汝、己が武をここに示せ~後編

    作者:天木一

     大きなレスラーが頭を掴まれて空中から落下し、黄金リングに頭を叩きつけられ事切れる。その近くでは空手家の首の無い体も横たわっていた。
    「……後は、お願い、しま、す……」
     手を赤く染め、何かを堪えるように声を震わせた神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)は、今にも儚く消えてしまいそうだった。
    「俺は死なない、だからぶっ殺すつもりで頼むぜ」
     刀から血を滴り落としながら、こんな時でもヘイズ・フォルク(青空のツバメ・d31821)は笑ってみせる。
    「後の事は任せろ。きっちり終わらせてやる」
     動じず自信を持って神虎・闇沙耶(鬼と獣の狭間にいる虎・d01766)が深く頷く。
    「また……でも、すぐに助けてみせます!」
     仲間が闇堕ちた姿に高野・妃那(兎の小夜曲・d09435)は苦しそうに顔を歪める、だが強い意思でもって目を逸らさずに正面から見据えた。
    「大丈夫っす、絶対に助けてみせるっすよ!」
     軽い調子で獅子鳳・天摩(幻夜の銃声・d25098)はお任せと胸を叩く、だがその声には少し熱い意志が混じっていた。
    「目を覚まさせてあげるなりよ!」
    「まだ私は力を出せるはずです!」
     ずっと前衛で闘い続けた華上・玲子(甦る紅き拳閃・d36497)と三崎・真月(炎乳天使・d36777)は、傷つき疲れを覚えながらも仲間の為に活を入れる。
    「……必ず正気に戻すわ。だから……」
     真剣な表情で篠崎・零花(白の魔法使い・d37155)がじっと2人を見る。それだけで言いたい事は伝わった。心は決してダークネスに負けはしない。
    「さぁ! この心、喜んで捧げようじゃないか!」
     意識を失うヘイズが心底嬉しそうに笑う。すると顔に機械的な仮面が現れ笑みを隠すと、手には真っ赤な血のように赤い刀が握られ、刃にはバチバチと赤い電流が流れる。その輝きはこれから無数の血が流れるのを予感させた。
    「目標、補足。排除、開始……」
     仮面の下から感情を失ったように無機質な声が響き、ただ殺人鬼の殺意だけが灼滅者へ向けられた。
     その隣では蒼の姿が少女のものから大人の女性のものへと変貌する。着崩した紫の着物からは肩がはだけ色気を匂わせる。長い淡黄の髪を靡かせ、猩々緋の瞳は不機嫌そうに周囲を睥睨する。
    「このような場で目覚めるとは……妾には似合わぬ。じゃがせっかく起きたなら遊んでみるのもよいか」
     妖艶な女性の笑みを浮かべ、淫魔は存在感のある金毛の九尾を揺らした。
    「妾の名はシロ。退屈しのぎに遊んでおくれ」
     2体のダークネスと化した仲間を前に、灼滅者達は武器を構える。
    「排除出来るものならやってみろ」
    「……遊びじゃないわ、本気でいくわよ」
     皆の気持ちを代弁した闇沙耶と零花の言葉を口火に、戦いが始まった。


    参加者
    神虎・闇沙耶(鬼と獣の狭間にいる虎・d01766)
    風華・彼方(中学生エクソシスト・d02968)
    高野・妃那(兎の小夜曲・d09435)
    黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)
    攻之宮・楓(攻激手・d14169)
    獅子鳳・天摩(幻夜の銃声・d25098)
    白峰・歌音(嶺鳳のカノン・d34072)
    篠崎・零花(白の魔法使い・d37155)

    ■リプレイ

    ●2人のダークネス
     黄金リング中央には、新たなダークネスとなったヘイズ・フォルク(青空のツバメ・d31821)とシロと名乗る神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)の姿がある。
     それに対峙するのは灼滅者達。疲労で玲子と真月がリングを脱し、代わりに4名の灼滅者が増援として駆けつけ新たなラウンドが始まる。
