抜刀貫矢、大江戸血風帳~前編

    作者:空白革命

    ●大江戸血風帳
     江戸時代の町並みをイメージしたテーマパークの一角に、突如として巨大な黄金円環体が落下た。
     客たちは事故かと驚いて身を低くしたが、すぐに様子が変わっていった。
     まるでリングの魔力にとりつかれたかのように、今から起こる『闇のデスマッチ』に心を奪われてしまったのだ。

     無数の声援を受け、一人の侍風の男が砂利道をゆく。
     割れる人波。草鞋に袴、腰には刀。
    「魂の輝き、今一度見られるか……」
     ――刀のアンブレイカブル、唐太刀・刃鉄!
     対するは、瓦屋根より飛び降り、軽やかに着地する和服姿の女。背には大きな和弓がかかっていた。
    「身を焦がすほどの勝負ができること、感謝いたします」
     ――弓のアンブレイカブル、星打・矢苗!
     二人はそれぞれリングにあがり、武器をどちらともなく構えた。
     しかし観客というものに慣れていないのか、周囲がどうも気になるようだ。
    「この者たちを後に斬らねばならぬとは」
    「はい、心が痛みますね。けれど……」
    「応」
     両者、一度目を瞑り。
     輝きをもって見開いた。
    「「滾る!」」
     コンマ一秒の速度で矢を放つ女。男は刀の振りで払おうとするも、あまりの衝撃に身の方が吹き飛ばされる。
     が、空中で生み出した真空を蹴って強引にカーブ。追撃に放たれたマシンガンのような矢の嵐を、風のレールを走るようにしてかわしていく。
     斬撃。
     回避。
     衝撃が後方の家屋を粉砕した。
    「この戦いを止められる人間はもはやなし」
    「灼滅者でも乱入せぬかぎりは」
    「ほう、灼滅者」
     二人はニヤリと笑い。
     実にいい、と呟いた。

     結果を述べると、勝者は弓の女だった。
     女は深々と頭を下げ、折れた弓を置く。
    「大変有意義な戦いでした。この巡り合わせ、感謝します。きっとお墓を建てて、とむらいますから」
     灼滅者は来てくださいませんでしたけれど、と最後にひとつ呟いて、相手のアンブレイカブルを吸収。強大化したのだった。

    ●闇を恐れるな
    「武蔵坂学園が六六六人衆との同盟を蹴り、事態は改めて動き出した。今回は、奴らと同盟関係にあるアンブレイカブルの動きだ」
     神崎・ヤマト(高校生エクスブレイン・dn0002)は拳をごきりと鳴らして言った。
     ここは武蔵坂学園。
     今回灼滅者に託された依頼は……。
    「アンブレイカブルのデスマッチに乱入し、二人とも灼滅するんだ。そのリスクを飲み込んでな」

     今回彼らが戦っているのは『黄金の円盤リング』という特別なリングステージだ。
     その効果は周囲の民衆をサクリファイスとしたいわば儀式魔術。民衆は自らの意志と無関係に試合を応援する観客となり、ESPやその他あらゆる物理的操作でも排除することができなくなる。
     そのうえ、デスマッチに勝利した者は相手の力を吸収して強大化。暴走して周囲の民間人を皆殺しにしてしまうのだ。そうすることで力を定着させ、儀式もまた完成するということだ。力に呑まれた民衆もまた、それを拒まない。
    「そんな悲劇を阻止するために、俺たちはこの試合をなんとしても潰さなくてはならない」

     だが問題がある。
     それは、この戦いでアンブレイカブルを灼滅した者はその力が流れ込み、暴走してしまうということだ。
    「灼滅者とはいわば『不完全なダークネス』。ダークネスの高純度なパワーが流れ込めば、人間としての意識が潰されてしまう。つまり、強制的な闇堕ち状態に入ってしまうんだ。
     だが心配ない。闇堕ち状態になるのはトドメをさした灼滅者だけだ。その場にいる仲間たちや、後から駆けつけた仲間の力で即座に引き戻すことだって、可能なんだ!」

