忍法全裸の術!

    作者:空白革命

    「みんな聞いて! 人を全裸に剥こうとする忍者がいるんだよ!」
     ティセ・パルミエ(猫のリグレット・d01014)が叫びながら教室の扉をガラッた。
     このあっつい時期にお友達がこんなことを言い始めたら、きっと冷房代をけちって熱中症になっちゃったんだろうなあと麦茶でもいれてあげるところだが……。
     ティセは両腕を(ついでにみみとしっぽを)ぐるんぐるんやって視線に抵抗した。
    「ほんとなの! 女の子の服をはいでひたすら薄着にしていく忍者がいたらいーのにーっていう小学生間の都市伝説がサイキックエナジーで実体化した存在がちまたを暴走しているって証拠を掴んだの! 素早い動きでどんどん薄着にしていくの! このままじゃお盆を前にみんな裸族になっちゃうよ!」
     裸族にはならないとおもうが、確かにそんなヤツがいたら大変である。
    「直接見たのは一瞬だったけど、薄着にされた人が寒がった感じが無いからそういう幻覚を見せられてるだけかもしれないよ。けど、そうだとしたら余計に厄介だよね、どんなに防御しても完璧に剥かれちゃうんだから! ブロック崩しゲームみたいに!」
     あのね、女の子の衣服にボールを当ててブロック状に崩して全裸に剥いていくっていうゲームが昔あってね。
    「いそいでみんな! 場所は分かってるから! いますぐいこう!」
     ティセはぐるんぐるんした腕をビッと止め、親指で『行こうぜ』のジェスチャーをした。
    「夏のファッションは、あたしたちが守るよ!」


    参加者
    ティセ・パルミエ(猫のリグレット・d01014)
    黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)
    天原・京香(銃声を奏でる少女・d24476)
    イサ・フィンブルヴェト(アイスドールナイト・d27082)
    一条・京(爽涼雅遊・d27844)
    立花・環(グリーンティアーズ・d34526)
    月影・木乃葉(深窓の令嬢・d34599)
    シャオ・フィルナート(猫系おとこのこ・d36107)

