右九兵衛暗殺計画~シャドウバーニング

    作者:空白革命

    「みんな、ダークネス銀夜目・右九兵衛を倒すメンバーを募集してるんだ。話を聞いてくれ」
     大爆寺・ニトロ(大学生エクスブレイン・dn0028)はこのように、今回の作戦の説明を始めた。

    「ご当地怪人との同盟を断わったって聞いたぜ。何度も言うが、俺は皆の意見を肯定してる。邪悪なダークネスとの共闘は避けるべき、って考えだよな。
     だがその一方で、アンブレイカブルを吸収した六六六人衆とその同盟相手の爵位級ヴァンパイアを同時に相手取るのは難しすぎる。武蔵坂学園の危機と言っていいくらいだ。
     特に危ないのは、武蔵坂学園の内情を知っていて、同盟の暗躍者でもある銀夜目・右九兵衛……。
     彼が暗躍する限り武蔵坂学園の危機は消えないだろう」

     現在、銀夜目・右九兵衛は六六六人衆と爵位級ヴァンパイアの同盟を進めるべく六六六人衆拠点のひとつに身を寄せている。
     本来彼の動きを今のエクスブレインが直接予知することはできないが、サイキックアブソーバー照射先である六六六人衆との接触を持ったことで間接的に動きを掴むことができたのだ。
     その予知によると、田子の浦沖の海底に沈んだ『軍艦島』を改造した、六六六人衆の拠点の旧ミスター宍戸ルームに拠点を構えているようだ。
     軍艦島には、戦神アポリアを筆頭とした複数のハンドレッドナンバーと、護衛の戦力が配置されている。
     しかも戦神アポリアは、爵位級ヴァンパイアとの交渉を担当しつつ、右九兵衛の護衛及び監視も行なう立場であるようだ。
     また、田子の浦周辺には、ロードローラーが控えており、いつでも援軍を出せる準備をしている。
    「旧軍艦島の海底拠点はかなり規模が大きい。一定以上の戦力を投入しなきゃあ、攻略できないだろう。
     もっと言えば侵入経路が特定されるせいで、拠点制圧が可能な大部隊を投入しちまえば有力な敵に察知されて逃げられちまう。
     というわけで、綿密な作戦と連携を駆使した精鋭部隊による特殊作戦が必要になった……わけだ」

    ●対、銀夜目・右九兵衛作戦
    「このチームの担当は、銀夜目・右九兵衛に対する伏兵だ」

     今回ロードローラーが軍艦島に居ないのは軍艦島に攻め寄せた灼滅者を挟撃して撃破する為のようで、その存在に気づかず少数精鋭で強襲した場合に追いローラーで全滅させるという体勢だろう。
     だがそれを逆手に取り、あえての少数精鋭で攻め込み追いローラーさせた上で、本体を灼滅して一気に分体を消滅させる作戦が立てられた。
     これでロードローラー本体を灼滅できたなら、正面攻撃部隊が軍艦島を襲撃。敵の目は当然そちらへ向くだろう。
    「ここで俺たちの出番だ。
     予知した右九兵衛の退路へ回り込み、彼を襲撃――灼滅する!」
     右九兵衛は既に説得が不可能な、その上非常に切れ者のダークネスだ。
     もし右九兵衛の灼滅に失敗した場合、六六六人衆と爵位級ヴァンパイアの同盟軍による攻撃が行なわれ武蔵坂学園は窮地に陥ることになるだろう。
    「だが注意してくれ。
     右九兵衛が脱出してくるタイミングやその時の護衛の戦力、そして増援の有無は正面攻撃チームの作戦結果によって変化する。
     幸いというべきか、右九兵衛はハンドレッドナンバーに比べれば戦闘力が低い相手だが……護衛の数や増援によっては戦力的に厳しい場面も出てくるだろう。
     だから、どんな状況でも右九兵衛を逃がさず灼滅できる態勢を整えておいてくれ」
     ここまで説明したところで、ニトロは苦しげに咳払いをした。
    「銀夜目・右九兵衛は同盟の手際からも分かるとおり抜け目の無いダークネスだ。流石は元武蔵坂学園……と、相手も思っているだろうな。
     皆、今回の作戦での闇堕ちは、やむを得ない場面もあるかもしれないが、闇堕ちした灼滅者を取り込むダークネス勢力も多い。そしてその多くが今回のような脅威になっている。
     もし作戦が成功しても、第二第三の右九兵衛を生むことになれば元の木阿弥だ。
     できるだけ灼滅者の力で……人間の力で戦ってくれ。
     頼んだぞ!」


