カードデュエリストVSゴールドギタリスト~前編

    作者:空白革命

    ●手加減無し、捨て譜無し、全力全開……!
     ここはとあるショッピングモールのイベント会場。
     老若男女家族連れが集まる中に、突如として黄金の円盤が降ってきた。
     天井を突き破って落ちたそれはステージを粉砕し、周囲の人々を驚愕に包み込む。
     否、包み込んだのは熱狂である。
    「ようやくモノにしたぜ、俺だけのビート」
     革ジャンの男が、新設ステージへと着地する。
     手にはギター。黄金のフライングV。
     ナイフで乱暴に『ジョニー』と刻み込まれている。
    「なら、本気のデッキで迎え撃つぜ!」
     腕にカードゲーム専用のガントレットグローブを装着した少年が続いてステージに着地した。
     グローブにはしっかりと『堂道挑武』と名前が書かれている。
     両者、共にアンブレイカブル。
     住む世界もジャンルも全く異なる二人が向かい合うこの状況で、周囲の一般人たちは無意識に熱狂しはじめた。
     まるでプロレスリングを囲む観客のように、それぞれのアンブレイカブルを応援しはじめたのだ。
    「ライブ!」
    「デュエル!」
     ジャブも何もない。
    「俺のターン――アイアンソルジャーをセット、ダイレクトアタック!」
     強烈な力をもった護符揃えを展開。護符から放たれたエネルギー体がジョニーを襲う。
    「こっちも一曲目からクライマックスだ、ゴールドラッシュ!」
     会場中に激しいギターソングが鳴り響き、ジョニーは黄金に輝くギターでもってエネルギー体を殴りつける。

     戦いは激化に激化を重ね、そして、勝利したのはジョニーの方だった。
    「サンキュー、いいライブだったぜ」
     ギターピックを投げると、ジョニーは堂道挑武を吸収、強大化した。

    ●乱入者、登場!
    「皆、アンブレイカブル勢力が新たな事件を起こしたようだ。要するに、ストリートファイトだ!」
     所変わって武蔵坂学園。大爆寺・ニトロ(大学生エクスブレイン・dn0028)は教卓の上に立って叫んだ。
     なんでも、六六六人衆との同盟を蹴った結果、同盟関係にあるアンブレイカブルが動き始めたということらしい。
    「一般人の多く居る場所に『黄金の円環リング』を出現させて、二体のアンブレイカブルを叩かせるというものらしい」
     円環リングというのは、円環の形をしたプロレスリングのことである。
     ここで戦うことで勝利者は歯医者の力を吸収、強大化するということだ。
     だがそれに留まらず、力を定着させるために勝者は暴走し、周囲の一般人を皆殺しにしてしまうというのだ。
     『強くなれればそれでいい』のアンブレイカブルにしてはかなり凶悪な儀式だが、だからこその修羅道とも言える。
    「周囲の一般人はリングの力で熱狂的観戦者になっていいて手が出せないようだ」
     ESPは勿論、物理的な方法でも遠ざけられない。いわば観戦者とリングが一体化したようなものだ。
    「だからアンブレイカブルのどちらかを倒しただけじゃカタがつかないんだ。『結果的な勝者』として残った側が儀式を遂行しちまうしな。けどここはなんつーか、アンブレイカブルらしいっつーか……」
     ニトロは拳をぎゅっと握った。
    「俺たちが乱入した場合、あいつらはタッグチームとなって俺たちと正面からぶつかってくれる! 勿論、観衆に手を出すなんてことは一切ない!」
     乱入するタイミングはニトロが『戦闘前』『戦闘中』『決着直前』の三種類の突入パターンを用意してくれるそうなので、その中から選ぼう。
    「しかしここからが問題っつーか、トドメをさした灼滅者は儀式の効果によってアンブレイカブルの力をフルで吸収することになる。勿論、そんなエネルギーを灼滅者が持ちきれないから、強制的に闇堕ち状態になっちまうんだ」
     その後どうなるかは、儀式の仕様を考えれば明らかである。
     ゆえにこちらも撤退することなく、闇堕ちした仲間との第二ラウンドへ突入するのだ。
     ゆえにこちらも撤退することなく、闇堕ちした仲間との第二ラウンドへ突入するのだ。
     といっても、今回『受け持つ』のは2体のアンブレイカブルとのバトルだけだ。その後のことは、その後に受け持つことになるだろう。闇堕ちする仲間によって戦略も変わるし、駆けつけた援軍によってメンバーも変わる。撤退はしないが、仕切り直しにはなるのだ。
    「つーわけでまずは今回のアンブレイカブルだ。なかなかの強敵だが、俺たちが力をあわせればギリギリ勝てなくも無い……くらいの相手だ。逆に言やぁ、全力の更に上の全力を出してバトれるってわけだ」
     一度咳払いで区切ってから、ニトロは締めくくった。
    「厄介な儀式だが、俺たちなら一般人を誰も殺さずに乗り越えられる。俺はそう、信じてるぜ!」