    ■リプレイ

    ●世情? なにそれエロい単語かなにか?
    「皆、見て……」
     今、世界は動乱している。
     生き残りを賭けて動乱するダークネス勢力たち。
     次々と起こる世界崩壊級の危機。
     その渦中にいる武蔵坂学園の灼滅者たちは今――!
     フンドシ一丁の忍者たちのワッショイダンスを眺めていた――!
    「いたんだよ! 忍者はほんとにいたんだよ! あたしがおかしかったんじゃないよー!」
     両手両足両猫耳をばたばたやって振り返るティセ・パルミエ(猫のリグレット・d01014)。
     チューチューのトレインするフンドシ野郎たちを忍者と呼んでいいのかちょっとわからないが、月影・木乃葉(深窓の令嬢・d34599)とシャオ・フィルナート(猫系おとこのこ・d36107)は世界一優しい顔で頭をぽんぽんやった。
    「ウタガッテナイヨ……ダイジョウブ……」
    「ヒドイニンジャガイタンデスネ……カワイソウニ……」
    「この期に及んで現実を見てない目をしてる!」
     イケメンにしか許されない絶技までつかっておいて!
    「女性の服を無理に脱がすなんて酷い話ですよ。身を挺して守ってあげないと、ね? シャオ先輩」
     肘でシャオの脇腹を小突く木乃葉。
     同じく小突き返すシャオ。
    「そうだよ。でもちょっと、試してもらえるかな。ね? 木乃葉さん」
     お互いを前に突き出そうとプルプルしはじめる二人。
     そんな二人をよそに、天原・京香(銃声を奏でる少女・d24476)は深すぎるため息をついた。
    「私、本当になにやってるのかしら。黄金闘技場問題でピリピリしてる中に割り込んで大切な人をどうのこうのって話題に混ざってる筈だったのに」
    「京香さん」
     ぽんと、肩を叩く黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)。
    「あなたにはそのシリアス、無理ですよ」
    「無理じゃ無いわよ! じっ、実績だってあるんだから! みなさいよこのマークスマンライフル、ガチの兵装じゃないの!」
    「せっくすまん? ああ黒揚羽制式みたいなやつですよね」
    「意図的に聞き間違えてんじゃないわよ!」
     うあ゛ーとかいいながら璃羽の肩をゆする京香。
     そんな京香の肩を両サイドからぽんと叩くイサ・フィンブルヴェト(アイスドールナイト・d27082)と一条・京(爽涼雅遊・d27844)。
    「心配するな、京香。私はちゃんと分かってる」
    「イサさん……」
    「長い付き合いじゃない。京香さんはちょっと誤解されやすいだけなのよね」
    「一条さん……」
     同時にこっくりと頷くイサと京。
    「脇の甘い女子を見つけると即座に黒ギャルの合わせピンをつくってやるほど仲間思いの女じゃあないか」
    「えっちな目に合う依頼には真っ先に飛び込んで友達を守ってくれる頼もしい人だもんね」
    「あ~、堀が埋められていく~」
    「いやあ、盛り上がって参りましたなあけっこうけっこう」
     立花・環(グリーンティアーズ・d34526)が変な口調でスライドインしてきた。
     いまさら逃げ恋ダンスをキレッキレに踊る忍者たちを親指で示すと。
    「まだ導入パートだからって待っててくれるみたいなんで、皆さん今のうちに言っておきたいことありますか」
    「はいっ!」
     手をぴーんとあげる京。
    「湯気とか光がブルーレイだと消えるのは、作画スタッフがテンションを上げすぎたのを後から真面目な人が修正した結果だって噂話はしてもいい!?」
    「しなくていいです」
    「じゃあ私から」
     顔の高さに手を上げるイサ。
    「帰りたいんだが」
    「だめです」
    「私もひとつ」
     ちょいっと指を立てる璃羽。
    「脱衣ブロック崩しはシステム周りが簡略化されて今では簡単にフリーゲーム化してるって話していいですか」
    「しなくていいです」
    「「…………」」
     木乃葉とシャオにちらりと視線を向けたが、二人は両手を翳して首を横に振った。
    「じゃあ……」
     と言ってティセに視線を向けると、ティセはいつものネコっぽいポーズでウィンクした。
    「木乃葉くん、シャオくん、頼りにしてるね!」
     両手を翳したまま首を振るに触れずぷるぷるし始める二人。
    「じゃ、一通りやったところで京香さん。いつものやっちゃってくださいよ。一斉攻撃で『やったか!?』してからの即座に犠牲になるやつ」
    「いつもやってないわよ!」
     グロック拳銃をビッと立てると、京香はヤケんなったように忍者たちに向けた。
     ハッとして戦闘態勢(両手の二本指を立ててニンニン連結させるやつ)に入る忍者たち。
    「さっさとぶちのめしてただの純戦依頼にしてやるんだから!」
    「またフラグみたいなことを」

    ●戦闘する依頼だってことを主張するためのパート
     銃をひたすら乱射する京香。
     美しい妖冷弾を美しく放つイサ。
     錫杖と僧服を纏って結界を叩き付ける木乃葉。
     猫耳フードパーカーを被ってオーラキックを繰り出すシャオ。
     すあまちゃんを掲げてじょれーけっかーいと唱えるティセ。
     忍者のフンドシを掴んでひんむこうとする璃羽。
     ウクレレで弾き語りを始める環。
    「まって途中から戦闘パートじゃない!」
    「ばかな、こんな真面目にリバイブをメロディしているのに」
     眼鏡をきりっとやる環。
    「うかうかしてたら全員はらっと剥かれるわよ! それでもいいの!?」
    「だ、大丈夫よ京香さんっ!」
     京がガッツポーズで言った。
    「『服破り』だって服が破れないだから、忍者に脱がされるなんてデマよ!」
     京の頭上に何かが立った。
    「ほら、着物の帯だってしっかり締めてるんだから。これを引っ張られない限り脱げないわ!」
     二本目が立った。
    「それに下には水着だって着てるんだから。さ、早く倒してプールで遊んだりしましょ」
     三本立った。スリーアウトである。
    「「忍法脱衣の術!」」
    「あーれー!」
     京が帯を引かれて高速スピンした。

