「暑い中集まってもらって感謝する。実は茶倉・紫月(影縫い・d35017)が調査してくれていたのだがね、最近不自然に海外文化をこの日本に根付かせようと活動している組織があるらしいのだよ」
インド料理を無料でふるまうだとか、東南アジアの民芸品を突然家に訪問した人物が無料でプレゼントしてくるなどどう考えても採算が取れていないそんな活動は海外のご当地怪人が日本でガイアパワーを得る為のものであるのかもしれない。
「私がここにいるにもかかわらずアブソーバーでの予知が出来なくて申し訳ないのだがね、君たちにはこの手の情報を集めてそれが海外ご当地怪人の陰謀であるかどうかを確認し、海外ご当地怪人の陰謀であったならば、阻止をお願いしたい」
それが座本・はるひ(大学生エクスブレイン・dn0088)からの依頼だった。
「さて、この話についての注意点だが、気になる情報が見つかったからと言ってすべてがご当地怪人の企てとは限らない」
ご当地愛に燃える地元一般人のプロモーションだとか、突撃してみたらご当地ヒーローのフィールドワークだったなんてことになると目も当てられない。
「そういう意味でも冤罪が発生しないような調査をお願いしたい」
尚、今回の調査で遭遇するであろう敵は、当然海外のご当地怪人だが、配下として『海外ペナント怪人』や『元ソロモンの悪魔の信者』などがいることも考えられる。
「ちなみに『元ソロモンの悪魔の信者』だが海外で活動していたとすれば特殊な力を持たない、ただの狂気におかされた一般人であることもありうる」
ESPが効かないやつが眷属かダークネスだなんて基準で判別すると取りこぼす可能性があるので注意してもらいたいとはるひはくぎを刺し。
「こちらが企みを暴けば、配下を救おうとご当地怪人が姿を現すと思うのでね」
後は戦って倒すだけが、余地がない以上現れる敵の数も未知数だ。
「それほど強敵が出現するとは考えにくいがね」
複数体が同時に出現するというようなことがあれば、油断すると苦戦するかもしれない。
「ほぼ丸投げと言う形なのは心苦しいのだがね、こういう地道な活動が実を結ぶことになるとも思うのでね」
調査と活動をよろしくお願いするとはるひは君たちに頭を下げたのだった。
参加者 | |
---|---|
アルゲー・クロプス(稲妻に焦がれる瞳・d05674) |
湯乃郷・翠(お土産は温泉餅・d23818) |
イヴ・ハウディーン(ドラゴンシェリフ・d30488) |
鑢・真理亜(月光・d31199) |
鑢・琳朶(稲荷姫・d32116) |
フリル・インレアン(中学生人狼・d32564) |
栗須・茉莉(助けてくれた皆様に感謝します・d36201) |
華上・玲子(甦る紅き拳閃・d36497) |
●で、どれにするん?
「これは普通にご飯みたいなものかしら?」
おそらく、元モッチアが二人居た時点でこの流れは半ば確定していたのかも知れない。タイの餅米について湯乃郷・翠(お土産は温泉餅・d23818)が調べ始めたのは、つい先程のこと。
「あちらでもお餅は食べられているようね」
ネットで軽く調べてみただけでも現地でお餅が食べられていることは解り。
「アプソーバーの影響ではるひ先輩から依頼がきたぜ」
誰へ向けての説明か、何やらテンションお高いイヴ・ハウディーン(ドラゴンシェリフ・d30488)を見て、鑢・琳朶(稲荷姫・d32116)は流石イヴが愛してやまないはるひさんからの依頼だねと漏らす。
「ほい、誰からかはさておき、なんか珍しい依頼なり」
「確かにこの度のものは、珍しい依頼ですね……」
華上・玲子(甦る紅き拳閃・d36497)の言葉に相づちを打った鑢・真理亜(月光・d31199)はちらりと視線をイヴへ向けた。
「おっしゃ♪ 面白……ではなく、調査依頼頑張るぜ!」
やる気満々の妹を見て思うところあったのか。感情は出さず、小さく頷き。
(「この一年……大きな勢力は倒されていますが、未だ、グローバルジャスティスの本来の姿は見えてきません。この機会に出来うる限りの対策を高じていきたいですね」)
密かにご当地怪人の首魁に傾けた思考を今せねばならない事へと戻す。
「あれ、イヴ目が恐いよ」
そう、例えば引きつった笑みを浮かべてイヴから二歩程後退した琳朶の背後に回り込む、とか。
「どうしたの? ……なにもしないよ。なにも」
