戦神アポリアの提案~六六六人衆との共存とは?

    作者:陵かなめ

    ●戦神アポリアからの呼びかけ
    「六六六人衆と武蔵坂学園との共闘を目論んで、武蔵坂学園に接触したダークネスがいるんだ」
     千歳緑・太郎(高校生エクスブレイン・dn0146)がそのように説明を始めた。
     接触してきたダークネスは狐雅原・あきら(戦神アポリア・d00502)。現在は六六六人衆第七一位『戦神アポリア』を名乗っているようだ。
     今回の呼びかけは、『戦神アポリア』の独断では無く、ミスター宍戸及び六六六人衆の上層部の意向に従っており、灼滅者が共闘を決断すれば、灼滅者と六六六人衆の同盟が締結される可能性が高くなっている。
    「『戦神アポリア』の呼びかけは、だいたいのところを要約すると、六六六人衆と人類は共存できる筈だと言うことだね。そして、もし共存を望むなら、『戦神アポリア』側が指定する場所に『六六六人衆が殺戮しても良い人間のサンプル』を連れて来いって事なんだよ。それをもって、同盟の締結とするって」
     共存とは?
     集まった灼滅者達が太郎の顔を見る。
     太郎は、その件についてはこう皆に伝えた。
     六六六人衆は人間社会の支配に興味は無いということ。序列を争って互いに殺し合う事で一定以上の数になる事は無い、非常に数の少ないダークネスだということ。しかし彼らは人間が食事をし睡眠を取り、娯楽を楽しむように、一般人を殺戮する必要はあること。
     だから、一定の人数を確保できるのならば、殺戮する人間については、武蔵坂学園側で指定した範囲で行うとする事で、歩み寄りたいという事のようだ。
     犯罪者に限る、老人に限る、外国人に限る、無職者に限る……など、武蔵坂学園が受け入れられる条件を考えて欲しいとのことだ。
     その内容に唖然とする者もいた。
     太郎は皆の様子を見ながら、それでも更に説明を続ける。
    「『戦神アポリア』は、一般人の受け取り場所に『六六六人衆が殺戮しても良い人間を10名連れて来る』ようを連絡してきたんだ」
     受け取り場所は多数用意されており、それぞれについて『10名』の一般人を連れて来ることを望んでいるようだ。
     『戦神アポリア』は、引渡し場所の過半数において、10名の一般人が受け渡されたならば、他の引渡し場所で戦闘が発生したとしても、武蔵坂学園は同盟の意思があるものとして、次の交渉に入ると言ってきている。
     逆に、過半数の場所で引渡しが行われなかった場合は、今回の同盟提案は取り下げるとのことだ。
    「情緒的に、心情的に、この提案を受け入れることが難しいと思う人も沢山居ると思うんだ。けれど、彼の提案は一定の真実を含んでいて検討の余地はあるかもしれないよね」
     戸惑い、憤り、他各々が複雑な表情を浮かべる。
    「この同盟提案をどう扱うかは、みんなにお任せします。受け入れるなら、10名の一般人を連れて引き渡し場所に、受け入れないのなら戦争は不可避となるから、敵戦力を削る為にも引渡し場所の六六六人衆の撃破をお願いするね」
     次に、引渡し場所の説明も行われた。
    「ここのみんなに行って貰う引渡し場所は、森の近くにある廃工場だよ。電気も通ってない、荒れ果てた工場跡。かろうじて建物は残っているけれど、一般人は誰も近づかないような場所みたいだね」
     それから、引渡し場所に来る六六六人衆は、煌びやかな衣装を纏った女性との事だ。
     捨て駒らしく六六六人衆としては戦闘力が低い。8人の灼滅者の力で灼滅することも可能であるようだ。
    「といっても、相手は強力なダークネスには違いないよ。灼滅を目指す場合は、相応の準備をして戦いに挑んでね。名前は死摘美(しづみ)。殺人鬼と解体ナイフ相当のサイキックを使うみたい」
     最後にと、太郎はぎゅっとくまのぬいぐるみを握り締める。
    「この同盟提案もまた、ミスター宍戸のプロデュースなのだろうね。筋は通ってはいるけど……」
     とにかく、選択は皆にお任せするねと、そう言って説明を終えた。


