慈眼城のナミダ姫~スサノオの胎動

    作者:J九郎

     ブレイズゲート『慈眼城』の直下にある天王山トンネル内部。
     トンネルの両端を封鎖したスサノオ達により、交通の途絶えたトンネル内で、スサノオの姫・ナミダと、有力なスサノオ達が、儀式の準備を進めていた。
    「慈眼城のスサノオ化が成功すれば、我らの戦力は大幅に増強されるであろう」
    「それだけではない。この儀式が成功すれば、数多のブレイズゲートの全てのスサノオ化も可能になる。そうなれば、爵位級ヴァンパイアをも凌駕する事だろう」
    「だが、心配なのは灼滅者よな。この儀式には多くの力を結集してしまう。儀式の最中に、灼滅者の横槍が入れば、姫をお守りする事ができるかどうか……」
     スサノオ達が、儀式の意義と、そして懸念を示すなか、ナミダ姫は大丈夫であると言い切った。
    「灼滅者は、一般人を苦しめ殺すような行為を嫌うが、この儀式による一般人への被害は皆無なのだ。それどころか、ブレイズゲートが消失する事は、地域の安全にも繋がる。灼滅者が我らを邪魔する理由は無いだろう」
     その言葉に、スサノオ達は一斉に頷く。
    「灼滅者達は、アンブレイカブルを合流させた六六六人衆との決戦を控えている。その上で、我らを敵に回すような愚挙は行わないであろう」
     納得したスサノオ達は会話を止め、無言で儀式の準備を進め始めるのだった。

    「……みんな、ちょっと緊急事態が発生した」
     集まった灼滅者達に、神堂・妖(目隠れエクスブレイン・dn0137)は真剣な声でそう告げた。
    「……慈眼城の直下にある天王山トンネルが通行止めになってるのは知ってる? 不審に思ってトンネル内部に潜入した高野・妃那(兎の小夜曲・d09435)さんが持ち帰った情報によると、スサノオの姫・ナミダとスサノオ達が、ブレイズゲートである慈眼城を喰らってスサノオ化するという儀式を進めているみたいなの」
     スサノオ達が慈眼城を狙うのではという事は、エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)も予見していたし、漣・静佳(黒水晶・d10904)と紫乃崎・謡(紫鬼・d02208)は、スサノオ大神の力を得たスサノオ達により、ブレイズゲートが利用されるだろう事を予期していた。だが、事は予測を超えて大事になりつつあるようだ。
    「……現時点で、武蔵坂学園とスサノオ勢力は、ある程度の友好関係がある。……だから、六六六人衆との決戦時にも協力が見込めるかもしれない。……でも、それとこれとはまた別の問題。……ブレイズゲートという強力な力を、スサノオが喰らってしまう事は、ダークネスの勢力強化に繋がってしまうはず。……どうするのが正解かは分からないけど、放置しておくのはよくないと思う」
     そこで、と妖は先を続ける。
    「みんなには、現場に向かって、各自の判断で行動を行ってほしい」
     独自の判断といっても、ある程度の指針は必要だろうからと、妖は指を3本立てた。
    「……一つ目。妃那さんの情報によれば、儀式の最中はスサノオ達の力は儀式に注ぎ込まれるみたいだから、戦いを挑めばスサノオの姫・ナミダの灼滅も可能かもしれない。……これまでの交流はあるけど、このままスサノオ勢力の強大化を見過ごすわけにもいかないから、灼滅を視野に襲撃するという選択もあり得る」
     ナミダ姫の灼滅に成功したならば、スサノオ勢力を壊滅状態とする事ができるだろう。
     ただ、攻撃を仕掛けたがナミダ姫の灼滅に失敗した場合、スサノオ勢力と武蔵坂の関係は修復不能な敵対関係となる可能性が高いので、攻撃を仕掛けるならば万全を期す必要がある。
    「……二つ目。ナミダ姫への襲撃を行わずに、慈眼城の攻略を行うという方法もある」
     儀式の結果なのか、慈眼城には、戦闘力が大幅に強化された『壬生狼士』や『壬生狼魂』が出現しているようだ。
    「……この『壬生狼士』や『壬生狼魂』を撃破する事で、『慈眼城』を喰う事で得られるスサノオの力を大きく減少させる事ができるはず」
     この方法を取った場合も、スサノオ勢力との関係はある程度悪化するだろうが、偶然ブレイズゲートを探索した結果であると言い抜けられれば、敵対関係とまではならないだろう。
    「……三つ目。儀式中のナミダ姫の所に出向いた上で、慈眼城の儀式を認め、ナミダ姫達と友好を深めるという選択も考えられる」
     慈眼城の探索と交渉を同時に行う事で、スサノオの戦力強化を抑えつつ、関係悪化を最小限に収める事もできるかもしれないと、妖は言う。
    「……スサノオ勢力を壊滅させる好機ではあるけど、数少ない協力関係にあるダークネス勢力を失うのは得策じゃないって考え方もある。……どうするべきかは、みんなに任せる」
     そう言って妖は、深々と頭を下げたのだった。


