●拳闘の狂宴
札幌市の中心にある大通公園は、今時期、かなりの区画を使ってビアガーデンをやっている。仕事あがりにやってくる勤め人、昼から歓声をあげる主婦たちの夏の楽しみだ。
その上空へ飛来した黄金の円盤を、何人が視認しただろう。
次の瞬間、円盤は大通公園と直角に交わる駅前通りに墜落した。辺りから悲鳴や驚きの声があがる。
いつの間にか駅前通りには、黄金に輝く丸いリングが姿を現していた。まるで古代の遺跡のような円形リングの両端には1人ずつ男が立っている。互いに不敵な笑みを浮かべて距離が詰まっていくのへ、辺りの人々が吸い寄せられるように近付いていった。
二人の男が激突した。
拳を交え、身体をぶつけあう様は格闘技の試合のよう。
集まった人々から熱狂的な声があがる。目の前の戦いに魅せられ、人々は異常な事態にも関わらず逃げることもせず両者を力の限り応援し続ける。
やがて決着の時はきた。
一歩及ばなかった細身の男が、巨漢の男の拳撃を受けて膝をつく。
熱に浮かされたような万雷の歓声の中、倒れた細身の男が刎ねられた。闘技場に渦巻く力が巨漢の男へ吸収され、咆哮が響きわたる――。
●新たな危機
難しい顔をして現れた埜楼・玄乃(高校生エクスブレイン・dn0167)は、揃った灼滅者たちを前に一礼して説明を始めた。
「落ちつかない知らせばかりで申し訳ない。今度はアンブレイカブルが新たな事件を起こそうとしている。学園が六六六人衆との同盟を拒否したためのようだな」
資料によれば、事件は多くの一般人がいる場所に『黄金のリング』を出現させ、2体のアンブレイカブルを戦わせて勝者に敗者の力を吸収させるというもの。
「周囲の一般人は黄金のリングの魔力に囚われる。試合に声援を送り逃げることを忘れ、試合後も熱狂のまま、喜んで勝者であるアンブレイカブルに殺されてしまう」
場所は札幌市の中心、被害は数百人に上る。
黄金のリングの魔力は強力で、灼滅者のESPで無力化はできない。もちろん催涙弾など使っても意味はない。灼滅者が戦うしか道はないのだ。
「アンブレイカブルの一方がもう一方を倒した場合、敗者の力を吸収したアンブレイカブルは一般人の虐殺を優先して行う。そうなるとすまないが、諸兄らの力では防ぎ切れない」
虐殺の理由はどうやら、敗者から吸収した力を定着させるためらしい。この事態を防ぐ為には、勝敗がつく前に戦闘に介入するしかない。しかし両者が元気なうちに介入すれば、アンブレイカブルたちはタッグを組んで灼滅者と対抗するだろう。
「難しい見極めを要求されることになるが、有利に戦う為には両者が充分に消耗したところを狙って欲しい」
そこまで言って、玄乃が一度言葉を切り、続ける。
「そしてもう一つ。この戦いでアンブレイカブルを灼滅した灼滅者は、この黄金の円盤リングの魔力でアンブレイカブルの力を吸収し、闇堕ちする」
一瞬、教室が静まり返った。
闇堕ちした灼滅者は戦闘が終わっても撤退しない。リングで戦い続けて勝者となると最後は周囲の一般人を殺戮することになる。
「つまり諸兄らは首尾よく事を運んでも、闇堕ちした仲間と連戦する。だがまず、アンブレイカブルだ。詳細を説明しよう」
一方のアンブレイカブルは華尚という名で、2メートルはあろうかという巨漢だ。大柄な身体を存分に生かした攻撃力を誇る。もう一人はイース。彼も大柄だが華尚ほどではなく、むしろ細身だ。バランス型で相手に合わせた攻撃を仕掛けてくる。
どちらもクラッシャー、回復手段を持っていてそこそこに強いが、今の灼滅者たちならこの2体と戦っても勝てなくはない。
「しかし、遺跡の形はしているが黄金のリングとは。アンブレイカブルの首魁たる大老達の力なのだろうな」
迷惑な、と唸った玄乃は資料を閉じて一礼した。
「全員で無事帰還できるよう、どうか力を貸して欲しい」
