ゴールデン・ディライト~後編

    作者:朝比奈万理

     富士の峰に突如現れた黄金の円環リングの上での激闘に割り込み、巨漢オネエのグレート・ウシコと、格闘少女であるキューティ・コネコを撃破した8人の灼滅者たち。
     激闘の末の勝利であった。
     だがそれは、新たな戦いの火蓋であった。
     グレート・ウシコを倒したのは、ワルゼー・マシュヴァンテ(はお布施で食べていきたい・d11167)。仲間と連携して叩き続けた満身創痍のウシコを、猛烈な連打でリングに沈めた。
     一方、キューティ・コネコを討ったのはアンカー・バールフリット(シュテルンリープハーバー・d01153)。終始彼女に肉薄し仲間を庇い続け、満身創痍の中で彼女を穿ったのだ。
     肩で息をするソラリス・マシェフスキー(中学生エクソシスト・d37696)は、心配そうにふたりの名を呼ぶ。
     本当は戦いたい。救いたい。だけど、体は重い。
     秋山・梨乃(理系女子・d33017)も傷を多く受けている上に相棒のミケを欠いており、とても連戦できる体力など残っていなかった。
    「二人は無理をするな。彼らは必ず――」
     刻野・晶(大学生サウンドソルジャー・d02884)は二人を気遣い、姿を変えてゆく仲間を見守るほかなかった。
     観客たちは恐れることもなく、トドメ打った少女と青年の変化してゆく様子にさらに歓喜する。
     彼女のそれは『羽化』ともいうべきか――。
     純白の法衣からは四つの手が覗き、帽子とベールから除いた顔は純白の蟻である。緑色の目が鋭く光れば、背の翅が大きくしなやかに伸び――ワルゼーの闇堕ちが完了し、不気味に笑むのは羅刹。
     その姿は神々しく、畏怖感を覚えずにはいられない。
    「ワルゼー……!」
     友の変貌に、白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)が歯を軋ませた。
     羅刹に変わったワルゼーから少し離れて、アンカーも変化を遂げていた。
     ゆっくりと上げた頭には青い王冠を戴き、白い仮面で顔のすべては覆われている。冷たい青のマントを翻せば、顔の横にヒキガエルと猫の姿が見え隠れする――その姿、ソロモンの悪魔・バアル。
     陽気だった男の面影は、そこにはない。
     羅刹とソロモンの悪魔はお互いを一瞥し、灼滅者に向き直り。
    「再編成の時間が必要だろう」
     とバアルは左手で3を示した。
     3分待つということか――。
     その威圧感にぐっと息を呑んだ小野屋・小町(二面性の死神モドキ・d15372)がふと顔を上げてリングの外を見れば、幾つかの仲間の顔。
    「援軍や……」
     ホッと胸をなでおろして仲間を迎えると、槌屋・透流(ミョルニール・d06177)は険しい顔のまま得物を構え、二体のダークネスを見据えていた。
    「二人は必ず連れ戻す……ふざけんなよ、ぶっ潰してやる!」
     仲間を包み込んだ闇を。
     黄金の円環リングを――。


    参加者
    刻野・晶(大学生サウンドソルジャー・d02884)
    ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)
    赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)
    槌屋・透流(ミョルニール・d06177)
    赤松・鶉(蒼き猛禽・d11006)
    小野屋・小町(二面性の死神モドキ・d15372)
    秋山・清美(お茶汲み委員長・d15451)
    白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)