    ●これがシャ○トアニメだったら一番力がはいるパート
     はらり、と着物が肩を滑って落ちていく。肩紐が外れて落ちそうになった水着を押さえて、乙女座りした京は顔を背けた。
    「み、みないで……」
     なんかうまい具合に煙であちこち隠れたが、刺激が強いからか木乃葉とシャオは手で顔を覆っていた。
    「あう、その……服、きてください」
     どっからかワイシャツを取り出す木乃葉に、璃羽と環が『ほう、マニアックな』とか言ったがそれはおいておいて……。
    「慌てるな。これはただの幻影だ。実際には元の和服の上にワイシャツが被るだけで、見た目はこのままだ」
    「そ、そうなんですか?」
     ティセは視線を向けられて、かくんと首を傾げた。
    「え? うん、さっき幻影だと思うって言ったはずだけど……あっ」
    「はい」
    「男の子も狙われるの、言い忘れてた☆」
     コツンとテヘペロの合わせ技みたいなのをするティセ。
     一瞬にして真顔になる木乃葉とシャオ。
     すっと振り返ると……。
    「「忍法脱衣の術!」」
    「「わーっ!」」

     武蔵坂学園の灼滅者たちはダークネスに支配された世界のなかで幾度となく戦い、決して抗うことができないとされてきたダークネスを脅かす存在となった。
     彼らが真に恐れたのは灼滅者の力ではない。
     そう、絆の力だ。
     彼らが力をあわせ、互いを思いやり、守り合い、時として闇に呑まれそうになっても必死に手を伸ばしつなぎ止めてきた力があったからだ。
     そんな灼滅者たちが今……!
    「こっちこないでください! 犠牲はシャオさんだけで充分ですー!」
    「わーっ!」
     木乃葉に羽交い締めにされたシャオが珍しく叫びながら両手両足をばたばたさせた。
    「木乃葉さんっ、木乃葉さっ――えいっ!」
     勢いをつけて木乃葉を背負い投げ、倒れたところに関節技をかけて盾にするシャオ。
    「木乃葉さんは、強い子だから……大丈夫だよね」
    「わーっ!」
    「なあにこの元気なシャオくん。初めて見た」
    「なんですかその冷静な対応! たすけてー!」
     チューチューからのトレイン的な動きで迫ってくる忍者たち。
     かくして二人は……!

    「…………」
     死んだ目で横になったニホンオオカミがいた。
    「木乃葉さん、ずるい……っ」
     一方のシャオは、乙女座りをして裸の上にワイシャツ一枚になっていた。
     あと、ティセに負けないくらい胸があった。
     口を押さえるティセ。
    「そんな、シャオくん……女の子だったの……!?」
    「ち、ちがうよぉっ! ぴゃうぅ……」
     顔を真っ赤にして両手で胸元を押さえるシャオを見て、そっかあ男の子だもんねとは言えない一同であった。
     あったが……ティセはハッとして振り返った。
    「大変! このパターンだと次はあたしが……!」
     振り返ると。
     服を剥かれて(幻影)ハモでギリギリ隠した環が仁王立ちしていた。
     左右で膝を突いてパチパチ拍手する忍者たち。
    「というわけで現場からハイパーリンガル立花さんがお送りします。チャンネルはそのまま」
    「言ってる場合じゃ無い!」
    「おーっと忍者たちの注意がティセさんにむいたぞー」
    「実況するテイでこっちになすりつけるつもりだ、逃げろ!」
    「みゃーん!」
     イセの注意も時既に遅し。ティセはスカートをひっぺがされて(幻影)涙目になった。
    「も、もう脱がされないんだからあっ!」
     からのもう一枚。
    「や、やめてー!」
     背を向け、お尻を広げた手のひらで隠しつつ胸元を腕で隠しやーんみたいな顔をするティセの一枚絵をご想像いただきたい。
    「へへっ、PTAが女性の権利がどうとかいって噛みついてきそうな絵だぜ……」
    「環さん余裕ですね……」
    「もうっ、さっさとやっつけないから被害甚大じゃないの!」
     マガジンを交換すると、京香は忍者の額をパーンした。
    「悪いけど、私もいい加減学習してんのよ。うまく立ち回れば例の忍法の餌食になることもないってね……!」
    「京香さん」
     ぬるっと背後から京が現われた。
     背筋を伸ばす京香。
     ハイライトの完全に消えた目をして、京がひたりと京香を取り押さえた。
    「ねえ、一緒になろう。一人だけ服を着てるなんて……着てるなんて……おかしいよ!」
    「まってまって一条さんのは幻影! 物理的に脱がせたらもともこも……!」
    「こんなにえっちな身体して! こうしてあげる!」
     ぎゃーとにゃーの中間くらいの悲鳴をあげる京香。