回り込む間も追いつめられつつある様だったが、琳朶の肩越しに目を合わせているイヴと真理亜にとって否定の言葉は足を止めるに値しなかったらしい。
(「ちっ……外国怪人と一緒に金儲けをしようと考えてたら警戒さ――ん?」)
胸中で舌打ちした琳朶は違和感を覚えて腕に己の目をやり。
「真理亜とれい子お姉さん腕をつかんでどうしたの?」
「海外怪人の行動にひと商売しようとするいけない狐を捕獲したなり」
問いに答えたのは、苦笑する玲子。
「あれ……どこ行くの?」
「リンダちゃん……ごめんなりよ。御兄さんからきつく悪さをしないように言われてるなり。ね?」
「はい……何を仕出かすか分かりませんので」
調査が始まった矢先、琳朶を連行しつつ玲子の求めた同意に真理亜が首肯を返し。
(「今回の依頼は中々大変そうですね。頑張らないと」)
イヴを含めればいきなり四名程何処かに去ったこととかそっちから悲鳴が聞こえた様な気がしたことは無かったことにして栗須・茉莉(助けてくれた皆様に感謝します・d36201)がぐっと拳を握り締める。
「けど、調査対象が決まるまでも色々あったわね」
「にゃあ」
どことなく遠い目をした翠のポシェットにはツッコミ使用跡のあるハワイのパンフレットが丸めて突っ込まれており、茉莉当人ではなくウイングキャットのケーキが翠の述懐に応じた。大変だったのだ。
「今回の依頼は、海外ご当地怪人配下のリア充カップルを爆破……」
とか言い出して、にゃーと鳴くケーキの前足突っ込みをほっぺたに喰らってあうって蹌踉めく主を見るハメになったウイングキャットの悲哀は、きっと他の誰にもわかるまい。
「『美人とイケメンの集団がハワイの民芸品や名産品を無料配布して回っている』件はハワイに新婚旅行に行ったカップルとその友人がお土産配ってただけだったものね」
「……そうですね」
真っ赤な顔で視線を逸らすアルゲー・クロプス(稲妻に焦がれる瞳・d05674)はちらりと手元のパンフレットを見た。ハワイで挙式をと言う見出しに自分と誰かの結婚式を想像してしまったのは、恋する乙女なら仕方ない。
「こう、六月も終わったのに新婚とか意味分からないわよね」
「そうですね、やっぱり爆」
「にゃー」
「あうっ」
遠い目をした翠に同意しつつ不穏な事を言いかけた茉莉がケーキからまた教育的指導をされる中。
「えぅ、その……」
挙手したフリル・インレアン(中学生人狼・d32564)はおどおどしつつ主張した。
「ご当地怪人さんはノーライフキングさんと同盟を結んでいたので、もしかしたら世界のご当地アンデッド怪人さんがいるのかもしれませんね」
と。
●調査を始めよう
「それはダークネスのアンデッド、と言う訳では無いのですよね?」
おそらくは、どちらかと言えばアンデッドっぽい外見のご当地怪人と言うことなのだろう。
「……そのご当地ならではの怪談とかが元になったタイプのご当地怪人ですか」
「は、はい。いつまでも帰ってこないアッシュランチャーさんを想い、はるばる日本にまで来たその女性ご当地怪人さんは――」
フリルは語る悲恋のロマンスを。
「ご当地怪人さんの片想いでアッシュランチャーさんはその恋心に気がついていないんです。身分の違いから叶わぬ恋だけど……」
アッシュランチャーは日本に行ったきり戻ってこない。
「えぅ、想像したら……切なくて」
泣けてきますと自身の想像へ瞳を潤ませるフリルを前に、翠は困惑していた、パンフレットを片手に。
「ええと」
「ただいまなり」
そして、何か言おうとした瞬間だった、フェードアウトしてた面々が戻ってきたのは。
「それで、何を調べるか決まったのか?」
「そうですね、幾つかは軽く調べた段階でご当地怪人は関係なさそうだと判明してますし」
「残ってる中で纏めて調べられそうなのは、玲子さんと私のものくらいね」
問うイヴへ答えた茉莉の後を翠は継ぐ。国のカテゴリで分けたなら琳朶とフリルの調査対象は同じく国だが細部に共通点がなく。
「……バラバラに調査するとご当地怪人が関係していた時に戦力が足りなくなるかも知れませんし」
「お二人の調査対象から団体行動で調べてみましょうか」
方針が定まったことで一同は動き出す。
「のは、いいですけれど……そちらの方は大丈夫です?」
最後尾で生まれたての子鹿の様な動きを見せる琳朶を気にする灼滅者も居たが、それはそれ。
