雷様は気紛れに

    作者:佐和

    「突然の雷雨が、雷様の仕業……って、ラジオ放送、あった」
     しゃくしゃくとかき氷をつつきながら、八鳩・秋羽(中学生エクスブレイン・dn0089)が説明を始める。
     ちなみにシロップは青色のブルーハワイです。
     ……ラジオ放送で語られた噂の内容をまとめると、こうだ。
    『気紛れな雷様が地上に降りると、そこは突然、局所的な雷雨に見舞われる。
     雷様は、雨が降って欲しくないと思っている場所や時間を狙うらしい。
     理不尽だが、抗議したり逆らったりしてはいけない。
     雷様は怒ると、その原因となった人に雷を落としてくる。
     酷く怒りっぽいので、例えば雨に濡れて目を細めたのを、睨まれたと怒ることすらある』
    「これ、ラジオウェーブのラジオ電波、影響、受けてる」
     それは、深夜のラジオで放送された噂話が都市伝説になってしまう、というもの。
     どうやらタタリガミの首魁・ラジオウェーブの電波によるものであるらしい。
     幸いにも、赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)の調査のおかげで、都市伝説として被害を出す前に察知でき、放送から情報を得ることができるようになっている。
     そしてさらに。
    「かみなりさま……さわ、しんぱい、してた?」
    「……そう」
     首を傾げる鳥飼・砂羽(サンクトゥス・d29667)。
     こちらはイチゴのかき氷をしゃくしゃくしながら、頷く秋羽を見つめている。
     その砂羽の懸念も重なって、事件は見つかったのだという。
    「雷様、現れるの……この海水浴場」
     秋羽は地図を広げて、とある砂浜を示した。
     確かに夏の海水浴場は、雨が降って欲しくない場所の1つだろう。
     しかしそこには、それなりの人数の海水浴客がいる。
     放っておくと、青年男性グループの1つが雷雨に文句を言ったりして雷様の怒りを買ってしまうようだ。
     ちなみに、雷雨の前に海水浴客を避難させてしまうと『雨が降って欲しくない場所』にならなくなってしまい、雷様は現れないらしい。
     一般人対応は雷雨となってから行う必要があるだろう。
    「かみなりさま……かみなり、つかう?」
     今度は反対側に首を傾げた砂羽の想定に、多分、と再び秋羽は頷く。
     雷が絡むサイキックといえば『抗雷撃』や『轟雷』辺り。
     恐らくはこれらに近い攻撃をしてくるのだろう。
     ラジオ放送の情報からの類推であるため、予測を上回る能力を持つ可能性は低くとも捨てきれないが。
    「相手1体、だから、大丈夫だと思う、けど、気を付けて」
     青いかき氷を掬いながら言う秋羽に、砂羽はこくりと頷いて。
    「うみ、きっとあそべる、ね」
     何だかちょっと楽しそうに、ぼんやりした紫色の瞳を輝かせたのでした。


    参加者
    羽柴・陽桜(ねがいうた・d01490)
    ハイナ・アルバストル(塗り潰す蒼・d09743)
    山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)
    静堀・澄(覚醒の予感・d21277)
    鳥飼・砂羽(サンクトゥス・d29667)
    フリル・インレアン(中学生人狼・d32564)
    煌燥・燈(ハローアンドグッバイ・d33378)
    新堂・柚葉(深緑の魔法つかい・d33727)

    ■リプレイ

    ●気紛れな豪雨
     その雨は本当に唐突に、一気に降って来た。
     どざーっ、と言う酷い音と共に、暗くなった砂浜に悲鳴が飛び交う。
     慌てる海水浴客を見ていた鳥飼・砂羽(サンクトゥス・d29667)は、可愛いらしい子犬のように、ぷるぷると顔を振った。
    「雨、つめたい」
     呟いても、身体ごと振っても、次から次に降って来る雨には何の意味もなく。
