ロードローラーの選別殺人～命一つの価値は

■リプレイ

●欠片
　埼玉県内に建つ、とある豪邸。
　……しかしその豪邸は、正常なる活動で得られた得られた資金で作られた豪邸ではない……この辺りを根城にしてしまった、反社会的組織の組長の豪邸。
　だからこそ、周りの人々達からも恐れられ、一般人達が近づく事も殆ど無い。
　……そんな反社会的組織の組長の家へとやってきたのは、六六六人衆が一つ、ロードローラーの分体。
　大量に分裂したロードローラー達は、そんな世間一般には受け入れざる一般人達を一挙分散で殺戮を企てようとしている。
　……そんな悪人を救うという事に対し、様々な葛藤が産まれては消えてゆく。
「……何が正しくて、何が正しくないのか。それは……僕達が決める事でも、ダークネスが決める事でも無いと思うんだよね……」
　と、備傘・鎗輔（極楽本屋・d12663）が、その心境をぽつりと呟くと、それに媛神・白菊（にくきゅうぷにぷにのおおかみ・d34434）も。
「うむ……そうじゃな。わらわの気持ちを言わせて貰うならば、わらわは、一般人は一般人の手で裁かれるべきだと思っておるのじゃ。人ならざる力を持つ灼滅者は、一般人の生殺与奪に関わるべきではない、とな。じゃが……今回の事件でこの世の中には法で裁けぬ悪党が居る事を改めて知らされたのじゃ」
　と、白菊の言葉に刃渡・刀（伽藍洞の刀・d25866）が。
「……そうですね。法律の隙間を縫って、悪事を重ねる人が居るのも確かです。その様な人達を、殺したい、と考える人も……当然ながら存在するでしょう」
「うむ。そういった者を殺したい……心のどこかでロードローラーの殺害を見逃しても良いのでは、と思うわらわが居るのに気づいたのじゃ。しかし、灼滅者としてのわらわはダークネスの殺人は許せぬ。そこで武蔵坂学園の力を頼れば、あるいは……と考えてしまうのじゃ。法で裁けなくとも、社会的に抹殺する事が出来るのではないかと……このような事を考えてしまう辺り、わらわもまだ一般人に近いのかも知れぬの……」
　……その心境を、つらつらと呟く白菊。
　勿論、悪意を持った一般人、悪事に手を染めた一般人を許せない……という仲間の心境も分かる。
　だからこそ、ロードローラーの殺人行為を認める仲間がいるのも……それを責める事は出来ない。
　ただ、同じこの依頼に参加する仲間達は、みんな……ロードローラーを倒す、という意思の下に集まった訳で。
「ま、相手が何であれ、見過ごすなんて主義に反するんだよな。だから、これは絶対に倒す」
　と緋桜・美影（ポールダンサー系魔法少女・d01825）に、風間・紅詩（氷銀鎖・d26231）も。
「そうですね。ワタシも婚約者も、サンプルとして選ばれたような悪党ではありませんけれど……それでも殺人を許容するような社会は正しいとは思いません。だから、私は戦わせて頂きますね」
「……ま、皆も同じ考えの様だね。それじゃ……さっさと始めようよ」
　と、鎗輔が促し、そして灼滅者達は……その反社会的組織の組長の豪邸へと辿り着くのであった。