    参加者
    神坂・鈴音(千天照らすは瑠璃光の魔弾・d01042)
    館・美咲(四神纏身・d01118)
    叢雲・宗嗣(黒い狼・d01779)
    ロイド・テスタメント(無に帰す元暗殺者・d09213)
    紅羽・流希(挑戦者・d10975)
    海川・凛音(小さな鍵・d14050)
    鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)
    リアナ・ディミニ(絶縁のアリア・d18549)

    ■リプレイ

    ●銀夜目右九兵衛という男・序
     ここまでのあらすじを語ろう。
     ダークネス銀夜目右九兵衛を暗殺すべく練られた大規模作戦は、強く連携した灼滅者たちの活躍によって理想的とも言える展開を見せた。
     打撃を受け、さほどの増援を受けることもできずに敗走する右九兵衛。
     彼が最後の望みとしていた秘密の抜け道には今――24人もの灼滅者たちが待ち構えていた。

    「うくべー……」
     身を潜め、これより来たる『敵』に想いをはせる神坂・鈴音(千天照らすは瑠璃光の魔弾・d01042)。
     右九兵衛は彼女にとってよい友人だった。同じように、いやそれ以上の絆をもつ者もこの場には居合わせている。
    「これが最後だとしても、ううん。最後だったら尚のこと……言うべきことを言わなくちゃ」
    「ふむ」
     前髪の分け目を指でなぞる館・美咲(四神纏身・d01118)。
    「随分な奴じゃった。堕ちる前も後も……」
     美咲を横目に見て、鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)は腰の刀を強く握った。
    「奴は今やダークネス社会のキーマンだ。だがそうで無くとも、奴への仮は返させて貰う……あのナマコ野郎」
    「なんだか皆、複雑そうですね」
     カードを指ではさみ、くるくると回して返すリアナ・ディミニ(絶縁のアリア・d18549)。
    「敵は殺す。いつものことです」
     穏やかな声色が、しかし冷たく彼らの背を押した。

    「重要な作戦の、重要な局面になりましたね」
     海川・凛音(小さな鍵・d14050)は既に封印解除を終え、美しい槍を杖のように突き立てている。
     その横では、ロイド・テスタメント(無に帰す元暗殺者・d09213)と紅羽・流希(挑戦者・d10975)が臨戦態勢を整えていた。
    「おや、単独行動をとるはずだったのでは?」
    「この段階で隊を離れてもやることがありませんので」
    「そうですか……」
    「ええ……」
     二人はそれぞれ武器を握り、目つきを冷酷なものに変えた。
    「なら、後は奴を殺すだけだ」
    「……来たぞ」
     す、と手を翳す叢雲・宗嗣(黒い狼・d01779)。
     右九兵衛が秘密の通路から逃げ出し、少数のダークネスを護衛につれて現われた。
    「右九兵衛は傷を負っているな。護衛の数は……3体ほどといったところか?」
    「少ないな」
    「だが、六六六人衆たちだ。一体で俺たち一チームを相手にできる」
     望むところだと、彼らは言った。
     右九兵衛たちを阻むように展開する別働隊にあわせ、右後方を固めて展開する宗嗣たち。
     三角形の辺のように取り囲む陣形だ。
     対して追い詰められた右九兵衛は――。
    「クカカ」
     と笑い、フードの下で目を光らせた。
    「『ここがお前の墓場だ』、とか誰かゆうてくれへんかなあ。『冥土の土産に教えてやろう』でもええで。そやったら、生き残るフラグが立つんやけど」
    「甘えるな」
     全灼滅者、完全武装。
     対して、護衛のダークネスたちも右九兵衛を囲むように展開した。1チームに一人ずつ、右九兵衛を守るようにだ。
    「お前は、ここで終わりだ」