参加者 | |
---|---|
科戸・日方(大学生自転車乗り・d00353) |
稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450) |
万事・錠(ハートロッカー・d01615) |
空井・玉(リンクス・d03686) |
月村・アヅマ(風刃・d13869) |
船勝宮・亜綾(天然おとぼけミサイル娘・d19718) |
白星・夜奈(星探すヂェーヴァチカ・d25044) |
蒼珈・瑠璃(光と闇のカウンセラー・d28631) |
●激戦の序章
駅前通りを塞ぐほど巨大な黄金のリングに、人々は熱烈な声援を送っていた。
群衆に紛れた船勝宮・亜綾(天然おとぼけミサイル娘・d19718)はのんびりと、持参したお菓子を口に運んだ。傍らでは色々諦めた顔の霊犬・団長代行猫烈光さんが腰をおろしている。
「ちょっと異様な熱気ですねぇ。後方についたのですぅ、オーバー」
インカムから聞こえてくる亜綾の声に続いて、リングの上の戦いを注意深く観察する科戸・日方(大学生自転車乗り・d00353)が顔をしかめて口を開く。
「こっちも声援がすごいぜ。見た感じイースは割合冷静そうだが、華尚は情報どおりの脳筋だな。大ダメージ系の攻撃に少し偏ってる」
「思い出したように回復する程度だから、イースを仕留めた後は熱いノリで持っていけば回復使わせないで済むかもですな」
日方と互いに見える位置についていた月村・アヅマ(風刃・d13869)が目を細める。問題はイースを1分で仕留められるかどうか、だ。華尚に比べればかなり細身に見えるが、それでもそこはアンブレイカブル。
「同感ね。イースは適宜回復してるけど、かなり蓄積ダメージがきてる感じだし、彼から押し切るので正解そうよ」
群衆の最前列で戦いを眺めながら、稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450)が頷いた。愛用の真紅のリングコスチュームの上から白いパーカーを羽織っただけだ。時折吹く風で太腿やお尻がチラチラ見え隠れしている。
激しくぶつかりあう華尚とイースを、白星・夜奈(星探すヂェーヴァチカ・d25044)は観客の合間から黙然と見ていた。小柄な彼女を庇うように老いた姿のビハインド・ジェードゥシカが寄り添っている。
少し離れた場所から夜奈の様子を視界におさめ、万事・錠(ハートロッカー・d01615)はインカム越しに仲間へ囁いた。
「ンじゃ予定どおり、ヤツの体力四割目途で行こうぜ」
「ええ。でもそう時間はかかりそうにないですね」
仲間の見える範囲を保ちながら、蒼珈・瑠璃(光と闇のカウンセラー・d28631)は通信に短く答えた。魂の片割れたるアオが彼女の傍で羽ばたいているが、この異様な盛り上がりの中で誰も気にしていない。
「そうだね。いつでも出られるようにしておこう」
ライドキャリバーのクオリアに腰をおろして空井・玉(リンクス・d03686)も呟いた。アンブレイカブルがぶつかるたびにあがる歓声で、時折インカムの音が掻き消される。
覚悟は済ませた。当然だ。覚悟せず戦いに臨んだ事は無い。そういう意味では今回もいつも通りだ。
「どうだ、そろそろ諦めがついたか!」
鈍い音をたてて華尚の拳がイースの腹へめりこんだ。皮膚を破り肉を抉るものをもう、殴打とは言うまい。踏みとどまったイースが自身を癒しながら距離を取ろうと跳び退る。
灼滅者たちの間でアイコンタクトが回った。仲間の意思を確認し晴香が叫んだ。
「その勝負、待った!」
「行くよクオリア。いつも通り轢いて潰す」
エンジンを噴かして一気にスピードアップ。群衆を跳び越え、玉は仲間に続いて黄金のリングの上へ上がった。