    「排除、開始」
     仮面で表情の分からぬヘイズが姿を消したと錯覚する程の速度で間合いを詰め、赤い電流を纏う妖刀で袈裟斬りに襲い掛かる。
    「名は……聞かないでおこう。陽炎のように揺れる者よ」
     その前に出た神虎・闇沙耶(鬼と獣の狭間にいる虎・d01766)は、炎を纏わせた大剣で敵の攻撃を受け止め、押されながらも炎を伝わせて敵の腕を燃やす。だが同時にヘイズも刀を滑らせ闇沙耶の腕を斬り裂いていた。
    「ヘイズ、君を元に戻してみせるよ」
     風華・彼方(中学生エクソシスト・d02968)の視線がヘイズとシロを捉え、一瞬にして熱を奪い去り体を凍らせる。
    「ヘイズ兄の加勢に来たぜー!! ……って、ヘイズ兄が矢面に立ったのか……でも! ヘイズ兄は強くなるために今もダークネスと戦っている! ヘイズ兄が勝てるように、応援するんだ!!」
     堕ちたヘイズを見て白峰・歌音(嶺鳳のカノン・d34072)は気合を入れ、構えたガトリングから雨のようにてるハッターくん型弾丸を放った。
    「……二人を欠けることなく助けてあげたいわね……頑張りましょう」
     2人を見渡した篠崎・零花(白の魔法使い・d37155)は、無表情ながらも強い意志を籠めて行動を開始する。ヘイズの死角へと帯を伸ばし槍のように脇腹を貫いた。
    「オレ達を信じてトドメをかってくれたんすから、絶対連れ戻す」
     決意に満ちた顔で獅子鳳・天摩(幻夜の銃声・d25098)は十握剣を刀と交差させる。
    「不退転の決意でね」
     そして押し込むが、ヘイズはその力に逆らわずに反転して天摩を斬りつけようとすると、割り込んだライドキャリバーのミドガルドが攻撃を受け、車体に大きな斬り傷を刻まれる。
    「何やら楽しそうにやっておるの、妾の相手もしてもらおうかのぅ」
     シロが九尾を揺らし、手にした鬼灯から青い炎を広範囲に放った。
    「貴方の相手はわたくしがいたします」
     その前に立ち塞がった黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)が、鞘に入ったままの刀を手にして炎を受け止める。
    「あらあら、蒼さまときたら、またですか。お久しぶりですわね、シロさまとは丁度三年ぶり……でしょうか?」
     攻之宮・楓(攻激手・d14169)は蒼にチラリと視線を向けると、ヘイズに指輪を向け魔力の弾丸を放って肩を穿ち神経を乱す。
    「ですがまずはヘイズさまのお相手をさせていただきますわ」
    「海将ルナ・リードや戦神アポリアと違って、二人は救えるんですっ。今度こそっ、絶対に助けてみせます!」
     拳を握って気合を入れた高野・妃那(兎の小夜曲・d09435)は、後方から仲間を補助する為、天使の如き歌声で傷を癒す。

    ●黄金リングの死闘
    「……あなたはどんな悪夢を見るのかしら」
     零花は影を広げてヘイズの体を呑み込もうとする。
    「速度、上昇、迎撃」
     ヘイズは一足で影を逃れ、機械のような正確な動きで心臓を突いてくる。
    「素早い一撃だな? しかし、甘い」
     大剣で攻撃を受け流しながら下がる闇沙耶の足元から、伸びた影が無数の手のように掴み掛かり拘束する。
    「ヘイズ兄は内面から打ち破ってさらに強くなろうとしていると思う! だから、オレはヘイズ兄を応援しながら、吸い取ったダークネスの力を削いでいくぜ!!」
     迎撃の刃を掻い潜って懐に飛び込んだ歌音は、腹に拳の連打を叩き込んだ。
    「障害、排除」
    「そうだね、僕達が居る限りこの先にはすすめないもんね。でも、僕達に勝てないんじゃ……ね」
     彼方は眩い光の十字架を生み出し、放たれる閃光でヘイズを焼く。だがヘイズはその閃光に突っ込み平然と間合いを詰めてくる。
    「説得が終わるまで倒せないのは厄介ですわね」
     楓はベルトを矢のように飛ばし脚を貫き動きを鈍らせ、その間にミドガルドが割って入った。