    ●銀夜目右九兵衛という男・破
    「うくべー、お久しぶりね!」
     スパイク盛りだくさんのクロスグレイブを出現させると、鈴音は右九兵衛めがけて砲に巻き付いた保護布を発射した。
    「さあ、たっぷり射撃(おはなしあい)しましょ!」
    「御免」
     しかし、放った布は途中で切断され、射線もまたうつろな影に遮られた。
     二本指を立て、小太刀を握る忍装束の男。しかし全身を覆っているのは布ではなく、実体化した殺意の塊であった。
    「右九兵衛殿は大事な客人。これ以上傷付けることはこの皆殺・虐殺丸(みなごろし・ぎゃくさつまる)が許容せぬ」
    「貴様の許しなど関係ない」
     刀を抜く脇差。
     刃を滑った影業が飛翔する第二の刃となり、虐殺丸を迂回して飛ぶ――が、それもまた彼から伸びた影技の鎖によってとらえられた。
    「チッ――ディフェンダーポジションか」
     彼が前衛に立ち続ける限り、後衛に下がった右九兵衛に接近することはできない。射撃で間を抜けようにも、それなりの確率で阻まれてしまう。
    「本来は無視してうくべーを狙うつもりだったけど……」
    「然様。右九兵衛殿に触れたくば、拙者を倒してからにせよ! 破ッ!」
     印を結ぶ虐殺丸。彼から放たれた影業鎖鎌が鈴音や脇差へ襲いかかる。
     だがしかし。
    「随分と見栄をきってくれたものじゃのう」
     玄武フォームに身を包んだ美咲が、発生させたシールドで鎖鎌を阻んだ。
     なんのと追加で放たれる大量の鎖鎌。
     対して青龍フォームにチェンジして薙ぎ払う美咲。
     小太刀を逆手に握り突っ込む虐殺丸――を、麒麟フォームを完成させた美咲がショルダータックルによって打ち払った。
    「くっ、その額の輝き……さては話に聞く館美咲!」
    「どこで覚えとるんじゃ! 銀夜目じゃな!? この虫野郎!」
    「美咲さん、言葉遣いが……」
    「キョキョキョ、褒め言葉やで」
     右九兵衛はこちらに注意を向けてはいるようだが、別チームへの対応に忙しいようだ。
     虫めいた細長い指をカタカタとやりながら、ちらりとこちらを振り向いた。
     その視線を身体で遮る虐殺丸。
    「双方よそ見は禁物!」
    「同感だ」
     宗嗣が獣のように素早く接近。短刀を虐殺丸の首めがけて放った。
     籠手で受ける虐殺丸――に宗嗣は素早く足払いをかけた。
    「一凶、披露仕る」
     初撃はあくまで牽制。大本命は二ノ太刀にあり。
     どこからともなく巨大な太刀を抜きだした宗嗣は、跳躍によって足払いを回避した虐殺丸めがけて叩き込んだ。
     光を伴って繰り出された刀を、しかしギリギリの所で急所を外させる虐殺丸。とはいえ籠手を手首ごと犠牲にしたために片手で着地するはめになった。
    「全て無へ……バトラー、参ります」
     着地地点に仕込んでいたワイヤートラップが発動。小指で糸を引いたロイドの動きに合わせて明後日の方向から布槍が出現。虐殺丸を貫き、さらには布にしみこんだ油から炎が伝って虐殺丸を串焼きにしていく。
    「六六六人衆相手とは好都合。ここで焼け死ね」
    「強い、ぐぬっ――!」
     炎が燃え上がり、虐殺丸を焼き付くす――かに見えた。
     燃え尽きたのは忍装束とメンポのみ。露わになったのは全身骨と皮の男であった。
     顔の皮はおろか唇や鼻骨、頬骨までもそぎ落とす。
    「聞いたことがある。忍はいかなる人間にも変装できるように肉体の表面をそぎ落とすと」
     刀を握る流希。同じく槍をとる凜音。
    「ダークネスのわりに真面目なことですね。今の戦いには関係ありませんが、その覚悟、侮れません」
     影業を網のように形成して放つリアナ。素早く虐殺丸に巻き付くが、彼はすぐさまそれを引きちぎった。
    「甘い!」
     大量の殺意にまみれたクナイが生まれ、リアナへ殺到する。
     が、それらを槍の回転で打ち落とす凛音。
    「『右九兵衛というダークネス』はそれほど強大なパワーをもっているわけではありません。それをここまで強力なダークネスが守護するということは……」
     急接近した虐殺丸が手刀を繰り出してくる。
     槍の回転が強制的に止められ、腕が深くえぐられた。
    「それだけ、右九兵衛がダークネス界隈において重要な人物であるということ。この作戦、なんとしても落とすわけにはいきませんね」
    「拙者を倒せぬかぎりそれは――むっ!?」
     えぐったはずの凜音の腕が黄色い光によって急速に再生する。視線をやると、リアナが強力なイエローサインを放っていた。
    「ポジション欺瞞!? いかん、策に落ちたか!」
     だませて一瞬。しかし一瞬あれば、灼滅者は人を殺せる。
     その一瞬をつくのは。
    「頼みましたよ」
    「ああ」
     超高速で放たれた流希の注射器が、虐殺丸の肩に着弾。ぐらつく身体。
     その隙に、エネルギーを限界まで込めた刀をダッシュと共に切り込んだ。
     すれ違い、ブレーキをかける流希。振り抜いた刀をくるりと回し、鞘に収める。
    「む、無念」
     血ならぬ闇を吹き出してもがく虐殺丸。
     しかし。
    「かくなる上は、この命にかえてでも貴公らを道連れにするまで……!」
     流希は強烈な殺意を察し、素早く防御姿勢をとった。