●熱狂の渦へ
黄金のリングは勝負を決する場。勝者が定まるか、勝者が不在となるまで終われない。
不意にリングへ上がってきた灼滅者たちから距離をとり、構え直した華尚が感心したような声をあげた。
「灼滅者か。この舞台へ上がる者があろうとはな」
殺意を漲らせた夜奈が飄々と言葉を返す。
「胸クソわるい、ことしてるわ、ね。ころさせない、わ。オマエたち、ころして、止める」
「此方側へ来る覚悟があると?」
「だれか堕ちたら、全力で助けるし。ヤナが堕ちても、助けにきてくれる、から」
イースの問いにひと呼吸もおかず答えた夜奈は、空に映える月白の帯を疾らせた。花顔雪膚がイースの首を狙って血飛沫をあげ、バックステップしようとした足にKalb al Akrab――影の蠍が掲げた尾の毒針が突き刺さる。錠がにまりと笑った。
「そういうこった。そっちこそ覚悟してくれよな」
深呼吸をひとつして、日方はリングの床を蹴った。
戦いの怖さも、譲れぬ一線も、ちっとも変わらない。でも何が起こっても、俺含め誰がどうなっても、きっと大丈夫。仲間が居る、信じてるから。
それに、知ってる奴と同じ戦場はやっぱ心強い。
イースの死角へ回りこむとナイフを揮った。足の腱を断たんばかりの日方の斬撃にイースがぐらりと傾ぐ。その一瞬、懐へ飛び込んだ晴香が袈裟斬りじみたチョップの連続技を見舞った。
大観衆の前で強敵と一対一の勝負……正直、純粋な興味、そして衝動は隠し切れない。(「でも、私が灼滅者である理由は絶対に忘れちゃいけない。私の力は『人の世を守る為』のもの」)
観客たちは灼滅者たちの技にも歓喜していた。熱烈な、否、熱烈すぎる声援。
狙いすました瑠璃の放つダイダロスベルトが、たたらを踏むイースの左足を抉って戻り、じわりと狙いを補正する。
「おのれ、小癪な!」
灼滅者の意図を悟った華尚が突進したが、進路をアオとジェードゥシカが遮った。
「はいはい、今は接近禁止なのですよぉ」
バベルの鎖を目に集中させた亜綾が彼の行動予測を立てる。魔法と衝撃波に襲われた華尚は、それでも稲光を帯びた拳で晴香へ殴りかかった。
カバーは間に合わず、腹にめりこむ重い打撃に彼女が息を詰まらせ、一瞬遅れたクオリアが体当たりで華尚を撥ね飛ばす。すかさず烈光さんの浄霊眼がダメージを癒したが、およそ追いつかない。
ジェット噴射に身を任せた玉がイースに肉迫した。狙いは死の中心点、渾身の力で杭を叩きこむ。しかしクロスカウンター気味に正面から拳を食らわされて吹き飛んだ。すかさずアヅマのダイダロスベルトがイースの胸を抉ったが、血を撒いてもまだ倒れない。
●闇星一つ墜ち
切れた唇を拭って玉は息をついた。8分の2を引かなければ、いつもと違い後半戦だ。
「早々に片付けよう」
呟くや否や、イースの間合いに飛び込んだ玉の拳が霞んだ。視認が難しいほど速い連撃を鳩尾といわず腹といわず浴びせる。
歯を食いしばって踏みとどまり、男は心底楽しそうに笑った。
「灼滅者とは如何ほどかと思っていたが……これは引けん!」
それはそれで好都合。一般人を殺させない為に、誰の命も零さない為に来た。
間合いを測るイースへ、日方は集中した力を思いきり放った。緩い弧を描いたオーラの奔流がイースの右胸を穿ち、遂には貫いて消える。
クオリアの機銃で牽制されながらも華尚が戦いの愉悦に顔を歪めた。
「癒し手はどちらだ。お主か!」
華尚がリングを揺るがし瑠璃に迫った。拳が彼女の細い身体に届く前になんとか錠が飛び込む。寒気のするような打撃音は骨の折れる音を伴っていて。
「……それとも、貴様か」
囁きが聞こえた時には、アヅマの目の前にイースが現れていた。反射的にカミの力を具現化しながら、頭の何処かが冷静に、間に合わないと判断している。