     ゆるい三つ編みにした長く白い髪も、困ったように垂れ気味の羽耳も、水兵さんを思わせる上着のついた水着も、どれもこれもずぶ濡れになっている。
    「ふえぇ……」
     それは、青い水着と同じ生地でできた帽子を両手でぎゅっと押さえるフリル・インレアン(中学生人狼・d32564)も同じで。
     銀髪をしっとりどころかぐっしょり濡らし、身を丸めるように屈めて空を伺っていた。
     ミニスカートなワンピースを思わせる青い水着も、先ほどまで風に可憐に揺れていた白いリボンやフリルが重く垂れ下がってしまっている。
    「雨なんて降る気配なかったのに」
     静堀・澄(覚醒の予感・d21277)は、海水浴日和から急変した空を見上げてため息1つ。
     涼し気だったTシャツはべったり身体に張り付いて、下に水着を着ていると分かっていてもドキッとする格好になっていた。
     座っていたシートから立ち上がるその傍らに、ナノナノのフムフムが姿を見せる。
     ぐるぐる眼鏡は相変わらずだけれども、いつも抱えている本は濡れないように置いてきた様子。
     準備の良さにくすりと微笑む澄に、フムフムはくいっと眼鏡を直して見せた。
     防水対応をしておいたAMラジオを抱え、濡れた上着の重さも感じながら苦笑するのは煌燥・燈(ハローアンドグッバイ・d33378)。
    「今回のような番組って普通に放送されてるのかな?
     それとも、それもラジオウェーブさんが引き起こしている異常事態のひとつなのかな?」
    「うーん……俺は直接聞いたことがないからなんとも」
     ラジオを聞いたことがないと、興味深々ラジオを見つめる山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)の問いにも、肩を竦めるしかできない。
     そもそもこのラジオを用意したのは、澄が七不思議使いとしてラジオウェーブの素性を追っているから、だけではない。
     AMラジオは雷から生じる電磁波を拾うことができる。
     雷鳴よりもラジオのノイズの方が早く雷を把握できると期待したのだが。
    「都市伝説の雷にどこまで常識が通じるか、とは思ってたけどさ」
     今はノイズ混じりとなっているが、雨が降るまで何の兆候もなくクリアな放送を続けていたラジオに、燈の苦笑は深くなった。
     新堂・柚葉(深緑の魔法つかい・d33727)の緑髪も、三つ編みをぎゅっと握ると滴る程に濡れて。
    「せっかくの海水浴で雷雨は確かに嫌ですね」
     見下ろすその姿は、胸の合間や腰の辺りに青い花が小さく揺れる真っ赤なビキニ。
     柚葉のスタイルの良さを存分に見せつける水着も、確かにこの雨では魅力半減か。
     透流も、黒地に白模様の、どこかパンダを連想させるビキニ水着を見下ろした。
    「雷様が出てきたことで、みんなが海で遊べなくなって……それはそれで、みんなが海の事故に遭う可能性がなくなって良いことなのかもしれないけど」
     あ、その利点は思いつきませんでした。
    「海で遊ぶことを楽しみにしていたみんなの気持ちを踏みにじるのは許せない」
     ぐっと拳を握り、透流は決意を込めた表情で顔を上げる。
    「そうですね。楽しんでる邪魔をするのはいけないです」
     現に砂遊びを中断させられている羽柴・陽桜(ねがいうた・d01490)が笑って頷いた。
     猫さん柄のビーチサンダルの横に座った霊犬・あまおとが、主の代わりに名残惜しむように、砂の城が雨に崩れていくのをじっと眺めている。
     そんなあまおとの頭をそっと撫で、水着の上から羽織った薄い淡紅のCherry feathersを抱き寄せる陽桜の腕には、誕生石を抱く小鳥の腕輪が濡れていた。
    「まずは避難のお手伝いですね」
     言いながら陽桜が燈に視線を送ると、頷きと共に百物語が紡がれ始めて。
    「あっちに海の家があるから、そっちに避難したら? たぶん通り雨だよ」
     ハイナ・アルバストル(塗り潰す蒼・d09743)がそばを駆け抜けるカップルに誘導の声をかけた。