    「二人とも、いえ、此処で戦った皆、闇堕ち覚悟はありました。私だってそうです」
     妃那はギターで美しい音色を奏でる。
    「でも、同時に仲間を信じて、絶対に連れ戻してくれると思って戦ったはずです!」
     そのビートが速くなり、仲間達の力を湧きたたせて傷を癒し、合わせるようにウイングキャットのソラは尻尾のリングを光らせて仲間に耐性を与える。
    「キミ達はなんで強くなろうと思ったんすか?」
     問いかけながら天摩は地面を擦るように蹴って足に炎を纏わせ、ヘイズの腹を蹴り上げる。
    「……理解、不能。損傷、軽微。反撃」
     何の感情も漏らさずにヘイズは刀を振るって反撃に天摩の胴を斬りつけた。
    「強さなど求めたかのぅ、元より強き者はただ力を振るうだけよ」
     シロは聴いた者を虜にしそうな妖艶な歌を紡ぎヘイズの傷を癒す。
    「お久しぶりですね、しろさん。まぁ、前に会ったしろさんが今の貴方と同じかはわかりませんが、蒼さんの中にいる人に会うのは初めてではないのですよ?」
     りんごは己が身を帯の鎧で覆い攻撃に備えながら、目を合わせて呼びかける。
    「なので用件も同じです。蒼さんを返していただけませんか? 此度は貴方にとっても不本意な登場でしょう?」
    「さて、妾の記憶にはないのぅ。人違いではないのかえ?」
     問いかけるりんごに、揶揄うように笑みを浮かべたシロからオーラの蝶が放たれた。それをりんごは体に巻き付けた帯で受ける。
    「対象、死角、奇襲」
     ヘイズが更に速度を上げ背後から天摩の首を刃で狙う。それを闇沙耶が大剣で弾いた。
    「貴様の一撃に信念がない。信念無き刃に、俺を倒す力は無い!!」
     大きく踏み込んだ闇沙耶は大剣を振り下ろし、両断する勢いの刃が真っ直ぐに斬り裂き、飛び退くヘイズの肩から胴へと傷をつける。
    「人間であった時の方がお前は強い!! 【人】の力で俺を倒してこそ、お前は強くなったと言ってやる!!」
    「僕達は、絶対に負けないし、負けてもやらない。それに、ヘイズが居る限りは、君は勝てないよ」
     彼方がキッと睨みつけるとヘイズの腕が凍りつく。
    「理解、不能」
     飛び込むようにヘイズは刀を突き出し、彼方の胸を狙う。
    「そうはさせませんわ!」
     それを楓は槍を斬り上げて切っ先を弾いた。
    「お前はここでダークネスを吸い取って力を付けなければ、ヘイズ兄より上に立てなかったんだ! それだけの相手なら、ヘイズ兄は負けない! 必ずお前を乗り越えて帰ってくる!」
     歌音はガトリングから弾を浴びせて足を止めさせる。
    「……排除しようたって無駄よ……何せそれは強い絆で結ばれた皆の思い出だもの」
     零花の足元より伸びる影が地を伝い茨のように、ヘイズの脚に巻き付いた。
    「すぐに治療します。ですから戦いに集中してください!」
     準備していた妃那は高らかに歌い、天摩の負った傷を癒す。
    「ダークネスの心だけを斬るっすよ!」
     天摩は十握剣を半透明にして振り抜く。刃は肉体をすり抜け精神だけを切り裂いた。
    「そちらは楽しそうじゃのぅ、もっと面白くしてやろうかえ?」
    「そちらの邪魔はさせませんよ」
     シロがちょっかいを出そうとすると、りんごは間に入って行く手を塞ぎ、穏やかな風を吹かせて周囲の仲間の傷を癒す。
    「思考、雑音。……原因、不明」
     動きに精彩さを欠き始めたヘイズは、当初の目的を果たす為に刀を構える。
    「速度、最大。殲滅、開始」
    「来い、ヘイズ! お前の強さはこの程度で終わるな!」
     ヘイズが雷のように刀を走らせると、受け止めようとした闇沙耶は弾かれて大剣は宙を舞う。ヘイズが返す刀で首を狙うと、闇沙耶は肩で受けながらナイフを脇腹に突き立て、傷を広げるように捻った。
    「蒼さんにヘイズさん、お二人が信じてくれているのなら! 私は、私達はその信頼に応えてみせます!