    参加者
    皇・銀静(陰月・d03673)
    小谷・リン(小さな凶星・d04621)
    リリアナ・エイジスタ(オーロラカーテン・d07305)
    朝倉・くしな(初代鬼っ娘魔法少女プアオーガ・d10889)
    リアナ・ディミニ(絶縁のアリア・d18549)
    蔵座・国臣(殲術病院出身純灼滅者・d31009)
    平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)
    苔石・京一(こけし的な紳士・d32312)

    ■リプレイ

    ●乱入者、エントリー!
     ショッピングモールに突如として出現した黄金のリング。
     アンブレイカブルの決闘が始まろうとした――。
    「ライブ!」
    「デュエル!」
     その時!
    「その勝負、待った!」
     高所から宙返りをかけて飛び降りてきたリリアナ・エイジスタ(オーロラカーテン・d07305)が、二人の間に力強く着地した。
    「リングと観客を虐殺の儀式に使うなんて、レスラーとして許せない。その決闘、止めさせてもらうよ!」
    「なんだと、レスラー?」
     ジョニーがぴくりと眉を動かし、堂道挑武はカードデッキに添えていた手を一度離した。
    「そうか、お前もプライドと魂のあるデュエリスト。なら、尊重しないわけにはいかないな」
    「ああ……だが俺もギタリストだ。ライブが終わるまで、上がったステージから下りるなんてありえねえ。てめぇはどうだデュエリスト」
    「始めたデュエルをサレンダーするだと? あり得んな」
    「なら、かんたん」
     すたん、と着地した小谷・リン(小さな凶星・d04621)が影業の中から黒いナイフを引き抜いた。
    「わたし、きるしか、できない。きる、する、とても、楽しい」
    「そうだな……楽しまなきゃデュエルじゃない。決めるか、これで」
    「話が早くて助かりますね」
     観客の中から現われた朝倉・くしな(初代鬼っ娘魔法少女プアオーガ・d10889)が、リングへと軽やかに飛び乗ってきた。
    「一人の武闘家としては決闘に興味はありますが、今回は事情が違うもので」
     同じく観客席から飛び乗り、戦闘フォームへとチェンジする苔石・京一(こけし的な紳士・d32312)。
     そんな中、挑武はハッとして振り返った。
     スレイヤーカードを翳し、ゆっくりと歩いてくる皇・銀静(陰月・d03673)。
    「カードが俺たちを巡り合わせた、か」
    「感謝しなくてはなりませんね。あなたはきっと強くなった。僕もまた、強くなった。だから今度は……」
     どるん、というエンジン音と共に観客を割って現われる二人のライダー。
     ライドキャリバーをジャンプさせ、ステージの上で停止すると、蔵座・国臣(殲術病院出身純灼滅者・d31009)と平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)はそれぞれフルフェイスヘルメットの奥からぎらりと目を光らせる。
    「しかし緊迫した空気だな。私はどうするべきか。デュエルか、ライブか」
    「どちらもしなくていい。強いて言うならサイキックバトルだ」
    「……そうか」
     ヘルメットのまま顔を見合わせる二人。
    「話はまとまったみたいですね」
     ぴょんとステージに飛び乗り、格闘の構えをとるリアナ・ディミニ(絶縁のアリア・d18549)。
     そんな彼らを見て、ジョニーはこきりと首を鳴らした。
    「いいのかよ。俺らを倒せば灼滅者じゃいられなくなるぜ。俺はそれでもいいけどよ」
    「分かっていますよ。皆、その覚悟です。本当にどうかしていますよ、私も含めて」
     さあと手を翳し、小さく手招きをした。
    「喧嘩、しましょうか」