「たぶん歩くのに支障はないなり」
「たぶん?」
玲子の答えに首を傾げた灼滅者を含む面々はそのまま街へと。
「外国系のご当地餅を売っている人はどこに行けばみつかるかしら?」
「ご当地怪人……いるのかな……」
先頭を歩いて周囲を見回すのが元モッチアのペアになったのは、調査対象を挙げたことを鑑みれば不思議はなく。
「何事もまずは体験ですよね。その、ちょっと聞き込みをしてきます」
途中の公園でラジオ体操とは違う動きを集団でやっているのを見かけたフリルは主催者さんのことを聞き出してみましょうと公園の入り口に向かい。
「えぅ……あそこの公園でやってたエクササイズは、テレビのアニメで流行ってたものだそうです」
「アニメか。じゃあ、オレはメイド喫茶とか漫画喫茶とか寄ってみたいぜ」
戻ってきての報告にイヴは自分の調査対象を思い出し主張する。それぞれ挙げたモノがあれば、自身の決めた調査対象を調べてみたいのは仕方ない。
「あ、でしたら私も南国産フルーツのトロピカルジュースをラブラブ的な雰囲気で販売しているリア充カップルを爆」
「にゃっ」
「あうっ」
便乗する形で茉莉も不穏なことを口にしてケーキにツッコまれ。
「いったー!」
幾人かがそちらに気をとられていた時だった、玲子は町の一角を指さし。
「え?」
指さされ呆然と立ちつくすアジアンなメイドさん。その後ろにはタイ米を使ったお餅を販売するテントと数名の従業員らしき人物。
「……確かに、それらしい相手は見つかりましたね」
「そうね、それじゃこちらも動きましょうか」
「……はい」
玲子が周りの注意を集めたのをこれ幸いとアルゲーの言葉に頷いた翠はアルゲーを伴いその場を後にする。回り込んで証拠なりを探すが、玲子とは無関係を装って聞き込みをするつもりなのだろう。
「何か怪しいなり」
「ぎ、ぎくっ……な、何ですか? 私は男じゃありませんよ」
「えっ」
一方で、場に残った玲子にじとっと見られていたアジアンメイドさんは、いきなり語るに落ちていた。
●馬脚
「表でもめ事ペナ?」
一方で、テントから抜け出し近くの建物へ入っていった従業員を追ったアルゲー達もまた、ベタな語尾で語るに落ちた状況に遭遇していた。正確にはプラチナチケットの効果で一般人の従業員をやり過ごし、扉一枚隔てた場所から立ち聞きしている形だが、普通の一般人は語尾にペナなどつけまい。
「それはいかんペナね。どれ、様子を見てくるペナか」
「っ、拙いわね」
「……引き返しましょうか」
足音が扉の保運近づいてくるのを感じた翠達は慌てて来た道を引き返し。
「成る程な、ようやく当たりを見つけたか。オレのじゃねぇけどはるひ先輩の為だ」
合流して話を聞いたイヴは気合い充分の様子で掌と拳を打ち鳴らす。
「……従業員から聞いた話では、ダークネスは三体」
部下のペナント怪人が二体とボスであるご当地怪人が一体。
「丁度ペナント怪人の一体が様子を見に来る様だから、各個撃破しましょ」
「そうですね。少しでもみなさまのお役に立てられるよう頑張ります」
仲間の言葉に頷いた真理亜はスレイヤーカードの封印を解く。
「うん? 確か聞いた話では店頭の方だったペナ……ん?」
周囲を見回しつつペナント頭の怪人がやって来たのは、丁度この時だった。
「ぶっ飛ぶなり!」
「ぺなんばっ」
懐に飛び込んだ玲子のアッパーでペナント怪人は宙を舞い。
「えい」
「ぺぶっ」
叩き落とした巨大な腕は真理亜と琳朶、どちらの腕が変じたモノか。
「このまま畳みかけるわ」
「……ステロ、敵の退路を」
バベルブレイカーの先を怪人に向けて地を蹴ればアルゲーの指示に従ってビハインドのステロは怪人の後方に回り込み、建物への道を塞ぐ。
「ぐ、が……灼滅者?! ば、馬鹿な、完璧な計画が何時バレ、ちょ止めるペナ! おち、話せばわか」
「ご、ごめんなさい」
「ぺわっ、びゃ、がっ」
呻きつつ身を起こすなり漸く事態を理解したペナント怪人が制止の声を発すも、灼滅者達の攻撃が止むはずがない。フリルがロケットハンマーで地面を叩き付けて生じた衝撃波に怪人はたたらを踏み、茉莉の繰り出した突きで串刺しになった所へ襲い来るは斬撃の嵐。
「う、く……無念、ぺな」
サウンドシャッターで音も遮断されて居れば残る仲間に警告をすることも能わず、集中攻撃を受けたペナント怪人その一はがくっと崩れ落ちると爆発四散する。