    参加者
    藤谷・徹也(大学生殺人機械・d01892)
    江田島・龍一郎(修羅を目指し者・d02437)
    柳瀬・高明(スパロウホーク・d04232)
    北条・葉月(独鮫将を屠りし者・d19495)
    水野・真火(水あるいは炎・d19915)
    セレス・ホークウィンド(白楽天・d25000)
    ジュリアン・レダ(鮮血の詩人・d28156)
    土屋・筆一(つくしんぼう・d35020)

    ■リプレイ

    ●01
     森の近くの廃工場は、今はまだ静かだった。
     江田島・龍一郎(修羅を目指し者・d02437)が周辺を照らすライトに明かりを灯す。
     荒れ果てた廃工場には、朽ち果てた機械部品がそこかしこに転がっていた。
     贄を捧げよと言ってる時点で笑うしかない、と、龍一郎は思う。
     周辺の確認をしていた柳瀬・高明(スパロウホーク・d04232)が戻ってきた。
    「どうやら、罠の類はなさそうだぜ」
     高明はそう言いながら、目に付いた瓦礫を持ち上げ隅へ片付ける。
    「今は伏兵の姿も無いようです」
     土屋・筆一(つくしんぼう・d35020)も周辺の確認から戻り、皆へ伝えた。
     戦いになれば、常に警戒するに越したことはないけれど、ひとまず今この時だけは、複数に襲い掛かられる危険はないようだ。
     灼滅者たちはそう判断し、各々敵を待ち構える姿勢になる。
    「毎度毎度、宍戸の考える事は嫌らしいな」
     北条・葉月(独鮫将を屠りし者・d19495)は隣に佇む水野・真火(水あるいは炎・d19915)を見た。
    「共存を望むなら、という割には、まるで神様に生贄を捧げろと言っているような取引の内容ですね……」
     真火が頷く。
    「同盟だ共存だなどと、聞こえはいいですが、結局は僕らを見下してる。……そうとしか、思えませんね」
     足元ではウイングキャットのミシェルが体を摺り寄せているのが見えた。
    「仮に一分の理があるとしても、到底乗れる話じゃねえ」
     葉月が言うと、会話を聞いていた仲間たちの表情が引き締まる。
    「俺の中のダークネスも含め、六六六人衆との共存は不可能と認識する」
     藤谷・徹也(大学生殺人機械・d01892)も静かに言った。
    「元より、望まない」
     と。
     提案には拒否だと、全員共通の認識があるようだ。
     したがって、一般人を連れてきてはいない。この場には、8人の灼滅者だけだ。
     今回の一件は、提案とすら呼べぬものだと、ジュリアン・レダ(鮮血の詩人・d28156)は思った。奴等の為に犠牲になる一般人など、一人たりとも居て良い筈が無いと。
     セレス・ホークウィンド(白楽天・d25000)も、当然今回の提案は却下する心積もりだ。
    「……価値観が違いすぎる」
     むしろ、どうしてその内容で受け入れられると考えるのか。
     時間は流れ、約束の時が来た。
     じゃりじゃりと、石を踏みつける足音が聞こえてくる。
    「あっはー。見つけた見つけた。さ、答えを聞かせて?」
     現れたのは、煌びやかな衣装を纏った六六六人衆の女、死摘美だった。