    ●『孤高のカードデュエリスト』堂道・挑武
    「嘶け、鉄征!」
    「ヒトマル、アクセル全開!」
     激しいエンジン音が会場を埋め尽くすその寸前、ジョニーはギターを一発かき鳴らした。
     音が波となり、波が力となり、一拍の間を置いたあと、会場の空気そのものが爆発した。
    「ぐう……っ!」
     吹き飛ばされまいとこらえるヒトマル。その上で、和守は咄嗟に救急セットを収納ボックスから取り出した。
    「彼を押さえつけるんだ、リアナ!」
    「任されました。そちらは楽しましたよ」
     和守の救急セットがひとりでに開き、力を持った包帯がリアナの腕や足に巻き付いていく。
     防御を強化されたリアナはその勢いのままジョニーに突撃。
     腕を一瞬獣化すると、エネルギーの尾を引いて殴りかかった。
     咄嗟にギターを盾にして防御するジョニー。
     ちらりと見ると、国臣たちがこぞって挑武へ攻撃を仕掛けている。
    「デュエリストに戦力を割いて、俺をタイマンで引き受けようってか」
    「…………」
     拮抗する力が火花となってあふれ、リアナとジョニーの顔を照らしていく。
     こうして攻撃を仕掛けたからといって、リアナを完全に無視して挑武との協力攻撃で一人ずつ潰されたら意味が無くなってしまう。そもそも抑え役が抑え役として機能するような状況ではないのだ。
     だが、しかし。
    「いいぜ、暫くイチャつこう。だから壊れんなよ!」
     強烈な膝蹴り。リアナの腹に直撃し、衝撃だけが内臓を抜けて服の背中を爆ぜさせた。
     直後にリアナの襟首を掴んで軽く投げると、ギターのフルスイングを叩き込んだ。

     高速回転したリアナが真横を水平に飛んでいく。
     国臣は歯を食いしばると、挑武めがけてライドキャリバーのアクセルをひねった。
    「ライディングデュエルか。来い!」
    「応!」
     国臣は無骨なランスを生み出すと、騎士突撃の構えで挑武へと突っ込んだ。
    「俺のターン――ゴールドガーディアンを守備表示!」
     挑武がカードを突き出すと、巨大なエネルギー体が国臣と正面衝突する。まるでトラック事故のような激しい音の中、くしなが素早く割り込んだ。
    「強さを求めたガチデッキはあくまで勝率が高いデッキ。ゆえにあなたの動きも読まれやすく、超える存在が出る例えば……」
    「対抗カードです」
     京一が放った突きがエネルギー体を破壊。メディックのブレイク効果が発動したのだ。
    「もっと経験を積むべきですね」
    「百も承知だ。ダブルアタック!」
     ピッと扇状に広げた二枚目のカードが輝き、京一に巨大なエネルギー体の剣が突き刺さった。
    「デュエルは負けることがあるから面白いんだ。対策に対策を重ねて強さを磨く。お前らがそうして強くなったようにな! そしてだから俺は、ハンデデッキを組む必要もなくなった! 『アイアンソルジャー』!」
    「――そこ」
     瞬間的に異形化した拳を、くしなは挑武の顔面に叩き込んだ。と同時にエネルギー体の剣がくしなに叩き込まれ、足場が丸ごと粉砕された。
     吹き上がるがれきの間を抜けリリアナのラリアットが挑武へ直撃。
     くしなのパンチと威力が合わさり、挑武は激しくその場で後方回転した。
     ハサミを手に取るリリアナ。槍を手に取るくしな。
     二人の得物が同時に突き刺さり、挑武から鮮血が吹き上がった。
    「きる、する」
     恐ろしいスピードで距離をつめるリン。挑武の背後に現われた氷山・凪継とタイミングを合わせ、影業のナイフで同時に切りつけた。
     無論、一度の斬撃では終わらない。
     リンはその場で高速回転するとダイダロスベルトを刃のように展開。連続斬りを繰り出す凪継と共に挑武を激しく切りつけ続けていく。
    「これ以上は――『ガーゴイルドラゴン!』」
     突きだした挑武のカードが輝き、巨大なドラゴンの幻影がリンと凪継を吹き飛ばした。
    「僕のターン、魔剣デュランダル!」
     その隙を狙って飛び込む銀静。カードから生み出した魔剣を直接叩き込んだ。
    「俺のターン、『サンダードラゴン!』」
     雷を纏ったカードが放たれ、幻影が銀静の腕を吹き飛ばしていく。
    「まだだ――玄武門、白虎門、青龍門、朱雀門!」
     カードをくわえ、エネルギーを限界まで高める銀静。
     魔槍や魔鎧がそれぞれ突撃形態をとり、挑武を貫いていく。
     口を開き、薄く笑った。
    「僕はあなたを尊敬している。あなたに挑めることこ、栄誉、歓喜! あなたの最後は僕が貰う! 四門開門……!」
     膨大なエネルギーによって巨大化した剣が生まれ、挑武へと叩き込まれる。
     ショッピングモールのステージ裏を破壊し、柱を破壊し、大量の椅子やテーブルを吹き飛ばしていく。
     そして。
    「俺は……デュエルした相手を忘れない」
     挑武はゆらりと立ち上がり、片目を開いた。
    「思った通り、お前は最高のデュエリストになったみたいだな」
     次の瞬間。
     挑武の腹から槍のように尖ったダイダロスベルトがはえた。
     背後からぬらりと現われるリン。
     光の無い目を銀静に向けた。
    「すき、ついて、きる、した。……ごめん」

