ロードローラーの選別殺人~元信者を抹殺せよ

     地下に建設中の古代ギリシャ風神殿内、円卓の間。
     集結したハンドレッドナンバー以上の六六六人衆とアンブレイカブルの中で、序列がないのは、一般人であるミスター宍戸。そして黒の王からの特使、銀夜目・右九兵衛(ミッドナイトアイ・d02632)だけ。
     右九兵衛の任は、六六六人衆との同盟締結。その条件は、爵位級ヴァンパイアが支配した世界の中で、六六六人衆に『体制をゆるがせない範囲で、自由に人間を殺し楽しむ事』を認めるというもの。
     近いうち訪れる、武蔵坂学園と六六六人衆との決戦。その時、同盟を結んでいれば、爵位級ヴァンパイアの主力を援軍とする。
     右九兵衛の提案に対し、ミスター宍戸は、こう答えた。爵位級ヴァンパイアの支配する堅苦しい世界より、灼滅者が支配した世界の方が、六六六人衆にとって楽しめる世界になる、と。
    「そうは言わはりますけど、武蔵坂はダークネス絶対殺す組織、灼滅者はダークネス絶対殺すマシンやで。同盟なんて、まずありえへんのと違います?」
    「わかりました。武蔵坂学園との同盟の可能性が潰えたならば、爵位級ヴァンパイアとの同盟を受け入れましょう」
     右九兵衛にうなずいたミスター宍戸が、ハンドレッドナンバーの一体、ロードローラーを呼んだ。
    「あなたの出番です。灼滅者との同盟の可能性、とくと調べてきてください」

     右九兵衛とミスター宍戸らの会談から後。
     郊外にある、空き倉庫。中では、人々が、積み上げられたメープルシロップの小瓶を、せっせとトラックの荷台に詰めている。
     彼らは、カナダメープルシロップ怪人に協力する、ソロモンの悪魔の元信者達。メープルシロップを無料で配り、勢力拡大の足掛かりとしようとしているのだ。
    「今日も元気にメープル配るぞ……!」
     リーダーらしき男性が皆を鼓舞した途端、たシャッターが破られた。
    「戻られましたか、ペナント怪人様。しかし、その入り方はやめてくださいといつも……なっ!?」
     そこに現れたのは、ロードローラーだ! ミスター宍戸の命令を実行したロードローラーは、分体を生み出し、襲撃を仕掛けてきたのだ。
     信者達にダークネスに抗う術はない。響く悲鳴、怒号、破壊音。
    「これは……!」
     ペナント怪人が戻って来た頃には、ロードローラーの姿はなく、信者の屍と、整然と並んだままのメープルシロップがあったという。

    「戦神アポリアの提案への対応、感謝する」
     そう言って、初雪崎・杏(大学生エクスブレイン・dn0225)が頭を下げた。
    「それぞれの決意に基づく選択は、誰にも否定できないものだ。一方で、朱雀門高校を制圧し、ロード・クロムを撃破できた事も大戦果だろう。だが……」
     戒道・蔵乃祐(逆戟・d06549)の危惧が現実となった。朱雀門を喪失した爵位級ヴァンパイアは、失った『目と耳』の代わりとして、六六六人衆との同盟を模索しているというのだ。
    「六六六人衆側は、灼滅者との同盟をまだあきらめていないようだが、それが無理とわかれば、爵位級ヴァンパイアとの同盟を優先させるはず。そうなれば、学園は窮地に陥るだろう」
     既に、ハンドレッドナンバーのロードローラーが活動している。
     戦神の提案の件で、灼滅者が提示した、『犯罪組織トップ』、『確実に殺人を行っているが法で裁けずにいる悪徳経営者』、『法で裁けない犯罪者』、『ダークネスに積極的に協力する一般人』を襲撃しようとしているのだ。
    「これを灼滅者が黙認するかどうかで、同盟の実現の可能性を見定めるつもりなのだろう」
     杏によれば、襲撃対象の1つは、海外ご当地怪人の一体、カナダメープルシロップ怪人の一派。厳密には、それに協力する、元ソロモンの悪魔の信者達である。
    「信者達は、自発的に海外ご当地怪人に協力し、その勢力を拡大させようと画策している。『ダークネスに積極的に協力する一般人』に当てはまるわけだ」
     ロードローラーの襲撃対象は、信者達のみ。周囲の一般人は事前に無力化され、被害が出ないようになっている。
    「このロードローラーは分体だ。もし灼滅者が攻撃してきた場合、一般人の殺害を中断して迎撃してくる。しかし、灼滅者は今回の標的ではないため、君達の撤退は見逃してくれるし、止めを刺すこともない様だ」
     分体に会話能力は無いが、見聞きして得た知識はロードローラー本体に伝わる為、意見や主張を伝えても構わない。
     戦闘の際は、殺人鬼とロケットハンマーのサイキックを使用する。
    「戦神アポリアの提案の際の決断を考えれば、襲撃を阻止するのが道理か。しかし、爵位級ヴァンパイアが絡んでくるなら、話はまた変わって来るだろう。君達の思う、よりよい決断を下して欲しい」