    ●銀夜目右九兵衛という男・窮
    「下がれ、紅羽!」
     呼びかけたのは宗嗣、そしてロイドだった。
    「道連れではない。死ぬのは貴様だけだ虐殺丸」
     ロイドの放った布が虐殺丸の腕に巻き付く。
     まるでチェーンデスマッチだ。
     炎が伝わり虐殺丸を焼き、対して虐殺丸は大量のクナイを殺意ロイドへ解き放った。
    「業ごと焼き尽くしてやろう!」
    「ぐう……!」
     苦しみもがく虐殺丸。
     腕に巻き付いた布を引きちぎるが、その頃には宗嗣が眼前にまで迫っていた。
     大太刀横一文字斬り。
     のけぞって紙一重で回避。
     止まらず二ノ太刀、上段袈裟斬り。
     地に手を突いて後退。回避する虐殺丸。
     大地をえぐり食い込む刀。
    「これで追撃はできまい。貴様の負けだ!」
     小太刀を抜いて宗嗣の心臓を突き刺す虐殺丸。
     しかし、虐殺丸の身体は既に十字四つに切断されていた。
    「馬鹿な、かわしたはず」
    「オレの大神殺しから逃げることなどできん」
     くずれゆく虐殺丸に背を向ける宗嗣。
     しかし、執念によって受けた傷は深く、がくりと膝を突いた。それはロイドも同じだ。
    「邪魔な六六六人衆は灼滅しました。後は頼みましたよ」