    参加者
    九凰院・紅(揉め事処理屋・d02718)
    志賀野・友衛(大学生人狼・d03990)
    六藤・薫(アングリーラビット・d11295)
    狼幻・隼人(紅超特急・d11438)
    不動峰・明(大一大万大吉・d11607)
    ラススヴィ・ビェールィ(皓い暁・d25877)
    押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)
    白峰・歌音(嶺鳳のカノン・d34072)

    ■リプレイ

    ●天王山トンネルにて
     ブレイズゲート『慈眼城』の直下にある天王山トンネルに突入した灼滅者達は、ほどなくナミダ姫達スサノオの姿を見つけることができた。いや、『見つけて』いたのはスサノオ達も同じこと。
    「――灼滅者か」
     スサノオ達は灼滅者の姿を視るよりも先に、その存在を聡い耳に拾い、鋭い嗅覚で嗅ぎつけていたのだろう。
    「何をしに来た!」
     噛みつかんばかりの怒号を受けながらも、月影・木乃葉らが自分達に交戦の意志はないこと、そして話し合いに来たことを伝えていく。
     交渉の様子に気を配りつつも、周囲を警戒していたラススヴィ・ビェールィ(皓い暁・d25877)は、スサノオ達の中に見知った姿を見つけ、思わず目を止めた。かつて秩父の山中で出会ったそのスサノオの名は、ギンロウ。
    「おまえは――」
     気付いたのは相手も同様だったようで、先に声を上げたのはギンロウだった。
    「久しいな。こうして再びまみえたということは、縁の導きはなったと思うか?」
     ラススヴィの問いに、ギンロウは苦笑とも取れる笑みを浮かべる。
    「どうやらここが、それを決する場になりそうだ」
     見れば、ナミダ姫が「……この者達は敵では無い」と、敵意と警戒心を剥き出しにするスサノオ達を諭しているところだった。
    「どうやら、無事交渉はできそうだな」
     志賀野・友衛(大学生人狼・d03990)は、ナミダ姫が話を聞く態勢になったことに、ほっと胸を撫で下ろした。
    「住み分けて共に生きていけるのなら、滅ぼし合うよりもずっと良いからな」
     狼の耳をぴんと立てて安堵する友衛に、傍らで同じく交渉の行方を見守っていた九凰院・紅(揉め事処理屋・d02718)が頷く。
    「だが、この場に全ての有力なスサノオが集まっているわけではないのか」
     紅は、ここに集うスサノオ達の中に、かつて出会ったハクロがいないことに気付いていた。もしナミダ姫との交渉が成立したとして、それはここにいないスサノオ達にも徹底されるのか、一抹の不安が紅の脳裏をよぎる。
    「オレは今までのナミダ姫の行動から、一緒に共存できるんじゃないかと思ってたんだ。この場はかなり貴重な機会だから、少しでもいい方向に進めるようにしたいぜ!」
     白峰・歌音(嶺鳳のカノン・d34072)は、せっかくの交渉が妨害されたりしないよう、迎撃態勢を取っていた。スサノオ達は慈眼城で灼滅者が暴れ回っていることに気付いており、険悪な空気が流れつつある。この上さらなるハプニングは避けたいところだ。
    「お互い、相手を信用しきることも、敵対しきることもできずにいる、か……」
     不動峰・明(大一大万大吉・d11607)は、ナミダ姫陣営との現状の関係に強い危惧を抱いていた。この交渉で何らかの関係性の改変がなればとの強い想いが、彼をこの地へ導いたのだ。
     幸い、ナミダ姫は交渉を続ける気のようで、話はやがて、六六六人衆とアンブレイカブルとの決戦を行う場合にまで及んだ。
    「学園にも好戦的な人はおるから、なんかどっかで妥協してくれんかなって感じやな」
     狼幻・隼人(紅超特急・d11438)のそんな願いが通じたのか、ナミダ姫は条件次第では援軍の要請に応じてくれそうな雰囲気だ。
    「交渉、このまま上手くまとまるといいけども……ここが勝負所、気合入れて頑張るっす!」
     交渉の行方をハラハラして見守っていた押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)は、とうとう自分達に交渉の順番が回ってきたことを知り、気合を入れるように自らの頬を叩いた。
    (「肝心なのは、こっちに気を使ってくれてる内はそれを無下にしない事だ。ダークネスにしては義理を重んじるつっても利害次第でそれを反故にする事も念頭に置いとかなきゃな」)
     六藤・薫(アングリーラビット・d11295)は自分自身にそう言い聞かせると、ナミダ姫の前に一歩、踏み出したのだった。