    参加者
    藤谷・徹也(大学生殺人機械・d01892)
    神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914)
    芥川・真琴(ココロの折れたエンジェル・d03339)
    桃野・実(すとくさん・d03786)
    ジンザ・オールドマン(ガンオウル・d06183)
    ヴィンツェンツ・アルファー(機能不全・d21004)
    ルティカ・パーキャット(黒い羊・d23647)
    坂崎・ミサ(食事大好きエクソシスト・d37217)

    ■リプレイ

    ●急襲のロードローラー
     シャッターを破って現れる、ロードローラー。
     ブロックで組みあげられたような外見のそれは、元信者達の姿を認めると、急加速で殺戮を始めた。
     だが、元信者達の目の前で、ロードローラーの進路が強引に変更された。ヴィンツェンツ・アルファー(機能不全・d21004)の一撃だ。
    「一般人を救出対象、及びダークネスを灼滅対象と認識」
     藤谷・徹也(大学生殺人機械・d01892)や芥川・真琴(ココロの折れたエンジェル・d03339)がロードローラーを阻む間に、パニックテレパスを使ったルティカ・パーキャット(黒い羊・d23647)が、元信者達に呼び掛ける。
    「轢かれとうなければ早う逃げよ。あ奴の近くには寄らぬようにな」
     真琴達に敵を任せ、徹也が割り込みヴォイスを使い、神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914)と共に、元信者に避難を促す。
    「『戦神』の件に続いてこっちを試そうなんて、いい気がしないけど、やるべき事をやるだけね」
     明日等は、転倒しそうになった元信者を支え、
    「見捨てる事なんてしないわ。勿論あんたの事もね」
     元信者達を追走せんと、倉庫の外に躍り出るロードローラー。その進路上に、新たに坂崎・ミサ(食事大好きエクソシスト・d37217)が立ちはだかり、自由を与えない。
    「わざわざ提案された条件に合う一般人を襲って確認しようなんて、三顧の礼のつもりでしょうか。六六六人衆も、まぁ随分と可愛らしくなったもので」
     最後の信者が逃げるのを一瞥したジンザ・オールドマン(ガンオウル・d06183)が、ロードローラーを見つめる。
    「……反省も後悔もなしで悪行を続ける奴らなら……でもこいつらはダメだ。やり過ぎだ」
     桃野・実(すとくさん・d03786)がロードローラーに突きつけたのは、刃ではなく言葉。
    「灼滅者がどこまでなら許すのか知りたいのだろ? 殺人、殺人幇助をしない協力なら見逃せ。殺しを後悔してる奴もだ」
     こちらの出方をうかがうように沈黙するロードローラーへと、灼滅者達は語り掛ける。正しくは、その向こうにいる存在へと。