    「警報出てますよ! 急いで建物のなかに避難してくださいっ」
     澄は割り込みヴォイスも使いながら、雨に負けない声を飛ばしていく。
    「えぅ、その……安全なのはあっちです」
     フリルは、豪雨で他人の素性に構う余裕のない人達にはあまり効果のなかったプラチナチケットを諦めつつも、おどおどと海の家を指し示して。
    「みんな、にげてね」
     砂羽もそんな避難の様子を見ながら、百物語だけで人払いの効果は充分かと確認。
    「終わったら、いっぱい、遊ぶ、楽しみ」
    「そうですね」
     こくり頷いた砂羽に、澄がにっこりと微笑みかけた。
     避難は完了。これで巻き込む一般客はいない。
     あとは元凶を倒すのみと、灼滅者達はその存在を探す。
    「雷様、雷様ね」
     どこかのんびりと呟くハイナは、豪雨の中、目を凝らす。
    「ハタ迷惑な存在なのに様付けされるとは、いかにそれが恐れられていたのかというのが垣間見えるようだ」
     語源が『神鳴り』だったりもするのだから、畏敬の念は深いのだろう。
     ま、僕は恐れんがね、と続けながら、ハイナはきょろきょろと辺りを探って。
    「雷様、どの辺に降りるのでしょうね?」
     陽桜がそう首を傾げた瞬間。
     ドーン!
     雷鳴と稲光と共に、雷様は砂浜に降り立った。

    ●気紛れの雷様
     雷様というと、どんな姿を想像するだろう?
     風神と共に雲に乗った、いかめしい顔をした鬼のような姿か。
     ギリシャ神話や北欧神話が好きな人なら、そちらの雷神を思い浮かべるかもしれない。
     砂羽が思い描いたのは、絵本で見た雷様。
     虎模様のパンツに、もじゃもじゃもっさりの髪の毛、鬼の角。
     太鼓を叩くとゴロゴロドーンと雷が落ちる。
     そんな、怖くも可愛らしい鬼の子のような姿だったのだが。
    「カミナリ……さま?」
     目の前に現れたただのおっさんに、砂羽は目を瞬かせた。
     大柄で威圧感はあるし、表情は厳ついし、やたら筋肉ムッキムキで見せびらかすように上半身裸だけれども、黒縁眼鏡で生え際が気になる黒髪の、普通のおっさん。
    「さわの、知ってる、カミナリ、さま、ちょっぴり、ちがう」
    「いやー……ちょっぴり、かな?」
     しょぼんとする砂羽の横で、燈が目を泳がせながら頬をかく。
    「どうして雷様が、筋肉質なだけのただの人になったんだろう……?」
    「角も太鼓もありませんし、服も普通ですね」
     透流も難しい顔で考え込み、柚葉はこくんと首を傾げた。
     そんな意見が聞こえたようで。
    「違うとかただのとか普通とか、何を好き勝手言っとるか!」
     ドーン!
     怒りと共に落ちた白い光が砂羽を直撃した。
    「ひゃぅ。ぴりぴり、した」
     わたわたするところにすぐに柚葉が癒しの言の葉を届ける。
     戦いの始まりと陽桜がサウンドシャッターを展開した横を、ハイナが無言のまま『奇譚が如き足跡』に炎を纏って蹴り上げていく。
    「ふえぇ。なんだか、すごく怖そうです」
     おどおどしながらもフリルはぶんぶんと首を振ってその恐怖を払い、ハンマーのロケット噴射で飛び込んだ。
     落ちそうになった帽子を慌てて押さえながら、ふと思い出すのは雷にまつわる伝承。
    「そういえば、おへそを隠さないと取られてしまうんでしたっけ。
     取られてしまったら大変です」
     ワンピースな水着はフリルの腹部をしっかり隠してくれているけれども、さらにその上からお腹を押さえてしっかりガード。
     それを見たフムフムが、澄のお腹に羽のような手を当てるように近づいた。
    「大丈夫よ、フム」
     ありがとう、と感謝も添えて、澄は優しくフムフムを横にどける。
    「でも、あの外見でおへそ狙ってきたら、取られるとかよりセクハラ案件だよな」
     警戒する女の子達とおっさんとを交互に見て、思わず零してしまった燈だが。
    「誰がセクハラ親父か!」
     ドーン!
