右九兵衛暗殺計画~ロード・トゥ・ロードローラー

    作者:るう

    ●武蔵坂学園、教室
    「武蔵坂学園とご当地怪人との同盟は、締結されないことになりました」
     同盟が最終的にどんな結末を人類にもたらしうるかを考えたなら、それは十分に妥当な結論であっただろうと、五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)は灼滅者たちを労う。
    「ただ……短期的な話だけを述べるなら、六六六人衆とアンブレイカブルの連合に、さらに爵位級ヴァンパイアが同盟した相手を単独で相手取っている現状は、著しく困難な状況だと言わなければなりません」
     だがそれは、勝利の方法がなくなったとまで言うものではない。
    「同盟は、立役者である闇堕ち灼滅者、銀夜目・右九兵衛(ミッドナイトアイ・d02632)さんの暗躍により生まれたものです。彼に対処することで……爵位級ヴァンパイアを同盟から撤退させることができるかもしれません」

     今、右九兵衛は六六六人衆の拠点のひとつに身を寄せ、同盟を進めるための準備を行なっている。
     その拠点とは……田子の浦沖の海底に沈んだ『軍艦島』。旧ミスター宍戸ルームにいる彼は、戦神アポリアらにより監視と護衛をされており、そこに到達するまでにも複数のハンドレッドナンバーらが配置されていることだろう。
    「その上、田子の浦付近にはロードローラーが控えていて、援軍の準備をしています。大部隊を送れば事前察知され、逃亡されてしまいますから、少部隊と十分な戦力を両立させるには、綿密な作戦が必要になります」
     姫子によるとロードローラーの役割は、灼滅者たちが少数精鋭で軍艦島に攻めこんできた場合に、多数の分体を派遣し迎撃する事。灼滅者たちがそれに対抗できる規模な戦力を派遣するなら、事前察知してとっとと逃げ出せばいい、という寸法だ。
     だが……勝機はある。
     彼の役割を逆手に取った二段構え。少数精鋭による陽動的な強襲作戦を行なった後、それに対応するために分体を減らした彼への奇襲作戦を行なうのだ。
     田子浦港近くの津波避難タワーに陣取る本体が灼滅されれば……分体も全て消失し、軍艦島強襲作戦の継続が可能になるだろう。その成功後、実際に軍艦島のハンドレッドナンバーに対処する第三段階、さらに先に進んで右九兵衛を暗殺する第四段階の作戦が開始できる。
     もっとも……姫子はこうもつけ加えるのだが。
    「もちろん彼は、護衛の分体も複数残しているでしょう。本体さえ灼滅できれば軍艦島での作戦に勝機を見出せるようになるとはいえ、このロードローラーとの戦いは、非常に危険なものになると予想されます」
     今回、この重要な役割を担当して貰うのは3チーム。各チーム間で綿密に役割を分担し、ロードローラー本体を灼滅することで、必ずや次の段階に繋げてほしいと姫子は語った。
     だが、知っての通りロードローラーは、武蔵坂学園の灼滅者、外法院・ウツロギ(殺人階位の観測者・d01207)が闇堕ちした姿。灼滅は避けたいと感じる者がいるかもしれない。
     けれども、姫子は悲しげに首を振る。
    「もう……彼を救う事はできないでしょう。それに、もしも可能でも、説得している余裕はありませんから」
     今後、より多くの仲間を失わぬためには、必ずや彼を討ち果たさねばならぬのだ。


    参加者
    苑城寺・蛍(チェンジリング・d01663)
    神條・エルザ(イノセントブラック・d01676)
    氷上・鈴音(永訣告げる紅の刃・d04638)
    竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)
    富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)
    平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)
    貴夏・葉月(紫縁は希望と勝利の月華のイヴ・d34472)
    水燈・紗夜(月蝕回帰・d36910)