    ●否定のメッセージ
    「そっちも少しは話を聞く気になった事だけは認めてあげるわ」
     明日等が言う。
     やはり攻撃が来ないとわかると、仲間達も口を開いた。
    「分かってやっているんだろうが、『殺戮を認める条件』は一部の生徒が独断で提出したものだ。選別殺人、僕は改めてお断りする」
     意志を表明するヴィンツェンツの胸中には、ミスター宍戸側への不信が渦巻いている。灼滅者と六六六人衆、交わした条件は同じでも、解釈が異なる……向こうは拡大解釈すらするのではないかと。
    「俺も、拒否する。如何なる条件だろうと」
     そう告げる徹也にとっては、爵位級ヴァンパイアも、六六六人衆も、等しく倒すべき存在。両者が同盟を結び脅威となるというのならば、まとめて倒すまでの事。
    「ちゃんとNOは伝えた筈ですが、なおもご機嫌伺いにくるとか、らしくもない事を。死刑の肩代わりをすれば喜ぶとでも? 人が人を裁くのは、社会と秩序を守る為、峻烈な覚悟有っての行動ですよ」
     ジンザの青の瞳は、ロードローラーの向こう側にいる相手を見据えているかのよう。
    「娯楽として行うなら、魔女狩りの時代に逆戻りだ。だから僕はそんなモノ必要としないし、アナタ方も、要らない」
     ジンザ達の発言への反応はないが、言葉自体は、ロードローラー本体に届いているだろう。
    「そもそも、武蔵坂が守ろうとするレベルの一般人まで対象にしたのはどういう事じゃ。レンジを広く取るための試金石かの」
     ルティカが問う。確かに元信者達も『ダークネスに協力する一般人』ではあるが、
    「ダークネスに積極的に協力……なんて言葉遊びで範囲を拡張するのはやめてください。明確な悪意をもって動く宍戸さんと元信者達とは違います!」
     ミサが、強い口調で訴える。
     元信者達は、殺さねば生きられぬ業を持つ者にあらず。同盟には、多少なりとも賛成の立場を取っていたミサであるが、ダークネスに加担する者全てを殺害対象に含めるというのでは、話が変わって来る。
    「六六六人衆がヴァンパイアと組もうとしようが関係ない。わたし達は……わたしは。選別殺人なんて、認める訳にはいかない。そうミスターに伝えるといいよ」
     否定を投げかける真琴の輪郭は、陽炎のように揺らめいていた。抑えきれない感情が熱となり、既に身を焦がしているようだ。
    「……それでも本気で同盟を結びたいなら、宍戸と話がしたい。そっちの真意がわからないから同盟を結ぶのにためらってる状態だ」
     実が、探るように問いを放つ。
    「なあ……宍戸は今の序列一位が必要か? ……本当は、宍戸は新しい組織が必要で、今の六六六人衆は……リストラしたくてもできない奴がいる雰囲気か?」
     ふんふん。霊犬のクロ助も、しきりに鼻を鳴らしている。
    「と、いうわけでな。学園は人数が多いで主義主張も多いでの。此度はこのまま帰って貰おうかの」
     そろそろ頃合いか。ちら、とルティカが仲間と視線を交わした。
    「この任務は一般人の救出任務と認識する。……通常の任務だ」
     殲術道具を解放する徹也に、ヴィンツェンツも深くうなずいた。
    「せめて罪のないメープルシロップは守らないとね」
    「同盟は何処とだろうと御自由に。ただ、横の輩がまた後ろから刺さない事を祈ってますよ。では」
     そしてジンザのマジックミサイルが、伝言の時間に終止符を打った。

    ●反撃のスレイヤー
     灼滅者に抵抗すべく、ロードローラーが再び動き出した。きゅるきゅると、音を鳴らして。
     その突進をやり過ごすと、明日等が相手の後部に向け、ダイダロスベルトを放った。パーツ……この分体のビジュアルならそう表現していいだろう……の接合部分を狙い、貫く。
     向こうに余計な破壊をする気はないようだが、戦闘となればイレギュラーもありうる。動きを止めるべく、ヴィンツェンツがローラー部分目がけてキックを浴びせた。ボディが地面から浮き、ローラーが空転する。
     その隙を突いたのは、実だ。接敵の間に燃やした炎を、キックとして存分に叩き込んでやる。重量ゆえ吹き飛ぶ事はないが、相手そのものを足場として、実が離れるには好都合。
     どすん、と再び地面を踏んだロードローラーが、頭を器用に回転させて、標的を求める。が、その顔面を、鋭い魔力弾が直撃した。
    「ロードローラー、アンタも悪ノリが過ぎて、いい加減見苦しい」
     制約の弾丸を放ったジンザ目ざし、疾走するロードローラー。忍者仕込みの体術でかわすが、向こうの狙いは別にあったらしい。
     ロードローラーが壁走りを披露して跳び上がると、その巨体を地面に叩きつけた。
     陣形の後方を構成していた灼滅者達の体を、衝撃が揺るがす。停車してあったトラックが跳ね、剥離したアスファルト片が舞い散る。
     塵をロングコートで弾く真琴。ミスター宍戸へのいらだち、そして理由のわからぬ焦り。二種の感情に突き動かされる真琴の戦い方は、苛烈であった。荒い、といってもいい。
     ダイダロスベルトで何度も切りつけた後、ベルト自体をナイフのようにつかんで、相手に直接突き刺す。
     そうして次々と殺到する灼滅者達を振り払うように、どす黒い殺気が周囲にぶちまけられる。だが、ミサと視線を交わしたルティカ、その展開した列状のシールドが、その衝撃を緩和する。
    「今じゃ」
    「俺は任務を遂行する」
     黒の衝撃が、縦横無尽に切り裂かれた。殺意の残滓を振り切り、ダメージなどものともせず、徹也が地を蹴る。
     人体とは程遠い構造のロードローラーではあるが、ならば、パーツの接合部分を狙えばいいだけの事。
     徹也の刃にえぐられながらも、戦場を駆け回るロードローラー。その進路を予測しつつ、ミサが負傷者へと癒しの矢を放った。
     直後、ミサの背後から飛んだ衝撃が、ロードローラーの速度を殺す。ビハインドのリョウだ。メープルシロップは壊さないように……そんな主の意志をくんだように。