ほぼ零距離で光の輪が襲いかかる――瞬間、間にジェードゥシカが立ちはだかった。光に切り裂かれながらも庇いきる。
同時にアヅマの手から、カミの力が風の渦となって放たれた。研ぎ澄まされた風牙が傷ついたイースの身体を、右肩から左脇腹へかけてざっくりと切り裂く。からくも上半身両断を避けたものの、左右に身体が裂けかけたイースがふらりとよろめいた。その腰を素早く晴香が捉える。
他に道がないなら、大義の為の自己犠牲の覚悟は常にある。それが彼女の『人間としての拘り』だった。
「今がその時だ、よね」
アンブレイカブルの身体が一気に持ち上げられた。バックドロップで後頭部から叩き落とされ、イースが呻く。それきり、彼は動かなくなった。
割れんばかりの歓声が観客からあがる。それはひどくうわついた、駆り立てられるような感覚を灼滅者たちにもたらした。
恐ろしくなるほどの力が流れこむのを晴香は感じていた。いつのまにか愛用のリングコスチュームであるRougeは黒に変じ、マントが翻り、何よりも抑え難い破壊衝動が湧きあがってくる。
「なんだ、そいつはそこまでか。では灼滅者、雌雄を決そうではないか!」
咆哮する華尚を挟撃が襲った。指輪を嵌めた手を掲げた夜奈が、麻痺をもたらす魔力の弾を。ジェット噴射で飛び込んできた錠が、死の中心点めがけて杭の一撃を。
「お望みどおり、ころしてあげる、わ」
「ご要望ならしゃーねェよなァ!」
立てつづけに叩きこまれたダメージで巨躯を揺らし、華尚が怒りとも喜びともつかない形相で拳を振り上げる。ジェードゥシカに背を斬らせながらも晴香へ吠える。
「女、臆したか!」
「冗談……っ!」
真っ向から迎え討ちかねない彼女を制したのは、のんびりとした亜綾の声と共に放たれたまばゆい光線だった。
「のせられてはダメなのですよぉ」
バスタービームの直撃で華尚は突き放され、間に滑りこんだ瑠璃が影の宿ったダイダロスベルトで打ち据えている。トラウマを呼び覚まされた華尚が絶叫した。
傍らではばたくアオの尻尾でリングが光ると、庇い手たちの傷がいくらか癒える。
こうなった以上、晴香に敵のトドメを刺させるわけにはいかない。
●膨大な力の行方
人々のあげる声で耳がどうにかなりそうだ。華尚と向きあいながら、日方は余裕ありげな笑みを浮かべていた。数度あの拳をもらって、多分肋骨が数本折れている。
それでも躊躇しない。抑々、自身の力は高くないから全力で向かうしかない。
誰か、ではなく自分で。 「来い! こんなもので俺は殺せんぞ!」
華尚の拳をぎりぎりかわし、一挙動で死角へ。ナイフがざっくりと華尚の脇腹を裂いた。途端にばきばきと音をたて、華尚の身体を亜綾が刻んだ氷の呪いが覆う。
相当傷が嵩んできた錠の怪我を癒しながら、晴香が亜綾を振り返った。
「どう、亜綾ちゃん?」
「半々で回復役を狙ってきてますねぇ。囲んでください、油断できませんよぉ」
「まあしょうがないっちゃしょうがないんだけどね」
深々と息をついたアヅマがダイダロスベルトを日方へまとわせる。回復役が狙われるのは珍しいことではない。
錠の足元から再びKalb al Akrabが姿を現した。顔をしかめて退く華尚に追いすがり、蠍の毒針が脚にしたたか突き刺さる。
「目は見えているかい? こっちだよ」
苦鳴をあげる華尚の後背へ回りこみ、玉がマテリアルロッドを振り上げ、叩きつけた。遅れて流れ込む魔力に内側から焼かれてぐらりと傾ぐ。追い討ちにクオリアの突撃を受け、華尚は軽く吹っ飛んだ。
瑠璃の影が伸びあがり、刃物のように鋭く空を裂いて華尚の胸に突き刺さる。堕ちることも覚悟してきているが――半ば無意識に、瑠璃は大切な人から貰ったロケットペンダントを握っていた。アオの尻尾でリングが光って、前衛たちの傷をいくらか塞ぐ。
跳ね起きた華尚が獣のように咆哮した。