    ■リプレイ

    ●異容の塔
     それは、怖気を震わせる光景だった。
     津波避難タワーの頂上にそびえ立つ、無数のロードローラーだったもの。うず高く積もったその姿を木の上からじっと確認した後に……苑城寺・蛍(チェンジリング・d01663)は飛び降りて、黒猫の姿から人の姿へと戻る。
    「なんか、ゼーンゼン動いてるのがいなーい」
     ギャルっぽい仕種で肩を竦めた。残骸の山の天辺に黒い人影が蠢いているほかは、全てが鎮まり返ったスクラップのように見える。
     いるはずの分体たち。それらはどこに行ったのか?
     身を潜めながら竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)の目が辺りをじっと窺っていると……不意に。

     にわかに騒がしくなるがらくたの塔。積みあがる色とりどりの残骸の隙間から、幾つものせせら笑いが鳴りはじめる。
     続いて始まる建機の行進。質量保存則を無視して瓦礫から滲み出るかのように現れた数多くの分体が……こっちには気づかなかったのかぁ、だとか、全滅させてあげないとねぇ、などと口々に呟きながら、ぞろぞろと海に向かって去ってゆく。

     それからしばらくの間、辺りは静けさに包まれていた。海に向かった仲間たちの運命は、今となっては知る由もない。
     神條・エルザ(イノセントブラック・d01676)の凛々しき瞳は、ただ塔だけをじっと見つめていた。
     恋人に、あのような選択をさせた存在。かつて灼滅者であったとはいえ今は大罪人となった男を滅ぼすために、彼女は闇から救われた者の責務を果たしにゆこう。
     氷上・鈴音(永訣告げる紅の刃・d04638)もまた、懐の方位磁針にそっと触れて祈る。
     脳裏に浮かぶのは戦友だったウツロギとの記憶。できれば、こんな形での再会はしたくなかった。
     でも、今、一番苦しんでいるのはきっと彼自身……彼の苦しみを終わらせるため、とびきりの笑顔を皆に見せ、絶対に勝てるわ、と微笑んで……。