     妃那は指輪から魔弾を撃ち出し、穿ったヘイズの脚を痺れさせる。
    「だから、お二人も闇に、ダークネス人格なんかに負けないでください! 一緒に帰りましょう!!」
    「絶対に死なないって言ってるんなら、早くこいつを押さえ込んで戻ってきてよ」
     想いを籠めて彼方が光輪を投げると、分裂してヘイズの全身を斬り裂いた。
    「頭痛、原因……推測」
     攻撃を受けていないはずの頭が痛むとヘイズは足を止め、その原因を灼滅者達と見て刀を向け斬り掛かる。
    「そのまま闇に飲まれるためにトドメさしたんじゃないっしょ? 自分は闇に負けない。それを試して証明しようとしたんじゃないっすか?」
     天摩は剣を横にして受け止めるが、刃を止め切れずに肩に食い込んだ。
    「話しは最後まで聞くものですわ」
     鬼のように腕を変化させた楓は、横から拳で殴りつけ押し倒す。
    「……絆の力は決して切れないわ」
     零花は影を高く膨らましヘイズを覆い隠した。視界を塞がれたヘイズは影を斬り捨て脱出する。だがそこに歌音が待ち構えていた。
    「fly highのみんなもヘイズ兄応援してる! こいつなんかに負けるな、ヘイズ兄ー!!」
     目を覚ませとばかりに、跳躍した歌音は拳を顔面に叩き込んだ。仮面が砕け素顔を露わにする。
    「……思考、停止」
     ヘイズは膝をつき、そのまま意識を失った。
    「向こうは決着が付いたようですね、次はしろさんに聞いてもらいます」
    「しつこいのぅ、遊んでほしければもっと面白い芸を見せい」
     りんごに対しシロは煩わしそうに青い炎を撒き散らした。

    ●絆の力
     その炎に身を隠すようにしてシロはその場を離れようとする。
    「神宮寺。お前も無事に連れて帰る」
     闇沙耶は大剣の平を盾にして炎に突っ込み、体ごとぶつかるようにシロを宙に浮かせリング中央へ押し戻した。
    「なんと乱暴な、淑女はもっと丁寧に扱うものじゃぞ」
     シロは怒ったように九尾を振り、その声で心を惑わそうとする。
    「次は神宮時、君の番だ」
     彼方はシロを見つめ、相手が動く前に体を凍結させて動きを鈍らせる。その一瞬の遅れに、妃那がギターを掻き鳴らした。
    「蒼さん、聴こえてますか、目を覚ましてください!」
     妃那の弾くハイスピードなリズムが心昂らせて仲間に活力を与えた。
    「全く……この悪趣味な場所も騒々しい音も趣がなくていかん」
     シロは鬼灯から炎を発して鬼火のように宙に浮かべる。
    「蒼さん、聞こえていますか? 聞こえていますよね。今の貴方は昔とは違う。帰ってくる場所があり、待っている人がいることをわかっているはずです」
     りんごはその身で炎を防ぎながら、懸命に呼びかける。
    「さぁ迎えに参りましたわ、折角修学旅行にも一緒に行ったんですもの。卒業も一緒にいたしましょう」
     楓は魔弾を撃ち込み、シロの動きを鈍らせた。
    「テストで一緒に一位を目指すのだってまだまだわたしは諦めてませんわよ」
     気持ちを伝えようと言葉に想いを乗せる。
    「覚えてないだろうけどオレの初依頼一緒だったんすよ、でも少し雰囲気変わったっすよね」
     駆け出した天摩が跳躍して、浮ぶ炎を同じく炎纏う蹴りで打ち消した。
    「きっとさ、戻らないといけない理由あるんじゃないかな。待ってる人いるんっしょ?」
     着地しながら思い出させるように呼びかける。
    「蒼姉ちゃんもすぐに助けてやるからな!」
     歌音は飛び蹴りを背後から当ててシロをよろけさせる。
    「妾は退屈しのぎに遊びたいだけじゃのに、そなたらの言葉を聞いていると瞼が重くなっていかん」
     シロの持つ鬼灯に炎が灯る。
    「……楽しいことばかりするのもいいけども……ずっとは無理よ」