    ●『無名のギタリスト』ジョニー
     壁にめりこみ、ぐったりとするリアナ。
    「う……」
     薄れ行く意識をむりやり引き起こそうとしたところで、ジョニーがリアナの襟首を掴んで引っ張り上げた。
    「まだ倒れるな。お前は、お前らは、こんなもんじゃ無いはずだ。穴蔵でひねくれていた俺に光をくれたお前らは、ギラギラ輝く太陽みてえなお前らは、もっとやれる筈だろう」
    「どう……ぜんっ」
     力強くジョニーの腕を掴むと、リアナはダイダロスベルトを高速展開。彼の腕に巻き付け、続けてウロボロスブレイドがジョニーの胸を貫いた。
     攻撃のため、ではない。逃がさないためだ。
     目を見開き、魂の炎を燃え上がらせるリアナ。
    「寝てなんか、居られませんよ!」
     ジョニーの顔面を殴りつけるリアナ。
     それをよけることなく、ジョニーはリアナの顔面を殴りつけた。
     一発ではもちろんない。何発も何十発も何百発にも思える乱打が交差し、互いをめちゃくちゃに破壊しあっていく。
     そして先に倒れたのは、リアナの方だった。
     意識を失い、その場に崩れ落ちるリアナ。
     挑武がリンにトドメをさされたのは、まさにそんなタイミングだった。