     かくして今……右九兵衛暗殺計画第二段階、3班24人の戦いは始まったのだった。

    ●三重の陽動
     九十九折られるタワーの階段。2本あるうちの北西側を、第一陣の8人は手早く駆ける。
     2階……3階……タワー内部に収まっていた階段が外に張り出した部分が見えた。そこを曲がった先の数段を登れば、屋上に、敵の姿が現れるのだ……。
     その時、異変にいち早く気がついたのは、少し後方から屋上の気配に感覚を凝らしていた貴夏・葉月(紫縁は希望と勝利の月華のイヴ・d34472)だった。
    「来るわ」
     短く、しかし確かな警告。残りの7人も身構えると同時、道化じみた声と階段を揺らすほどの重量が、階段を登りきらんとした灼滅者たちの前に躍り出る。
    「やあこんにちは」
    「ようこそロードローラー・タワーへ!」
    「足音が聞こえたから、まさか、と思ったらね~」
     黄、灰、緑。ある者は愉快げに嗤い、ある者は興味深そうに灼滅者らを見回してみせる。彼らは皆、ロードローラーから人間の首が生えた、巫山戯た姿はしているが……放つ殺気の強烈さだけは、今更隠しようもない。
    「なるほど。たった3体とはいえ、簡単に本体に近づかせてはくれなさそうです」
     一目でその実力を見てとって、富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)は唸ってみせた。
     目指すは、あくまでも本体だ。こんな処で邪魔されてはならないと意気込んでみせる友、登を守るべく、彼の『ダルマ仮面』に加えて『中君』を彼の傍に遣る……直後!
    「でも残念だけど、この先には行けないんだぁ~」
     踊りかかってきた黄ローラー! その目を、焔の華が眩ませる!
    「1体だけでも厄介な敵が3体も。本命の本体には近づけそうにない――ああ、確かに、危機に違いない」
     語って水燈・紗夜(月蝕回帰・d36910)は纏わりつく布帯、『白羽』を愛でた。危機だけど……いや危機だからこそ、辺りに目を遣る余裕を作るのだ。
    「この位置だと少々戦い難い。一度、踊り場まで撤退しよう」
     ……けれど、すぐに灰色が跳ぶ!
    「でもそんなコト、できるかなぁ!」
     嘲るような彼の跳躍軌道は……しかし、途中で強固な何かに弾かれるように、灼滅者たちから外れる方向へと変わる。
    「暗殺武闘大会最終戦では世話になったな」
     そこには、迷彩アーマーに身を包んで『ヒトマル』と共に立つ、平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)の姿があった。
     凹む装甲、傷つく体。しかし、彼がよろめくことはない。
    「案外ショボ~い。陽動だって気づかず海の方に全力出しちゃった?」
     蛍の挑発はロードローラーどもを覆い尽くさんばかりの殺気の雲となり。彼らはそれに対抗し、陽動にしては挟撃の危険を冒しすぎに見えたけどねぇ、などと嘲笑するが……すなわち、それは第一段階の各班が、完全に六六六人衆どもの思惑を出しぬいた証拠!
    「……来い。本体を灼滅されたくなければ、今度こそ俺を仕留めてみせろ!」
     啖呵とともに放ったビームが、黄ローラーにいっそうの挑発効果を与えた。さらに、登の十字墓が……苛烈な光の奔流となって彼を撃つ!
    「気が重くないって言ったら嘘になるさ」
     すぐに拳に次の灼滅の意思を溜めながら、登は嘯いた。
    「だとしても、皆のためにもここで決めなくちゃいけないからね」
     もちろん、だからって敵は倒れてくれやしない。続くエルザの蹴撃が、鈴音の矢、紗夜の帯が黄を打ち据えるのも気に留めず、突然体から斧を生やしたかと思うと体重とともに斬りつける緑!
    「菫さん」
     葉月の指示を受け割り込んだビハインドの全身は、さらに下の踊り場の手すりまで弾き飛ばされた。即座に良太が駆けよって、防護符を貼りつけ敵をニコニコした顔で睨む。
    「困りましたね……これでは本体に近づくどころか、少しずつ押されてきています」
     普段からそんな表情の彼が何を思っているか、ロードローラーには察せまい。だから、彼が本当に安堵していることは、灼滅者たちしか知りえない。
     でも……何故、この状況で安堵など?
     答えはすぐに明らかとなった。
    「皆さん、彼らと合流して事を運びましょう」
     葉月が次の状況の開始を告げると同時、屋上から聞こえてくる戦闘音! 第一陣がじりじりと押し下げられるのに合わせ、死角から上がった第二陣の8人が、本体との交戦を開始した音だろう。もしも、敵がそちらに気を取らたならば……?
     葉月の気迫はこう語る。その時は、第一陣自身がその隙を縫い、本体を仕留めに向かうのだ、と。
     当然、ロードローラーはそんな愚を犯さなかった。
     勢いこむ灼滅者たちをせせら笑うかのように、段々と激しくなる階上の様子。
    「「「残念~! 分体はまだ増やせるんだよねぇ!」」」
     ロードローラーの笑い声が不気味にハモる。でも……。
    「ああ。それでも構わないんだ」
     紗夜の囁き。でも何故だろう……勢いに乗って攻め立ててくる敵の攻撃をいなし続けている限り、皆、本体と引き離されるばかりだというに!
     果たして、それは強がりにすぎなかったのだろうか?
     ……否。全ては計画通り。
     刹那、駆け上がってゆく8つの影。ある者は宙を蹴り、またある者は階段を一気に跳び上がり。それが意味するもの――まさかの第三陣の存在を理解して、すれ違いざまの一撃を浴びせんとする分体たちを、分厚いサーヴァントの壁が邪魔をする!
     命をチップとした本命偽装を三重も行なう者がいようなど、どうして想定しうるだろう?
     分体らが動揺した一瞬を、鈴音は決して見逃さぬ。
    「今よ……抜けましょう」
     鈴音が合図をかけたのに合わせ、エルザは盾に全体重をかけ前進していた。攻防一体のその突撃は、敵の注意を一瞬逸らし、階下にいた者たちを上に向かって通すのに十分な隙を生む。
    「私は、ここで立ち止まってなどいられない」
     改めて誓う彼女の後ろで、鈴音が手すりをよじ登るのに近い形で通りすぎた。