    ■リプレイ

    ●3min
    「良く頑張りましたね。後はお姉ちゃんに任せてください」
     秋山・清美(お茶汲み委員長・d15451)が、戦い続けてリングを降りる妹に向けた笑顔は優しかった。だが、入れ替わってリングに上がると優しい顔は一変。ナノナノのサムワイズを伴う顔は凛々しく引き締まる。
     ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)は、リングに上がるなり状況を仲間から聞き、早速武装を整えた。
     持参した樽はリングに持ち込むことはできなかった。一般人の観客があまりにも多く、また熱狂していたため、人波をかき分けることが困難であったためだ。
    「この闘いが終わってリングから降りた後に、教祖樽だな」
    「まぁ、この状況じゃ仕方ないか」
     人垣の向こうにドンと置かれた大樽。それを眺めて口をとがらせていた赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)は、握りこぶしを作って対峙する。
    「教祖樽の前に、まずは、ワルゼーさんとアンカーさんを連れ戻しに行くよ!」
     槌屋・透流(ミョルニール・d06177)も愛用の帽子を被りなおして、己の気持ちを戦闘モードに傾けて。
    「さてと、全員で帰るまでがミッションだ」
     先に共に戦った8人と、援軍の4人。12人で必ず帰る。それは皆同じ気持ち。
     白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)も、今にも駆け出したい気持ちをぐっと抑える。
     ワルゼー、そしてアンカーの、闇堕ちするほどの覚悟のある戦いは見届けた。
    「今度はあたいらが戻すために覚悟を見せる番やでぇ!」
     小野屋・小町(二面性の死神モドキ・d15372)も得物を構え声を上げると、赤いリングコスチュームの赤松・鶉(蒼き猛禽・d11006)が大きく頷いた。
    「諸君等、時間だ」
     三分のカウントが終わり、バアルの声がリング上に響く。ワルゼー――闇教祖はただ黙って灼滅者を見据えていた。
     もうすぐ次のラウンド。ボルテージが上がり高まるギャラリーの声。
     そんな一般人を背に刻野・晶(大学生サウンドソルジャー・d02884)が得物を手に前を見据える。
    「ここで巻き込まれた人たちの無事と、そのために堕ちた仲間と共に帰るために……行こう!」
     灼滅者は一斉に駆け出すと、バアルと闇教祖の間に割って入った。
     二人を分断させて協力体制を削ぐ作戦だ。
     ここからが本当の闘い。最終ラウンドのゴング代わりにジェットコースターが轟音を立てながら走り抜けていった。