     即座に落ちてきた雷に打たれ、しびしびしながら失言に苦笑する。
    「雷様って言ったら、普通だったら雲に乗って空を飛んでいるイメージだけど……」
     その横を駆け抜けた透流は、両腕を覆う武骨な雷模様のガントレットを強く握り込んで。
    「地に足がついているなら、この拳が届くなら倒せる」
     弧を描くように撃ち放った一撃は、雷様を大きく吹っ飛ばした。
     その間も雨は強く降り注いでいる。
    「これだけ濡れたら、こっちのほうが動きやすいっ」
     ぐっしょりと重くなったTシャツを脱ぎ去った澄は、淡い黄色の水着姿となり、指輪から魔法弾を飛ばした。
     さり気ない水玉模様と可愛らしいフリル、腰元のワンポイントリボンが素敵なツーピースの水着ですが、豪雨の中では見てくれる相手も少なくてどこか勿体なく。
     合わせてシャボン玉を生み出すフムフムが、主の服装に合う元の天候を早く取り戻そうとしているかのようにも見えます。
    「なぜ、降ってほしくない時にあえて雨を降らせるのですか?」
     思いがあるなら聞いてみたいと問いかける柚葉にも、答えではなく雷が襲い掛かって。
     庇いに入ったあまおとに、フリルが落雷注意の黄色い標識を振るうのを見ながら、陽桜はその繊手を掲げる。
     するりと親愛を示すように腕に絡み沿う、真珠色の鈴飾りが輝く翠のリボン。
     そっとその名を呼び掛けてから射出したリボンは、鋭く雷様を貫いた。
    「雷様なんていうからどれだけのものが来るかと思えばこれ?
     ただのおじさんにしか見えないなァ」
     狙われないよう口を噤んでいたハイナだが、1度だけと挑発しながら飛び蹴りを放ち。
    「おこ、なった? おへそ、取られる?」
     砂羽がこくんと首を傾げながらも正確な斬撃を繰り出した。
     反射的に今度は自分のお腹を押さえるフムフムに微笑みながら澄は魔導書を開き。
    「あと少しだ」
     声をかけつつ、燈も掌から激しい炎の奔流を放つ。
     帽子をぎゅっと押さえるフリルは、赤きオーラの逆十字を雷のように落として。
    「あなたみたいな都市伝説の存在は誰も望んでない」
     たたらを踏む雷様の目前に、これが最期と透流が飛び込んだ。
    「だから、早く倒されるといい」
     ぽつり呟くと同時に繰り出された鋼の如き超硬度の拳に雷様は空を仰ぎ。
     打ちつける豪雨の中で目を閉じ、その姿を消した。

    ●気紛れに海遊び
     雷様が消えた砂浜は、豪雨が嘘のような晴天に戻る。
     それこそ神の御業と言えるほどあっさりと、雨も雲も消え去っていた。
     そして、海水浴日和の砂浜が戻ったとなれば。
    「ここからが本番ですね!」
     にっこり微笑んで棒を握りしめる陽桜の足元で、あまおとが応えるように1声鳴いた。
    「右! 左! ……あ、もうちょっと!」
    「ふえぇ、分からないです」
     澄の誘導か攪乱かの声に、目隠しをしたフリルがおろおろと立ち往生。
    「スイカ、こっち」
    「近づいたら危ないよ」
     目標の果実をぽんぽんっと叩く砂羽を慌てて燈が連れ戻す。
    「せっかくだし、みんなで遊ばないと」
     戦果である大きく割れたスイカを手にした透流は、満足そうに頷いた。
     皆で楽しくスイカ割り。
     意気込みは戦闘の時と同じくらいの全力です。
    「ええ。海を満喫しましょう」
     その横のビーチパラソルの下では、柚葉がシートにお弁当や飲み物を広げていた。
     ハイナはお弁当の中身を伺いながらも、まずはすぐに食べれるスイカを食す。
     ちらりと視線を向ければ、シートの横で出番を待つスイカが2つ。
    (「……いくつ割るんだろ」)
     今食べているものと、今まさに狙われているもの。
     合わせて4つも用意している辺り、遊ぶ気満々ですね。