    ●ナミダ姫との交渉
    「まずは胎蔵界での助力に感謝を。援軍要請に応じて頂き、ありがとうございました」
     紅が一同を代表して、先の胎蔵界戦争への加勢に対する謝意を述べる。
    「あれは恩に報いただけのこと。スサノオは、受けた恩を絶対に忘れぬものゆえ」
     ナミダ姫は、さも当然のようにそう応じた。
    「それじゃ今後の参考の為に聞きたいんだけど、そっちはどれだけの数のブレイズゲートを把握してるんだ?」
     薫が、さっそく核心に斬り込む。その目は、ナミダ姫やスサノオ達の感情の微妙な変化を見逃すまいと、片時も彼らを離れない。
    「少なくとも、武蔵坂が把握している、活性化しているブレイズゲートは全て把握していると思ってもらってよい」
     ナミダ姫は、さして躊躇う様子もなくそう返した。その言葉に、嘘は感じられない。
    (「さっきブレイズゲートは元々スサノオ大神の力の一部って言ってたし、だったらそれぐらい把握してて当然ってことか」)
     難しい交渉は仲間達に任せて、自身は周囲の警戒に専念していた歌音は、考えるとはなくそんなことを考えていた。
    「一つ提案がある。我々が未だ存在を知らぬブレイズゲートは全てそちらで管理するなり儀式を行うなりして貰って構わない。だが、我々の把握しているブレイズゲートの内、半数を我々で管理させてもらえないだろうか?」
     明の提案に、ナミダ姫が虚を突かれたような表情を浮かべる。それだけ、予想外の提案だったのだろう。
    「武蔵坂学園は可能ならば、ブレイズゲートを全て破壊したいという立場では無いのか? ブレイズゲートを手元に残す理由があるとも思えぬが」
     その問いに応じたのは、これまでにも何度かナミダ姫と面会したことのあるラススヴィだった。
    「ブレイズゲートをスサノオが喰らった結果、囚われていたダークネス達が放逐され一般人に多数被害を及ぼした前例がある。そういった可能性をなるべくなくしたいと思うのは、おかしいだろうか?」
    「それならば、先程別の者達に話した通り、儀式を行う期日を事前に告知することで不安は除けるのではないか? それに、ブレイズゲートがスサノオ化した場合、中にいた者は皆死に果てるということも既に話した。汝等の心配は、杞憂というものじゃ」
     ナミダ姫は灼滅者達の真意を探らんとするように、一人一人に目を向けていく。その視線を受けて、降参というように隼人が両手を上げた。
    「分かった、正直に言うわ。誰だって、自分より強い奴が更にどんどん強うなったら、自分達もそのうちどうにかされるんやないかって思うやろ? お互いに話し合いでなんとかなるんなら、できるうちにやっとこうってことや」
     その言葉に、ナミダ姫が驚いたように目を見開く。
    「……汝は気付いておらぬのか? 汝の言葉、それはそのまま、ダークネスが武蔵坂学園に対し抱いている懸念そのものだということに」
    「え? どういうことっすか?」
     思わず、素に戻ってハリマが問えば、ナミダ姫は真剣な表情で答えた。
    「ほんの数年前まで、ダークネス達は武蔵坂学園を弱小勢力と侮っていた。だが、気付けば武蔵坂学園は、かのガイオウガを灼滅し、シャドウ大戦を終結させ、人類管理者たるクリスタル・ミラビリスをも壊滅させるほどに強大化しておった。汝等が自分達をどう思っているかは知らぬが、もはや武蔵坂学園は最強のダークネス組織の一角なのだぞ?」
     そこに、揶揄するような響きは欠片もない。
    「現時点では、武蔵坂学園の強さは、スサノオをはるかに凌駕しておる。戦えば必ずスサノオは敗北するだろう。儂個人は武蔵坂学園とは良い関係を結びたいと思っておるが、不安がないといえば嘘になる」
    「ま、待ってくれ! 学園の中には確かに、スサノオの強大化を懸念する者も多い。それでも私を含めて、学園にはスサノオと共存したいと望む者も居るんだ。貴女達との戦いなど、武蔵坂学園は望んでいない!」
     友衛が必死にナミダ姫の不安を除こうと言葉を紡ぐが、そこには、埋めがたい溝が広がっていることを、実感せざるを得なかった。