    ●Cardinal
     闇教祖の口元が動く。大あごの奥から辛うじて聞こえるのは、声。
    「……今こそ……教えをひとつに……」
     声に呼応し、経典から吹き出して攻撃手と守り手を焼くのは、大量の白炎。
     一方、バアルが指差す先――狙撃手と回復手の足元に生み出されるのは、絶対零度の世界。
     炎の中からギターをかき鳴らし、攻撃手と守り手を癒すのは、清美。サムワイズはシャボン玉をバアルに飛ばして牽制。
    「妹がお世話になりました。お二人共お助け致します」
    「こんな炎に俺の歌が、負けるかよ!」
     炎を払いながら飛び出したファルケの歌声に合わせて、帯が意思を持って闇教祖に襲い掛かる。
    「おい教祖、よく聞けよ! あんたが纏め上げた教団では今頃、教団員が爆破パーティーの用意してると思うぜ。なんでだと思う?」
     白い身体に帯の刃が突き刺さる。闇教祖は自分の腹に突き刺さる帯を掴むと、気合で引き部いて見せた。
    「……さぁ、解らぬ……」
    「決まってるだろ、教祖が闇に屈しないと俺もみんなも信じてるからだ」
     ファルケは強気の笑顔。絶対に助け出すという強い信念がなければ絶対に出せないものだろう。
    「俺の心もみんなの心も、歌にして存分に響かせてやる!」
    「ワルゼーさんがピンチなら、私の出番かな。モブ級主役は遅れてやってくる。小江戸の緋色さんじょーう!」
     元気よく氷の呪いを振り切って飛び出した緋色は、巨星の如き重さを伴う蹴りを闇教祖の鳩尾に叩きこむ。
    「このリングで闇堕ちしてもすぐに助けがくるって、仲間を信じて戦った結果なんだよね」
     踏ん張る闇教祖は大きく体を逸らすと、ふんと緋色を弾き飛ばした。弾き飛ばされた緋色は、空中で態勢を立て直して黄金のリングの上に着地。
    「なら、その信頼に応えて、全力で戦って勝つよ!」
    「入学した時からの仲でしたね」
     緋色の横を駆け抜けて、鶉が縛霊手で闇教祖に殴り掛かった。
    「クラスで教団で過ごした充実していた日々を忘れたとは言わせませんよ」
     それをも棄てるとも、絶対に言わせない。あちら側になんか、行かせない。
    「おい、聞こえてるか教祖。皆こうして迎えに来たぜ!」
     いつの間にか闇教祖の後ろに回り込んだ明日香は、愛刀『不死者殺しクルースニク』に己の力を乗せ、白い法衣もろとも一気に斬り裂いた。
    「皆信じているのさ、教祖が元の場所に戻ってくることをな!」
     それはここ、富士急ハイランドに駆けつけることが叶わなかった教団員も同じ。皆、ワルゼーが闇に打ち勝てると信じている。
    「救済も信頼も、正直きっと私が語れることじゃない」
     闇に堕ちた二人とは、先のウシコ、コネコと戦うためのチームメイトでしかなかった。故に、彼らを救済できる力も信頼に値する強い絆もない。
     だけどめぐり合ってチームを組んだ。これも何かの縁なのだろう。透流は鞭剣を振るい闇教祖を縛り上げる。
    「だが、アンタ達二人はこのまま負けたりしない。それは信じている」
     もがく闇教祖を一気に斬り裂く鋭い刃。
     先に己の能力を上げた小町は、影を伸ばすとバアルを縛り上げ。
     ビハインドの仮面をバアルの元に送り出した晶。仮面が霊撃を放ったタイミングで大鎌を振るい、黒い波動によりバアルを薙ぐ。
     闇教祖は翠の瞳を細めて、微笑むような顔を見せる。
    「……貴様らが欲する『我』を……取り戻すことは容易くはないぞ……」
     そのぎこちない口調とは裏腹の素早い動き――闇教祖は大きく膨らませた鬼の手で明日香の顔面を掴むなり、黄金のリングに叩きつける。
     その素早さ、その力に、守り手すら動けずにいた。
    「……ぐっ、教祖……」
     起き上がりながら歯を食いしばる明日香が、その攻撃を目の当たりにして皆が、胸に抱くのは、畏怖という表現が一番近いのかもしれない。
     高レベルで堕ちたワルゼー。その力を引き継いだ闇教祖の力は絶大であった。