    ●02
     死摘美はきょろきょろと廃工場内を見て、小首を傾げた。
    「あっれー? 殺していい人間はー? 10人必要だよー?」
     言いながら、ナイフを取り出し手元でくるくると回す。
    「拒否する」
     短く、徹也が返した。
    「ふぅん?」
     ニヤニヤと笑いながら死摘美が他の灼滅者を見る。
    「スマンがお前らの『従僕』になる気はない」
     同盟の答えは『否』だと龍一郎が続けた。
    「体よく言ってるだけで、結局は生贄を捧げるような真似できるか」
    「仮に百歩譲って死んでもいい人間がいるとしても、それを決めるのは俺らじゃねえ」
    「殺していい人間を選ぶなんて……ましてその安定供給なんて、できるわけがない」
     高明と葉月、筆一も首を横に振る。
    「えっえー? それじゃあ、提案拒否ってことになっちゃうよー?」
    「取引には応じません」
    「提案は却下だ」
     わざとらしく驚く死摘美に、真火とセレスが念を押すように返した。
    「それじゃあ、君たちは、人間を用意してない? 本当に?」
    「六六六人衆に捧げる一般人など一人も居ないよ。オレ達の方が手応えあると思うしね?」
    「あっはー。そうなんだー! で?」
     ジュリアンの言葉を聞いて、死摘美がナイフをしっかりと握り構えを取る。
    「この状況を見ればわかると思うが……ま、そういう事だ」
     龍一郎が言うと、灼滅者たちも武器を構え敵の周辺に散った。
     ニコリと、死摘美が笑顔を浮かべる。
     ならば、こうなることは、双方理解していた。
     皆が地面を蹴り走り出す。
    「対象を灼滅する」
     徹也は素早く敵の背後に回り、身を守るものごと斬り裂こうと斬撃を繰り出した。
    「おっと、おぶなーい!」
     それをひらりと避け、死摘美が笑う。
     敵がステップを踏んだところを、続けて龍一郎が襲い掛かった。
    「ゲーム開始だ。遊ぼうか」
     攻撃を避ける身のこなしを見て、身軽なのだと感じる。捨て駒の六六六人衆と言えど、その動きは本物のようだ。
     ならば、足を鈍らせるのも手だろう。
     龍一郎は黒死斬を繰り出し、敵の足を斬った。
    「ったあ!」
     飛び散る血を見て死摘美が顔をゆがめる。
     続けて自分もと迫った灼滅者よりも前に、しかし敵が体勢を立て直した。ニヤニヤとした笑いを浮かべ、黒い殺気を全身から放ち出す。
    「あ、は。だって、やることは、殺すことだけ、だもんねー!」
     殺気が溢れ、渦となり、後衛の仲間を飲み込もうとしていた。
    「そっちを守れ、任せたぜ」
     ライドキャリバーのガゼルに指示を出しながら、高明が筆一の前に出る。
     殺気の濁流が覆いかぶさって来た。
     殺す殺す殺す。何度も繰り返される強い殺意が身に纏わり付く。
    「柳瀬さん?! 大丈夫ですか?」
     目の前で傷を負った高明を見て、筆一が動揺した声をあげた。
    「ぜんぜん大丈夫だぜ。よく見ろ、このかすり傷」
     足元に使い捨てのライトを転がしながら高明は笑う。淡い光に照らされた顔にはまだまだ余裕が見受けられた。
     ほっと胸をなでおろし、筆一は交通標識を黄色標識にスタイルチェンジする。
    「回復します」
     まだ、誰も倒れていない。
     前衛の仲間に耐性を与えながら、筆一は仲間たちの背中を見つめた。
    「その目論見ぶっ潰してやる!」
     攻撃を一手終えた敵に向かい、攻撃を繰り出したのは葉月だ。
     帯を射出し、走っていた死摘美の腕を貫く。
    「この、鬱陶しい!」
    「逃がすかよ! 水野ッ」
     呼ばれ、ガゼルに庇われていた真火が跳び出た。
    「北条さん、今です、引いてください」
     タイミングを合わせるよう声をかけた後、ナイフから毒の風を呼び敵へと向ける。
     葉月はちょうどのタイミングで敵から距離を取るように跳躍し、空いた所から毒の竜巻が死摘美へと襲い掛かった。
     帯と毒から逃れようと敵が体を捩る。
    「もう一つだ」
     そこへ重ねて、セレスの帯も死摘美の体を貫いた。
    「逃がさないよ、絶対にね」
     ジュリアンも激しくギターをかき鳴らし、音波をぶつける。
     さすがに何度も攻撃されては辛いのか、死摘美が体を震わせた。
     バランスを崩したように着地した後、舌打ちをしてから身を起こす。
     だが、致命傷は与えていない。
     敵は再び走り出した。
     この隙に回復をしていた灼滅者たちも距離を取りながら地面を蹴る。
     戦いは始まったばかりだ。