    ●決着のデッドヒート
     分体にロードローラーの実力は、恐れるものではなかった。
     相手に殺意がなく、実質、闇堕ちを封印された状態の灼滅者だったが、いいハンデとなったくらいだ。
     小さなタイヤにまたがるようにして、敵と並んで飛んでいた明日等のウイングキャット、リンフォース。そしてクロ助から続けて癒された実が、ロードローラーと交錯した。
    「断て、『徒姫』」
     すれ違いざま、クルセイドソードがローラーを横薙ぎにした。外傷はない。ただ、魂が破損しただけだ。
     再び殺気を放出すると同時に、自己強化するロードローラー。
     苦し紛れのようにボリュームを上げる駆動音を、ヴィンツェンツが掻き消した。チェーンソー剣の出力を上げる事で。
     疾走するロードローラーに乗り移ると、ヴィンツェンツは刃でボディを削り、その身をコーティングする加護をもぶち破る。
     強化を失った装甲へ、ビハインド、エスツェットの波動が直撃。露出した内部機構を、ジンザのガンナイフが狙う。……ヒット。
     爆撃を受けたロードローラーだったが、ただでは起きない。その場で回転を始めると、己の体を武器にして、真琴を吹き飛ばす。
     それ以上仲間が傷つくくらいなら、自分が。敵の進路に割り込んだ徹也が、クロスグレイブで押しとどめる。
     圧倒的重量差……徐々に、後退を余儀なくされる徹也。しかし、クロスグレイブのトリガーを引いた瞬間、ロードローラーを氷塊が包んだ。
     更に氷結領域は拡大。なびくツインテール……明日等の氷結弾だ。続けざまに冷却された躯体を、今度は熱気が襲った。
    「おやすみなさい、良い夢を……わたしは、そう言い続けるよ。誰が相手でもね」
     真琴が、熱源である、炎剣を突き立てる。
     その間にブロックの突起部分をつかんだルティカが、至近からの斬撃。途端に敵の速力が弱まったのは、ルティカに活力を奪われたゆえであろう。
     敵の弱体を悟ったミサが、攻撃に転じた。癒しの力を裁きのそれに転換する間、リョウが敵を抑える。そして降臨した光の裁きが、ロードローラーを打ちすえた。
     それが決定打。ロードローラーはバラバラになったかと思うと、その機能を停止した。目的を1つにした灼滅者の脅威ではなかったのだ。
     戦闘音が止んだのを察して、元信者達がわらわらと戻って来る。
    「放置すれば害悪を為すかもしれぬとは言え、改心すれば真面目な一般人になりそうなものを。むしろペナント怪人のせいで苦労しとりそうじゃ」
     安堵する元信者達の様子を見て、ルティカがつぶやいた。
    「これまでどんな事をしてきたのかは知らないけど、本当にメープルシロップを配っているだけならまだマシね。でも、ダークネスへの協力も程々にしておきなさい」
    「そう、あんまり悪い事ばかり考えてるともっと怖いのが来ちゃうから」
     明日等や真琴が、元信者に釘を差す。
     任務を終えると、すみやかに撤収する灼滅者達。
     ペナント怪人に戻って来られると、色々面倒そうだったから。

    作者:七尾マサムネ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年7月26日
    難度:やや易
    参加:8人
    結果:成功!
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