     フリルの棒がスイカを大きく反れ、次はあたしがと陽桜が目隠しを付け始める。
    「うっかり誰かを棒で叩かないように注意ですねっ」
    「うわー。これ、俺、逃げてた方がいいかな」
    「さわも、スイカ、わりたい」
    「じゃあ次にですね」
     わいわい盛り上がるスイカ割り会場を背に、ふらふらとシートに戻って来るフリル。
    「えぅ……ダメでした」
    「お疲れ様です」
    「スイカ食べる?」
     出迎えたのは、柚葉の笑顔と透流が差し出すスイカでした。
     夏の日差しの下で楽しさが弾む砂浜。
     そんな光景からふと視線を外した澄は、振り返って海を見る。
     白い波と水面の煌めきに彩られ、青く広がる大海原。
    「ほらフム。あれが水平線よ」
     ぎゅっとスレイヤーカードを抱きしめて、その中へと小さく声をかけた。
     周囲には、灼滅者達と同じように、改めて夏の海を楽しみだした一般人達がいる。
     その存在に配慮しながらも、いつかちゃんと見せてあげたいと願って。
    「澄さんもスイカ、いただきましょう♪」
     そこに、ちょっといびつなスイカを手にした陽桜が駆け寄った。
     手を引かれて戻った先では、割れた2つのスイカを皆で分け合っているところで。
     どうぞと柚葉が差し出した、やはり少し形の崩れたスイカを、澄も受け取り微笑む。
    「こんな風に皆さんと食べるスイカは最高なのです♪」
     にっこり弾ける陽桜の笑顔に、誰からともなく頷きが返った。
     甘い小休止を挟んだら、次は、と透流がビーチボールを掲げて見せる。
    「ビーチバレーですか。いいですね、お邪魔します」
     察した柚葉が立ち上がれば、次々に挙がる参加の声。
     楽し気な女性陣を見ながらネットを準備し始めた燈は、ハイナに振り向いて。
    「俺達はチーム分かれた方が……」
    「あっ、そうだ。今夜のおかずをとらなきゃ。魚をとってくるね」
     提案をしかけたところで、思い出したように急に顔を上げたハイナは、言い終わるや否や海へ向かって走り出す。
     水着の後ろ姿が海の中へと沈んで行くのを、燈は呆然と見送った。
    「……審判でもしてようかな」
     人数も合わなくなるしと頬をかきながら苦笑すれば、それを見上げたフリルが、気弱な赤瞳に気遣いを混ぜる。
    「その……参加しない、ですか?」
    「彼女が居るのに女の子と浜辺で楽しく遊んでいたら、それこそ雷に打たれちまうぜ」
     笑いながら燈が見せた星型のロケットペンダントが、夏の陽にキラキラと輝いていた。
    「さわ、ルール、知らない。教えて、ほしいな」
    「ええ、喜んで」
     準備が進む中、こくりと首を傾げた砂羽の可愛らしいお願いに、柚葉は微笑み頷き。
    「砂の上って足を取られて動きにくいですね。
     でも、負けませんですよ」
    「こっちこそ」
     足元を確かめやる気満々の陽桜に、相対した透流も真剣な眼差しで頷き返して。
    「はーい! いくよー」
     澄の声と共にビーチボールが青空を舞い始めた。
     特別上手いわけでもなく、どこかぎこちなく行き来するボール。
     でもそれを追いかける声は明るく弾んで。
     楽しそうな皆を眺めて微笑んでいた燈は、ふと青い海へと視線を向ける。
     煌めく波の反射に目を細めた先で、獲物を手に水面に顔を出したハイナが小さく見えた。

    作者:佐和 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年8月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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