    「ありがとう、これでもう邪魔は入らない!」
     鈴音はクロスグレイブをフルスイングして右九兵衛へ叩き付けた。
     大量の虫をわき出させて攻撃を防ぐ右九兵衛。
    「前にインタビューでいってたでしょ。強い想いは強い力となるって。実践してあげる!」
     防いだものの衝撃自体は殺せないようで、右九兵衛は大きく吹き飛ばされていった。
     まだダークネスと戦う別働隊に先んじて右九兵衛へと追撃をはかる鈴音。
    「琥珀色の夕暮れは十分堪能したでしょ。さ、帰ってきんぐとゲームでもしましょ!」
    「こはく、いろの……」
     起き上がる右九兵衛。
     急接近した脇差が、光と影を刀に宿らせながら変幻自在の斬撃を繰り出していく。
     水晶化した虫を次々に繰り出して払う右九兵衛。
    「灼滅者の銀夜目、闇に好き勝手されて悔しく無いのかよ。お前にも意地があるのなら、灼滅者として生き残ってみせやがれ」
    「くっ、そ、その通りや……」
     顔を押さえ、苦しげによろよろと起き上がる右九兵衛。
    「銀夜目!」
    「うくべー!」
     右九兵衛は震える自らの腕を押さえ、苦しげに笑った。
    「いまのうちや。俺がおさえてるうちに首を切り落とすんや。それで俺は救出でき――」
     る、と言い終わる前に、右九兵衛の腹から巨大な水晶のムカデが飛び出した。
     不意打ちのムカデが鈴音や脇差に食らいつく。
     かに見えたが。
    「だまし討ちは、想定の範囲内」
     地面から素早く伸びた影業のトゲがムカデを貫き、消し去っていく。
     リアナは影業を元に戻すと、右九兵衛をにらみ付けた。
    「今更私たちにこんな子供だましが通じると?」
    「思ってへんよ。キョキョキョ……」
     眼鏡のブリッジをついっと虫で押し上げると、どこまでも右九兵衛らしい顔で笑った。
    「お互い、こうでもせんと確認できんやろ」
    「……そのようだ」
     分かってはいた。
     だが諦めるという選択肢がなかっただけだ。
     不器用すぎるが、これ以外にやり方を知らない。
    「さあて、お待ちかねのボスアタックや。残機使い果たす気でかかってきいや!」
     袖の間から大量の虫が生まれ、弾幕となって襲いかかってくる。
     それらを自らの身体と槍で受け止める凜音。
     そこです、と目線だけで合図を送る。
     凜音の放ったミストが周囲を包み込み、狂戦士化した美咲が拳にシールドを覆って突撃していった。
    「なんのぉ!」
     正面から、水晶化した虫で覆った拳で迎え撃つ右九兵衛。
     拳どうしの正面衝突。
     もう一方の拳も繰り出す美咲。さらなる正面衝突。
    「なんじゃ貴様、以前も三枚目じゃったが、更に一段と下がったな?」
    「四枚目は大物と決まっとるんや――で!?」
     腕を下げてのヘッドバッド。
     顔面にくらった右九兵衛は大きくのけぞった。
     大いなる隙。隙をつくのは……。
    「銀夜目」
     頭上へ飛び上がった流希。
     大きく振りかぶった刀のフルスイングが、咄嗟に全身を水晶体で防御した右九兵衛に叩き込まれた。
     吹き飛び、バウンドして転がる右九兵衛。
     流希は刀を向け、鋭く目を光らせた。
    「地獄でまた会おう」

     この先の展開は、まるで流れる滝のようだった。
     一歩遅れてダークネスの壁を突破した別チームの仲間たちが右九兵衛を挟み撃ちにし、みるみるうちに灼滅していった。
    「もとよりさほどの戦闘力をもたないダークネスでしたからね」
    「策によってのし上がり、策によって滅びる……ですか」
     凜音と流希は、それぞれ武器を納めた。
    「あれは、銀夜目のかつての恋人か?」
     同じく刀を納めた脇差。美咲が彼を横から小突いた。
    「かつてのではないわ。今も、『そう』なんじゃろう」
    「…………」
     六六六人衆がいるかぎり悲劇は終わらない。そんな顔で目を背けるロイド。
     宗嗣も役目を終えたとばかりに背を向けている。
     リアナはといえば、今でも油断なく敵の出現を警戒していた。
     彼らを一度だけ振り返り、鈴音はあらためて右九兵衛を見やった。
    「あれだけ口達者だったのに、最後はそれだけなんてね。けど……」
     これ以上は野暮だ。鈴音もまた、背を向けた。

     この日、かつての仲間がまた一人灼滅された。
     銀夜目右九兵衛。
     世紀の大悪党として。
     愛をもって。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年8月31日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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