     デスマッチに灼滅者が乱入すると、必然的に『ダークネスVS灼滅者』のチームマッチとなりダークネスはタッグを組んで挑んでくるようになるだろう。
     乱入のタイミングは試合が始まってすぐの頃がベストだ。なぜなら今回の二人は速攻でケリをつけるタイプ同士なので消耗を待とうとするとうっかり決着がついて作戦が失敗してしまう危険があるためだ。
     というわけで今回はまず、アンブレイカブル二人をいかに倒すかについて考えよう。
    「相手は日本刀と和弓を使うアンブレイカブルだ。それぞれの武器の特徴を活かしきるのは勿論、弱点も完璧に克服している。例えば弓のアンブレイカブルは近接戦闘でも即死級の技を使いこなすし、刀のアンブレイカブルは抜刀までのタイムラグを零にすることが可能だ」
     どちらも非常に強力……だがしかし、チームが力を合わせれば勝てない相手ではない。
    「黄金のリング。恐らくアンブレイカブルの大老達の力だろう。こんな事態を放ってはおけない。皆、頼んだぜ!」


    参加者
    ポンパドール・ガレット(火翼の王・d00268)
    刻野・渡里(大学生殺人鬼・d02814)
    暴雨・サズヤ(逢魔時・d03349)
    風真・和弥(風牙・d03497)
    木元・明莉(楽天日和・d14267)
    ローゼマリー・ランケ(ヴァイスティガー・d15114)
    ルーナ・カランテ(ペルディテンポ・d26061)
    立花・誘(神薙の魔女・d37519)

    ■リプレイ

    ●修羅
     刀のアンブレイカブル、唐太刀・刃鉄。
     弓のアンブレイカブル、星打・矢苗。
     両者武器とを取り、気力を極限まで引き上げた、その時。
    「割り込み、御免!」
     暴風と共に現われた風真・和弥(風牙・d03497)が、二人の間に飛び込んだ。
     靡くバンダナ。上着の裾をはためかせ、背中の紋を見せつけた。
    「アンブレイカブルは嫌いじゃ無いが、無力な人々を虐殺するのは気に入らないな!」
     言うが早いか、抜いた刀が矢苗を襲う。
     常人であれば五度ほど連続で斬られていたであろう卓越した連撃はしかし、矢苗のごく最低限のステップによって紙一重にかわされていく。
    「格上なのは承知の上だ。だが――」
     ジャケットの裏から抜いた剣を投擲。
     と同時に明後日の方向から飛んできたナイフがそれぞれ矢苗の足を切った。掠っただけの攻撃だが、その一瞬が充分な隙になる。
     瓦屋根の上に姿を現わした刻野・渡里(大学生殺人鬼・d02814)が狙い澄ましたように矢を発射。
     同じく屋根に陣取ったサフィアが六文銭射撃で追撃を仕掛けていく。
     後ろ肩に矢が深く突き刺さる。が、それ以上の追撃を許さず矢苗はその場から大きく飛び退いた。
    「オレも刹那を求める在り方は嫌いじゃ無い。少なくとも、敬意をもって戦わせてもらおう」
    「よっし、逃がしませんよ!」
     障子戸を勢いよく開いたルーナ・カランテ(ペルディテンポ・d26061)がモップを手に矢苗に狙いを定める。
     が、そんなルーナを狙って刃鉄が襲いかかってきた。
     飛び退くように距離を稼ぐも飛ぶ斬撃を使って追い詰めてくる。
     斬撃はまるで回転する鎌の如く分裂して襲いかかってくるが……。
     屋内に逃げ込んだルーナはモップの柄で斬撃を受け流す。いくつかの刃が防御を抜けてくるが……。
    「モップバリア!」
     モップの先端――とみせかけてひっかけた霊犬が突き出され、代わりに刃がざくざく突き刺さっていく。涙目になって耐える霊犬モップ。
     ルーナは木の大十字架の先端からモップを外すと、ちろりと親指の腹を舐めた。