    ●交渉の行方
    「『強者がこれ以上強力になることを阻止するため』というのであれば、強者たる汝等がブレイズゲートを管理するということは、理に適わぬのではないか?」
     ナミダ姫の論法の前に、返す言葉をしばし失っていた灼滅者達だったが、
    「いや、やっぱりそれはおかしいっす。自分達は、ブレイズゲートを使って戦力を増す手段は持ってないっすよ!?」
     ようやく、ハリマがそう返す。だが、
    「汝等は『ガイオウガの一部』を確保しているそうじゃな? ならば、ブレイズゲートを利用してガイオウガの復活儀式を行うやも知れぬと、そう考える者もスサノオの中には存在する」
     ナミダ姫の答えは、灼滅者達にとっては考えも及ばぬことだった。しかし、イフリートと同じ幻獣種のスサノオ達にとっては、重大な懸念なのだろう。
    「だが、ブレイズゲートを使ってガイオウガを復活させようとする意図はこちらにはない。俺達がブレイズゲートを管理したいのは、灼滅者に必要な『癒し』を得る手段の一つとして重要だからだ。全てのブレイズゲートを失うことは、灼滅者全体の問題になる」
     紅が、ナミダ姫に真意を理解してもらうべく、灼滅者側の実情を打ち明ける。すると、ナミダ姫は怪訝そうに首を傾げた。
    「灼滅者はダークネスを灼滅する事で、癒しを得られる筈。ならばダークネスを滅ぼし尽くすような事をしなければ、その理由でブレイズゲートを必要とする事は無いのではないか?」
     それとも、とナミダ姫は一同を見回す。
    「武蔵坂学園の目的は、この世界から全てのダークネスを根絶することなのであろうか」
     その言葉に、その場にいた全ての灼滅者とスサノオが凍り付いた。
     その、薄氷のような緊張を、最初に破ったのは隼人だった。
    「何冗談言うてんの。そんな手段がないことぐらい、そっちだって分かっとるやろ?」
     隼人はこういった駆け引きが苦手だ。だからこそ、その言葉には嘘偽りがない。ナミダ姫もそのことを悟ったのか、ふっと緊張を解いてみせた。
    「儂も汝等がそのような大それた事を考えているとは思ってはおらぬ。だが、そもそもブレイズゲートにいるダークネスは分割存在。ブレイズゲートを探索する事で、灼滅者が癒しを得られるという事は無いと思うのだが」
     もっとも、灼滅者ではない自分達にはそもそも、『癒し』とはどういうものかがよく分からぬのだが、とナミダ姫は付け加える。
    「では、我々には一部でもブレイズゲートの管理は任せてもらえない、ということだろうか?」
     ラススヴィが問えば、ナミダ姫は「そうではない」と首を振った。
    「スサノオは恩には必ず報いる。儂の示す条件を飲んでもらえるのなら、ブレイズゲートの半数で儀式を行わない事を約束しよう」
    「その条件って、何っすか?」
     ハリマの問いに、ナミダ姫はおもむろに答える。
    「ブレイズゲートを武蔵坂学園が悪用できる可能性である『ガイオウガの一部』を、こちら側に引き渡すことじゃ」
     衝撃的な提案に、ざわめきが広がっていった。
     武蔵坂学園が所持する『ガイオウガの尾』は、ガイオウガの「灼滅者に協調する意志」の塊。それはまた、学園に協力的だったアカハガネ達イフリートそのものでもある。武蔵坂学園が一度はガイオウガに敗れたのも、『ガイオウガの尾』の確保を優先したことが要因の一つだった。
     その『ガイオウガの尾』をスサノオ側に引き渡せと、ナミダ姫は言っているのだ。確かにスサノオ側にとっては、武蔵坂学園がブレイズゲートを利用してガイオウガを復活させる可能性を無くすことは、取引条件として妥当ということになるのだろう。
     だが、灼滅者にとってそれは、そう簡単に割り切れる問題ではない。
    「それは……さすがに私達だけでは即答できない。学園の皆とも相談してくるから、少し時間をくれないか?」
     ようやく友衛がそう提案した時。突如頭上から、狼のものと思しき猛々しく巨大な遠吠えが上がった。