    ●Baal
    「御覧に入れよう、バアルの雷を!」
     バアルが、青いプラズマを纏うロッドを振るえば、激しい雷鳴と共に雷が小町を撃つ。
    「……っ」
     闇の力は等しく、アンカーにも力を与えている。
     鶉がシールドの恩恵を明日香にも与えると、彼女の傷が癒える。唯一の攻撃手だ、まだ倒れてもらうわけにはいかない。
     闇教祖に掴みかかるとダイナミックにぶん投げたファルケに続き、槍の妖気を氷柱に変えて闇教祖を牽制しつつ、緋色はバアルに向き直る。
    「錨と星はワンセット。どっちが欠けてもダメ、なんだよね?」
     その話にバアルが微かに体を強張らせた。
    「なら今は正常な状態じゃないし、ステラさんも待ってるから戻ってこなきゃだよ」
     ステラ。
     その名はアンカーの従妹のもの。バアルの口が彼女の名に動く。――脈アリか。
     ならばと清美はサムワイズに明日香の回復を言い渡し、自身は得物に炎を宿してバアルに切りかかる。
    「そう、ステラ先輩も待っていますよ。アンカー先輩が帰ってくるのを」
     彼にも大切に思っている人が居るはず。そして彼女はあなたの帰還を待っている。そう考えて一番身近な人物の名を上げて呼び掛けた。
     手応えは――。
     バアルは自分の胸元に手を置いた。それはまるで何かを慈しむようにも見える。
    「……確かに、錨(アンカー)と星(ステラ)。どちらが欠けても航海はできまい。だが、諸君の推理は外れだ」
    「はずれ……?」
     息を呑む清美。
    「この手が欲しているのは一つ星ではない。もっと広大な星空なのだよ」
     まだ陽も暮れない空を仰いで両腕を広げるバアル。幾千の星でも仰ぎ見ているのであろうか。
     アンカーにとって従姉である彼女は、間違いなくかけがえのない存在。だが、アンカーの胸には、彼女以上に特別な『星』が瞬いているということを物語っていた。
     アンカー周辺の情報収集が甘すぎたと言わざるを得ない。説得や弱体化の大きな鍵『星』の当てが外れた灼滅者に残されたカードは、一般人虐殺阻止の矜持のみか――。
    「……くっ」
     歯を軋ませた小町は、黄金の床をたんと蹴り飛び上がる。そしてバアルの後ろに回り込むなり、愛用の大鎌『紅の三日月』に自分の想いを籠め――。
    「あたいは死の気配が見える身として、惨劇を許す訳にはいかへん」
     その身を一気に斬り裂く。それはまるで生の終わりを知らせ冥府へ導く死神の如く。
    「その死神を名のるあたいは、アンタが命を狩るのを見過ごす訳にはいかへんのや!」
     バアルを眠らせ、アンカーを呼び覚ます一撃。
     明日香が大鎌『絶命』を闇教祖に振り下ろすと、間髪入れずに透流が指輪から魔法弾を放ち闇教祖の動きを阻害する。
     一般人を守るのは、当たり前にやるべきこと。
     黄金の円環リングに上がってから、晶の背には常に一般人がいた。晶は常にその姿勢をアンカーに、バアルに見せてきた。
    「貴方に彼等を狙わせないし、攻撃もさせない」
     晶は小町を天使の歌声で癒すと、仮面が霊障波でバアルを侵す。
    「そして、アンカーの心を守る事も、ね」
     晶にとっては一般人を守ることも、仲間を守ることも、同じこと。

