヘイズの黒死斬、碧の影縛りが次々と、先頭の少年を斬り付け……一刀がレイザースラスト、そして奏過が。
    「味方の邪魔をしない……相手の妨害をする……わかりやすくて素晴らしい」
     と言いながら大震撃をその頭の方から叩き込み……初っ端の一ターン目から、一人地面へと沈んでいく。
     血だらけに瞬殺された仲間の姿に……流石に新人六六六人衆の仲間達は。
    『ひ、な、何だよこいつら!!』
    『やべーよ。こいつらやべーよ!!』
     と恐怖に叫び、数歩後ろへと引き下がる。
     しかし、そんな彼らに対し、敢然と立ち塞がった灼滅者達が。
    「やぁ、私たちが誰だか解るか? 君たちの敵だよ?」
     どこか不敵な笑みを浮かべる一樹。
    『て、敵ぃ!? なんだよ、そんなのしらねーよ!!』
    『そうだそうだ。俺達何にもやってねーじゃんかよ!!』
     と思いっきり粋がる彼らだが……そんな彼らに碧とマリナが。
    「殺す側から殺される側になった恐怖はどうだ? 仲間が殺られ、お前ら自身も傷つく中こう思っただろう……『次に死ぬのは俺かもしれない』と。その恐怖を現実にしたくなければ今すぐ去れ」
    「そうだおっ。ツマンナイ生き方が嫌かおっ? じゃあ、そいつらにぜーんぶこれから先の人生もってかれていいのかおっ? 今は一緒にやってる感じかもしれないけど、すぐに自分じゃないそいつらに乗っ取られて終了サヨナラだお? 人を殺すのも、戦うのもぜーんぶ人任せ。それでゲームオーバーって、そんな生き方、消え方でいいのかおっ? 嫌ならそんな奴等突っぱねて自分でもう一回、やりたいコト探して目指すしかないんだおっ!」
     と言うと、それに新人六六六人衆が。
    『う……煩いっ!! 俺達はこの力で人をぶっ殺すんだっ!!』
    『そうだそうだ!! てめーらだってよってたかって人殺してるんだろっ!!』
     と、それにマリナ、一刀、悠斗が。
    「おっおー、常識に囚われてはいけない、って明言があるんだおっ」
    「ククク。まぁそうかもしれないねぇ。でも、闇に墜ち、戻ったからこそ、解る境地もあるんだよ……キキッ、灼滅は慈悲なんだな」
    「そうだな。そんな事で本当に鬱憤は晴らせるのかな? 俺らみたいになれば、強くなるのも楽になる筈なのに。灼滅者になればもっと手応えのある奴と戦えると思うけどな?」
    「そうそう。僕等にも慈悲はあるんだよ……ケケッ。こっちに戻ってくるかい? 屍王と六六六人衆には苦い因縁があるんだよねぇ……だから、ククッ」
     と、そんな灼滅者達の言葉に対し、新人六六六人衆は。
    『うるさぁぁい!!』
     と、その手の解体ナイフをぶんぶんと大きく振り回してくる。
     その攻撃を、碧のビハインドと、一刀のビハインドが共にカバーリングし。
    「まぁ、やはりな。殺した数を数えて喜ぶ低俗共が。それじゃ格の違いってのを教えてやるよ」
    「そうだね。多分君たちは説得に応じるようなたまじゃなさそうだしね。力で説得させて貰うよ」
    「カカっ。死にたく無ければ、悔い改めろ、ってね」
     ヘイズ、一樹、一刀が次々と宣言……そして、3人の新人六六六人衆へ、次々と攻撃開始。
    「……今のあなた達には、リベレイターがあるから強いのであって、本来はそうでもないのよ」
     と冷たい言葉を言い放ちながら、零花は予言者の瞳で仲間を強化。
     そして強化された上で、一刀がティアーズリッパーを狙い澄まして一閃すると、奏過は。
    「走るのは……危険ですのでご遠慮ください……」
     と、百鬼夜行。
     更にジャマーのマリナが雲櫂剣、悠斗がティアーズリッパーを立て続けに叩き込んで行く。
     対し新人六六人衆……どうにか反撃の狼煙を上げようと息巻くが……一人減って既に3人に対し、灼滅者達は8人。
     更に六六六人衆の力も、まだまだ使いこなせていない状況からすれば……ほぼ勝ち負けは決まっていると言えるだろう。
     でも、どうにかして生き残ろうと、精一杯の力で暴れ廻る彼ら。
    『うう……くっそー! こんな筈じゃなかったのによぉ!!』
    『全くだよ、誰だよここに来ようって言ったのはよ!!』
    『おめーだろうが!! てめーが悪いんだよ。責任とって死ね!!』
     ……と、仲間同士で罵声を浴びせ合う新人六六六人衆。
     そんな彼らの口汚い争いに、冷たい視線を向けながらヘイズが。
    「それで六六六人衆を名乗るかッ! 狩れ、禍月。こいつらは喰う価値すら無い……雷華一閃ッ!」
     と、至近距離からの雲櫂剣の一閃を叩きつけて、一樹もその傍らから螺穿槍の一閃。
     そして碧の蹂躙のバベルインパクトが更に一人潰し……残るは二人。
     一ターンで一人、二ターンで二人……最早、粋がる自分達の命は無いだろうと、うっすら感じ始めていたかも知れない。
     そして、三ターン目にも更に一人を討ち倒すと、残るは後一人。
    『やべえ……』
     と、小声で呟き、そして次に。
    『な、なあ。頼む、助けてくれよ。す、すまなかったって!!』
     跪き、命乞いをする新人六六六人衆。
     ……が、そんな新人六六六人衆に、ヘイズが。
    「それ以上、喋るな……」
     と、一言を呟くと共に……問答無用で首を刎ね……最後の新人六六六人衆も打ち砕かれるのであった。

    ●悪夢の中に
     そして……全ての新人六六六人衆を倒した灼滅者達。
    「全く……」
     と溜息を深く吐くヘイズに、奏過が。
    「そうですね……元々六六六人衆になりやすい性格だったから、仕方ないのかもしれませんが……ある意味根性も腐りきっている、と言えるでしょうね」
    「そうだな……」
     肩を竦める奏過……そして悠斗が。
    「しかし……さっきの奴、次はいつ現れるんだろうね」
     と言うとそれに零花が。
    「そうね……」
     と、そっと悠斗に寄り添う。そしてそんな零花に頷きながら、頭を撫でると……零花はこくっ、と頷いて。
    「……これから本当に忙しくなりそうね……」
    「そうだな……」
     ……新人の六六六人衆が、これからも出て来る事だろう。
     そして、それを一つ一つ対処するのも、灼滅者としての仕事な訳で。
    「ケケっ。根性まで腐ってるのは、いつまで立っても変わらないんだなっ」
    「そうだおっ。おっおー。ま、ここは終わった事だし、さっさと帰るんだおっ」
     と、一刀とマリナの言葉に頷きながら、灼滅者達は帰路へとつくのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年7月5日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