    ●そして別れ
     トンネル内に反響し大気を震わせる遠吠えは、けれどどこか哀切を帯びているように、歌音には感じられた。
    (「慈眼城攻略組が、それだけ多くのスサノオを撃破したってことかな」)
     そしてその遠吠えに、ナミダ姫の視線がトンネルの天井に向けられる。
    「……どうやら、儀式は無事完了したようじゃ。ならば、儂等も最早ここにこれ以上留まる理由もない。疾く去るとしよう」
     ナミダ姫が、交渉はここまでというように、そう宣言した。それから、付け加えるように、
    「儂は汝等を敵に回したいとは考えておらぬ。願わくば、汝等もまた同じ思いであるとよいのだが」
     そう告げると、身に纏ったヴェールをはためかせながら身を翻す。
    「待ってくれ! まだ話は……」
     終わっていないと言おうとする友衛の方を振り返ることもなく、トンネルの出口へと向かうナミダ姫。その後に、ギンロウを始めとした他のスサノオ達も、続いていった。
     ナミダ姫とスサノオ達が去った天王山トンネルに残されたものは、ただ静寂のみだった。
    「……あのさ、ちょっと気になったんだけど」
     その静寂を破るように、薫がぽつりと呟く。
    「どうしてナミダ姫は、ガイオウガの尻尾のこと知ってたんだろうな」
     その薫の疑問は、明も気になっていたものだった。
    「ナミダ姫は複数のダークネス組織と友好関係を結んでいる。そのいずれかから、情報が流れたと考えるのが自然か」
    「だとしたら、灼滅者とスサノオの切り離しを狙うどっかの組織が、悪意を持ってその情報を流した可能性もあるってことっすよね」
     ハリマのその予想は、的を得ているように思われた。
    「……それでも俺は、この交渉から繋がる先を目指したい」
     ラススヴィのその言葉は、その場にいた灼滅者達の思いの代弁でもあった。

    作者:J九郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年8月1日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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