    ●Walsee&Ancher
     闇教祖に多くの戦力を配した作戦は功を奏す。彼女との戦いはまさに死闘であったが、教団の仲間をメインとしたなら、彼女の心に響かないわけがない。白く神々しかった闇教祖の姿は今や見るも無残。法衣には仲間の返り血の花が咲く。
     灰に煤けた身体で駆けだす。狙いは――。
     だが、鶉が間に割り込んだ。
    「何度もやらせません!」
     連打の猛攻を腕をクロスさせて受け続ける鶉。
     その手首に青く輝くブレスレットを見た闇教祖の瞳が揺れる。それは、ワルゼーが鶉に贈った品。
    「……教祖っ、貴女からの言葉と勇気はですね、いつでも私の心に闘志を燃やすのです」
     猛攻を見事凌ぎきった鶉が拳を掲げれば『Blue Champion』が太陽に、黄金の円環リングに照らされて光り輝く。次はこちらの番だ。
    「弄られつつも愛されている貴女は、まだまだ皆の前で笑い、率いていなければ」
     力を籠めれば、星のような光に満ちる足元。
    「さぁネバーギブアップ……戻ってきてくださいませ! 教祖! 爆発!」
     何度も何度も攻撃を打ち込んできた鳩尾にもう一度、重力を込めた跳び蹴りを。
     何度も何度もタッグは組んできた。だけどこうして相対するのは初めてだ。だから、全力で。
     緋色は縛霊手で闇教祖を殴りつける。
    「あの人垣の向こうに見えるのわかる? ここにこれなかった人たちの代わりに持ってきたの」
     殴りつけた際に丁度いい方に顔が向いてくれた。緋色が指さす方には、樽。
     リングの上までは運べなかったが、ファルケは満足げに笑む。
    「言葉で伝わらないなら、直接叩き込んで響かせるのみっ。受け取れ! サウンドフォースブレイクだっ!」
     ファルケは歌いながら闇教祖のわき腹を撃った。
     彼女がこのまま闇に堕ち一般人虐殺などを侵したら、どれだけの人が嘆き悲しむか。どれだけの人が苦しむか。
     不器用ながらも、透流は言葉を尽くし行動で見せる。
     虐殺など、させるものか。
    「迎えも来ているぞ。さっさと戻ってこい」
     闇教祖が息を呑む一瞬。透流の姿は後ろにあった。
     得物に技を乗せて一気に斬り裂けば、明日香と目線を合わせて頷き合う。
    「教祖! その姿、ご当地白アリ怪人の様だぞ!」
    「……なっ……!」
     明日香の物言いに思わず声を上げる闇教祖の姿に、明日香は確信を持った。
     あともう少しであの人を、この悍ましい闇から引き上げられる。
    「そんな姿で羅刹を名乗るなどおこがましい! それらしい見た目になって、出直して来い!」
     明日香は飛び上がり、愛刀を上段から一気に振り下ろす。
     我らの教祖を返してもらう――。
     斬り裂かれた闇教祖は叫び声をあげ、仰向けに倒れるなり派手に爆発した。これも教祖爆発か……。
     観客が一気に歓声を上げると、高原地帯に吹き渡る風が煙を晴らしてゆく。後に残ったのは、白く長い髪を風になびかせた一人の少女の横たわる姿だった。
     残るはバアルのみ。
     灼滅者たちが一貫して一般人を守るため、そしてワルゼーとアンカーを連れ戻すための行動を見せたことにより、バアルの心の中も揺れていた。
     そんな彼の隙をついて小町が後ろに回り込み、得物で斬り裂いてゆく。
    「アンカー先輩、戻って来てください。それまでの間、観客の皆さんは必ず私達がお守りしますので」
     サムワイズが回復に回る中、清美が噴射した帯は、バアルにたたらを踏ませて翻弄する。
    「それに戦っているのは8人ではありません。私たちと、ソラリスさんと梨乃。そして、ワルゼー先輩、アンカー先輩の12人です。いつもより強いですよ」
    「観客虐殺はけして行わせませんわ。矜持にかけて……そしてアンカーさん自身が望まないでしょう。あなたの『星』も、きっとお戻りを待ってます!」
     ワルゼーを仲間に任せて鶉が声を上げれば、バアルの足が止まってゆく。
    「……私の、星……」
    「そうだ、そいつの想いを踏みにじることはやっちゃいけねーぜ?」
     ファルケも続けると思うところがあったのだろうか、立ち止まるバアル。
     今なら、引き上げることができるかもしれない。晶が大鎌を構えれば、バアルの頭上には無数の刃が召喚される。
    「私にとって、今出会ったアンカー以外にアンカーは存在しない」
     仮面が霊撃を撃ったことを確認して、続ける。
    「アンカーの代わりになれるモノはいないし、誰かの代わりになることはない。だから、戻ってきてもらう」
     言い終わりと同時に、刃が彼に降り注ぐ。
     バアル、いやアンカーは、刃の雨を一身に受けて思った。
     自分が消えたら『星』は、どうなってしまうのかな――。

    ●Clear Sky
     勝者が決定し、歓声が上がったのも束の間。
     ワルゼーとアンカーを救い出したことで黄金の円環リングはボロボロと崩れ。二人が目を覚ますころには金色の砂のようになって富士山麓の風に溶けていく。
    「改めて妹がお世話になりました。お帰りなさい」
     二人に礼を言う清美。
     晶が笑むと、透流と小町も安堵の息をつく。
     散ってゆく人波をかき分けて樽を取りに行っていた緋色とファルケは、目覚めたワルゼーの何とも言えぬ表情を見て苦笑い。明日香も表情を綻ばせれば、その様子を微笑みながら見ていた鶉は青い空を見上げる。
    「システマハリケーンを黒幕に決めに行きますか」

     教祖と魔法使いの帰還を祝福し、ダークネスの陰謀を打ち砕いた灼滅者を讃えるかのように、空は青く澄み渡っていた。

    作者:朝比奈万理 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年8月27日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 12
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