    「おっと、こっち見てていいんですかね」
     刃鉄が気配に気づいて振り返ると、民衆に紛れていた木元・明莉(楽天日和・d14267)が着物を脱ぎ捨てて登場。
    「いいね、キラキラして見える。俺も混ぜて貰う――!」
     杖を手にとって距離を詰めにかかる明莉。
     対して刃鉄と背中合わせになった矢苗は超高速で矢を発射。
     相殺狙いで杖を打ち込んだ明莉が、エネルギー爆発によって飛来する矢を粉砕した。
     見ていたルーナが目をぱちくりとやった。
    「……すごいですねそれ」
    「なに、マグレだ」
     苦笑する明莉。まるで謙遜するように言ったが、手がひどくしびれているのが自分で分かった。矢苗の攻撃がたまたま調子悪く、逆に自分の反撃がたまたま調子よかったというかなり奇跡的な相殺現象である。恐らく二度目はないだろう。
    「格上のアンブレイカブル相手に回避や相殺は狙うだけ無茶かな……しょうがない!」
     明莉は杖を手放してカードに収納。武器をハンマーへとチェンジする。
    「とにかく当てたい。手伝ってくれ」
    「まかせといて!」
     高いところから飛び降りてくるポンパドール・ガレット(火翼の王・d00268)。
     着地と同時に封印解除。王様のようなマントや王冠を纏い、空から降ってきた剣をキャッチした。
    「チャルダッシュ、アカリたちをお願いネ!」
     肩に乗るようにして現われたウイングキャットがすぐさま飛び立ち、リングを発光。回復フォローを開始。
     矢苗が無数の矢を一度に放ってくる中を、ポンパドールは気合いで駆け抜けた。
     一発目の豪快な薪割りスイングは空振り。しかり続けざまに繰り出した豪快な一回転一文字斬りが矢苗の前髪をスパンと切断した。
     そこでようやく、矢苗がこちらをしっかりとターゲットに置いた。
    「八対二ですか。どちらか一人は落とされそうですね」
    「十二対二だ」
     水面を割って現われる暴雨・サズヤ(逢魔時・d03349)。
     どこからともなく呼び出した七不思議奇譚が矢苗を襲う。
     弓を打ち付ける形でガード。
     ――した所に、両サイドの家屋からローゼマリー・ランケ(ヴァイスティガー・d15114)とビハインドのベルトーシカが飛び出してきた。
    「こうマデ物騒で無ケレバ、魅力的な舞台なんデスケド!」
     両サイドからのクロスボンバーが炸裂した。
     むろんただのラリアットサンドではない。エネルギーシールドを纏ったローゼマリーと、霊力壁を纏ったベルトーシカによる圧殺である。これが常人であれば紙のようにプレスされていた所だが、相手はアンブレイカブル。攻撃を耐えきると、二人をそれぞれ投げ飛ばした。
     それを伸ばしたダイダロスベルトでキャッチするサズヤ。
    「……」
     サズヤが無言の視線を送ると、石灯籠が吹き飛んだ。
     否、その後ろに控えていた立花・誘(神薙の魔女・d37519)が灯籠ごと吹き飛ばすような砲撃を放ったのだ。
     矢苗はそれを素手でキャッチ。握りつぶす――間もなくもう一発。
     誘はクロスグレイブから露出した金属レバーを操作して弾を込め直すと、中央のサークルが闇色にチェンジ。放たれた砲撃が矢苗を直撃し、着物とその内側の肉を裂いていく。
    「ゲリラデスマッチも結構ですが、命がチケット代では高すぎますね」
    「同感です、が」
     ちろり、と上唇を舐める矢苗。
    「おかげで良い巡り合わせがありました」
     上気した頬。
     着物を引き裂くかのように開き、内側に仕込まれた鉄の矢を大量にひっつかむ。
    「わたし(ダークネス)とあなた(灼滅者)は、やはりこうでなくてはいけません。さあ――咲き乱れましょう!」