「割と弱かったね」
「一体相手に袋叩きでしたし。それはさておき、配下のペナント怪人が二体と言うことは実はカップっぺ」
「流石にそれは厳しいと思うわ」
琳朶に苦笑して見せつつも何かを諦めきれなかった茉莉へ丸めたパンフレットでツッコんで翠は遠くを見た。独り身という点では翠も立ち位置として同じなのだ。
「違うわ。私はまだ出会ってないだけよ」
ちらりともう使わないのにハワイのパンフレットを持ったままのアルゲーを見て、目を閉じる。ハワイのチャペルでウェディングドレスを着たアルゲーが瞼の裏で自分に向かってブーケを投げ、受け取った翠自身は何処か恥ずかしそうに隣にいる誰かに微笑みかけ。
「な、ペナ?! これは一体」
想像シーンを断ち切ったのは、動揺した聞き覚えのある声だった。
「あ、あの男アジアンメイドさんなり」
「と言うか、あのメイドさんもペナント怪人だったんだ」
「その通り、けどなんで俺だけメイドなのか納得いかないペナ」
頭部をペナントに変えたアジアンメイドは琳朶達に頷くとぼそっと愚痴を漏らす。
「それは気の毒だけど、敵だし、倒させて貰うわよ」
「えぅ、ごめんなさい」
「なにをするきさまペナーっ!」
だが、慈悲はなかった。やはり多勢に無勢、ペナント怪人はあっさり灼滅され。
「騒がしいと思えば灼滅者米か。よもやここがかぎつけられるとは」
勢いを駆って建物の最奥、社長室へと足を踏み入れれば侵入者を認めた大きな米粒は生えた手足を使ってソファから立ち上がり。
「さ、かかってく」
「では遠慮なく」
「まいべっ」
大物ぶったところへ繰り出された一撃で身体をくの字に折り。
「おし、このまま一気にゆくぜ! ペナントより強そうだしな」
「そうですね」
「な、ちょ、ちょっと待」
この機を逃すかとばかりに襲いかかるイヴと茉莉に怪人は身体を青ざめさせ。
「ぎゃーっ」
結論から言うとタイ米怪人の強さはペナント怪人より気持ち強いかな程度であった。部下を各個撃破されていなければもっとまともな戦いになったかも知れないが、ペナント怪人が退路を断たれ合流の芽を摘まれた時点でご当地怪人達の敗北はもはや決まっていたのだろう。
●お疲れさまでした
「……どうやら他のダークネスと連絡を取っていたとかそう言うことは無いみたいですね」
戦闘で若干荒れた室内を物色する手を止め、アルゲーは翠の方を振り返る。
「こっちもその手の書類とかは無いみたいだわ」
この建物自体がご当地品普及の為のモノであったのか、見つかったのはタイから米を運び込むための手続き書類であったり、物件の権利書であったりと、他のご当地怪人との関連性が疑われる様なモノはなく。
「では、綺麗に後片づけして帰りましょうか」
「あ、帰るなら途中でメイド喫茶とか漫画喫茶とかに……って、そう言えば真理亜はいいのか?」
提案した時には既に片付け作業を始めていた茉莉の言葉に自分の希望を口にし、思い出した様にイヴが問えば真理亜は首を縦に振る。
「調べてみたところ、バイキング料理と言うのは日本でしか通用しない呼び名ですから」
存在が確認出来なかったのだろう。
「だったらボクが、狐耳のチャイナ服なナイスばディなお姉さんを探しに……あれ、イヴまた目が恐いよ」
「反省すると思ったんだけどな……真理亜」
「仕方ありませんね」
「え、ちょっと? どこに行くの?」
便乗しようとした琳朶はまた何処かへ連行されて行く。
「結局、結果としてご当地怪人が関わっていたのはタイ米の一件だけだったわね」
「メイド喫茶にいたのも、外国製の飴を売る魔女怪人じゃなくてアニメとのタイアップ企画でお菓子を配ってる魔法少女だったしな」
やがて全ての調査が終わった頃に残されたのは、幾人かにとって精神的な疲労。だが、海外ご当地怪人の企てを防いだという達成感はあり。灼滅者達は一つの戦果をあげて帰路についたのだった。
作者:聖山葵 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年7月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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