    ●一進一退
     抑えつけていた側が抑えこまれる側となり、抑えこまれていた側が抑えつける側となる。できることなら蛍としては、敵ごと階段を落として絶対的に分体を隔離してやりたかったところだが、やっぱり蛍自身も想像はしていたとおり、津波にも耐える構造物など容易く壊せそうにない……少なくとも、強敵の前進を阻みながらでは。
    「なら、素直にやればいいだけさ」
     紗夜の手許の和蝋燭で、再び青白い焔が爆ぜた。今、最も弱っている黄ローラーのみを執拗に狙い続けて、とにかく敵の数を減らすのは、今更語るまでもないほどの常套手段。
     だが……それが有効たりうるのは、攻撃の手数を十分に確保できれば、の話だ。
    「ヒトマル、守れ!」
     和守の命令に忠実なライドキャリバーは、辛うじて機能停止寸前で保っているところ。だから良太は攻撃に回るより、防護符を飛ばさざるを得ない……ヒトマルに一度でも多く攻撃を引き受けさせねば、すぐにでも戦線が瓦解しておかしくないのだから。
    「不恰好ですが、応急修理としては最低限ですね」
    「菫さん。貴女ももう一度だけ耐えてください」
     菫さんもそろそろ限界だ。葉月が羽衣を間に舞わせなかったなら、恐らく、次の攻撃で消滅していたことだろう。
     もっとも……耐えていた、と表現できるのは、あくまでも立ち続けていられるかどうかを論じる場合の話であった。両者の位置関係について言及するならば、時にはセンチ、時にはメートルと、次第に戦線は屋上へと近づいてゆく。
    「あひゃ!?」
     鈴音の刀が振り下ろされた直後、黄の眉間に赤筋ができた。瞬間、彼の前進は停止をするが、そこから鈴音がいくら押し込もうとしても、巨体は容易くは動かない。
    「ならば、これはどうだ」
     すぐさまエルザ。体ごと盾で押しこめば……ようやく、少しずつ敵を後退させてゆけるではないか!
     もっとも、今度は敵も、陣形を入れ替えた時のように簡単に押されてはくれないのだが。灰と緑が縦列となり、脇を倍の力で通り過ぎんとするところ。
    「それでも……止めてやる!」
     登が喊声を上げると同時に、灼滅者たちとロードローラーの分体たち、両者は激しいせめぎ合いに移行する!