血を滴らせながらも一気に日方めがけて襲いかかる。
巨漢の拳が届くぎりぎりで、クオリアがタイヤを鳴らして滑りこんだ。渾身の打撃でバランスを崩し、横滑りしていった先で消滅する。華尚の間合い、日方が今度は懐へ飛び込んだ。骨まで擂り潰すような拳の連撃を食らわせる。
「ぐ、お、がぁ!」
血を吐きながら華尚が盲めっぽう拳を振りまわし始めた。跳び退いて影業を呼びだしながら、夜奈は唇を引き結ぶ。
(「今度は、しにたがったりしない。ヤーニャになんて、まけない。いつか報いをうけて、しぬけれど――それは今ではないのだから」)
まだ、ジェードゥシカには、会わない。
強い意志が夜奈の狙いを研ぎ澄まし、攻撃は針の穴を通すように鋭さを増し。
放った影は華尚の拳をかいくぐって四肢に絡みつき、骨の軋む音をたてて絞め上げた。ジェードゥシカのコートが翻るや、毒を含んだ衝撃波が動けない華尚に叩きつけられる。
夜奈の影を引きちぎって華尚がリングへ膝をついた。
途端、ぐわしと烈光さんの頭を亜綾が掴んだ。
「いきますよぉ、烈光さん」
言うなり烈光さんを華尚めがけて投げつける。予想外の行動に目を剥いた華尚が諦念そのものの顔をした烈光さんを避けた、一瞬。バベルブレイカーが火を噴き、亜綾は重力加速度をつけて突貫した。
「必殺ぅ、烈光さんミサイルグラヴィティインパクトっ」
両者が激突する。ひと呼吸おいて亜綾は引鉄を引いた。
「ハートブレイクエンド、ですぅ」
どっ、と肉を穿つ音がする。杭は華尚の胸板を貫いていた。バックステップする亜綾を追おうとした華尚が膝をつく。
その背へもう一度、激しい衝撃とともに杭が打ち込まれた。ジェット噴射で体当たりしてきた玉が素早く退いて、瑠璃が魔力弾を放とうと指輪をはめた手を掲げる。
その時、死力を尽くした華尚がアヅマめがけて突進した。予告されていたとはいえ息をのんだアヅマがクロスグレイブを構える。
瑠璃の魔力が凝るより早く激突せんとした、一瞬に。間に錠が滑りこんでいた。
「小僧!!」
「殺らせてもらうぜェ!」
錠の胸板を叩き割るように華尚の拳がめりこみ、華尚の胸をSt.PETERが貫いてリングの金色の光を弾き返した。拳がだらりと下がり、赤い閃光を帯びた剣が抜けると二人が倒れ伏す。
そうして立ち上がったのは、ひどく青ざめた錠だった。
血が出そうなほど唇を噛んだ夜奈が意を決して、そっと呟く。
「ジョー、目がさめるように、おもいっきりやっとく、ね」
「すまねェ、頼んだわ……」
日方がやり場のない想いを持て余して息をつく。まかり間違えば晴香の代わりに堕ちていたアヅマも言葉が出ない。
「……受け取れ。勝者を……定めろ」
ごぼごぼと咽喉を鳴らして囁いた華尚の身体が弛緩する。生命をなくした身体から力が流れ出ると、奔流となって錠へ流れ込んでいった。
「さて、後半戦に取り掛かろうか」
吐息まじりに玉が呟く。誰もが覚悟を固めてきていた。
あとは引き戻すだけのこと。
胸に穴のあいた錠の顔には凄惨な笑みが浮かび、晴香の顔からも迷いは拭い去られ、髪は一筋の赤いメッシュを残して金に染まった。
二人は遂に仲間と相対した。
第二の幕が、今こそ上がる。
作者:六堂ぱるな |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450) 万事・錠(オーディン・d01615) |
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種類:
公開:2017年8月13日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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