     で。
     今日一番酷い目にあった人の絵図が生まれた。
     ぺたんと座り込み、両手で顔を覆ってふるえる京香。
     はぎ取った上着を掴んで熱い息を漏らす京。
    「これは困ったことになりましたね」
    「仕方ない。後片付けは私たちでやるか」
     璃羽とイサはキッと表情をシリアスにすると忍者たちに向き直った。
     っていうかもう剥かれていた(幻影)。
     槍でうまい具合に重要な箇所を隠すイサ。
     指で重要な箇所を隠す璃羽(エイティーン)。
     ――を二度見するイサ。
    「きさまいつのまに成長した!」
    「視聴者のニーズに応えようと思いまして」
     とか言いながら白いフリルのエプロンを着込む璃羽。
    「知ってますか、昔深夜番組にこういう」
    「おっと話している場合ではなさそうだ!」
     それまで脱がすか踊るかしかしてなかった忍者たちが思い出したかのように襲いかかってきた。具体的にはシャーとかいいながらがに股で飛びかかってきた。
    「見せてやろう。服など無くても戦えるということをな!」
     イサは目を光らせると、槍でうまいこと隠しながらなんかうまいこと作画されたうまいアニメみたいに忍者を次から次へとたたき落としていった。この手のアニメ技術が現代にも受け継がれてるってほんといいことですよね。
     最後はサ○ライズ立ちでキメるイサ。しめやかに爆発四散する忍者たち。
    「フッ……」
     イサは髪を払うと、今日一番のいい顔で振り返った。
    「服程度で私の意志まで透かせるとは思わないことだ」

     の、三分後。

    「くっ、殺せ……!」
     京香と一緒になって縄にこんがらがったイサがそこにはいた。
     あと京香の目は死んでいた。
    「なんで私ばっかりこんなめに」
    「仕方ありませんね。では戦闘モードということで」
     璃羽はくるんと一回転するとJKモードにチェンジした。っていうかエイティーンを解いた。
     二年でここまで変わるってどういうことなのというチェンジである。
     さておき。
     シャーシャーいいながら取り囲む忍者たちに、璃羽は髪をふぁさぁってやってから視線を送った。
    「忍者さん、ひとつだけ言っておきましょう」
    「シャ!?(鳴き声)」
    「このエプロンを、透かしてしまって本当にいいんですか?」
     忍者たちにビシャーンという衝撃が走った。
     持っていた武器(あったんだ……)を取り落とす忍者たちに、璃羽は悲しげに言った。
    「脱がせばいいというものでは、ないですよね」
     立てた二本指をピッと振ると、一瞬にしてフンドシを切り落とされた忍者たちがしめやかに爆発四散した。
     背を向ける璃羽。
    「またつまらぬものを剥いてしまった」

     ――かくして!
     恐ろしき都市伝説『忍法脱衣の術』は灼滅された!
     幻術によって脱がされたように見えていた灼滅者たちも元通りになり、町には再び平和が戻ったのである。
     京に剥かれた京香以外は。
    「また私がオチかああああああああああああ!」

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年8月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 6
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