●悪事の裁き
　そして、灼滅者達は豪邸を、正面入口から突撃。
　……既にロードローラーが突撃したすぐ後の様で、立ち塞がるゴロツキなどの連中も……ううう、と呻き、辺りに転がっている。
「……無惨だな」
　と、そんなゴロツキ連中に対し、どこか憐憫の視線を向ける刀。
　ともあれ……そんなゴロツキ連中には一切構うこと無く、更に奥にある、組長の部屋へと一直線に向かう。
　……程なく、ロードローラーに続き、組長の部屋へと到着すると……。
『ひ……な、何だよてめぇ！！　近づくんじゃねぇ！！』
　精一杯の虚勢を張って、ロードローラーに対峙する組長。
　一般人とは言え、精一杯に対峙するは組長の矜持かもしれない。
　そんな矜持には率直に敬服するが……ロードローラーは、そんな組長に対し、何処か人を喰った様な笑みを浮かべている。
「ロードローラー。此処でこの人を殺しても、一時しのぎだと思うな」
　と、鎗輔がロードローラーに向けて声を掛けると、ロードローラーはその顔を、逆の灼滅者達の方へ向ける。
　ニタァ……と被虐的な笑みを浮かべるロードローラー。
　更に、刀が。
「爵位級ヴァンパイアとの同盟を考えられているとか……ふむ。朱雀門の様に使い走りの捨て駒扱いに志願しに行くとは、ミスター宍戸も酔狂な輩ですね。精々ロードクロムやサスのような末路をたどれるよう祈っております、とお伝え願いますか？」
　と、敢て言い放つと、それにロードローラーは。
『シシシシ……！！』
　と、笑い、ぐるん、と体制を灼滅者達の方へと向ける。
　……自分にターゲットが向かなくなって、親玉は。
『お、おい。テメェ等は何だよ！！　勝手に入って来やがって！！』
　と、思いっきり憤った言葉を叫ぶ。
　そんな親玉を、ロードローラー越しに眺めながら、美影が。
「救う命を選別出来る程俺は偉くないし、なりたくもないんだよね。確かにそこのおっちゃんはわりぃ奴さ。だからと言って見過ごせるかよ……」
　……あえてワリィ奴、と言い捨てる美影。それに紅詩と鎗輔が。
「そうですね。悪党ではありますが、殺されれば気分のいいモノではありませんからね」
「そうだね。時間はかかるけど……人の世のルールに従って人間同士が解決する事だと思うよ。少なくとも……人ならざる力を持つ者が決めて良い事じゃない。本当は、君も解ってるんだろう？　こんな事をしても無意味だって……」
　と、そんな二人の言葉に、ロードローラーは。ヒヒヒ、と不敵な笑みを浮かべるばかり。
　……そんなロードローラーへ、白菊が。
「うむ。法で捌けぬ、弱き人には刃向かえぬ悪党。必殺仕事人のような存在を求めてしまうものじゃが……はたして666人衆は正義の心をもって外道を歩める者なのか？　虐げられた善良なる人々の心を汲んだ復讐の刃たり得るのか？」
　と、問いかけるのだが……ロードローラーは。
『ヒ、ヒヒ……！！』
　と笑いながら、ロードローラー突撃。
　その一撃をギリギリの所で躱しながら、抜刀する刀。
「……五刀流、参ります」
　と気合いを籠めて……それと共に、彼女のビハインド、千鳥も刀に寄り添う様に、姿を現わす。
　更に、美影のナノナノ、白菊のナノナノのまつり二号、更に鎗輔の霊犬も次々に姿を現わし、ロードローラーを包囲する。
　しかし、ロードローラーは猪突猛進。
　例え包囲されたとしても、その大きなロードローラーにて、立ち塞がる相手を次々と挽き潰そうとしていく。
　……そんなロードローラーの攻撃を、敢て。
「ほらほら、お前の相手はこっちだぜ～」
　と美影がイエローサインで仲間達へBS耐性を付与為強化しつつ、そのサイドから斬魔刀の一閃を叩き込んでいく。
　そして。
「しかし……別段他人の行いに興味は無いのですが。直に見ると……あまり気分の良いモノではありませんね」
　と言いながら、刀と千鳥二人、美影から連携して、五刀連続しての抗雷撃と霊撃の連打攻撃。
　更に、紅詩がレーヴァテインでロードローラーに炎を焚き付けると、白菊は幻狼銀爪撃で一閃。
　続く鎗輔のオーラキャノンで狙い澄ました一撃を叩き込む。
　……その一方、ナノナノ二体は。
『ナノ！』
『ナノナノ！！』
　と、鳴き合いながら、ロードローラの攻撃を受けた仲間を確実に回復。
　そして次の刻。
「ほらほら～、別の所を見てる暇なんて無いぜー？」
　と言いながら、更にラビリンスアーマーの盾アップで防御力アップ。
　そして、刀と千鳥がグラインドファイアと霊障波の連携攻撃で、ロードローラーに更なる一撃を叩き込む。
　対しロードローラーは、本当にパワー一辺倒の猛攻を仕掛け続ける。
　……正しくパワーファイタータイプのロードローラー……その攻撃を、身を呈して庇う霊犬。
　そして受けたダメージをすぐにナノナノ二体が連携して回復していく。
　かなり、ロードローラーの猛攻をギリギリの所で凌ぐ灼滅者達。
　ナノナノ二体が集中的に回復してくれるお陰で、戦闘不能に至ることは無いものの……攻撃の手数も少ない為、中々ロードローラーの体力を削れない。
　一進一退の攻防を繰り返す、ロードローラーと灼滅者……経過する事、十数分。
　少しずつ、体力を削った結果……ロードローラーの身体が少しずつ、ボロボロに。
「……さぁ、こっからが本番モードだぜぃ！！」
　ニッ、と笑いながら、美影は更なる猛攻へシフト。
　渾身の斬影刃に続き刀の雲櫂剣と千鳥の霊撃が、ロードローラーの石を一部砕き……そして紅詩の斬弦糸、白菊の斬影刃が……ロードローラーを斬り放つ。
　その一閃が、ロードローラーの石を木っ端微塵に破壊し……ロードローラーは。
『ウガアアア……！』
　と、絶叫を上げて、崩れ墜ちるのであった。

●裁かれし者
　そして……ロードローラーを灼滅した後。
　……目の前には、目の前で戦いを繰り広げられ、流石に恐怖に腰を抜かしてしまった……組長。
『……お、お、お前等……な、なんなんだよ……！！』
　と、声を震わせながら強がる組長に、鎗輔は……取り出したスマホで、恐怖する無様な組長をパシャリ。
　更に、その写真を見せながら……ＳＮＳにアップロードするのをまざまざと見せつける。
「ほらほら……組長さん。無様な姿、ネットに上げられたよ？」
『あ、お、おいおい！　や、やめろよ！！』
　と携帯を取り返そうとするが、ひょいっとその手は空を切る。
　更に鎗輔、美影が。
「悪意もおイタが過ぎると、もっと強い悪意を呼び寄せるよ。その意味、よく考えようね？」
　と言うと、美影も。
「そうそう。アコギな事続けてっと、また襲われるかも知れないぜ？　それにさ、次も助けが間に合えば良いけど……間に合わないかもしれないしな」
　と言いつつ、その組長の机の上にある、家族写真を手にする。
　……組長と言えども、幸せそうな家族写真を見て……例え、このような悪事に手を染めてるとしても、家族が居るんだな、と。
「……そうだね。あんたが死んで悲しむ人がいるなら、これからどうするべきか考えてもいいんじゃない？」
『え……？』
　突然の優しい言葉に、少し挙動不審気味の美影。
　……そんな美影と組長を見比べながら、白菊が。
「……一般人同士の諍いには不干渉……を貫けそうもないの。虐げられた人が存在すると知ってしまうとの……」
　と呟きつつ……警察への連絡を取り、そして……組長と、その配下達を放置して、灼滅者達は豪邸を後にするのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2017年7月26日 難度：やや易 参加：5人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 2
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