     零花は魔力の光線を放ち、シロの集めようとしていた魔力を打ち消した。
    「【絆】があれば、この信念が届くはずだ!」
     闇沙耶は全力で大剣を横に振り抜き、受けようとする鬼灯の炎を消し飛ばして胴を斬りつけた。蝶のオーラを周囲に飛ばしてダメージを抑えたシロはその蝶を飛び立たせる。
    「その手で仲間を傷つけさせないよ」
     彼方は光の十字架を呼び出し、光線を発して蝶を撃ち抜いた。
    「絶対に、助けます!」
     妃那の影が茨のように絡みつき、シロの動きを一瞬封じ込めた。
    「この一弾一弾にみんなの想いを込めて……届けてくれ、てるハッター君!!」
     歌音はガトリングを連射し、弾幕を張って相手の行動を遅らせる。
    「今回も、覚悟はあったとしても、堕ちたくて堕ちたわけではないんでしょう」
     楓は鬼の拳を叩き込み、シロの体を地面に薙ぎ倒した。
    「後は任されました。さぁ、一緒に、帰りましょう!」
    「そんな蒼ちゃんにお手紙預かってまーす。木嶋センパイ。知ってるっしょ? さっきメールもらったんすよ」
     倒れるシロに天摩がメールを読み上げる。
    「なになに、友達が何も言わずにいなくなるのは寂しいって。でも最近はそんなに心配してなかったんだって。だから、その通り大丈夫だって安心させてあげてよ」
     踏み込んだ天摩の剣が振り抜かれ、その悪しき心だけを断ち切る。
    「知らぬ……知らぬといっておろうっ」
     己の中に湧き立つ感情に苛立つように、シロは起き上がり鬼灯を振るう。
    「……そろそろ遊びは終わり。目覚めの時だわ」
     零花は帯を蛇のように操り、シロの手を打ち払う。
    「わたくしは何度だってあなたを連れ戻します。だって、愛らしい貴方が大好きですから。ね、蒼さん?」
     りんごの言葉に反応し、力が抜けたようにシロがよろめく。
    「なんじゃ、眠くてかなわぬ……体が重くなっていくのじゃ……」
     そこへりんごは刀を抜き刀身を反転させると、刀の峰でシロの胴を打ち抜くと、シロの体がぐらりと崩れ落ちた。

    ●2人の仲間
    「負の連鎖を断てたようだな」
     闇沙耶は剣を納め、気絶した2人を見下ろし、その瞼が動くのを確認した。
    「……あ」
     蒼が目を覚まし、上体を起こして周囲をキョロキョロと見渡す。
    「何度も心配かけるんじゃありません」
     りんごは蒼を抱きしめ頭を撫でる。
    「……ご、ごめんな、さい……」
    「よかった、今度は助けられました……」
     嬉しそうに妃那は微笑み、感極まってガバッと背後から蒼に抱き着いた。
    「どうやら、また一つ強くなっちまったみたいだな」
     その隣で起き上がったヘイズが相も変わらず不敵に笑ってみせた。
    「ヘイズ兄!」
     歌音が飛びつき、力の入らぬヘイズは押し倒され後頭部を打った。
    「いてっこれが今日受けた一番強烈な一撃だぞ」
     ヘイズはその頭を優しく撫でてやる。
    「おかえりなさいですわっ」
     仲間の無事な帰還を楓は喜ぶ。
    「2人とも戻ってこれてよかったよ」
     安堵した彼方は力が抜けて座り込む。
    「はあ~、普通の戦いよりよっぽど緊張したっすね。でもやり遂げたっすよ!」
     大きく息を吐いて緊張を解いた天摩は、明るい笑みを浮かべた。
    「……絆はダークネスなんかに負けないわ」
     零花は表情を変えないままだが、どこか嬉しそうな雰囲気でその暖かな様子を眺めていた。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年8月31日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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