    ●スターライトシュート
     時系列は何も進んでなどいない。
     鉄矢を掴んだ矢苗はそれらをいっぺんにつがえ、いっぺんに放った。
     めちゃくちゃにまき散らされるかに見えた矢はまるでその一本一本が意志を持つかのように誘たちの心臓や顔面を狙ってくる。
     達人を超越した、超人の精度である。
     モップとベルトーシカが即座に庇いに入り、チャルダッシュとサフィアが回復フォロー。しかしまるで回復が追いついていない。
     ディフェンダーで守ってメディックで回復しているというのに、ダメージ量の方が圧倒的に上回るのだ。
    「やはり先に倒すべきだ。確実に命中させて倒す。連携を」
    「俺もそのつもりだ……!」
     銃に持ち替えた渡里が矢苗めがけて銃を乱射。
     矢で銃弾を迎撃しながら走って回避にかかる矢苗。もはや常人の動きではないが、むろんこちらも常人ではない。ホーミングした弾が矢苗のこめかみと顔面にそれぞれ命中し、一瞬遅れて飛び込んだ明莉のハンマースイングが確実に矢苗の腹をとらえた。
     完全命中――かに見えたが。
    「ああ、やはり、素晴らしい技です」
     首を僅かにかしげ、銃弾をくわえ、腹の力だけでハンマーを受け止めた矢苗は恍惚に目をとろけさせた。
    「でも、これで終わりではないですよね」
    「当然だ」
     ハンマー越しにエネルギーを流し込み爆発を起こさせる明莉。
     爆破に紛れて屋根から屋根へ飛んだ渡里は上下反転しながら追加銃撃。
     矢苗に集中攻撃を仕掛けていく。
     が、そんな渡里が明後日の方向から飛んできた斬撃に切り裂かれた。
     バランスを崩して砂利道に落ちる渡里。
     一瞬遅れて着地する刃鉄。
    「飛ぶ斬撃か。厄介だな――」
    「立花っ」
    「分かっていますよ」
     初撃から別の位置へと動いていた誘は、民家の窓から大砲を覗かせる形で刃鉄にロックオン。
    「『攻撃して注意を引きつける』」
     乱射。
     飛来した弾を二度切り裂き、三度目は爆発。業を凍結する光に包まれる。
     しかし……。
    「この作戦、本当に効果あるんでしょうか」
     誘のこめかみには汗が一滴流れていた。
     『攻撃をされたのでその相手をターゲットする』という動きは虫や動物によくある。人間でもよくある話である。とはいえ今は灼滅するかされるかの瀬戸際。理屈で言えば、誘の攻撃を無視してしまっても何の問題もないのである。
     というか、誘が敵だったらそうする。
     そんな考えを知ってか知らずか、刃鉄は誘にぴったりと視線を合わせ、例の飛ぶ斬撃を放ってきた。
     抑え作戦は成功したのか?
     と、思いきや。
    「ぐっ!?」
     刃鉄の斬撃は拡散し、誘と渡里、そしてサズヤとルーナ。加えてサフィアやチャルダッシュにまで襲いかかった。
    「…………」
     サズヤが視線で問いかけてくる。成功したのか? それとも失敗したのか?
     誘は視線で応えた。どちらでも同じことでした。完全に失念していたのです、と。
    「しまった、構成を間違えたか!」
     頭を押さえて舌打ちする和弥。
    「日本刀のアンブレイカブル。奴の遠距離攻撃方法は遠列の月光衝だけだ。スナイパーが攻撃を引きつけた場合それが来る。加えて天星弓で火力を稼ごうとしたら百億の星で追撃を狙う。つまり、メディックとスナイパーへの集中攻撃だ。戦線が崩壊するぞ、カバーをいそげ!」
    「それなら……!」
     地面を殴りつけるローズマリー。まるで大地が隆起したかのように巨大なエネルギー壁が展開し、ザスヤたちの盾となる。
     そこに重ねるかのように、和弥がヴァンパイアミストを展開。
     が、そんな鉄壁の防御をまるごと粉砕して大量の矢と刃がザズヤたちを襲った。
    「ここは通さない、デス!」
     身を挺してサズヤを庇うローズマリー。
     全身に突き刺さる矢。
    「ちょっとちょっと、ヤバすぎるでしょー」
     等と言いながら、ナプキンを手品のように伸ばしてとぐろ状の盾にするルーナ。
     同じくサズヤも錦帯を巻いて盾とした。
     大量に突き刺さる刃。まるで暴風雨に翳したビニール傘だ。むろんこのたとえは、傘が吹き飛んでいく所まで含めてのものである。
     シールドが吹き飛び、切り裂かれるサズヤ。
    「……」
     危機に瀕した一瞬の中で、しかしサズヤはきわめて冷静にものを考えていた。
     むしろ通常よりも高速であらゆる計算をはじき出していく。
     たとえば、彼は回復の必要が無ければ攻撃にシフトするつもりでした。メディックが四枚以上あってディフェンダーもいざとなれば回復を優先するという状況ではむしろ過剰回復に気を配るくらいだろうと踏んでいたからだ。
     しかし現状、必死に回復し続けなくては即座に落とされる。しかも殺傷ダメージでじり貧だ。いずれ取り返しが付かなくなる。
    「なら」
    「一点攻勢しかないですよねえ」
     血のついた頬を拳でぬぐい、ルーナはモップをひっつかんだ。
     矢苗めがけて投擲。
     矢の雨に晒されるモップ。余った衝撃が近くの家屋を軽々とならしてく。もはや迫撃砲だ。
     その隙に飛びかかり、斧を叩き込む。肩に食い込み、腕を切断していく。
     更に零距離で黙示録砲を乱射。
     加えて急接近したサズヤが妖冷弾を乱射。
     しこたま矢苗にダメージを蓄積させた所で、刃鉄の飛ぶ斬撃が彼らを切り裂いた。否、吹き飛ばしたと言った方が近い。彼らは宙を回転し、同時に池へと落ちた。
     更に大量の矢を放つ矢苗。
     が、それ以上の追撃は許さない。
     誰が許さないかと言えば。
    「知ってるか。おうさまっていうのは」
     剣を水平に構え、立ち塞がる、ポンパドールである。
    「みんなをまもるモノなんだぜ!」
     ぎらりと彼の瞳が燃えた。
     燃え上がるオーラが彼を包み、火の玉となって突撃する。
     矢を気合いで押しのけ、矢苗の弓をへし折る。
    「それです、もっと」
     矢苗が手刀をポンパドールの腹にめり込ませた。蹴りがポンパドールの胸を切り裂いていく。
     飛ばされそうになったポンパドールは踏ん張り、剣を構えて再び突撃。
     矢苗に突き刺さる剣。
    「あなたのような方がいるから」
     矢苗は、突き刺さったままポンパドールへと突き進んだ。ついには根元までめり込んだ剣をそのままに、矢苗はポンパドールの頬に手を添えた。
    「私も、死ぬ価値がある」
     その瞬間、矢苗は光の粒になって消えた。