    ●03
     何度か打ち合い、激しい攻防は続いている。
     徹也が勢いを付けて跳び、敵との距離をぐんと詰めた。
     彼は、六六六人衆も、それを内包する自分自身すらも全て灼滅されるべき存在として認識している。ゆえに、六六六人衆との同盟は、いかなる条件であろうとも否定する。
     そして、灼滅する。
    「この、っ」
     死摘美は威嚇をするようにナイフを振り、刃を徹也に向けた。
     だが、それを見ても揺らがずもう一歩踏み込む。
    「俺は任務を遂行する」
     鍛えぬかれた超硬度の拳を振り上げ、勢いに乗せて敵を貫いた。
     守りを、そして、敵の能力を高めている効果をも打ち砕くような、痛烈な一撃だ。
    「ぐっ」
     思わず敵が呻き、貫かれた傷口を押さえる。
     体勢の崩れた敵に向かい、龍一郎が走った。
    「あの条件で同盟? 服従しろの間違いだろ?」
     日本刀が一閃、敵を斬る。
    「で、条件に見合った人間を全て殺したら次はどうするんだ? 答えてみな」
    「そんなの知らないし」
     死摘美が笑った。
     煌びやかな服は、諸所破れ、装飾が零れ落ち、傷が露になっている。
     だが、まだ笑うのか。
     刀を引き抜き、龍一郎は敵と距離を取った。
    「その笑い、いつまで続くか、だな」
    「すでに空元気かもしれませんよ」
     葉月と真火が同時に飛んで、攻撃を叩き込む。
     緋色のオーラを宿した武器が敵を斬り、彗星の如き矢が敵を貫いた。
    「あはは、何を――」
    「実際、足元がふらついているようだな」
     セレスの指摘に、敵の表情が凍る。
     その言葉通り、確実に足止めが効いてきたと感じていた。
     セレスはエアシューズを煌かせ一気に間合いを詰める。
     戦闘当初は避けられていた攻撃も、確実にヒットするようになっていた。
     煌めきと重力を宿した飛び蹴りが炸裂する。
     敵の体が空に舞った。
     空中で敵の動きが鈍る。
    「ほら、そこだ」
     ジュリアンはそう言って、地面を蹴った。
     急所を確実に狙い、攻撃を繰り出す。
     空中で踊るように器用に手を動かし、黒死斬を放った。
     その斬撃で死摘美の片腕がだらりと力を失う。
    「ふん。この程度で、ドヤった顔、してほしくないしー」
     動かないほうの腕をそのままに、敵が動く腕でナイフを握った。
     動きは鈍っているが、それでも体を使って着地し、起き上がってすぐに死摘美が高明の背後に回りこんできた。
    「おっと!」
     気づいた高明がステップを踏んで避けようとする。
     しかし、ナイフが速い。
     刃は体を貫き、裂き、引き抜かれた箇所から体力が抜け落ちるのが分かる。
     真火から指示を受けたミシェルが飛んで来て、リングを光らせた。
     更に、筆一も癒しの矢を構える。
    「誰も倒れさせません」
     放たれた矢が高明の傷をやさしく癒した。
     筆一は、正直、安堵していた。もし、一般人を引き渡すことになっていたのなら、手にかけてでも阻止しなければと密かに思いつめていたのだから。罪を背負うのは自分だけで良いのだと、思っていたのだから。しかし、仲間たちは一般人を引き渡すことなど、もとより反対だった。
     ならば、彼のすることは一つ。
     誰も倒れることなく、戦いを終わらせることだ。
    「くそ、まだ戦うつもりなの! ばっかみたい! 殺せないのに、ばっかみたい!!」
     高明の傷が回復するのを見て、死摘美が悪態をつく。
     その背後に、いつの間に回りこんだのか、高明が迫っていた。
    「この提案自体が喧嘩ふっかけた様なモンだ、俺達を馬鹿にするんじゃねえ」
    「っ!!」
     刃が敵の守りごと斬り裂く。
     殺しても良い人間を選んで差し出せなど、ふざけるなと。命の選択権を押し付けるそのものが冒涜なのだと高明は思う。
     殺しを楽しむような連中と共存なんて成り立たねえに決まってるのだと。
     煌びやかな装飾に交じり、死摘美の血が飛び散った。