    ●死闘の果てに
     気づけば、灼滅者たちは屋上の光景が目に入る位置にまで押し上げられていた。
     ようやく黄ローラーを残骸へと変えた時には既に、最初はあれほど分厚かったサーヴァントの壁はなく。登の隣に立つのは良太自身になっており、和守を奮わせ気力だけで立たせる人類の恒久の平和への愛も……果たして、いつまで保つだろう?
    (「もしも、私たちが突破されるようなことがあったなら」)
     菫さんから回収した羽衣を、和守の元で躍らせながら、海の方角を見遣る葉月。気遣うのは陽動に向かった親友の安否だが、彼女が無事に戻るためには、少なくともロードローラーの灼滅が不可欠だろう。
     次に、本体の姿を探す。分体を6体も隔離していたというのに、第三陣の戦況は芳しいとは言いがたい。万が一、第一陣と第二陣のどちらか一方であれ、分体の合流を許してしまったら……?
    「ねぇねぇ、どーせなら高級外車の群れに囲まれたかった~。今からでも変身しない?」
     おちゃらけた挑発で敵の気を惹く蛍。踊るようなナイフ捌きから生まれる毒の竜巻は、想像以上に少数精鋭の、強固な装甲には効果が芳しくはないが……いいの。だって、途中で止めるなんて勿体ないもの。どんな結末に至るのだとしても、最後の一瞬まで生きること愉しみましょ?
     彼女のぞくりとするような眼差しは、灰ローラーに弾き飛ばされ眼下に消える瞬間まで変わらなかった。そんな彼女の覚悟を感じてしまえば、葉月も改めて決意する……万が一、本体の灼滅が成らなかった時は……と。
     けれどもその時、視界の隅に映る光景。
     本体と紫色の分体と戦かう者らの中で、倒れ臥す誰か。
     咄嗟に数えてはおれなかったが、倒れたのは恐らく1人目ではないだろう。
     一方、彼らと対峙するのは、傷つきこそすれども健在な紫ローラーと黒い人影……果たして、このまま押し切れるのか!?
     最早、一刻の猶予もままなるまい。そう思った次の瞬間には、登は柵を跳びこえていた。
    「ロードローラー!」
     すると、興味深そうに振り返る本体。その口許はこう嗤っているように見える……あーあ、持ち場を離れちゃった。キミは、仲間を見殺しにするのかな♪
     肩を竦めた良太がぼやいた。
    「まったく、気軽に飛びだしてくれますね。まあ、何とか死なないでおいてはみせますよ。僕が止めを刺される前に、きっちり倒してきてください」
     追いかけようとする緑を最後の力で食い止めて、親友の成功を祈って膝を折る良太。瞑る寸前の彼の視界の中で、登の拳の白色の意志が、本体を至近距離から打ち貫く!
    「外法院さんの帰りを待ってる人は、まだ学園にいっぱいいるんだ! 好き勝手やるだけやって『はいサヨナラ』なんて、神様が許してもオレが許さないよ!」
     ……けれどもそれが、登の最後の仕事になった。
    「大丈夫だよ、まだサヨナラなんてしないからね☆」
     振りぬかれる本体の大斧の後、登を轢き潰さんと戦線突破してくる黒ローラー! 和守がそれを止めにゆかんと願っても、体も纏う武装も既に、のしかかってきた灰ローラーの重量を跳ねのける力など残してはいない。
    (「どうか……必ずや本体を……」)
     祈りながら意識を手放してゆく。けれど……代わって内なる闇が鎌首をもたげようとした瞬間に、和守は、体の上の重量を感じなくなったことに気がついた。
     黒い炎に包まれて、忽然と消え去る重機たち。
     そして響いた、自分たちではない誰かの絶叫。
     それらは、物語っていた。この、決死のロードローラー灼滅作戦が……ようやく終焉を迎えたことを。

    ●彼方に待つは
    「僕等がつつが無く過ごす為に、僕等が為るべきものは彼等にとってのつつが」
     津波避難タワーはただ佇んで、紗夜の言葉を聴くばかり。
    「円環からの脱却を目指すなら、円環を捻って螺旋に変化させないと、だ」
     果たして、彼女はそれを果たせただろうか? 彼女らが全ての作戦の結果を知るのは、今からもう少し後のこととなるだろう。
     けれど、たとえどのような結果になっていようとも、エルザの歩みは続くのであろう。
    (「憎むべき敵と成り果てたとはいえ、かつての仲間を手にかけたことに変わりはない」)
     滅ぼした罪の代わりに新たな罪を背負い、エルザはその身朽ち果てるまで、贖罪のため闇を打ち砕き続けるのだ。いや、彼女のみならず……闇に溺れたことのある者なら恐らく誰もが。
     だとしても……もうしばらくの間だけは、足を止め、振り返る者がいることを赦してほしい。
     自らの手で殺めたも同然の戦友のため、弔いの花束を捧げた鈴音の紅い瞳から、不意に、堰を切ったように溢れ出る涙。
     ふと想い出が脳裏によぎった途端、その場に崩れ落ち、ただ声を上げて泣き続ける自分の感情を……鈴音は、どうしても止めることができなかった。

    作者:るう 重傷:苑城寺・蛍(チェンジリング・d01663) 竹尾・登(ムートアントグンター・d13258) 富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057) 平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年8月31日
    難度:難しい
    参加:8人
    結果:成功!
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