    ●ブランドブレイド
     それから、暫くの攻防が続いた。
     激しく消耗したが致命的ではない灼滅者側と、残されたがほぼ無傷の刃鉄側。
     決着が見え始めたのは、ベルトーシカがローゼマリーを庇って消滅した頃である。
     その頃にはチャルダッシュやサフィアたちも消滅し、残るは五人。
     ポンパドールもしっかり戦力には入っているが、うっかり二人も灼滅してしまわぬようにと防御と自己回復に徹しているのだ。
     渡里と和弥はアイコンタクトで頷き合った。
     銀色の二丁拳銃を抜く渡里。
     日本刀と西洋剣で二刀流を作る和弥。
     二人は刃鉄へと突撃した。
     まずは渡里による制圧射撃。
     激しい面制圧を刀を扇風機のように回転させて弾く刃鉄――の後ろに回り込んだ和弥の一文字斬り――を素手で握って受け止める刃鉄――に第二の刃を突き立てる和弥。
     完全に動きを固定した所で、渡里が刃鉄の額に銃を押し当て、思い切り連射した。
     のけぞり、浮き上がり、そのままはじけるように吹き飛ばされていく刃鉄。
     額に穴が空き、仰向けに倒れ……た状態から、むくりと起き上がる。
    「こいつ」
    「みすみす死んでなどおれぬ。これだけの武人と相まみえる好機だというのに」
    「それは嬉しい話だな……!」
     一気に距離を詰める明莉。
     上段斬り――をハイキックでカウンター。手から抜けて飛んでいく刀。
     しかし刃鉄は途中で手を手刀の形に変えると、そのまま明莉の身体を切り裂いた。
     しかし負けず退かず、明莉は拳を固めて顔面に叩き込む。
     のけぞりそうになる衝撃を無理矢理押し殺し、刃鉄はヘッドバッドを明莉に叩き込んだ。
     一瞬で意識を奪われる明莉。
     刃鉄もまた意識を失う寸前だ。ほぼ本能だけで戦っている状態である。
     そこへドロップキックを叩き込むローゼマリー。
     思い切り吹き飛ばされるも、空中で無理矢理体勢を直して両手両足で着地。獣のように突っ込んでくる刃鉄とタックルで正面衝突。
     爆発的な衝撃が周囲に走り、家屋という家屋が吹き飛んだように思えた。
     足下に生まれるクレーター。
     ローゼマリーは強烈な膝蹴りを入れると、トドメとばかりに拳を振り上げた。
     が、その瞬間。
     ローゼマリーの脇の下を抜けるような絶妙なコースで、光の弾が刃鉄に命中した。
     身体に穴が空き、大きくよろめく刃鉄。
     突然のことに一瞬動きが止まるローゼマリ。
     そして、背後のかなた、樹木に隠れる形で誘が砲を向けていたことに気づいた。
    「恨みっこなしですよ」
     連続で放たれる砲撃。
     その全ては刃鉄に命中し、上半身全てを消し去っていった。
     崩れ、粒子となって消えていく刃鉄。
     誘はゆっくりと歩み出て、長い髪を払った。
    「戦闘不能者やダメージの多い方は逃げてください。そうでない方は、命に気をつけて」
     そして、誘は激しい闇に呑まれていった。

     ――後編につづく。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:ポンパドール・ガレット(火翼の王・d00268) 立花・誘(神薙の魔女・d37519) 
    種類:
    公開:2017年8月9日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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