    ●04
     息つく暇もない激しい戦いは続く。
     敵の動きを抑えつつ、連携して攻撃を叩き込む。灼滅者たちの徹底した作戦が徐々に死摘美を追い詰めていく。
    「でもねー! あたし、まだまだ戦えるしー♪」
     なんとか走っていた死摘美がナイフを振りかざした。
     毒の竜巻が前衛の仲間に襲い掛かる。
     庇える者は庇いに入り、ダメージを分散させた。
    「気をつけろ、外への道を見ている」
     同時に、セレスの警告が仲間に届く。
     セレス自身はクロスグレイブを手に持ち走り、動きをけん制するように突き上げ、叩き、強引に殴り倒した。
     その間に、動ける者は敵の退路を断つように位置を取り直す。
    「くそっ、こうまでして!!」
     逃げ場を失った死摘美が地団太を踏んだ。
     元より、逃亡の可能性を考えていたのは一人ではない。誰もがすぐに動けるよう注意を払っていたのだ。逃がすなど、ありえない。
    「頑張りましょう。皆さんは、必ず支えます」
     筆一も退路を塞いだ一人だ。
     黄色標識にスタイルチェンジした交通標識を使い、回復のサイキックを飛ばしながら仲間を鼓舞する。
    「手助けするぜ」
     クルセイドソードから『祝福の言葉』を風に変換した高明も、回復に加わり前衛の仲間たちを癒した。
    「無論、逃すつもりはない」
     徹也は窓側に立ち塞がり、退路をつぶしている。影の先端を鋭い刃に変え、はっきりと死摘美に狙いをつけた。
    「ミスター宍戸はどこにいる?」
    「はー? 言うか、ばーか!!」
     瞬間、影の刃が敵の体を斬り裂く。
     敵の体がよろめいた。
     ずいぶんと足に来ているようだ。
    「ここで決着をつけましょう」
     真火はそう言って、影を伸ばし死摘美を飲み込ませる。
     敵の動きが止まったことを確認して葉月に目で合図した。
    「ああ、もう一押しだ」
     葉月はしっかりと真火の意図を汲み取り、マテリアルロッドを手に走る。
     影が敵を吐き出した。
     瞬間、敵を殴りつけ魔力を流し込む。
    「爆ぜろ」
     言葉と同時に、死摘美の体の内側から爆発が起こった。
    「畳み掛けるなら、今のタイミングだよね」
     息も絶え絶えな敵の姿を確認し、ジュリアンも走る。
     仲間が用意した明かりがぼんやりと戦闘域を照らしていた。その、光の隙間を縫って、敵のサイドに回ったジュリアンがティアーズリッパーを繰り出す。
     確実に敵の体を斬った感触が伝わってきた。
     そして、よろめき前のめりになった死摘美の正面には龍一郎の姿がある。
    「下らん同盟など結ぶ気はない。地獄で上司にそう報告しな」
    「な――」
     鞘に収まった日本刀を一瞬のうちに抜刀し、敵を斬り捨てる。
    「あばよ」
     次に納刀したとき、死摘美は息を引き取り砕け散った。

     廃工場に、静寂が戻る。
    「お疲れ様です。いずれまた、戦場にて」
     ジュリアンが皆を見た。
     いずれまた。
     その言葉をかみ締めながら、灼滅者たちは現場をあとにした。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年7月11日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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