    「………………」
     京一は冷静に状況を分析していた。
     あまりに高い破壊力を持つ二人のアンブレイカブルとの勝負に、今勝機らしき勝機が見えてきた。
     リアナによる抑えは(ジョニーの気分によって)充分に機能し、彼女が倒れる段階で挑武を灼滅することができた。
     彼のエネルギーが強制的に流れ込み、リンは頭を抱えて震えていた。自我を保とうと努力しているのかもしれないが、まるで蛇に喰われるかの如く意識が閉じ込められていくのが見ているだけでも分かった。
    「自主的な闇堕ちとは勝手が違う……というわけですか。分かってはいましたが。これで、こちらは六人ですね」
    「……はい」
     銀静は、挑武から流れてきた魂の核ともいうべきカードを手にとって懐にしまった。まだ使うべき時では無いからだ。
    「仕上げです。やりましょう」
     彼らは一斉にジョニーへと身構えた。
     対するジョニーは、黄金のフライングVを構えてギラリと笑った。
    「ラストステージだ。楽しもうぜ」
     激しいギターテクニックで奏でられた音楽が大量の刃となって京一へ襲いかかる。
     咄嗟に自らにドーピングニトロを打ち込む京一。
    「まずい、鉄征!」
     国臣はライドキャリバーと自分をまるごと間に割り込むと、防御姿勢で音楽の刃を受け止める。
     硬い甲冑を貫いて身体に刺さっていく刃。
     想像以上の衝撃に歯を食いしばっていると、眼前にジョニーが接近していた。
    「ゴールドラッシュ!」
     黄金の輝きと共に叩き込まれるギター。
     国臣は思い切り吹き飛ばされ、ショッピングモールの吹き抜けを超えて二階の手すりをも貫通。ファッションショップに突っ込んで転がった。
    「ハッ!」
     気合い一発。砕けた柱の上から跳躍したリリアナは、自らに降ろした力でもって風の刃を生み、フェニックスの飛翔のごとく両腕を広げて回転した。
     直撃を受けるジョニー。
     と言うより、避けるつもりがなかったようだ。
     立ち上がったリリアナに、彼女より素早く立ち上がったジョニーがドロップキック。思い切り撥ね飛ばされたリリアナは背後のよくわからない像を破壊しながら転がった。
    「まだまだ! レスラーはタフネスが命!」
     ドラゴンの構えをとって立ち上がるリリアナ。京一が察してラビリンスアーマーの援護を放ち、銀静もまたレイザースラストの援護射撃を始めた。
     突撃するリリアナ。
     一発で常人を粉砕するようなパワーを拳に溜める。
     対するジョニーもギターを背に担ぎ、パンチの姿勢で突っ込んでくる。
    「「――!!」」
     拳、交差。
     爆発とも思えるような衝撃が走り、吹き飛んだリリアナが壁にめり込んで気を失っていた。
    「まずいですね。こちらのダメージがかさみすぎましたか……」
     京一は継続して冷静に戦況を分析していく。
     リアナが倒され、国臣とリリアナも倒されリンも戦闘不能となった今、速攻でケリをつけなければ危険だ。
    「回復に集中します。なんとか粘ってください」
    「いいえ、僕はここまでです。あとは……」
     銀静はスレイヤーカードを翳し、片手に剣を握り込んだ。
     身体は挑武との激しいぶつかり合いで限界に達しつつある。
     ならば。
    「差し違えるのみ」
     突撃してくるジョニーと、銀静の剣が激突。
     衝撃が爆発となり、銀静が吹き飛んでいく。
     その一方でジョニーの腕がへし折れ、ぶらりと垂れ下がっていた。
    「やるじゃねえか、だがもっとだ! これじゃあライブは終われねえ!」
     目を見開き突っ込んでくるジョニー。
     前衛陣を抜かれた。こうなれば作戦は一つ。
     『やられるまえにやれ』だ。
     くしなが槍を投擲。続けて異形化した拳をジョニーの顔面へ叩き込む。
     常人なら首から上が吹き飛んでいるような衝撃だが、ジョニーは気合いで耐えるとギターを叩き込む。
     高速回転して跳ね飛んでいくくしな。崩れかけた柱を粉砕し、バウンドしながらショッピングモールを転がっていく。
    「ヒトマル、覚悟をきめろ」
     和守はライドキャリバーに跨がると、操作盤を開いて三つのスイッチをそれぞれ押し込んだ。
    「フルオープンアタック!」
     サブマシンガンが、アサルトライフルが、アンチマテリアルライフルが、マルチミサイルランチャーが次々と展開。和守の放ったあらゆる砲撃がジョニーへ幾度も叩き込まれ、衝撃で三度バック。
     最後に打ち込まれた弾がジョニーに直撃し、大爆発を起こした。
    「……」
     沈黙する和守。そのゴーグルに爆発の炎だけが映っている。
     否、灼滅されたジョニーのエネルギーが和守の中へと入り込み、闇の色へと染まっていった。
    「後は……頼む……!」
     身体を起こし、その状況に息を呑む灼滅者たち。
     京一だけは硬く拳を握りしめ、次の戦いに備えた。
    「深いダメージを受けた皆さんの身体は連戦には耐えられません。すぐに援軍が駆けつけます。後は私と、援軍の皆さんに任せて撤退してください!」

     次なる戦いが始まろうとしている。
     灼滅ではない。
     救出のための、戦いが。

     ――後編に続く。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:小谷・リン(小さな凶星・d04621) 平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867) 
    種類:
    公開:2017年8月8日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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